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2022年アニメ映画簡易感想 その6

 

 

 2023年になっても映画を観たいと思っている今日のこの頃。つい先日『かがみの孤城』を観に行って感動するなど、自分なりに楽しい映画との付き合い方を送っています。現在公開中、または今年公開予定の映画の中からどれを観るか……それを考えるのはとても楽しいですね。

 ともあれ今回は去年の内に観たアニメ映画に関しての感想になります。例によって公開と視聴から大分経ってしまいましたが、色々と考えて何とか書き上げることが出来ました。(特にワンピースがめっちゃ疲れた……)今更なところもありますが、読んでいただければ幸いです。

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 というわけで以下、今回の映画感想です。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 


ONE PIECE FILM RED

 人気漫画『ONE PIECE(ワンピース)』の劇場版。去年の夏に公開されてから、今年の1月末に終映が決まったというとんでもないロングランを遂げた映画でもあります。本作のヒロインである「ウタ」があのシャンクスの娘、そしてルフィの幼馴染という設定が話題を呼んだことも記憶に新しいです。僕にとっては『珍獣島のチョッパー王国』*1以来となる映画館に足を運んでのワンピース映画体験で、去年の夏頃に観に行きました。その結果待っていた衝撃的なストーリーには、当時唖然となりましたね。

 まず冒頭から海賊の蛮行と被害に遭った人々の嘆きがナレーション込みで説明され、その後映画のメインであるウタを通して大海賊時代の負の一面を描いていく作風が衝撃的。暗い作風は『FILM Z』という前例がありますが、あちらと比べてもネガティブで仄暗い話が展開されていたと思います。本作のラスボスである「トットムジカ」がワンピースでは珍しい「”負の情念”という概念的な存在」だった点も、本作の異質さに拍車をかけていましたね。そんな自由の象徴でもある海賊がもたらす被害の恐ろしさ、そうして苦しい日々を強いられている市民の痛ましさを一心に受けたウタのキャラクターがこれまたエゲつなかったです。

 何といってもウタが抱えている絶望の深さに驚愕させられます。一見して無邪気で優しい「世界の歌姫」ですが、その実上述の助けを求める人々と過去の罪の意識の板挟みにあっている状況は見ていて胸が苦しくなりました。その結果「肉体は死んでも夢の中で心が生き続ければみんな幸せ」という狂気的な死生観を語るようになってしまったことにも絶句する他ありません。(また、この状況で逃げ出したい!と思いつつもそれをしない責任感の強さも彼女の哀れな境遇を一層強めています)孤独の中で歌うことで人々と繋がったはずが、それが彼女を追い詰めてる結果を招いてしまった事実に、ウタという少女のポジティブからネガティブへと変貌する悲劇性を感じ取りました。
 そんなウタを救うためにルフィやシャンクスが奮闘するのですが、それでも力尽きるという最期には本当に驚きました。何かを察して前を向き直すルフィの表情を映してからエンドロールが流れた時の呆気に取られた感覚は、今でも忘れることは出来ません。みんなを夢の世界から解放して救い、シャンクスとの再会を果たしたことでウタ自身も救われたと思う一方で、どうしようもないやるせなさに襲われてしまいます。ルフィとの気兼ねの無いやり取り、そして父・シャンクスへの愛憎入り混じった感情を念入りに描いていたからこそ、このウタの生涯に感情移入することが出来たと言えます。

 

 といった風に冒険ファンタジーとしてのワンピースは鳴りを潜めていた映画でしたが、かといって熱い場面や笑える場面が全くなかったわけではありません。まず本作の要である「歌」の要素がお見事で、Ado(アド)さんの歌声によるウタのライブシーンはどれも素晴らしく没入感がありました。歌詞に関してもウタの心情を的確に描いたものばかりだったこともあり、上述の彼女のキャラクターの掘り下げに一役買っていたと思います。

 ウタ以外でも、意外な組み合わせによるほのぼの要素が盛りだくさんでした。特に夢の世界で「サニーくん」というマスコットになったサニー号が、同じく小さくなったペポとブルーノでマスコットトリオを組んでいたのが可愛らしかったですね。(個人的にはバルトロメオの球体バリアに閉じ込められたルフィの上を、サニーくんが大道芸の如く乗っていた様子に萌えました)彼らに限らずコビーやブリュネと協力するなど、本編でも珍しい関係が築かれていたのがまた面白かったです。
 そしてワンピースといえば忘れてはならないのが戦闘シーン。特に本作では長いことまともな描写がなかったシャンクスら赤髪海賊団が戦う姿には待ってました!といわんばかりにテンションが上がりました。ラッキー・ルウが肉弾戦車みたいな技を披露したり、何か口から波動砲みたいなものを出す船員がいたりと短い出番で驚くべき戦い方を披露する面々に終始驚かされましたね。何よりシャンクスの戦いや本気の覇王色は最高の一言。大事な家族を救うためなら世界とだって戦える、四皇シャンクスの強さを堪能出来て大満足です。

