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Vシネクスト 『王様戦隊キングオージャーVSドンブラザーズ』&『王様戦隊キングオージャーVSキョウリュウジャー』感想

 

 

 今年の2月に完結し、スーパー戦隊シリーズの歴史に刻まれた『王様戦隊キングオージャー』のVシネがついに公開。今回は前作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』だけでなく、10周年を迎えた『獣電戦隊キョウリュウジャー』とまでVSするという前代未聞の2本立て構成となっており、多くの人を驚かせてきました。

 基本上演時間が1時間前後のVSシリーズを2本立てにするということは1本30分、それでどんな内容が繰り広げられるのかとドキドキしながら映画を観に行ったわけですが、凄まじい密度の話を凄まじい勢いで駆け抜けていった印象を受けました。それぞれ30分しかないからこその内容に注力しており、トンチキなドンブラと王道のキョウリュウ各々の良さ、そしてそれらを違和感なく受け入れるキングオージャーの作品の幅を感じ取れるスピード感という印象です。というわけで今回は2作品それぞれの感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 というわけで以下、今回の映画感想です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王様戦隊キングオージャーVSドンブラザーズ

 まず映画の前半であるキングオVSドンブラについて。別ベクトルでクレイジーな2作品がVSしたらどうなるのか?は以前から語り草でしたが、いざお出しされた内容のぶっ飛びっぷりは予想していた以上のものとなっていました。

 そもそも出だしからしてジェラミー&はるかのナレーションで「うんたらかんたらでみんな死んでハーカバーカに来ていた」から始まるのが既に面白かったです。そこから「どうしてこうなったのか……」と回想に移るまでの流れも期待通りでしたが、ドンブラザーズがチキューに来た理由やギラたちの死因の唐突さやしょうもなさはそれ以上。ギラがきび団子をのどに詰まらせて死ぬだけでも目が点になるのに、それ以外の死に方も呆気なさ過ぎて驚きよりも困惑の方が先に来てしまいました。(個人的には「相撲で勝負した結果ぶつかり合って死んだカグラギとジロウ」が1番意味不明でしたね)

 その後のハーカバーカの戦闘も生前の言い争いの延長線上でしかなく、忍者おじさんこと大野稔/王様鬼が出た瞬間共闘を始める空気の緩さにも肩の力が抜けてしまいます。本作の限定強化フォームであるゴールドンクワガタオージャー&ゴールドンモモタロオージャーはしれっと変身しただけでしたし、名乗りもほとんどすることなくあっという間に終わった印象です。何と言いますか、全体を通してありとあらゆる過程や説明を吹っ飛ばして2大戦隊の暴れっぷりを描いていたように感じました。

 ただそれが悪いというわけではなく、むしろ違和感なく描かれていたのが面白かったですね。両戦隊が出会って馴染む過程も自然と行われており、見ている側としても気にせず受けいれることが出来ました。これに関してはどんなにぶっ飛んだ内容でも十分に魅せてくる、両戦隊の作風という名の土壌が備わっていたおかげだと考えます。ある意味でキングオのノリとドンブラ中毒の理解度が高いストーリーだったのかもしれません。

 また“死者との繋がり”に関するエピソードも興味深いポイント。発端であるタロウがギィちゃんを探すためにハーカバーカに向かう話(まさかギィちゃんを拾ってくるとは思ってもみなかったです)が、向こうでおでん屋台を開いているソノイとの再会によって収束していく展開には大いに驚かされました。「死者も生者も同じ。ただいる場所が異なるだけ」という諭し方から、タロウの「俺たちはどんなに離れてても縁で繋がっている」で終わる流れも見事。死別を悲観することなく前向きに受け止める……まさに今回のように死者の国を行ったり来たりする本作らしい死生観を表わしていたと言えます。まとめると展開こそぶっ飛んでいますが、決める時はしっかりと決めるので笑って観られる素敵なVSでした。

 

 

