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仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル 感想

この願い叶う その先へ

戦え、己の内に抱いた“願い”のために

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 去年2022年に公開された映画『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』。ほぼ毎年恒例となっている現行ライダーと前作ライダーの共演作品、通称「冬映画」今回も無事公開されました。本作は『仮面ライダーギーツ』と『仮面ライダーバイス』に加え、20周年を迎えた『仮面ライダー龍騎』もゲスト参戦するということで事前に話題を呼んだことも記憶に新しいです。

 僕自身楽しみにしながら公開当日に映画館に足を運びました。その結果アトラクションのような映画体験を味わった気分に陥りましたね。物語の整合性よりも展開の熱さ、そしてクライマックスに向けた盛り上がりを重視したかのような内容は良くも悪くもド派手でした。というわけで今回はそんな冬映画の感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • 様々なバラエティ展開

 本作の印象を一言で表すなら「雑多」。様々な要素が次々と襲い掛かり、息をつかせぬ間に驚きの展開へと持っていくかのような内容が目に焼き付きました。僕自身、映画を鑑賞している間は困惑と興奮が同時に込み上げてきて止まらなかったです。前半のリバイス編はある種いつものリバイスらしさに溢れていて一貫性がありましたが、問題は後半のギーツ編。いつものギーツにリバイス要素と龍騎要素が絡み合った結果、カオスの様相を呈していました。1つの話としてまとめるよりも、やりたいことを全部詰め込んだかのようなストーリーだったように思えます。

 ライダー同士の戦いが始まったかと思いきや突然の小休止、さらにはちょっとしたギャグ要素も入るのでそのカオスぶりは凄まじかったですね。悪魔を追ってきたリュウとの追いかけっこパートはその最たるもので、突然のスシローでの寸劇や謎の乗り物に乗って逃げ回るシーン*1など、何故そうなった!?と思ってしまう点が多々ありました。それはそれで楽しかったのですが、内心ツッコむのがちょっと億劫になってしまった気分です。

 また全体的にコミカルな描写が多かったのも本作の特徴です。冒頭の五十嵐家男子の全裸(股間をデフォルメライダーで隠す)から始まり、その後の上のやり取りなど、クスっとくるものから変な笑いが出てくるものまで多彩なギャグがこれでもかと描かれました。余談ですが個人的に最もツボに嵌ったのがギロリが「コラス」とゲームマスターの座をかけて戦うシーンで、「轟栄一(とどろき・えいいち)」の部屋の刀を抜き仮面を着けて戦う絵面の意味不明さはシュールの一言。(ギロリが本編に反してカッコよかったのも余計に面白かったです)

 そしてアクションに関しても大変良かったです。テレビシリーズよりも壮大なバトルの構図が繰り広げられていたほか、CGも映画恒例のハイクオリティなものになっていたのでかなり見ごたえのある映像に仕上がっていました。ラストバトルのギーツ&リバイ&バイスVSシーカーの迫力は特に素敵でしたね。他にも龍騎勢が後年の映像技術の恩恵を受けていたのが印象的で、龍騎のファイナルベントの魅力がより深まっていたように感じました。

 全体を通してバラエティ豊かなため何かとおかしな感覚を覚える映画でしたが、終わってからの満足感も確かに存在していました。このアトラクション的な内容は他の映画にはない魅力だとも思いましたね。

 

 

  • 自分の“願い”のための戦いを

 上述の通りかなりカオスな作品ではあったものの、一方で「“願い”を叶えるための戦い」で共通点が多く見られたのも本作の特徴。これは様々な想いが絡み合うことで戦いが発生した『龍騎』『リバイス』『ギーツ』の3作品の要素もあったからこその特徴だと言えます。

 前半は死による安息を得ることよりも家族を守る“願い”のために立ち上がった一輝を描き、後半は本編同様自分の譲れない“願い”のためにデザイアロワイヤルを勝ち抜こうとする英寿たちが描かれていました。個人的には望みのために戦う行為そのものを肯定していくのが興味深かったですね。何が何でも叶えたいもの・守りたいものが存在するならば戦うべき……という心構えに賛同してくれるかのような内容は、一昔前の戦いを避けるべき考えとはまた異なるもので面白かったです。

