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映画 仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐 感想

白黒つけようか────

この化かし合いに

力も知恵も運も足りなくても その勇気で守るもののために

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 先日ついに公開された『仮面ライダーギーツ』の夏映画。『王様戦隊キングオージャー』との同時上映であり以前から楽しみにしていた本作ですが、いざ映画館に足を運んで観たところ、コミカルながらも熱いストーリーに胸打たれることになりました。序盤はギャグ満載で笑わせられながら、中盤にかけてから徐々に物語がヒートアップしていく様子に手に汗握り、最終的には爽やかな終わりにスッキリする……そんな素敵な作品だったと言えます。何より本編のシリアス気味な空気感とだいぶ異なるのに、見終わるころには「これは間違いなく仮面ライダーギーツだ」と確信出来るのが面白かったですね。というわけで今回はそんな仮面ライダーギーツの映画の感想を書いていきたいと思います。

 

metared19.hatenablog.com

↑同時上映のキングオージャーの感想は上の記事を参照。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • 勇気と想いが紡ぐ“心”の強さ

 まずは本作の大まかな感想から。*1夏映画の目玉であるライダーの映画ですが、本作はかなりコメディ寄りのストーリーが展開されているのが特徴的でした。本作の敵キャラ「メラ」と「メロ」によって英寿が4人に分かれ、それらを巡って戦う前半が何よりも印象に残ります。いつもと異なる性格の英寿のキャラに戸惑いつつも、それらに振り回される仲間たちの様子だけでクスっときましたね。また分割された各英寿も実に個性的かつコミカルで、主演の簡秀吉さんの演技の幅はここまで広いのか!と驚かされる場面でもありました。

 それでいてギーツのテレビシリーズ本編に通じる「願い」と「想い」の物語として描かれていたのも大きな魅力。4人の英寿の内3人の持つ表面的な力の身を求めた敵に対して、願いを叶えるのに最も大切な“心”を持って立ち向かう展開にはグッときました。上述の展開で劇中の人物と視聴者が「こんなの英寿じゃない!」と思った後に、残りカスと揶揄された“心の英寿”が勇気を持って戦う姿を見て我々の知る英寿そのものだと確信させるシーンは特に胸熱です。そして英寿が仲間たちに託された想いを束ねることで「仮面ライダーギーツワンネス」に変身するシーンの感動は、本編で仲間たちとの関係を築いてきたことを思うとより深いものだと感じられますね。

 

 

  • オーディエンスとなって叶える理想

 また本作は端的に言えば「視聴者参加型」テイストだったのも大きなポイントです。最初ただの鈴木福ジーンが映画を観ている我々をオーディエンスの1人として設定し、劇中と映画館の境目をシームレスにしてくれる演出が印象的です。この時点ではただのお遊びだと思っていたのですが、終盤ジーンがヒーローショーのように視聴者たちに応援を呼び掛けるシーンで膝を打ちました。「ギーツワンネスのコアIDに願いを望む想いを込める」という形で英寿に力を与える構図は中々に秀逸でしたね。(入場者特典のコアが実はプリキュア映画でいうところのミラクルペンライトの役割だったというわけです)

 何より本編で最近明かされた「多くの強く願う心が合わされば合わさるほど、英寿の創世の力で叶えられる範囲が広がる」設定と見事にマッチしているのも素晴らしいです。敵が自分たちの悦楽のために歪めた世界を、映画を観ているみんなで理想の世界に変えていくという、ある意味でヒーローらしい前向きなストーリーだったと言えます。英寿1人では果たせなかったことを、仲間と共に我々が力を合わせる内容は思わず童心に返ってしまうほどに胸に来ましたね。本編でもこのような明るい展開になるだろうと期待しつつ、映画のギーツの明るさには大いに楽しませてもらいました。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

