つかめ、未来のガッチャ!!
夢を抱く若者たちは絶望を覆し、今こそ希望の明日に手を伸ばす
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毎年夏の風物詩となっている仮面ライダー&スーパー戦隊の夏映画。今年は『仮面ライダーガッチャード』と『爆上戦隊ブンブンジャー』の明るい2大作品が揃っており、両作品をテレビシリーズ本編でも毎回楽しんでいる身としてはたまらない年となりました。一方ガッチャードに関しては予告編から感じ取れるハードな雰囲気が印象的で、公開前からどんなシリアスが待ち構えているのかと期待したほどです。
そんなわけで早速映画館に足を運んだわけですが、見事なまでのヒーロー活劇に大いに感動しました。グリオンに支配された未来の絶望感を存分に味わいつつ、それらを乗り越えていく宝太郎たちの奮闘は胸熱の連続。加えてサプライズも満載で、実際に鑑賞して驚きっぱなしにもなりましたね。予想通りの要素と予想を超えた要素、それぞれで攻めたエンターテインメント映画として楽しんだ次第です。というわけで今回はそんなガッチャード夏映画の感想を書いていきたいと思います。(※同時上映のブンブンジャーの感想は今回書く予定はありません。ご了承ください)
※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!
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- 本編から続く明るい“絆”を描く
さて本作は上述の通りハードな世界観がまず特徴となっています。本編にも登場した未来の宝太郎/デイブレイクの未来の世界がお披露目され、荒廃した世界と疲弊した宝太郎の姿には少なからずショックを受けました。仲間の死や虐げられる人々など、直接的な描写を避けてここまで絶望感を引き出したことには舌を巻くばかりです。墓が並ぶシーンやスパナやラケシスたちそっくりの敵幹部などで、間接的に未来の惨状が読み取れるようになっていたのも見事でしたね。
とまぁある種本編に通じる容赦のなさですが、それらを乗り越えて反撃に出る展開も同様、後半から物語を大いに盛り上げてくれました。現代の宝太郎が未来の自分を叱咤激励し、仲間と共にグリオンに挑むまでの流れを非常に速いテンポでやってのけたので見応えがありましたね。(その直後の同時変身&島根ロケを活かしたバイク並走も素敵)序盤トラウマになりそうな鬱場面ばかりだった分、主人公たちが立ち上がり勝利する瞬間のカタルシスもより感じやすくなっていたと思います。
何より未来の宝太郎の再起の物語に重点が置かれていたのが嬉しかったですね。本編での様子や予告などの時点で不安に思っていた、彼の救済展開は本作の最重要イベントともいうべき趣きに仕上がっていました。身も心もボロボロで宝太郎とは思えないほど荒んでいた未来宝太郎、彼がケミーや未来のりんねと共に戦っていることを思い出すシーンは特にウルっとくるものになっていたと思います。ホッパー1たちに謝る様子も相まって、大人びた彼が本来の一ノ瀬宝太郎に戻るまでの過程が心に沁みてきます。
加えてケミーと人間が力を合わせて立ち向かう想いの力にも触れており、両者の関係性をポジティブに描いていたのがまた素敵なポイント。現代に残った錆丸たちがケミーと合体するシーン然り、未来でケミーたちが人々の手に渡るシーン然り、異なる存在同士が合わさることで新たな力が生まれる様子をわかりやすく魅せてくれました。上述の未来宝太郎の謝罪シーンもそうですが、ケミーが純粋故に人に力を貸してくれることに納得を覚える内容にはシンプルに燃えてきます。
総じて、テレビシリーズ本編でも扱っている要素の延長線上を描いたのが本作と言えるでしょう。辛い出来事やトラウマがありつつも、素直な気持ちで乗り越え成長していくガッチャードらしい“絆”の熱さが映画にも溢れていました。ケミーと人間の絆の力も含め、本編で度々触れてきたからこその説得力と安心感が感じられます。仮面ライダーガッチャードという作品の魅力がどこにあるのか、制作陣がそれらを深く理解したうえでファンに届けてくれたのだと思える素敵なストーリーでしたね。