王様戦隊キングオージャーVSキョウリュウジャー

 続いては後半のキングオVSキョウリュウ。キングオージャーのテレビシリーズ本編でも共演していたキョウリュウジャーをメインに据えており、キャストも竜星涼さんや丸山敦史さん、飯豊まりえさんとキョウリュウジャーのメンバー勢揃いの豪華さがウリとなっています。個人的にもキングことダイゴが戻ってきてくれただけで感極まるものがありますね。

 そんな本作の内容ですが、キングオージャー本編の裏側を描いていたのが特徴的。チキューや地球での戦いが繰り広げられていた中キングたちは何をしていたのかが語られており、物語の補完及び未回収だった伏線の回収の連続に驚くこととなりました。プリンスがギラに向けた「優しい邪悪の王でいてね」に込められた意味も判明するなど、映画を観ている間バラバラだったピースが次々と繋がっていく感覚を覚えた次第です。その一方でウッチーこと空蝉丸のやらかしの多くがざっくりとしたものとなっており、この辺りには少々強引なイメージを抱いてしまいましたが。(ただ後述の宇蟲王ギラの誕生の原因に関しては子どもに優しいウッチーらしいとは思いましたね)

 あとはやはり歴史が変わることでギラが本当の邪悪の王となってしまう可能性が提示されたことも見逃せません。父・コーサス王の目論見通りになった場合、ダグデドを打倒するだけでは終わらずダグデドに代わる暴君になってしまう事実に慄いてしまいます。他の王たちが落ちぶれたりする歴史の改変ほとんどギラ関係なく自業自得なようにも見えるけど……もあり、本編の出来事はまさに奇跡的な勝利だったのだと実感させつつ、事の深刻さとそれを解決しようとするキングたちの奮闘が目に焼き付きました。解決方法に関しても、最終回でジェラミーが残したヴェノミックスシューターに込められた王様戦隊を記憶を使うというのがオシャレでしたね。ジェラミーの語り部としての側面と“大切な物語が詰まっている”ヴェノミックスシューターを上手いこと活かしたナイスな描写でした。

 そして両戦隊が揃ってからの戦闘シーンは大盤振る舞いといったところ。まず変身しながらの名乗りを挙げるキングオージャーと、シンプルな同時変身を披露するキョウリュウジャー。それぞれの特徴がこの時点でわかりやすく出ていましたね。さらに各戦士の共闘に加えてガブティラキョウリュウレッドのパワーアップやキングオージャーがキョウリュウジャーのアームドオンを装着するなど、VSシリーズらしいクロスオーバー要素を披露してくる演出も単純ながら魅力的の一言。おかげでVSシリーズを見ている!という実感と興奮を大いに味わうことが出来ましたよえぇ。(中でも死を司るグローディ相手に、トリンたちスピリットレンジャーが引導を渡すマッチングがお気に入り)

 他にも『100 YEARS AFTER』の子孫たちが登場するといったサプライズ要素にもニヤリとさせられ、これまたキョウリュウジャーを見ていた身としては嬉しい要素が多かったです。キングオージャーの本編に繋がる物語にして、キョウリュウジャーの10周年を彩る作品としてシンプルながら楽しい作品に仕上がっていましたね。

 

 

 というわけで今年のスーパー戦隊VSシリーズの感想でした。割と各戦隊のニーズを押さえつつ、こちらが期待していたものを見せてくれていたかと思います。ドンブラザーズとの共演ではギャグで押し通し、キョウリュウジャーとの共闘で王道のカッコよさを引き出してくれて面白かったです。各30分という短さなので全体的に駆け足気味でしたが、話の密度は普段のVS2本分だったので観ていてかなりの満足感を得られました。ド派手なスケールで幕を閉じたキングオージャーの後日談として、いずれもほっこりする終わり方だったのも嬉しいところ。3大戦隊それぞれが好きで良かったと思えるVSでしたね。

 

 

 ではまた、次の機会に。