マーベルスタジオで制作している映画シリーズ「MCU(マーベルシネマティックユニバース)」。『アベンジャーズ』を筆頭に作品同士が密接に繋がっている世界観と、それらが終盤収束する大河的要素もあって度々注目を集めてきました。僕自身、このシリーズは新作が公開されるたびにチェックしています。最近は話題性があまりなくなり展開も縮小されてきたきらいがありますが、それでもコンスタントに新作を出し続けてくれているのでありがたい限りです。
今回はそんなMCUの内、今年公開され鑑賞した3作の感想を書いていきたいと思います。先に全体を通しての大雑把な感想となりますが「思っていたものとは少々違っていたけど、これはこれで結構面白かった」といった感じの映画ばかりでしたね。そんな各作品への個人的な想いや見解について、読んでいただければ幸いです。
※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!
というわけで以下、今回の映画感想です。
キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド
まずは今年最初に公開されたキャプテン・アメリカから。『キャプテン・アメリカ』の映画としては通算4作目ですが、本作から主人公がサムになったのでどちらかというと仕切り直しの1作目といった印象です。*1スティーブの意志を継いで2代目キャプテンとなったサムの物語の始まりとしては、出だしは上々といった内容となっていましたね。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』から期待していたサムなりのキャプテン・アメリカ像といったものを、本作では大いに堪能出来ました。
本作で最初に目に飛び込んできたのはサムの常人としての側面でしょうか。超人血清を打っていない生身のままでキャップになった彼の泥臭い戦いぶりが序盤から炸裂しており、そこにスティーブのような勇猛果敢さはあまり感じられません。(ファルコンだった頃と同様、メカウイングなど装備をスマートに使いこなすカッコよさがあるので個人的にはこれはこれでアリ)またブラッドリーといった超人兵士との身体能力の違いが、階段の降り方などで明確に描写されていたのも見逃せません。故に本作はどこまでも、今のキャップは生身の人間であることを強く意識させてきます。
そして事態の混迷化に合わせて今の称号に重圧を感じるサムの心情も相まって、押し潰されそうになりながらも必死に強がる彼の強さが鮮烈に感じました。「一度でもしくじればこの称号を追っていた他のみんなを失望させる」といった人間的な弱さを見せながらも、戦いの場ではそれをおくびにも出さない立ち振る舞いこそサムのキャップの在り方であることが伝わってきます。バッキーやホアキンといった仲間にのみ見せる脆い一面を隠しながら、必死に強がるキャラクターは個人的にもかなり応援したくなりましたね。(また今回から登場した2代目ファルコンことホアキンですが、お調子者ながらサムの重荷を一緒に背負おうとする性格で一気にお気に入りキャラになりました)
そして本作のもう1人の主人公とも言えるロスについてもかなり強烈な記憶を残していきました。これまではヒーローに圧をかけてくる嫌味なヤツくらいの認識でしたが、大統領に就任してからの彼の内面描写は非常に興味深かったです。全編通して黒幕であるサミュエルに翻弄されていたものの、娘と向き合うために少しでも成果を残そうとする姿はかなり悲痛に映りました。やること為すこと裏目に出るのもあって、必死な姿に少々同情を覚えてしまいます。あと本作の尾崎首相含めた日本描写が現実ではあり得ないくらい米国相手に徹底抗戦してくるので余計に気の毒に感じたり……
特に娘への想いは彼の人間的要素の大部分を担っていたのが面白かったですね。レッドハルクと化して暴走しながらも、娘との思い出の場所である桜並木を前にして正気に戻るシーンは地味にウルっときました。(レッドハルクと桜の絵面的相性が良好なのもここすきポイント)高圧的な態度や自暴自棄な面もあって見ていてイラついてしまう点も多いのですが、その心情を推しはかることで味わい深いキャラクターに仕上がっていたのも事実。上述のサム同様、人間臭さからくる弱さとその欠点と立ち向かう強さを象徴するようなロスが途端に好きになってきたところです。
