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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 感想

全ての“運命”を覆せ

大いなる責任を背負い、親愛なる隣人たちは立ち上がる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アベンジャーズら他のヒーローとの共演を果たしたMCUスパイダーマンもついに3作目。前作『ファー・フロム・ホーム』から3年近く待たされましたが(日本では北米よりも1か月遅れで公開でしたし)、ようやく見れてホッとしました。あのとんでもないラストからどのようになっていくのか、この数年気になって仕方がなかったです。

 そういうわけで公開日にすぐさま映画館に足を運んだわけですが、もう最&高でしたね。多くの人が予想、あるいは期待していたことを軽々と飛び越えた豪華な内容に驚きっぱなしでした。さらに清算」と「再スタート」がキーワードと言えるストーリーであり、スパイダーマン」という作品の総決算として非常に楽しかったです。今回はそんな『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 大いなる過去の「清算

 まず語るべきことは、やはり過去作の『スパイダーマン』に登場したヴィランが総集結したことですね。予告で最初に姿を見せたオクタヴィアスを筆頭に、当時演じていた俳優が懐かしのヴィランを再び見せてくれたことには予想以上の興奮を与えてくれました。しかもそのセリフの端々から彼らがそれぞれの作品世界から訪れたことが察せられるので、ファンからすればあの世界の続きが見られるという意味でもかなり嬉しい点です。

 それ以上に衝撃的だったのが過去作のピーター・パーカー/スパイダーマンの登場。即ちトビー・マグワイア氏とアンドリュー・ガーフィールドが当時の作品と同じピーターとして出演してくれたことです。3人のスパイダーマンの共演は以前から噂されていたものの、まさか本当に実現するとは思っていませんでした。主演のトム・ホランド氏のピーターと肩を並べる絵面には思わず感涙してしまいましたね。

※それぞれ劇中では数字で呼称されていましたが、ややこしいので当ブログでは各スパイダーマンを以後「トビーピーター」「アンドリューピーター」「トムホピーター」と表記します。

 

 そんなお祭り要素満載でこれだけで大満足な内容だったのですが、本作は彼らの物語にある種の「清算」を与えていたのが印象的でした。そもそもの発端はヴィランたちで、彼らが元の世界で死んでしまう未来を知ってしまったトムホピーターが、彼らの運命を変えようと奔走するのが今回のキモだったと言えます。思えば各ヴィランはそれぞれ望まぬ形で異形の力や人格を手にしてしまった者ばかりで、最終的に半分以上が死を迎えるものばかりという哀れな人たちでした。

 その問題をどうにかして解決し、彼らの悲惨な未来を回避しようとする展開には元のストーリーを知っている分衝撃を受けました。下手をすれば元の作品を破壊しかねない危険な展開でしたが、本作はそれをファンが見たかったシチュエーションで成功させたのがとんでもないところ。協力してくれたオクタヴィアス、若いするアンドリューピーターとマックスの和解など、「こうなって欲しかった」という絵面を全力で実現し、彼らの運命を「清算」してくれたと言えます。

 ヴィランに限らず過去のスパイダーマンたちについても、この清算は行われていました。彼らは既に本編の数年後から来た設定なので過去を変えることは出来なかったものの、それぞれが抱えていた無念を似たようなシチュエーションで晴らしたことには驚きました。筆頭は何と言ってもアンドリューピーターのMJ救出であり、もう1つはトビーピーターのノーマン殺害阻止。どちらも大切な人を死なせてしまったという後悔を抱いていたであろうとことが過去作で伺えただけに、この救済には感動を覚えます。

 過去作で多くの悲しみを抱えていた登場人物それぞれに与えられた「やり直す」機会。ヴィランたちは絶望の未来を、スパイダーマンズは過去の失敗をそれぞれ「清算」し、元の世界に帰っていきました。あのまま終わってしまった世界の続きとしては、ファン歓喜の内容です。驚愕してしまう要素が何度も出てきて、僕自身その度に膝を打ちましたね。過去作を見てきた人たちへのファンサービスとして見事の一言です。

 

 

  • 親愛なる隣人の「再スタート」

 本作のもう1つの見どころとしてあげたいのが主人公であるトムホピーターの物語としての側面。上述の通りお祭り作品である映画だった一方で、少年ピーター・パーカーの新たな始まりを描いていたのが特徴的でした。

 思えばMCUにおける『スパイダーマン』は過去作と比べてもかなり恵まれた環境にいました。アイアンマンといった後見人がいるだけでなく、メイおばさんやMJ、ネッドといった協力者も多く、未熟ながらも彼らと共に問題に立ち向かっていく、ティーン・エイジャーの成長物語として『ホームカミング』と『ファー・フロム・ホーム』の前2作はよく出来ていたと思います。

