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トランスフォーマー/ONE 感想

物語(トランスフォーム)は

ここから始まる

リーダーと破壊者、2人の英雄の原点が今明かされる────

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 先日公開されたトランスフォーマー最新作『トランスフォーマー/ONE』。映画シリーズでは初のアニメ作品で、フルCGで動き回るトランスフォーマーたちをウリとした作品として告知されていました。そしてそれ以上に「オプティマスプライムとメガトロンの前日譚」の触れ込みが話題に。(とはいっても既存の作品との繋がりは全くないのですが)テレビアニメでは度々描かれてきた両リーダーのオリジンを、こうして映画でやることになったのはファンとしても興奮が止まらなかったです。

 そんなわけで映画館に足を運んだわけですが、予想以上に情緒を揺さぶられる内容でした。ヒーロー誕生の瞬間など燃え上がるポイントを抑えつつ、主役2人の友情物語やそこから決別するまでの道のりを丁寧に描いたストーリーに目が離せなかったです。今回はそんなトランスフォーマーONEの感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • キャラクターとしてのトランスフォーマー

 まず本作はアニメ映画ということもあり、登場人物が全員トランスフォーマーで人間は全く登場しないという異例の作品になっていました。*1舞台もトランスフォーマーの故郷であるサイバトロン星であり、彼らがどのような営みを過ごしているのかを分かりやすく描いていたと言えます。世界観の説明は全て劇中で為されるので事前知識がほとんどなくても楽しめるというのは非常に大きかったですね。映画前作『ビースト覚醒』とは別ベクトルで見やすく仕上がっていたことに感動を覚えます。

 何より劇中に登場するトランスフォーマーのキャラクターが大変素敵でした。後述の主人公・オライオンパックスとD-16を筆頭に、個性がハッキリしていてすぐに特徴を掴めるようになっているので見ていて印象に残りやすかったです。多くのキャラが人間臭い魅力を内包しており、共感しやすい作風はシリーズでも中々のもの。実写映画におけるトランスフォーマーは人間視点で「得体の知れない異星人」の側面が強かった分、本作では主役である彼らが1人1人「個別のキャラクター」として確立していたと思います。

 そんなトランスフォーマーたちをトランスフォーマーたらしめる「トランスフォームコグ」などの存在がこれまた大きな見どころ。コグがあるからこそ変形出来ることから、転じてコグを持たないロボットは「コグなし」の蔑称付き労働者として見下される差別の構図は大筋に重要なものとなっていました。支配者の驕りと被差別階級を筆頭にした被害者たちの憤り、そこから始まる反乱など、物語が現実の人間の歴史をなぞっているかのようでかつてないほどのめり込めたのが良かったです。

 あとはサイバトロン星の描写も見逃せません。戦争で荒れ果てる前の星の様子が大スクリーンで見られるだけでもファンとしてはテンションが上がります。地上と地下の異なる環境、アイアコンシティの暮らしぶりなど彼らがここで生きている実感を得られるのは鑑賞のしやすさに大きく影響していたと感じています。総じて従来の映画とは異なる魅力を打ち出した、新機軸のトランスフォーマー映画になったと言えることでしょう。

 

 

  • 親友から宿敵に変化(トランスフォーム)する時

 そして本作最大の魅力と言ってもいいのが主人公2人のオリジン。後にオートボット総司令官オプティマスプライムとなるオライオンパックスと、同じく後にディセプティコン破壊大帝メガトロンになるD-16を中心に物語が展開されました。親友同士である彼らが如何にして別々の道を進んでしまうのか、結末がわかりきっているだけに鑑賞中はドキドキしっぱなしでしたね。序盤から2人の気さくな間柄が描かれているのもあって、微笑ましさと同時に何とも言えない切なさを覚えた次第です。片方の吹き替えが中村悠一さんということもあって『トランスフォーマー壊玉/玉折』とか呼んでる人がいるとかいないとか……

 何と言ってもオライオンとD-16の性格の違いに最初驚かされました。前者は陽気で無鉄砲なトラブルメーカーで、後者は頭が固いが真面目な好青年。オプティマスとメガトロンのパブリックイメージを知っている人ほど、このギャップに面食らったことかと思います。とはいえオライオンが度々問題を起こし、D-16が巻き込まれながら彼をたしなめる関係性がシンプルですぐに馴染めました。凸凹ながら信頼で繋がっているコンビが、レースに乱入したり冒険を繰り広げる様子だけで彼らへの愛着が湧いてきます。多少の違和感をあっという間に跳ね除けるほどの、オライオンたちのキャラ立ては見事の一言です。

