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映画 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン 感想

とびこめ!王座をかけた大冒険!

自分の信じる道のため、王様たちは今結集する

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 先日公開された『王様戦隊キングオージャー』の夏映画。『仮面ライダーギーツ』との同時上映である本作を例年と同じように観に行ったのですが、キングオージャーの濃密な内容にまず面食らうことになりました。上映時間が30分くらいながらかなりスケールの大きな物語となっており、これを短い時間でまとめたことに驚きと感銘を覚えます。戦隊映画の上映時間の短さには何かと思うところはあったのですが、本作は今までの中でも特に30分くらいで収めるにはもったいない!と思える名作でしたね。というわけで今回はそんなキングオージャーの映画の感想を書いていきたいと思います。

 

metared19.hatenablog.com

↑同時上映のギーツの感想は上の記事を参照。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • 壮大な死の世界での王様たち

 こちらは上述の通り戦隊映画のお決まりとして30分と短めの上映時間でしたが、いざ観てみると30分とは思えないほどの密度に度肝を抜かれました。テレビシリーズ本編でラクレスに勝利しシュゴッダムの王になったギラが、死の国「ハーカバーカ」で仲間と共に戦うというストーリーそのものはある種いつも通りながら、各キャラのエピソードをキッチリ描きつつ終盤の対決までをハイテンポで持っていく内容は見事の一言。おかげで息つく暇もなく見続けることが出来ました。ハーカバーカの世界を本編同様のLEDウォールとフルCG技術で表現していたため絵面も壮大で、良い意味で戦隊映画の中でも珍しいスケールの大きさを魅せていたと思います。

 ストーリーに関しては主要メンバーそれぞれのエピソードを濃密に描いていたのが特徴的。主人公のギラは「どのような王になりたいのか」と劇中の戦いを通じて自問自答していき、他の王様たちは死の国で自分たちの過去と向き合う様子が展開されていました。中でも後者の死者との対面パートが印象に残るものばかりで、それぞれの後悔や葛藤に触れつつそれを乗り越えていく過程には何度も胸を打たれましたね。両親とのお別れを叶えたヒメノや裏切りを超えていくカグラギなど、各々異なる過去や個人に対する付き合い方を魅せた点は我の強い王ばかりが揃った本作らしかったです

 

 

  • 邪悪の王が目指す地獄を征く王道

 そしてギラに関しては先祖でもある「ライニオール・ハスティー」と幼馴染の「デボニカ」との関係を知る中で、「小さな幸せを守る王になる」という選択を取るのが印象的でした。それも多数の幸せを優先するライニオールに対して「この世は地獄だ」と断定し、その中で生きる民たちが糧にしている1つ1つの小さな“幸せ”こそが守るべきものだと言い切る場面は驚きの連続です。一見すると地獄のくだりはネガティブに聞こえますが、弱い国民として生きてきたギラだからこそ言える言葉であるのは明白。幸せを享受出来る強者の王になるのではなく、あくまで弱者に寄り添う王になろうとする信念をギラが確立させていく本編を見ていると納得できるものがあって、物語として実に面白い展開でした。

 そうして集結した王様戦隊がライニオールと戦うわけですが、ライニオールも決して悪ではないというのが本作のちょっとしたキモ。彼もまたチキューの未来を案じて、人々を救うために戦いに身を投じようとした王様の1人だったと言えます。そんなお互いの譲れぬ考えをぶつけて、自分の正義を証明しようと覇を競い合ったのが今回の戦いであったと言えましょう。戦闘シーンの激しさとここぞという場面で流れるBGMの壮大さが合わさることで、クライマックスの盛り上がりも半端なかったです。(去年に続いてロボ戦が無かったのが不満でしたが)

 最終的には最終的には王様戦隊が勝利してギラが即位することで完結するのですが、ライニオールが語る「チキューの危機」に関しては全く解決していない点には一抹の不安を抱えそうになります。しかしデボニカがケーキをほおばるシーンでギラが大切にした小さな幸せが守られたのがわかるので、読後感そのものは非常に爽やか。今後未来がどうなるのかわからないからこそ前に進む、ギラの王道そのものを表しているような映画でもありました。総じてこれまでの戦隊映画の中でもトップクラスの面白さで、30分にするにはもったないくらいの内容でしたね。何らかの形で十数分追加したディレクターズカット版とか出してくれないかな……