浮世英寿/仮面ライダーギーツ

 ご存じ『ギーツ』の主人公。しかしテレビシリーズで見慣れている不敗のデザ神・浮世英寿の活躍はほんの序盤だけで、以降は4人に分割された英寿がメインとなっているのが本作の面白いところです。バックルを投げたりと何でもかんでも力技で解決しようとする「力」の英寿、含蓄の深い名言を引用しびっくりするくらい体が弱い「知恵」の英寿、あらゆることを幸運で解決しようとする楽観主義の「運」の英寿……いずれもこれまでの英寿像とは全く異なるキャラクターで困惑と笑いを同時に味わうことが出来ました。そしてこれらを見事に演じ分けた簡さんの実力にも舌を巻くばかりです。

 しかし肝心だったのが最後に残った「心」の英寿で、戦う力を持っていなくても決して逃げずに困難に立ち向かう姿勢はまさに英寿そのものでした。不敗のデザ神を形作っているのは力でも知恵でも運でもなく、願いのために戦い続ける勇気にあることがわかりやすく示されていたと思います。さらに英寿1人の力では立ち向かえない戦いを仲間から託された想い、そして視聴者からの想いの声援を受けていつものギーツらしいスタイリッシュさを取り戻していくのが素晴らしかったです。結局いつもの英寿の出番はほとんどなかったものの、その分「浮世英寿の神髄とは何か?」「願いを叶えるために必要なものは何か?」という、本編に通じる答えを魅せてくれたと言えますね。

 

 

ツムリ

 ご存じデザイアグランプリナビゲーター。今回は後述の景和たちと同じように4人の英寿に振り回される様子が描かれていて大変可愛らしかったです。他のプレイヤーに対してはいつものように丁寧なのに、運の英寿といった変貌した彼を目の当たりにした時のショックを受ける姿は何とも人間的。(英寿との家族設定は未だに続いているのでしょうか)この辺りから彼女が本編での苦難を経て、心を知ってより魅力的になったツムリであることが何となく察せられますね。

 そんなツムリですがやはり戦闘要員ではないので出番そのものは少なめ。しかし英寿と2人生き残った状態で彼にバックルを託すなど重要な役割を果たしてくれたので存在感はありましたね。逃げ出したメロにドロップキックをかますアグレッシブなシーンも愉快でしたし、何だかんだで活躍してくれたと思います。

 

 

桜井景和/仮面ライダータイクーン

鞍馬祢音/仮面ライダーナーゴ

吾妻道長仮面ライダーバッファ

 ご存じ英寿と共に戦ったメインライダーたち。彼らもまたツムリと同じく英寿に振り回される役目を負いつつ、必死に戦い抜いてくれていました。前半は各英寿のフリーダムさに翻弄されまくる様子が印象的で、中でも力の英寿の脳筋っぷりに唖然となる道長は実に面白かったですね。指パッチンまで含めたギーツの変身を力の英寿がするよう誘導したり、肩車してきた彼に困惑しつつも何とか戦うなど普段の彼からは想像も出来ない苦労人ぶりが目に焼き付きました。

 一方で「英寿なしで戦えるのか?」という問題にぶち当たりながらも、メラたちの世界滅亡に抗う懸命な姿も見せてくれました。これまで英寿に頼りっきりだったという視聴者の多くが感じていたことに葛藤しつつも戦い、心の英寿に想いを託し彼と共に戦うことでその問題を解決していく展開は実に気持ちが良かったです。個人的にはタイクーン・ブジンソード&バッファでクロスギーツを食い止める戦闘シーンが印象的で、2人の絶妙なコンビネーションは本編を観ているとより感慨深いものを覚えます。そういった意味で彼らもまた、本作の主人公と捉えることが出来るでしょう。

 

 

晴家ウィン/仮面ライダーパンクジャック

那覇冴/仮面ライダーロポ

丹波一徹/仮面ライダーケイロウ

 ご存じデザグラプレイヤーの中でも善良な者たち。上の3人と比べると若干印象が薄いものの、それでも同じように頑張ってくれていました。全員共に戦った経験があるので、いきなり登場して英寿たちを助けても割と違和感がないのが良かったですね。最終的に彼らもまた本作の仲間たちに入ることが出来たのだと思うとちょっと嬉しくなってきます。