- 驚きと感動が物語を繋ぐ
といった感じに見たかったものが詰まっていた一方、こちらに驚きを提供する要素も見逃せない見どころとなっていました。それも予想通りの中でいきなり情報でぶつけてくるような、不意打ちとも言える代物ばかりで見応えたっぷりでしたね。(ひそかに期待してた未来のりんね役・北川景子さんの出演はなかったのが少々残念ですが、まぁ高望みに過ぎないのできにしてはいけませんね)
まずサプライズ出演に関して。こちらは次回作ライダー・ガヴの先行登場はもちろんのこと、門矢士/仮面ライダーディケイドの登場で観ているこちらの度肝を抜いてきたのが印象に残っています。カグヤ/レジェンド関連のエピソードで存在そのものは仄めかされていた中、本当に登場するとは思ってもみなかったです。(演じている井上正大さんの髪の色が白多めなので、士よりもジンガやジサリスっぽいななどと思ったり)そこから短い出番とカグヤとの絡みで存在感を出していたのは見事と言うほかありません。何より憧れの人物を前にして成長する、カグヤの物語の終着点をやり切ったことに感服してしまいます。
そしてストーリー最後の見せ場、エンディングで映された「暁の錬金術師」の物語ラストに触れた演出が最大の注目ポイント。冥黒王を追って過去に飛んだ未来宝太郎=暁の錬金術師であることが判明した時は衝撃を受けました。本編で中々回収されなかった伝説の謎をここまで上手く繋げるとは思ってもみなかったです。冥黒王を倒しきれず未来宝太郎が追いかけて終わるオチに当初は首を傾げた分、絵本のラストページで気持ちよく膝を打ちました。伝説の錬金術師になることで宝太郎の夢である「大物錬金術になる」を間接的に達成させた点含め、驚きと共にスッキリとした余韻をもたらしてくれたことに感動を覚えますね。
他にも未来のりんねの現在や、味方そっくりな敵の意外な演技(いやぁアルザードは怖かったですね……)なども素晴らしかったです。数十分に1回、驚かせてくれる場面が用意されていたと思います。未来宝太郎の急な再起など尺の都合を感じる部分もチラホラあれど、物語全体の堅実さと奇抜さのバランスがよく出来ていたので飽きずに観ることが出来ました。笑って泣けて興奮する、ヒーロー映画の素朴な良さが個人的には大いに突き刺さったと言えるかもしれません。
戦闘などの登場人物の活躍シーンに関しては、やはりライダーに限らず仲間たち全員に見せ場があったのが最高の一言。現代に残ったメンバーが未来からの襲撃を食い止める展開など、味方が多いからこその役割分担が本編同様しっかり描かれていたと思います。中でも加治木はコメディリリーフ兼ライダーを応援する一般人代表として、何より未来宝太郎を宝太郎として接してくれる友人関係を魅せてくれました。加治木好きとしては、映画でも存在感を出してくれて本当に嬉しかったです。でもこの後記憶を消されるんだよね……
ライダーのバトルではガッチャードの様々なフォームの見せ場があったり、どのライダーにも一定の活躍が用意されていたのが好印象。ケミーも同じように、スマホーンなど意外なケミーが勝利のカギに繋がっていく展開は見ものでした。そしてカッコよかったのが仮面ライダーミラクルガッチャード&仮面ライダーガッチャードシャイニングデイブレイク!映画限定フォームらしい強さはあまり感じられなかったものの、ケミーと人と心を通わせることで力を発揮する演出もまたガッチャードらしいと言えます。
あと個人的なこの映画のここすきポイントとして、映画を鑑賞している人たちに呼び掛ける演出があったりします。これは昨年の夏映画『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐』でも使われた手法で、IDコアからケミーカードへと品を変えてのモノになっていたのが面白かったです。この調子で次はプリキュア映画みたいにミラクルライトも劇場配布しようぜ!劇中の世界観と映画館をシームレスに繋げる、ヒーローショー的要素は不思議と高揚感を湧き上がらせてくれましたね。
