新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

ゴジラ×コング 新たなる帝国 感想

一線を超える。

常識が変わる。

2体の王が並び立つとき、史上最大の決戦が始まる

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

モンスターバース(モンスター・ヴァース)」の1作である『ゴジラVSコング』から約3年、続編である『ゴジラxコング 新たなる帝国(原題『Godzilla x Kong: The New Empire』)』がついに先日公開されました。あのハリウッド版ゴジラの新作に期待していた人も多いことでしょう。僕自身、ハリウッドの超絶映像で繰り広げられたゴジラとコングの戦いの続きとしてどんな激戦が観られるのか、前作の激しさを目の当たりにした身としても非常に楽しみにしておりました。

 というわけで早速映画館に足を運んだわけですが、期待以上の大怪獣バトルに終始圧倒されました。昭和ゴジラのような怪獣プロレスのノリを現代の技術で余すことなく再現してみせたような光景は、エンターテインメントとしてある意味で見事だったと言えます。日本の『ゴジラ-1.0』とは対極に位置する、頭を空っぽにして楽しめるゴジラ映画として本当に楽しかったです。というわけで今回はそんなゴジコンの感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

  • 怪獣たちが主役の物語

 本作は上述の通り、怪獣(タイタン)同士によるド派手なバトルがメインとなっています。地上の支配を企むスカーキングに対抗するため、ゴジラとコングが手を取り合って戦うシチュエーションは予想通り故の胸熱なものとして仕上がっていました。それらをハリウッドの映像技術でやってみせたのですから、絵面としては圧巻の一言。ゴジラもコングも体を張った体当たりやビンタなどダイナミックに体を使いまくるので、まさしく「怪獣プロレス」の字面に相応しい映像が見られましたね。

 ローマのコロッセオやエジプトのピラミッドなど、世界の名だたる景観を壊しまくる光景も怪獣映画としてスカッとさせられるものがありました。破壊による芸術を生み出す怪獣たちのバトルを、より効果的に見せつけられた気分です。一方で地底空間で開戦した瞬間に発生した無重量下でのバトルなど、従来の作品ではあまり確認出来ない珍しい構図の戦闘シーンも大きな魅力。ただし全体を通して「怪獣が暴れる光景をより魅力的に見せるにはどうすればいいのか」に注力しているのが伝わってくるので、それを期待していた身としても満足のいく映像が広がっていたと言えます。

 

 また本作に登場する怪獣たちがどれも個性を持ったキャラクターとして描かれていたのが個人的に注目したいポイントですね。虫歯に苦しむコング然り、他の怪獣退治に動くゴジラ然り、それぞれがどんな性格で何を考えているのかが見ていて自然と読み取れる絵作りが印象に残りました。特にコングが主役のパートはスーコ(ミニコング)とのやり取りなど、言葉を発していないのに何を話しているのか感じ取れたほどです。これらのおかげで彼らにちょっとした愛嬌や親しみやすさが生まれていたことに驚かされます。

 加えて『北斗の拳』を彷彿とさせるようなスカーキングによる奴隷の王国など、悪辣な支配者に反逆するシンプルなストーリーラインもわかりやすく描かれていたのが素晴らしかったです。その結果人間のように感情豊かに動く怪獣たちの争いに、いつの間にかのめり込んでいく自分がいました。これもまた昭和のゴジラを彷彿とさせる、怪獣たちのキャラクター化と捉えられるでしょう。(具体例を挙げるなら『ゴジラ対ガイガン』のゴジラとアンギラスみたいな)怪獣1体1体を感情を持った存在として仕立て上げ、全力で暴れさせる……まさに怪獣たちが主役の作品であることを存分にやり切ったと思います。

 

 

  • それぞれの故郷を探して

 上のようにこの映画は本当に簡単なストーリーで難しく考える必要はなかったのですが、一方で複数のストーリーラインを同時に進めていったのも大きな特徴でした。前作でも登場しているジアとアイリーン博士が謎のシグナルを探っていく人間のパート、同族を探しながらスカーキングたちの野望を知っていくコングのパート、そして新たな戦いを予感しその準備を進めるゴジラのパート。各々が異なる目的の中で行動していく過程が平行して描かれていきましたが、他のパートの邪魔をすることがなかったので頭がこんがらがることなく見ることが出来ましたね。

 そして各パートで「スカーキングを倒す」という目的の元収束していき、ラストバトルに発展する流れもお見事。人間たちもコングを助けたりモスラを目覚めさせたりとしっかりとした役割で活躍しており、怪獣たちの戦いをサポートしていたのでストレスフリーで眺めることが出来ました。別々の物語として進んでいた人間&コング&ゴジラの戦いが、シームレスかつスムーズに繋がっていく過程はちょっとした群像劇として十二分に楽しめるものとなっていたと考えます。