 また龍騎サイドの描写も短いながらその戦いの肯定を描いていたのが印象的。激闘後の真司と景和が互いの願いを語るシーンから始まり、その後の真司と蓮の会話からは「これからも“願い”のために戦い続ける」という覚悟と希望が感じられました。ミラーワールドでの戦いから未だに解放されないことが明かされながらも悲壮感を覚えない空気は、龍騎』本編から1歩先を行った爽やかさに溢れていましたね。

 

 一方で“願い”の存在しない戦いに関してはかなり否定的だったように感じました。といいうのも本作のオリジナルライダーである「轟戒真(とどろき・かいま)」のキャラクターに自分自身が存在しなかったのがそれを物語っています。当初彼に対しては「強さこそ全て」「ただ戦いたい」という理由で暴れ回っていたキャラという印象を受けました。

 しかしそこから父親との軋轢とそこから生まれた失望の過去をさらっと描きつつ、彼自身の“願い”への話にシフトしていったことから、自分のために戦わない行為の虚しさが描かれているように感じました。その後一輝と英寿の言葉に惑わされて敗北する展開からも、自分自身が存在しないものに勝利はない……とでも言うべきシビアさが読み取れますね。そんな世界のため以上に己のためを優先させた作風に、現代ならではの面白さがあると思いました。

 

 

 とまぁ色々あった冬映画でしたが、やはりというか何というか、問題点などもちらほら見られましたね。ある程度は流してもいいと思えるものがあった一方、個人的にも看過出来ない点がいくつか目につきました。(ここから先は批判が多いので見たくない方はブラウザバックを推奨します)

 

 まず挙げられるのが上述の雑多故の難点がチラホラ存在していたことですね。全体を通してゴチャゴチャしていたうえに、シリアスとギャグの落差が激しすぎたのは如何せん問題だと思いました。深く考えずに見ている分には楽しいものの、どっちつかずにならずに一貫してシリアスかギャグをやってほしかったというのが本音です。

 他にもリバイス編を中心に何だったのかこれは?と思う要素が多かったのも引っ掛かりました。空の裂け目*2から現れた「バリデロ」と「イザンギ」について、ろくな説明もないまま退場してしまったことに唖然となりました。その後彼らとコラスの関係も語られず、また「破滅の門」といった新要素でそれどころではなくなる点故に消化不良に思えてなりません。少しでいいから彼らに関する掘り下げをしてほしかったです。

 そしてバイス勢のライダーの扱いの悪さが個人的には最も不満でした。前半の玉置なんかは「仮面ライダーゲットオーバーデモンズ」という新フォームを貰ったのに対して活躍しなかったのが何とも哀れ。後半のギーツ編からはそれが顕著で、ギーツ勢に翻弄されてばかりでいいところがほとんどなかったことにちょっと憤ってしまいそうになります。2作品の共演映画である以上、各ライダーの活躍のバランスを調節するべきだと苦言を呈したくなりましたね。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

浮世英寿/仮面ライダーギーツ

 『ギーツ』の主人公。後半からの出演になったものの、そのスターズオブ(ryとしての存在感は例によって大きかったです。飄々とした態度を崩さず、最後まで余裕を見せながら戦い抜いたその姿は中々にカッコよかったですね。

 加えて一輝とバイスに協力する中、彼らとの関係もしっかり描かれていたのが印象的。特にデザ神になったことで叶えた願いで、一輝の記憶を残してあげる粋な行動には感動しましたね。何より母親を追っている英寿が、家族のために戦い続けた一輝を救うという構図にグッときます。

 そしてポストクレジットでギロリが「浮世英寿はこの時代の人間ではない」と語っていた点も気になるところ。本編の平成元年からデザイアグランプリに参加している発言からして薄々その気はしていたので、ようやく言及されたことに驚きを覚えました。(それが英寿の強さに繋がる理由に関してはよくわかりませんが)

