新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

仮面ライダーガッチャード 第20話「微笑む天使(エンジェル)、笑えぬ真実(ジョーク)」感想

邪悪が嗤い

憎悪が目覚める

鉛崎ボルトくんも今回のスパナの惨状には絶句必死だろう

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

  • 美学を剝ぎ取られた絶望

  朝から重い……重すぎる……となった今回のガッチャード。予告の時点でスパナの曇らせが待っていることがわかりきっていましたが、いざお出しされたものがあまりにもエグすぎて衝撃と困惑を同時に味わうことになりました。というのも今回登場したスパナの両親が既に死んでいるのは予想出来ていたものの、「その2人を生き返らせてから息子の目の前で消滅させる」グリオンの策略にドン引きしたからですね。両親の偽物を立てるだけでも十分効果がありそうなのに、わざわざ本物の魂を引っ張ってきて再度殺すやり口は非道そのもの。(直接的な殺害描写はないものの、スパナの両親が苦しみながら土くれに戻る絵面は本当に怖かったです個人的には12話のアトロポス以上に極悪だと感じました。

 今回のスパナは普段の強気な態度からかけ離れた姿が多かったのも、この状況の悲惨さに拍車をかけていました。冒頭両親との再会に晴れ晴れとした笑顔を見せただけでも驚きでしたが、普段が突っ張っていてこれが本来のスパナであると思うと納得がいきます。そして拘束された状態で宝太郎たちに助けを求める様子がこれまたショッキング。あれほど辛辣だった相手に向けての恥も外聞もないほどの「助けて」に、スパナの尊厳が徹底的に破壊されていく感覚を覚えました。超A級錬金術師としてのプライドや美学を粉々に粉砕され、幼い少年のような本音を引き出されたうえで何も出来なかった彼のことを想うと胸が痛みます。

 また例によって宝太郎たちが全力でスパナを助けようとして出来なかった、という点も印象深いです。りんねもマジェードに変身出来たものの、スパナ両親を生き返らせた「エンジェルマルガム」の足止めの対応に精一杯。グリオンの妨害も的確で救出が叶わなかった絵面のおかげで余計に絶望感を味わうことになりました。必死な宝太郎たちとスパナの泣き叫ぶ演技、ついでに敵側ながら引いているミナト先生といずれの様子も鬼気迫るものがあって、個人的にも12話のショックを軽く超えるものだったと思います。

 

 

  • “過去”から守ってくれた人へ

 上述の展開だけでもお腹いっぱいだったのに、今回はさらに「スパナのマルガム化」と「謎の“黒い炎”」という2つの要素で衝撃の上書きをしてきたのも特徴。前者はグリオンに奪われていたマッドウィールが駆け寄ってくる場面もあって何とも切ないものを覚えましたね。マッドウィールがスパナのことを純粋に心配しているのがわかるだけに、彼の憎しみという悪意に呑まれてしまった状況が本当に辛かったですそれはそれとしてマッドウィールが懐いている辺りスパナもケミーから慕われていたんだなぁ……とか思ったり。

 そして後者の黒い炎については詳細こそ明かされていないものの、スパナの「隠されていた危険な力」としてのイメージは十分に残してくれていました。そんなスパナの力と記憶を隠し、ずっと彼に両親の死を偽装していた鏡花さんの心情も印象的。復讐心に囚われそうになっていた幼いスパナを守り、育て上げていた彼女のちょっとした親心にはホロリとくるものがあります。スパナがこれまで語っていた美学も、そんな鏡花さんの「過去ではなくその先を見て生きてほしい」という想いから形成されたものであることが伝わってきました。

 それだけに記憶が戻ったスパナにはかえって責められるのがこれまたやるせなかったです。騙されたと思っているスパナの心情や、「この力があればあの時両親を助けられたかもしれない」という言葉もわからなくはないだけに複雑な気持ちにさせられます。恩人にしてもう1人の親でもある鏡花さんには感謝しているものの、拒絶してしまうスパナ。それを見送るだけしか出来なかった鏡花さんの構図は心にズシンとくるものを残していきました。上のショッキングな展開とはまた別の、強烈な陰鬱っぷりを味わった気分です。

 

 

 というわけで20話の感想でした。いやぁスパナの曇らせが予想していた以上にエゲツなくて本当にビビりましたね。実験と称してここまでの非道を行い歓喜するグリオンへの憤り、そしてスパナと鏡花さんの関係の切なさで約30分間食い入るように視聴することになりました。そんな中でもスパナを仲間と言ってくれる宝太郎には救われました(あと「ヨーヨー研究会」の同窓会に出席しに行った珠美母さんの話にもフフッときたり)し、ここから先の逆転展開が楽しみになってくるものがあるので次回が俄然楽しみになってきたのもありますが。

 他には今回スパナが変身した「ウィールマルガム」のデザインにも注目したいところ。マッドウィールとの合体ということもありヴァルバラドに酷似した見た目であるものの、一旦ヴァルバラドになってから仮面を引き剝がして完成する変身シークエンスには仰天しましたね。ボロボロの体に表情の読めない機械の顔が露出しているビジュアルは、さながらスパナの悪意が剥き出しになっているかのようにも思えます。劇中の展開だけでなくマルガムのデザインでもスパナの尊厳破壊をしてくる本作には本当に舌を巻くほかありません。やってくれたなぁ長谷川圭一ぃ!なんてことを思いながら、この手腕にはちょっとニヤリとくる話でもありました。

 

 

 そして次回はスパナの物語の後編。宝太郎たちが一度はスパナを変身解除まで追い込んで止めるものの、心を閉ざした彼を呼び戻すことは叶わない……そのため鏡花さんと共にドライバーを完成させようと尽力するようです。果たしてそのドライバーでスパナの復讐心や黒い炎を止めることは出来るのか?そういった疑問を孕みながら、彼が満を持してライダーへと変身する瞬間が非常に楽しみになってきました。今回の鬱展開を思いっきり晴らしてくれるような、素晴らしいカタルシスを期待したいです。

 

 

 ではまた、次の機会に。