 ところが本作はそれまでとは一転、ハードな内容が次々と襲いかかってきました。正体が公にされたことで世間から誹謗中傷の的にされる展開は前作の時点で予感はしていたものの、メイおばさんの死にはショックを受けました。ピーターがトニーの死を乗り越えたばかりということもあって、予想外の方向から殴りつけられた気分です。しまいには世界を守るためにMJたちから自分の記憶を消し去り、孤独なヒーローとなるラストまで用意されており、タイトルの『ノー・ウェイ・ホーム(帰る家がない)』の意味をここで嫌というほど実感させられます。

 

 そんなトムホピーターの悲しい運命が描かれ、劇場で心が折れそうになりましたが、一方でこれらは彼が「スパイダーマン」としての覚悟を決めるための過程だった、とも思いました。メイおばさんの死はある意味で過去作におけるベンおじさんの役割。ゴブリンに指摘された彼女の「甘さ」と想いを受け継ぐために必要な犠牲だったと言えます。人々から自分の存在を忘れ去られた結果も、今後正体不明のヒーローの活動をしていくうえで避けられないものでした。

 そうして多くの人がイメージするスパイダーマン像にぐっと近づいたのが、ラストのお手製スーツで街を翔けるトムホピーターでした。MCUで多くの支援を受けて得た彼が、誰かの助けがなくともやっていける「再スタート」こそ今回の最大の意義だったのではないでしょうか。

 

 とはいえトムホピーターは決して全てを失ったわけではないのがポイントです。前作でトニーの意志を受け継いだように、おばさんたちの想いが本作でしっかりと受け継がれていました。確かに1人ぼっちになってしまったものの、多くの人たちから教わったヒーローとしての心構えをしっかり心に刻み付けていることが、終盤のハッピーの言葉から伝わってきます。

 他にも自分以外のスパイダーマンとの出会いも彼にとって心の助けになっていたのが良かったですね。同じ悩みや話題を共有出来る仲間と話しているシーンは見ているだけでウルウルきます。同時におばさんを殺された憎しみを先輩たちに止めてもらうことで一線を踏みとどまった点も、トムホピーターの成長に大きく関わっていたように感じました。(上述の「清算」のくだりをここでトムホピーターが受けたとも取れますね)

 『スパイダーバース』や『偽りの赤』などでも扱われていましたが、孤独な一方でスパイダーマンは1人ではない」という物語をきっちり見せてくれたからこそ悲壮感はあまりなかったように感じますね。様々な人に支えられているMCUスパイディのイメージをそのままに、従来のスパイディにグッと近づけた内容には感無量の思いが止まりません。

 

 

 ここまでこの映画を観て抱いた僕自身の考えについてある程度書きましたが、それ以外にも語りたいことが本作には数多くあります。上述のピーターたちの会話は「君はアメイジングだ」「アベンジャーズって何?」と小ネタが豊富でしたし、ヴィランに関しても五者五様でどれも印象的です。主人公とその仲間たちの愉快なコンビも健在でした。

 他にも活躍自体は少なかったものの重要な役割を果たしたストレンジ、まさかのサプライズ出演を果たしたデアデビル、お前ら何しに来たんだヴェノムコンビとスパイディ以外のヒーローもそれぞれ個性的な場面がありました。

 アクションに関しても素晴らしい構図が多かったですね。異なる能力を持ったヴィランが数多く登場したためか戦闘シーンのバリエーションが『アベンジャーズ』並に豊富でしたし、それに対応するスパイディチームのコンビネーションも見ごたえ抜群でした。(惜しむらくは背景が暗い+それぞれがビュンビュン飛び回っているせいでどのスパイディがどのピーターかわかりにくかったことですかね・・・・・・)

 ちなみに個人的なお気に入りシーンはVSストレンジ。ミラーディメンションの酔ってしまいそうな映像表現の中にスパイダーマンのウェブアクションが加わった追いかけっこには大興奮しました。空間を丸ごと支配しているストレンジに数学で対抗するトムホピーターも素敵です。

 

 

 というわけでスパイダーマンNWHの感想でした。書きたいことや見て思ったこと・感じたことが多い分どうまとめればいいのかと非常に悩みました。おかげで映画を観てから感想を投稿するまでかなり時間がかかってしまいましたが、自分の伝えたいことについてある程度書くことが出来たかと思います。とはいえ書きたい内容がまだまだあるので、もしかしたら後日加筆するかもしれません。その時はまた読んでいただけると幸いです。

 さてこれでMCUスパイダーマン三部作もついに完結。ソニーとディズニー共同の新三部作の企画も上がっているようですが、トムホスパイディとはひとまずここでお別れすることになりそうです。新三部作での彼との再会に期待したいところです。

 そして次のMCU作品は本作でも活躍したドクター・ストレンジ主役の映画ですね。予告を見た限りだと『What if・・・?』といった作品とも密接に関わっているようでかなり気になります。とはいえ僕はまだそれらの作品を見れていないので、今の内にディズニープラスに加入して見るべきかどうかちょっと検討中です。履修するべき作品の増加に疲れつつも、れからも続くMCUが楽しみです。

 

 

 ではまた、次の機会に。