 

 

五十嵐一バイス仮面ライダーリバイ仮面ライダーバイス

 『リバイス』の主人公コンビ。本作では前半から登場していましたが、本編後の家族との旅行を楽しむ一輝の様子にまず癒されましたね。そこから死にかける展開を経て、バイスの復活と予想通りの内容を見せてくれたのが特徴的でした。例によって家族のために体を張るその姿に、どこか安心感を覚えます。

 また今回のバイスの復活が一時的なものであること、バイスが再び消滅してからの流れが面白かったですね。復活の理由についてはぼかされているものの、そんな都合よく完全復活とはいかない点には好感が持てます。そして上述の英寿のおかげでバイスがいなくなった後も記憶を保持出来たという落としどころにも膝を打ちました。バイスというもう1人の自分を忘れずに済んだというのは、ここまで戦い抜いた一輝へのご褒美として十分なものだったと思います。

 

 

城戸真司/仮面ライダー龍騎仮面ライダーリュウ

 『龍騎』の主人公。ギーツ編ではリュウガ(ミラーワールドの真司)が出ずっぱりでいつ本来の真司が出てくるのかとドキドキしていた中、ナイトのファイナルベントを喰らって突如分離する展開にはビビりました。あまりにも唐突な登場だったものの、それから即座にもう1人の自分と立ち向かう辺りは何とも真司らしかったですね。(あと真司が解放されてから蓮がノリノリで浅倉と戦い始めたのも面白かったです)

 激闘を終えてからは景和、そして蓮と「戦い続けること」について話していた様子も素敵でした。前者はそれぞれ平和な願いを持っていることから激励を送り合い、後者ではいつもの調子で次なる戦いに足を運ぶ様子が描かれていました。個人的には景和に対しては大人びた態度だった真司が、蓮を前にした途端いつものおバカっぽいキャラに戻ったことにニヤリとさせられましたね。真司は変わらずにいることを実感させてくれる一幕でした。

 

 

轟戒真/仮面ライダーシーカー

 本作のボスキャラ。大体の黒幕であるコラスがとにかくハイテンションだったのに対し、こちらは全体を通して寡黙ながらも戦闘意欲たっぷり、というキャラで描かれていました。(かといって浅倉のような戦闘狂ではなく、ストイックな印象を受けたのが面白いです)一輝たちの説得を受けるまで一貫して強かったことから、ある種の風格が感じ取れます。

 上述の通り自分の“願い”を持たない点が、いい意味で空っぽで魅力的に映りました。それでいて父に認められたい欲求を抱えていそうと、短い描写ながらも鮮烈な印象を残してくれるキャラだったと言えます。今度は自分の”願い”を探してみせることを宣言していたため、その内『ギーツ』本編に登場してくれるのではないかと期待してしまいますね。

 

 

 というわけでギーツ×リバイスの感想でした。去年の冬映画に続いてまたもや年を跨いでからの感想になってしまいましたが、書き終えることが出来てひとまず安心です。そして映画そのものに関しては夏のリバイスの劇場版とは別ベクトルで「細けぇことはいいんだよ!!」を突き詰めたかのような内容だったかと思います。何だかんだで魅力的なシーンが非常に多く、平和を願う悪魔景和や意気投合する祢音&さくら、通常雨天の浅倉VS真司が出てからいつもの調子に戻る蓮など面白い要素が次々と見られて楽しかったです。その場のその場の勢いを重視した作風は、まさにアトラクションというべきもので心地よい脱力感を得られましたね。

 

 さてライダーは2023年からも続いていき、まずは波乱に満ちた『ギーツ』本編に注目が集まります。他にも今年はいよいよ『シン・仮面ライダー』が公開されるなど、目が離せない年になりそうです。今年も純粋にライダーを楽しみつつ、その感想を綴って伝えていく有意義な1年にしていきたいですね。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:この一連のギャグシーンは、コラボしているスシローの宣伝も兼ねているためだと思われる。

*2:これ自体は『リバイス』本編でギフが開けたものとして判明している。