サンダーボルツ*
続いてはヒーロー未満のアウトローばかりが集まったサンダーボルツ。これまでの作品で登場した連中が揃ってチームを組むということで楽しみにしていましたが、蓋を開けてみると予想以上に突発的なチーム結成が目に飛び込んできました。まとめ役になると思っていたバッキーも後半まで戦う場面がなく(政治家としての暗躍という面では序盤から目立っていましたが)、思っていたよりもチームとして戦ったというイメージは湧いてこなかったですね。
しかし本作が彼らの再起の物語だと考えるならば、そうなるのも当然だと感じられる塩梅でした。汚れ仕事しか生きる道がなかった連中が嫌々結託していく中で、根底にあるヒーローの意識を取り戻していくストーリーラインはかなり丁寧。それだけに主人公であるエレーナをはじめとした面子の様子を、序盤からしっかり見ていくほど感情移入が深くなっていきましたね。全体的に陰鬱な空気が漂っているだけに、それを少しずつ払しょくさせていく過程が大きな見どころになっていたと言えます。(そしてメインキャラの雰囲気が険悪なだけにアレクセイのバカみたいな明るさが貴重な清涼剤になってくれましたね)
そしてそれぞれが抱えた過ちやそこからくるトラウマを乗り越え、ヒーローに近づいていく物語としては実に秀逸でした。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』での過失や妻子との確執を経験したジョン然り、過去に引きずられた彼らが街中で人々を救出シーンは特に胸にきましたね。この辺りの描写の根底にはヒーローに相応しい精神性が秘められており、他人のために自分を省みない無謀さはまさしくその要素を担っていたと言えます。同時に後述のヴァルの件のような、自分の利益のみに走る連中は最終的に損をする流れも倫理的で好感が持てます。
何より本作のヴィランになるかと思ったボブ/セントリーを救うまでの過程が印象的。誰とも心が通じず孤独だと自分を追い込んでいた彼の心の中に、エレーナたちが入り込みその心を癒していく終盤は静かながら見応えがありました。ボブのもう1人の人格が彼の暴力性を引き出そうとする中で、仲間が身を挺して抱き留めることで収束していくので不思議を心が暖かくなってきた次第です。ある種のセラピーを見ているような感覚ですが、それがまたバラバラだった彼らがチームになるのに必要だったのも読み取れます。
ただまぁ個人的にはヴァレンティーナ(ヴァル)の処遇やタスクマスターの扱いに関しての不満も少なからずありますね。前者は弱みを握ったとはいえヴァル自身はそこまで痛い目を見ていないのでスッキリしませんし、後者は序盤にあっさり死んでそのまま何事もなく退場ということで肩透かしも良いところでした。(こういう予告詐欺についてそこまで忌避感はないものの、劇中でもう少しフォローが欲しかったです)サンダーボルツ改めニュー・アベンジャーズ結成のオリジンとしては文句ない一方でどこか煮え切らない部分もあるので、次回作以降に彼らのド派手な活躍に期待したいと思います。
(余談ですが、セントリーの別人格が暴走した際の人間を影にして取り込むシーンは個人的にはかなりお気に入り。監督のジェイク・シュライアー氏が広島原爆で残された人の影から視覚的な着想を得たという話*2もあって、原爆の話を聞いてきた日本人としての根源的な恐怖を呼び起こされた気分です)
ファンタスティック4:ファースト・ステップ
最後は夏に公開されたファンタスティック4。これまで20世紀FOXで制作されていた作品をMCUのためにリブートした本作でしたが、本作は家族ヒーローとしての側面を強く出した作品となっていました。ファンタスティック・フォーの映画はこれまでもいくつか見てきましたが、個人的には本作が最も深く突き刺さりお気に入りとなりましたね。(3作の中では唯一過去作との繋がりがないので、事前知識なしで見られる作品としてもおすすめしたいところ)