 

 それだけに最強コンビがセンチネルの真実を知ってから徐々に離れていく過程が大きくのしかかってきました。中でもD-16は敬愛していた英雄がペテン師だとわかるや否や、彼への復讐に走る変貌っぷりでショックが大きかったです。真面目で純粋すぎたが故に信じていたモノへの裏切りに対して、過剰なまでの反骨心を抱いてしまったのがわかります。対照的にオライオンは一度は呆然自失するものの、みんなを引っ張る存在としての自覚と責任を得て立派に成長していくのが好印象。奔放な自由人は責任を重んじるリーダーに、対して優等生は怒りと憎悪から反逆者へ……序盤のイメージと立場がくるりと入れ替わったかのような、両者の成長と変化には息を飲むばかりです。

 そして訪れた決別の瞬間、センチネルの処遇を決める場面は特に印象的。D-16はセンチネルの首を獲ることで革命を成し遂げようとしていましたが、オライオンの「再建の歴史を処刑から始めるつもりか」という静止と憎き敵を庇う行動で彼の手を放すシーンは本当にショッキングでした。これまでは友情から共に行動していた2人ですが、ここでそれぞれが自分の責務や役割を優先してしまったのが決定打になってしまったかのように感じましたね。直後両者がオプティマスとメガトロンになってからの戦闘でも、わずかな信頼を残して各軍団を引き連れている辺りに昔の関係ではなくなっている事実を実感せずにはいられません。

 といった感じで主人公2人のルーツと同時に、過去の関係を失っていく展開は見ていて非常に辛かったです。前半までのオライオンたちを見てきただけに、もうかつての2人ではなくなってしまったことを否が応でも感じます。(吹き替え版だとオライオンの一人称が「俺」から「私」になるところなどが顕著ですね)立場を経て成長した分、大切なものを失う様子は没入感があるからこそ胸にくるものがありました。上述のキャラクター化もあって、それぞれの感情移入も非常にしやすく見応えがありましたね。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

オライオンパックス/オプティマスプライム

 後の総司令官。上でも書いた通り奔放な問題児といったところで、冒頭から規則違反を連続して起こす常習者であることを強調してきたのは中々に強烈。しかしその行動の多くに「自分たちはやれる」という自信や、仲間たちを思いやる優しさが溢れているので、彼がオプティマスになるのも大いに納得がいきました。エリータに指摘された直観を信じて動いているのも司令官らしいです。それでいて何かと「いい考え」が擦られる辺りに変な笑いが出てきたり……

 そんなオライオンが徐々に仲間をまとめ導くリーダーになっていく過程も印象的。コグなしの労働者たちに呼びかけるシーンは、個々人の意志を尊重する言葉の数々に何度も頷きました。「誰もが自由と可能性の力を持っている」というオライオン時代の精神性は全くブレることなく、我々が知るオプティマスプライムへと近づいていく様子に感嘆せずにはいられなかったです。映画シリーズでは定番となっている「私はオプティマスプライム」で締めるラストも嬉しかったですね。

 

 

D-16/メガトロン

 後の破壊大帝。規律に従順な真面目ちゃんな一方で、何だかんだでオライオンに流され協力するキャラクターは従来のメガトロンのイメージとまるで異なるので本当に驚きました。それでいてオライオンとの気心の知れた仲を筆頭に、どこかチョロくて人懐っこい一面に妙な魅力を覚えます。個人的にはメガトロナスプライムやセンチネルに対して大きな憧れを抱く、ちょっとミーハーなところが愛らしいと感じますね。

 その分裏切られたことへの憤りに震える破壊者へと変わる様子は見ていられなかったです。特にスタースクリームたちを扇動するシーンは上のオライオンと似ているようで、暴力でねじ伏せ鬱憤をぶつける辺りがまるで異なります。また支配者を討つ革命の英雄としての資質を見せるものの、センチネルにまつわるものを見境なく破壊していく点から統治者にしてはいけないことを大きく印象付けてきました。信頼を壊されたからこそ、一転して壊す側へと回ってしまった悲劇の戦士というイメージが付いたかと思われます。誰が呼んだか「反転アンチを体現したかのような男