 あとは各パートそれぞれで「故郷を探す」ストーリーが展開されていたのも印象に残りました。前作から同族を探していたコングだけでなく、彼と心を通わせるジアが自分の秘密を探すこととで自身のルーツを得る共通点には唸らされるものがあります。中でもジアが地下のイーウィス族ではなく、義母である博士の元に残る選択をしてくれたのが個人的には良かったですね。種族や生まれではなく、自らが選んだ絆などで故郷を決める流れはグッとくるものがあります。同じようにコングもスカーキングを倒したことで新たな王となるなど、怪獣たちにも帰るべき場所を見定めて得る描写が用意されているのも秀逸です。一方ゴジラはコロッセオを新たな故郷としていましたが。上述でも触れた怪獣たちのキャラクター化に伴い、人間と怪獣それぞれのシンプルながら深みのある物語が楽しめて非常に面白かったです。

 

 

 では以下、各キャラクター(怪獣&人間)についての所感です。

 

 

ゴジラ

 ご存じ史上最強の怪獣王。冒頭からスキュラ相手に大暴れしていたものの、コングたちと比べてみると出番は少なめでした。最もスカーキングたちとの戦いの切り札として据えられているなどその存在感は絶大で、終始モナークをはじめとした人間たちの畏怖の大将として描かれていたのは期待通り。前作同様圧倒的な王者であることを印象付けられましたね。その一方でコングと最初は敵対するものの何だかんだ協力するし、猫の如くコロッセオを寝床にし出すなど妙に可愛らしい一面も覗かせていたのが面白かったです。

 戦闘能力では例によって最強格。特にエネルギーを吸収してピンク色の体表になった本作のゴジラはこれまでの中でも最強クラスらしいのですが、実際それくらいはあるかもしれない説得力を感じさせてくれました。特にシーモの冷凍光線を前にひるまず突撃する、避けるスカーキングに熱線をお見舞いしまくるシーンの頼もしさは随一。あまり目立たず本筋に絡まなかった分、クライマックスに本格参戦した時のインパクトで攻めたイメージを受けますね。

 

 

コング

 激しい本能と優しさを併せ持つ大猿。序盤から終盤まで出番がたっぷりあって、実質本作の主役と言ってもいいくらいでした。虫歯に悩んだりようやく会えた同族の猿たちと絡んだりと、他の怪獣たち以上にキャラクター化の恩恵を受けており、その結果非常に愛嬌に富んでいる理性的な怪獣に仕上がっていたと思います。特にスーコ(ミニコング)との絡みは、突っぱねているようで実際は面倒見のいい兄貴分的キャラを確立させていて興味深かったです。

 前作から獲得した斧だけでなく、左腕の負傷に伴ってトラッパーが持ってきてくれたインフィニティガントレット機械のグローブを装着するなどゴジラとは異なるパワーアップを遂げたのが印象的。実際グローブの威力は絶大で、ゴジラを一度は殴り飛ばすなど仰天する活躍を見せていました。ゴジラが放射能吸収による野性的な強化を受けた分、コングは自身の技術と人間たちの協力を経て力を得る対比になっていたと思います。

 

 

モスラ

 極彩色の守護神。(『KOM』に登場した個体とは別のようですね)参戦が確定してから楽しみにしていた中、期待通りの活躍をしてくれました。イーウィス族の繋がりが判明するなど驚きの前振りの後、ジアによって満を持して登場した時の美しさは感無量の一言。ゴジラとコングを和解に導くシーンも納得の役割で、『三大怪獣 地球最大の決戦』を彷彿とさせる慈悲と冷静さに満ちていました。その後はスカー配下の猿たちに糸を吐くなど無重力バトルまでしか戦っていないものの、多くの人が抱く神秘的なイメージは健在だったと言えるでしょう。山崎監督が満足するのも納得だ……!