では以下、各キャラクターについての所感です。
一ノ瀬宝太郎/仮面ライダーガッチャード
ご存じガッチャードの主人公。持ち前の明るさと前向きさが映画でも発揮されており、主人公としての存在感は健在。どんな状況でも諦めないメンタルは、本編で度々描かれてきた故のブレない部分だったと感じています。個人的にも宝太郎はまだまだ諦めたりしない!という信頼があったので、その信頼通りになってくれたのは嬉しいところ。青臭いからこそ素晴らしい不屈のヒーロー感マシマシで満足度が高いです。
中でも未来の自分に対する叱咤激励が強烈な印象を残してくれました。時にもう1人の自分に同情しながらも、ケツを叩くかの如く再起を促す辺りは本編の宝太郎と全く同じでしたね。少々怖いと感じることはあるものの、基本はポジティブなので安心して見ることが出来る主人公として頑張ってくれたと思います。
一ノ瀬宝太郎(未来)/仮面ライダーガッチャードデイブレイク
本作のもう1人の主人公。クリスマス回で初登場してからは約半年、宝太郎とは思えない暗さに軽いショックを受けました。そうなるのも納得がいくほど過酷な未来の戦いもありましたが、最終的にいつもの宝太郎に戻っていたのが素敵でしたね。演じているDAIGOの演技も、終盤宝太郎(本島純政さん)に似た声色になったのが驚きかつ感動に繋がっていたおり素晴らしかったです。
そして冥黒王を追ってケミーや未来りんねたちと過去に向かった結果、暁の錬金術師として語り継がれるオチもお見事でした。暁の錬金術師が「仮面ライダー」を名乗った謎の答え合わせとしても納得ですし、大物錬金術師になってケミーと人間の触れ合いを実現させる……という宝太郎の夢をある意味で実現させたことに感服せずにはいられません。過酷な未来を諦めずに生き抜いた、未来宝太郎へのご褒美としても大いに頷かされるラストでした。
九堂りんね/仮面ライダーマジェード
ヒロイン兼2号ライダー。本作では現代りんねも未来りんねもキーキャラクターとして、2人の宝太郎を支えてくれたと感じています。未来宝太郎に宝太郎らしさを説き伏せつつ、自分は時に人質になりながらも最後まで戦い抜いたことに感心しますね。未来宝太郎がその身を案じるものの、決して守られるだけの存在で終わらない勇ましさこそりんねの真骨頂だとつくづく思います。
未来りんねに関しては肉体的には死んだものの、意識のみをザ・サンに乗り移らせたのが興味深いですね。意識だけになっても宝太郎に寄り添い、呼びかけ続けた事実からは彼女のいじらしさを感じます。何より未来のりんねが宝太郎のことを「宝太郎」と名前呼びしている点にニヤリときました。2人の関係の終着点として十分にアリだと、終盤気ぶりっぱなしでしたよえぇ。
黒鋼スパナ/仮面ライダーヴァルバラド
2号ライダーっぽいけど3号ライダー。本作では残念ながら出番はそれほど多いわけではなく、活躍も最低限といった印象でした。とはいえ現代で必死に戦う場面はスパナらしくて胸にきますし、未来から自分そっくりの敵に引導を渡すくだりは爽快感抜群。多くの苦難を乗り越えた安定感があったとも捉えられるかもしれません。
あとは後述のガヴとの絡みも見どころになっていましたね。謎の青年にグミを貰って困惑し、彼がグミのライダーに変身してさらに困惑する場面でクスっときました。反応が概ねガヴ初報時のファンの感想に近くて、視聴者の目線で驚いてくれる理想的なリアクション要員だったかと感じています。
鳳桜・カグヤ・クォーツ/仮面ライダーレジェンド
ゴージャスなカグヤ様。本編でデイブレイクの存在を認知し、今回の映画のきっかけになってくれるなど頼もしさは健在。いざという時のお助けキャラとして極まってきたと感じつつ、いつも通りのノリで暗くなりがちな雰囲気を少しだ明るくしてくれたと思います。(あと宝太郎たちが指輪を揃えるシーンで1人だけ端でじっと見てるだけ、の絵面にじわじわきましたね)