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

ギラ/クワガタオージャー

 ご存じ『キングオージャー』の主人公にして邪悪の王。今回はラクレスを下して王位に就いたギラの目指す王についてが描かれていました。上述の通り人々の小さな幸せこそ守るべきという考えを掲げるのですが、その過程でこの世を地獄と例えるセンスは中々のもの。邪悪の王を演じながら、国や王はあくまで民のためにあるスタンスを貫いているギラらしい言い回しです。そのうえで未来への不安を抱えながらも、迷いのない表情で戴冠するラストでギラが本当の意味で王様になったことを強く実感させられます。

 そんなギラの王道を確立させていく物語であったのですが、他にはデボニカとの関係にニヤニヤさせられましたね。行方不明になった幼馴染に対する無邪気な表情と、彼女を守るために気を引き締める邪悪の王としての表情がデボニカの存在で一層際立っていたと思います。というかこの2人の幼馴染は結構気ぶれるところがあるので、テレビシリーズでも何かしらの形で見てみたいです。

 

 

ヤンマ・ガスト/トンボオージャー

 ご存じンコソパ総長。IT名との技術力に優れたインテリヤンキーらしく、ハーカバーカの謎を科学で解明しようとする様子が印象的でした。中でも如何にして元の世界に変えるかで四苦八苦するシーンが愉快で、側近のシオカラをウソ発見器の電撃で一旦死なせて扉を開かせる(なおシオカラのせいで閉め出される)くだりには大笑いしてしまいましたね。本作のギャグを一手に担っていたと言えます。

 一方でジェラミーを除くと、王様たちの仲で唯一死者との対面が描かれなかったのが意外でした。自分にパソコンを教えてくれた老人が出てきそうだと予想していたのでちょっと意表を突かれた気分ですね。しかしここまでの科学を信ずるスタイルや周囲を省みない姿勢を考えるとそうならないのも納得ではあります。過去を振り返らず、前だけを見据えるのはまさにヤンマ総長らしいと思います。

 

 

ヒメノ・ラン/カマキリオージャー

 ご存じイシャバーナ女王。今回は神の怒りで悲劇の死を遂げた両親との再会を果たすという感動的なシチュエーションを見せてくれました。ヒメノの過去に関しては以前から同情を寄せていたので、この再会には早くも涙ぐんでしまいましたね。いつもわがままな女王然としているヒメノが、両親を前にした時は幼い少女のような態度に変わるのがまた涙腺に来ます。

 そうして両親に死の国で共に暮らすことを提案されるものの、それを突っぱねる強さを見せたのも流石。自分の欲しいものはまだまだチキューにたくさんあると、裏を返せば女王としての責務を果たそうとする姿を見せてくれたことに感銘を受けました。ずっと果たせなかった両親とのお別れを済ませ、戦いに向かうヒメノの毅然とした振る舞いにボロボロ泣きっぱなしになりましたよえぇ。

 

 

リタ・カニスカ/パピヨンオージャー

 ご存じゴッカン最高裁判長。かつて自分たちが裁いた罪人たちの亡霊が襲い掛かってくる可哀想な目に遭いながらも、彼らから目を背けない裁判長としての矜持を見せたのが最高でした。いつもの絶叫がギャグではなく本気の叫びになっていたり亡霊をもっふんに例えたりと笑ってしまっていいのかちょっと困る場面もありましたが、概ね裁判のシビアさを取り上げたシリアスさが出ていたと思います。

 その後は亡霊に耳を傾け、彼らの感謝の言葉を耳にする解決シーンが見事でしたね。自分は恨まれているとばかり思っていたか弱い少女が、それだけではないことを知る構図はこれまた感涙しそうになります。何よりモルフォーニャが優しく声をかけてくれるのが素敵で、本編10話を彷彿とさせる関係に余計胸に込み上げてくるものがありました。

 

 