何といっても家族のため、ひいては地球に住む人々のために作戦を立てて立ち上がる主人公たちのストーリーがシンプルかつ感動的だったのが見事。リードとスーの間に生まれた子ども・フランクリンが狙われる中で、我が子と地球両方を救うために奮闘する姿は筆者自身が考えるヒーローの在り方としてもかなり理想的でした。最初は批判していた民衆が説得を受け協力的になる展開も気持ち良く、多少の言い争いはあれどスムーズに話が進むので鑑賞中はそこまでストレスを感じなかったです。
それでいてチームそれぞれが家族のためにその身を張れるキャラ造形が印象に残りました。その最たる例がスーで、1人でギャラクタスを押し込むシーンには仰天しつつも感動しましたね。1人だけ強すぎる気がしなくもないですが、息子を救おうと力を振り絞っていることは明白だったので設定上に文脈の説得力が生まれていたと言えます。総じて本作は広義の意味での「家族の愛」がテーマなのだと感じられました。そして究極の選択を迫られる時、苦悩し自分を犠牲にしながらも最善を目指す作品はやはり気持ちいいものです。
他にもジョニーやベン、果てはハービーと登場人物全員の活躍が満遍なく描かれていたのもテンポの良さに繋がっていました。特にジョニーは研究関連では蚊帳の外だった中、1人でシルバーサーファーの秘密を探り当て説得していく大金星を挙げたので感嘆せずにはいられません。おかげでラストにサーファーが身を挺してくれるラストもスピーディーながら納得のいく仕上がりになっていましたね。(ここでサーファーもまた「家族のために戦ったヒーロー」として描かれていたのがここすきポイント)本作のサーファーが女性であることに最初は驚いたものの、その理由もハッキリわかり理解した次第です。
ストーリー以外ではまず世界観の構築が特徴的。予告で感じられたレトロフューチャー感は期待以上の出来で、一昔前の近未来イメージをこれまた見事に再現していたと言えます。街中は劇中の時代である1965年らしい絵面だったのに対し、バクスター・ビルや宇宙船に空飛ぶ車とファンタスティック4周りは超技術を駆使しているギャップがたまりません。それでいて古臭いといった印象は抱かせずに、この世界(アース828)はそういうものだと観ている人に理解させてくれました。日本人的な感覚になるのですが、言うなれば『ドラえもん』に近いニュアンスなのが絶妙だったと思います。
あとはやはり最大の敵・ギャラクタスの巨大感についても触れておきたいところ。惑星を喰らう怪物としてその大きすぎるビジュアルをストレートに描いてみせたのはかなりの注目ポイントです。街中を高層ビルよりも大きな巨人が闊歩するシーン、下手するとギャグになりかねないようなシチュエーションをしっかり威圧感あるものに仕上げていたので大いに感心させられました。チームメンバーそれぞれの能力を活かしたアクションに関しては不十分に感じたものの、この「戦ってもまず勝てない脅威」をどうにかする過程のためだと思えば納得がいくものです。
まだまだ続くMCUですが、次は待ちに待った『スパイダーマン』ということで非常に楽しみにしています。来年夏公開なのでまだまだ先ですが、その分じっくり制作してくれることに期待したいですね。(主演のトム・ホランドさんの怪我などハラハラするニュースも聞いただけに余計に無理しないでね!という気持ちになります)
またサンダーボルツのラストでファンタスティック4が合流するフラグが立ったことにも触れておきたいところ。てっきりギャラクタスに敗れて逃げてきたのかと思っていましたが、ポストクレジットを見る限りフランクリンを攫ったドゥームを追ってアース199999に来たのだと思われます。そこから如何にして『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』に繋がっていくのか、こちらも心を躍らせながらキチンと待っていく所存です。
ではまた、次の機会に。
*1:また後述のロスといった登場人物もあって『インクレディブル・ハルク』の続編としての側面も見て取れる。
*2:リンク先の記事(https://theriver.jp/thunderbolts-shadow/)を参照。