 

 

スーコ(ミニコング)

 まだまだ小さな弟分。コングとの絡みが親子のようなものになるのかという予想に反し、出会い頭にコングを倒そうとする血気盛んな一面を見せてきてびっくりしました。(その結果コングにヌンチャクにされてしまった時は爆笑してしまいましたね)その後もコングを警戒しつつ、徐々に彼に絆されていく過程は微笑ましかったです。コングが兄貴なら、このスーコは彼の後ろをついて行く舎弟といった感じでしょうか。ケンシロウに引っ付くバットみたいな感じ?最後にはシーモを操る石を破壊する大金星を挙げる点も、舎弟キャラの意外な活躍の定石として大いに興奮させられましたね。

 

 

スカーキング

 地底世界の邪悪なる支配者。かつて地上進出を狙ってゴジラたちを争ったという過去を引っ提げ、如何にもな暴君描写でお手本のような悪役っぷりを発揮していました。中でもスーコの親と思われる猿を突き落とすシーンは見事なまでに悪逆非道を表わしていましたね。またコングの差し歯を嘲笑うなど、チンピラのような品性の無さも印象に残ります。

 一方で戦闘においてはそこまで強いというわけではなく、シーモを服従させつつ自分は隙を見ていたぶるといった戦闘スタイルも小悪党らしかったです。(骨を鞭のように振り回して戦うテクニカルな戦術は結構好きですが)これらの要素おかげでシーモを操れなくなってからのフルボッコも気持ちよく見ることが出来ました。実力はほどほど、しかし狡猾で悪辣という点では歴代で最もヒールらしい敵怪獣だったかもしれません。

 

 

シーモ

 驚異の冷凍怪獣。ゴジラに匹敵するほどのパワーを持っている相手ということもあり実際本当に強かったのですが、それ以上にスカーキングに無理やり操られている様子に可哀想という感想を抱きました。(謎の石で苦しむ姿もあって、見ていて同情マシマシです)ゴジラとコングが呉越同舟の対等な関係だったのに対して、こちらは支配者と奴隷の関係性を表わしていたと言えます。その分スカーキングから解放されてコングと仲良くなるラストが犬みたいで可愛かったので、今度は味方としての活躍も見てみたいところです。

 

 

その他の怪獣たち

 冒頭ローマで暴れていたスキュラや北極海でゴジラと死闘を繰り広げたティアマット、トラッパーの機転で活躍してくれたヴァータシーンなど他にも様々な怪獣(タイタン)たちが出てきました。いずれも個性豊かで、本作の地球に住む怪獣の多様さを感じさせてくれた次第です。まぁいずれもちょっとした出番はなかったものの、見ていて興奮させられるものがありましたね。(あといずれもこのシリーズオリジナルなので、アンギラスなどの日本の怪獣たちもそろそろ出してほしいな~とか思ったり)

 

 

本作の人間たち

  前作でコングと心を通わせた「ジア」と彼女と養子として引き取った「アイリーン・アンドリュース」博士、そこにちょっと変わった獣医の「トラッパー」と今でも陰謀論者の「バーニー・ヘイズ」も加わった愉快な人間たちも忘れてはいけません。あと早々に人喰い植物に喰われたミケルさんとか……この中だとトラッパーとバーニーのコミカルなキャラクターが面白かったですね。どんな時も明るくあるいは騒がしく場を盛り上げ、状況を説明してくれるので視点整理もしやすく見ていて楽しかったです。

 そしてまさかの小美人ポジションを獲得したジアとアイリーン博士の親子の関係が個人的なここすきポイント。前作ではあくまで形式上の養女と義母といった印象だった関係性が、本作でしっかりとした愛情によって立派な親子となっていたことに感動させられます。博士が自分の謎に苦しむジアのために奮起する様子などは、まさに母親の愛情の深さを感じさせてくれましたね。地下のイーウィス族の登場によってジアの親離れが描かれることも覚悟していましたが、改めて親子として再出発するラストにもウルっとさせられます。次回作でもこの2人の親子関係を存分に見せてほしいところです。

 

 

 というわけでゴジラ×コングの感想でした。いやぁ期待していた通りのIQの低い(誉め言葉)の映画でとても楽しかったですね。前作の時点で深く考えずにドンパチに盛り上がっていましたが、本作ではそれを怪獣たちのキャラクター化によって正統進化させてみせたと感じています。まさに怪獣たちを主役とした映画として素敵な作品に仕上がっていて大満足です。

 日本では-1.0(マイナスワン)のようなシリアスかつ怪獣の概念に切り込んだゴジラが多い中で、『ファイナル・ウォーズ』のようなパワー溢れる映画をやってくれるのは個人的にも嬉しい限り。マイナスワンのような硬派から、本作や『ちびゴジラ』といったカオスもある作品の振れ幅の広さもゴジラシリーズの魅力と言えるでしょう。今後のモンスター・ヴァースの発展・さらなる次回作を楽しみにしつつ、今回はここで筆を置きたいと思います。

 

 

 ではまた、次の機会に。