 もちろんルフィ率いる麦わらの一味も負けてはいません。中でも本作でルフィはウタを徹底して殴ろうとしないのもあって中々戦う場面に恵まれませんでしたが、後半から彼女を救うために本気で戦うシーンに惚れ惚れさせられました。幼馴染のためというのもあって、騒ぐことはあったものの一貫したカッコよさに溢れていたと思います。そのうえシャンクスと共に最後の一撃を放つ瞬間、話題のギア5(フィフス)らしき姿を見せた時はびっくりしましたね。ウタに麦わら帽子を託されるシーン含めて、ルフィのどこか大人びた雰囲気にあてられてボロ泣きさせられました。

 他にもカタクリやオーブンといった意外なキャラとの共闘や黒幕かと思いきや最後まで良い人だった「ゴードン」さんなど見どころが本当に多い映画でした。(中でもウソップが父・ヤソップをどう思っているのか察せられる発言が印象的)そしてルフィの海賊王になる夢に「新時代を作るためだ」という果てが発言された点や、五老聖が口にした「フィガーランド家」というワードといった原作本編で今後回収されそうな伏線にもワクワクさせられます。気持ちが沈む要素もありましたが、映画館の大スクリーンで観て良かったと思える、素晴らしい映画でしたね。

 

 

映画『ゆるキャン△

 きららアニメの一角『ゆるキャン△』の劇場版。本作は何といっても本編から数年後、リンやなでしこといった主要キャラが成人してそれぞれ働いている将来の出来事を描いているのが最大の特徴でした。見た目のデザインはさほど変わっていないように見えますが、学生時代の初々しさが消えてみんなどこか落ち着いた雰囲気を醸し出しているのが冒頭から伝わってきます。リンは雑誌編集部なのに対してなでしこはアウトドア用品店の店員と、それぞれ就いている仕事に関してもまた“あり得そう”なのが絶妙でしたね。(一方で老犬になってしまったちくわに哀愁を感じて涙ぐむことに……

 そんなリンたちが山梨の広い土地をキャンプ場を作ろうとするのが本作の大筋。これまで何度もキャンプの楽しさ・気楽さを味わってきた少女たちが大人になり、今度は自分たちでキャンプが楽しめる空間を提供しようとする構図には唸らされました。キャンプの“楽しい”を伝搬させてきた彼女たちの成長後の物語としては、これ以上ない展開だと言えます。

 仕事とのすり合わせなどに苦労するものの、何とか時間を作って集まり土地を整備していく過程が何とも牧歌的です。友人関係を大人になっても続け、かつてと同じような感覚で協力していく学生時代の延長線上のような光景にはほっこりさせられましたね。良い大人が揃いも揃って「作業着戦隊!」とかやってるシーンは中々に痛いですが。放置されていたロボット「ジンジャーくん」で野生の動物を探すなど、コミカルな描写も多くて実に癒される前半でした。

 

 ただそんな順調にはいかなかったのが後半の展開。作業の途中で見つかった土器をきっかけに、キャンプ地の計画が白紙になりかかる展開はかなりショッキングでした。ここまでの頑張りを横から全て奪われてしまったかのような喪失感、どうしようもない感覚がスクリーン全体から伝わってきましたね。大人になったことで理解出来る「どうにもならない現実」を突き付けられ、しばらくの間暗い表情を見せるリンたちの様子に見ているこちらの気分も沈んでいきました。

 他にも小学校教師になったあおいが慣れしたんだ学校の閉校式を見守る過程も印象に残りました。しばらくの間だけでも思い出深い場所が諸々の事情で無くなってしまったことへの喪失感……それを目の当たりにして憂いを見せるあおいの無理した「うそやでー」には思わず涙ぐんでしまいましたね。大人になって何でも出来ると思ったら、様々なしがらみや理不尽を知っていく展開に切なさを覚えずにはいられなかったです。

 しかしそれをネガティブに捉えず、「様々な人たちに支えてもらっている」ことに着目していくのが素敵でしたね。仕事の都合を合わせてくれた同僚や先輩たち、協力してくれる多くの人たちに助けてもらっているのは大人も子どもも変わらないという答えを出すポジティブさは、ここまでの展開を見た身としてはあまりにも勇気付けられる話でした。

 その後キャンプ場の問題を遺跡観光とキャンプを同時に楽しめる施設にすることで解決していく展開にも膝を打ちました。変に片方を妥協するのではなく、上手いこと見方を変えて共存させていく道を選ぶ辺りが実に素晴らしいです。そうして完成させ、オープン当日のトラブルなどがありながらも家族や友人たちと協力し、無事多くの人に楽しんでもらうキャンプ場を開くことに成功するラストには一転して感動させられました。大人になることで味わうほろ苦さを乗り越え、かつての楽しさと伝えていく……素晴らしい余韻を残してくれる映画でした。

 

 

 ワンピースといえば現在進行形で原作が盛り上がっていることをよく耳にします。長年の謎だったベガパンクがついにその姿を現したことや、サボが色々と大変なことになっている状況を断片的にですが知って驚いている真っ最中です。僕はワンピースは単行本で一気に読む派なので詳しいことを知るのはだいぶ先になりそうですが、その内しっかりと読んで、最終章に向かっている本作を楽しんでおきたいですね。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:本作は「東映アニメフェア」として公開されたワンピース映画で、実は筆者は同時上映である『デジモンテイマーズ 暴走デジモン特急』目的で観に行ったものだったりする。