カグラギ・ディボウスキ/ハチオージャー

 ご存じトウフの大殿様。いつものように人を食ったような態度を見せる一方で、かつて自分が打倒したトウフ前王そして天野浩成のママ「イロキ」を前に珍しく動揺を見せる場面が印象に残りました。笑顔が消えて険しい顔つきになる辺りに、これがカグラギの本当の顔なのだろうと何となく察せられますね。それほどまでにイロキが彼にとっての鬼門であることも伝わってきます。

 そんなイロキの幻影に翻弄されながらも、最終的に振り払ってからはいつものカグラギに戻ったことにホッとしました。裏切り者の末路について言及されていましたが、それすら国と民のために利用しようとする豪胆さは実にカッコよかったです。演者として見て場合、メインキャラ屈指の演技力が映画でも発揮されたと言えるのがまた面白かったですね。

 

 

ジェラミー・ブラシエリ/スパイダークモノ

 ご存じ全てを統べる狭間の王様。今回は冒頭と戦闘シーン以外ではほとんど出番がなかったのですが、戦隊の追加戦士の夏映画での活躍が控えめなのはいつも通りなのでそこまで驚くことでもありませんでした。(追加戦士役の人は毎回本編よりも先に映画の方を撮影すると聞きますし、やはり撮影スケジュールの都合などがあるのでしょうか

 とはいえ冒頭ギラにどのような王になりたいのか問いかけたり、ヤンマに付けた糸が色々と役に立ったりとここぞという場面で存在感は放っていたと思います。また何だかんだで追加戦士がハブられずに合流するだけでもありがたい限りです。

 

 

デボニカ

 本作のキーパーソン。ハーカバーカの案内人ですがそれ以上にギラの幼馴染という、彼のヒロインとしてこれ以上ない設定の持ち主で驚かされました。その設定の数々とギラとの子どもっぽいやり取りからONE PIECE』の映画に出てきたウタを思い浮かべてしまったり……「王様やめなよ」のくだりとかモロにウタだな、と思ったのは僕だけではないはず)佐倉綾音さんの声も相まって、歌声と共に現れる謎の少女の印象を残してくれたのもグッド。

 そんな彼女を救い守るのが本作の目的になっていたのも面白かったですね。ライニオールに命を捧げるために生きてきた少女が、ギラという信頼出来る王を見つけて彼についていく流れは王道ながら興奮出来るものがありました。そしてラストシーンで誕生日ケーキを美味しそうに食べるデボニカは、まさにギラが守ろうとした「小さな幸せ」そのものだとわかるのが本当に最高だったと思います。

 

 

ライニオール・ハスティー

 本作の敵キャラ。2000年前の英雄にしてシュゴッダム初代国王という触れ込みでしたが、なるほど納得の存在感に満ち溢れていました。自分の取る道を一切疑わず、強者として民と世界を守ろうとする責任感とプライドはまさに絶対的な覇王といったところ。中村獅童さん演じる変身前の姿の時点で強そうでしたが、王“骸”武装した「怪人態」もまた威圧感が凄まじかったです。

 一見すると暴君にも思えますが、彼なりの正義を以て世界を守ろうとしているので彼に対してそこまで敵意とかは覚えませんでしたね。チキューに迫る危機*1を止める気概が感じられ、だからこそギラたちとお互いの正義をぶつけ合う戦闘が映えたと言えます。6人がかりで何とか退け認めさせたこともあり、ライニオール自身の格も決して落ちずに終わってより彼のことが好きになりましたね。

 

 

 というわけで映画キングオージャーの感想でした。普段戦隊の感想を書くことはあまりないのですが、本作があまりにも面白かったので思わずギーツと平行して書いてしまいました。おかげでかなり大変でしたが、その分本作に抱いたものを書き残せたと思います。この後は毎回凄まじい勢いで話が進むキングオージャーのテレビシリーズの方も見続けて、本作との繋がりに浸っておきたいですね。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:余談だがギラにこの危機を説明する際、「チキューに謎の隕石が落下する」イメージ映像が流れるのが印象的。もしや本編では後のバグナラクとはまた別の宇宙から来た存在と戦うだろうか……?