また彼に関しては、士/ディケイドの絡みが見逃せません。幼少期の自分を救ってくれたヒーローを前にして、思わず敬語になるカグヤ様は意外過ぎて面食らいました。そのうえケミーカードがディケイドのライダーカードデザイン準拠(マーベラスレア)仕様になる瞬間も最高です。憧れとの再会を経て、ディケイドを超える伝説になろうとするカグヤの今後の出番に期待が持てる場面でしたね。
その他の仲間たち
現代と未来でそれぞれ活躍した宝太郎の仲間たちも、各々の魅力満載でした。ユーフォーエックスやズキュンパイアと合体する錆丸と蓮華に興奮したり、戦いを終えての夏祭りで良い雰囲気のミナト先生と鏡花さんにビビったのもいい思い出。他にもゲスト芸人枠である小島よしおさん演じる「但馬鉄男(たじま・てつお)」や、りんねと共に活躍した「榊一香(さかき・いちか)」も記憶に残る鮮烈さに溢れていました。
あとは未来で味方になっているアトロポスとクロトーも印象的。キャラクターはほとんど変化がないのに、違和感なく仲間として振る舞っているのが驚きでしたね。(クロトーに関しては本編よりも落ち着いているかも)流石のアトロポスも自分を捨てラケシスを奪ったらグリオンを見限る、ということがわかったのも興味深いです。これは現在敵のままである本編の2人も、仲間になる可能性があることの示唆と取りたいところです。
グリオン/仮面ライダードラド/冥黒王
本作のラスボス。本編でも絶賛暗躍中の男が劇場でもボスを演じる異例の扱いに驚きつつ、いつも通りのゲスっぷりにかえって安心してしまいましたね。宝太郎をすぐさま始末しなかった理由も納得するほかなく、本編のグリオンを知っているほど悪辣さが感じ取れました。一方で本来のグリオンとはかけ離れた部分に関して、実は冥黒王が乗っ取っていた事実で説明付けたのもお見事。
反面グリオンが変身したドラド、その正体である冥黒王の脅威に関してはそこまででもなかったですね。絶望感はあったものの、ボスの強さとしてはほどほどといったところでしょうか。特に冥黒王は巨大化してからの小物臭さとボコボコにされる様子が、情けなさを助長させていました。ただそういった薄さのおかげで、敵として気兼ねなく倒せてスカッとなれたとも捉えられますが。
冥黒のデスマスク
本作の敵幹部枠。スパナそっくりの「ヘルクレイト」とラケシスそっくりの「ラキネイレス」など、味方と同じ顔というのが面白かったですね。役者の有効活用にもなるほか、死体を利用したであろうグリオンの悪趣味さがよく出ていたと思います。特に印象深いのはミナト先生と同じ顔の「アルザード」で、先生がしないような狂気的な笑顔と外道発言にはギョッとしました。役者さん楽しそうだなぁ……と感じられて個人的にちょっとほっこりしたり。
ショウマ/仮面ライダーガヴ
お馴染み先行出演の次回作ライダー。今回は変身前の主人公の姿と、変身シーンもお披露目される久々の方式が嬉しかったです。助けた人にグミを配る気さくさは、アンパンマンに通じるものがあってこの時点でヒーローとしての信頼感が出来ていましたね。ガヴに変身してからの戦闘も、装甲がぷるぷる震えたりグミの足場を蹴って縦横無尽のアクションを見せてくれたのが面白かったです。
その一方で奇妙なジッパー付きの服の下に付いてるベルト、変身時に目が怪しく光る様子に不穏なものを感じ取りました。ベルトが如何にもはじめから付いているようなビジュアルから、元から人外なのか人外にされたのか気になってきます。戦闘後の空腹描写も意味深で、ただならぬ事情を抱えていそうなライダーになりそうで早速戦々恐々としてきました。
というわけで映画ガッチャードの感想でした。書きたいことがあまりにも多すぎて難航しましたが、何とかまとめることが出来て一安心。本作は見どころ満載で、始まりからラストまで目が離せない内容となっていました。面白さに関してもここ数年の夏映画の中でもトップクラス、個人的にもかなりお気に入りの作品になりましたね。そんな本作への熱い想いをこの感想で感じ取っていただければ幸いです。
ではまた、次の機会に。