 中でも丹波お爺ちゃんが心の英寿を送り出す活躍が素敵でした。他の面々が残った英寿が何なのか困惑して縛り付ける中で、唯一彼が譲れないもののために戦っていることを見抜いていたように描かれていたので驚きも大きかったです。このシーンもあって後の英寿の活躍に繋がるので、意外と見る目があるなぁ……とちょっとこのお爺ちゃんを見直すきっかけにもなりましたね。

 

 

ジー

 ご存じ未来人。本作ではオーディエンス席で映画を観ている我々と共に英寿たちを応援するという立場で、実質的にはヒーローショーのお姉さんみたいなポジションでした。仮面ライダー大好きぶりを隠さない演者そのままな姿は相変わらずですが、劇中と映画館を繋げてくれる重要な役回りでもあったと思います。本編と同じようにギーツ大好きながら最終的に仮面ライダー箱推しになるオチも含め、良い意味で物語の清涼剤になっていましたね。それはそれとして早く本編でも戻ってこい。

 

 

メラ/仮面ライダークロスギーツ

メロ

 本作の敵キャラ。「神殺し」の異名を持つ未来人最悪の指名手配犯兼「世界滅亡ゲーム」を仕掛けてきた張本人として、終盤まで物語を引っ搔き回していた様子が印象に残りました。何と言ってもおちゃらけたキャラクターが強烈で、ふざけた態度を取りながらやっていることは恐ろしいギャップが彼らの邪悪っぷりをこれでもかと際立たせていたと思います。(メラ役のチョコレートプラネット・長田庄平さんの演技力にも脱帽)どこまでも自分たちが楽しければそれでいい、といったスタンスで時には味方を切り捨てる選択を取るのがまた悪役らしかったですね。

 さらに彼らが明かしたギーツ世界の未来と未来人の真実には衝撃を受けました。未来人がデータ人間であることは以前から予想していましたが、地球が既に消滅したことやその地球を滅ぼした原因の異常変異植物からジャマトが造り出された事実は中々にショッキングです。そしてそんな境遇だからこそ、刺激を求めてデザグラを始めた未来人に説得力が生まれていましたね。その筆頭でもあるメラとメロが心の英寿を残りカス呼ばわりする=心を軽んじることが敗因となるので、ある意味で未来人への皮肉に満ちている存在だったのでしょう。

 

 

仮面ライダーガッチャード

 毎度おなじみ次回作ライダーの先行出演。劣勢の丹波お爺ちゃんの元に現れてくれたのは良かったのですが、まさかの顔が付いた機関車姿で登場した時は目が飛び出そうになりました。そこから事前告知で見た人型の「スチームホッパー」に変身し、錬金術師らしい物体の組み換え能力でジャマトたちを撃破していく様子は実に興味深かったです。(あと名前の発音がガッ↓チャード↓だったのがちょっと意外)

 性格は明るく陽気で高校生らしい若さに溢れていましたが、丹波お爺ちゃんを最初悪い奴だと思い込むせっかちな面が何とも面白いところ。(お詫びにくれたカードがギーツワンネスに変身する布石になったのですが)相棒の「ホッパー1」の言うことを信じてお爺ちゃんを助ける辺り悪い子ではないのですが、勘違いしやすいキャラにどこか危ういところが見え隠れしている気がしましたね。果たしてどのような主人公なのか、彼がどのような物語を展開していくのか非常に気になってきました。

 

 

 というわけでギーツの映画感想でした。今回はキングオージャーの感想と平行して書いたのでかなり大変でしたが、何とか書き上げることが出来て何よりです。ライダーの夏映画は毎回凄まじい熱量がありますが、今回は笑いどころがたくさんありながらも決めるところはキッチリ決める辺りが素敵でしたね。そしてもうすぐ本編も完結するギーツに一抹の寂しさを覚えつつ、最後まで見届けていきたいと改めて思いました。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:本作の時系列に関しては詳しいことは不明。本編とはパラレルワールドか、もしくは本編後の出来事ではないかと推測される。