 

 

エリータ/エリータ-1

 本作のヒロイン枠。野心家ながらオライオンの問題行動に振り回される不遇な人、というのが最初抱いた印象でした。彼らに対する言動があまりにもキツいものの、そういう態度を取られるのも仕方ないと思えてしまうのが何とも絶妙でしたね。そんな彼女がオライオンの力を誰よりも認めていて、彼に叱咤激励を送る側に回るシーンは大きなカタルシスがありました。主人公の尻を叩いてくれる、良き皮肉屋といったところでしょうか。(あとウーマントランスフォーマーの例に漏れず、ショックウェーブを殴って黙らせるなどやたらパワフルだったのも良き)

 

 

B-127/バンブルビー

 コミカルなムードメーカー。登場してからずっとお調子者として描かれており、終始喋っていて黙るシーンの方が少ないレベルだったのがおかしかったです。(映画シリーズでビーは何かと喋れない設定だったが故の反動でしょうか)ちょっとウザいところもありましたが、ギスギスしがちな空気を和らげてくれる役割は果たしてくれたかと思います。またコグを手に入れたことでバトルマスクや腕のソードも使えるようになった時のはしゃぎようは可愛くもあり怖くもありました。放送室を滅茶苦茶にしておいて部屋の奴らを脅して誤魔化すシーンとはちょっとした狂気がありましたね。

 

 

センチネル

 色んな意味で全ての元凶。過去作のセンチネルの扱いや本作における英雄としてのポジションから嫌な予感はしていましたが、劇中の所業の数々は予想を超えるものばかりでした。プライムたちを裏切っただけでなく、生まれたばかりのトランスフォーマーの一部からコグを抜き取っていた事実は衝撃的。支配階級として君臨するために、意図的に差別される側を作っていたことにはドン引きせざるを得ません。(それでいてクインテッサの言いなりなのが哀れ)歴代のセンチネルの中でも過去最低の俗物で、それでいて虚栄だけの男という在り様に何とも言えないものを覚えます。『アニメイテッド』に続いて吹き替えが諏訪部順一さんなんで声だけは本当に良い……!

 

 

アルファトライオン

13人のプライムの1人。 如何にもなヨボヨボの老兵ながら、貫禄がある姿にまず惚れ惚れします。オライオンたちに真実を教え、仲間のコグを与えるシーンは高揚感が凄まじかったです。主人公たちを導く師匠ポジションとして、短いながらも的確に魅せてくれたと思います。また吹き替えが歴代司令官を何度も演じてきた玄田哲章さんということもあって、ファンならグッとくるポイントが多かったですね。(彼以外のプライムや、映画シリーズでとうとう出てきた創造神プライマスなども見逃せません)

 

 

 他にもニューリーダーならぬ元リーダーだったスタースクリームや取り巻きのサウンドウェーブショックウェーブ、センチネルの側近エアラクニッドに嫌味なダークウイングなど、印象的なトランスフォーマーが非常に多かったですジャズをはじめとしたファンなら聞き馴染みがある名前にもニヤリときましたね。(キャラに限らず『2010』などの過去作の小ネタが散りばめられていたのが嬉しいところ)人間を登場させない分、トランスフォーマー個人の魅力を最大限引き出した映画に仕上がっていると言えるでしょう。またクインテッサ星人に関しては出番が最小限でほとんど背景みたいなものでしたが、トランスフォーマーとは異なる怪物としての存在感は十分で興味深かったです

 

 

 というわけでトランスフォーマーONEの感想でした。過去作を知る人はもちろんのこと、これまでトランスフォーマーを一切見たことがない人でも楽しめる作品としての完成度が非常に高かったです。SNS上で「初心者向けトランスフォーマー」という感想を鑑賞前から目にしていましたが、それも納得の内容と言えます。単体の作品として見事に完結しているだけでなく、オライオンたちのキャラの取っつきやすさはとても魅力的。彼らの今後が知りたくなるほどのストーリーで本当に面白かったです。そして『バンブルビー』や『ビースト覚醒』など、新機軸を打ち出していくトランスフォーマーの映画の1作として今後が楽しみになってきた次第です。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:アニメシリーズにおいて同様の作品は『ビーストウォーズ』をはじめとしていくつか存在はしている。