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コードギアス 奪還のロゼ 感想

奪われたすべてを奪還せよ

刮目せよ、これが新たな“コードギアス”だ

Running In My Head (特典なし)

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  • アーティスト:MIYAVI
  • SMM itaku (music)
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 2006年にテレビ放映された『コードギアス 反逆のルルーシュ』を皮切りに、多くの展開が為されてきたコードギアスシリーズ。その最新作として発表された『奪還のロゼ』は、あまり期待していなかったファンの予想を覆し大きな話題を呼びました。外伝作品でここまで評判が良かった話は本当に意外でしたね。

 僕自身以前から気になっていたので少し視聴したところ、こちらが想定していた以上に“コードギアスらしさ”が全開の内容で一気にハマりました。『復活のルルーシュ』の5年後という設定がありながらも、納得の出来る要素に仕上がっていたことにも驚かされます。何よりルルーシュがいないコードギアスなんて……という意見に真っ向から立ち向かった、そのように感じられる作風が大いに気に入りました。というわけで今回はそんな奪還のロゼの感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は作品の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • 原点の回帰と初代との乖離

 先に上述で触れた“コードギアスらしさ”ですが、まず「興味を引く展開の連続」「ジャンルの雑多さ」が挙げられます。前者は主人公の「ロゼ」の正体を筆頭に衝撃の展開を次から次へと投入し、視聴者を飽きさせない作りになっていたのが印象的。特にロゼ周りの真相が次々と明かされていく内容は、作品の没入感をより深めていました。それでいてシリアスになりすぎず、3話のようなコミカルなエピソードを入れる辺りに好感が持てましたね。こちらはまさに学園モノとロボットアクションを合体させた本編(反逆のルルーシュ)を引き継いだ、後者の要素と言えるでしょう。

 他にも戦略担当と戦術担当の違いをハッキリ描いたり、KMF(ナイトメアフレーム)の戦闘は地上戦をメインとするなど、シリーズで評判の良かった点を積極的に取り入れていたのが目に留まります。(ギアスによるゴリ押しや若干のツッコミどころも、ある意味でそっくりでしたが……)そのおかげで初代コードギアスを視聴した時の、何が起こるかわからない高揚感を何度も思い出しながら視聴することが出来ました。「そうそうコードギアスといえばこれだよ!!」という、ファンの心理を見事に突いてくる絶妙な塩梅だったと思います。本作はそういった原点回帰の良さが光っていましたね。

 それでいて本作単体で出来上がった世界観に仕上がっているのも見事。本編や外伝の登場人物がゲストキャラとしてちょくちょく登場していましたが、それらが物語に深く関わらせなかった潔さは大いに評価したいところ。そして閉鎖されたホッカイドウブロックという舞台を上手いこと利用し、そこで活動する本作のキャラクターのみに絞った点が素晴らしかったです。『反逆のルルーシュに』連なるものながら、あくまで本作が『奪還のロゼ』であることを視聴者に意識させてくれる配慮が行き届いていた点こそこの作品の強みだったと考えます。

 何よりルルーシュの存在を極力減らしながら、独立した作品として魅力的に仕上げてみせたことに感動を覚えます。これまで「コードギアスといえばルルーシュありき」だったものを、ルルーシュをあまり出さずにやり切る姿勢はシリーズの今後を続けるために必要なことだったと感じています。(前作キャラの扱い方という意味では、これまた理想的なバランスだったのではないでしょうか)そんな初代との乖離を目指した挑戦は、本作で成功したと言ってもいいかもしれません。シリーズへのリスペクトを忘れず、新たな境地を開いてみせた本作は個人的にもかなり好みですね。

 

 

  • “誓い”と共に進む2人の関係

 個人的に本作の魅力だと感じたものとして、ロゼとアッシュの物語に触れておきたいところ。ロゼに変装していた「皇サクヤ(すめらぎ・サクヤ)」と、彼女に操られた「アッシュ・フェニックス」のギアスを巡る関係性は非常に惹かれるものになっていました。父の仇だと思っていた人物をギアスで兄として操作する歪な関係、それらが話を重ねるごとに判明していき、同時に真相も明らかになっていく過程の衝撃度は高かったです。何と言っても誤解から生まれてしまった偽りの兄弟という業の深さは、本作に目が離せなくなる最大の要因でもありました。

 そしてサクヤが自分の過ちを後悔し、アッシュが彼女を許す中で嘘を突き通し続ける共犯関係を築いたのがこれまた本作の味。ルルーシュとスザクの関係を彷彿とさせながらも、本音の中で大きく進展した両者に内心悶えてしまいましたね。ギアスがもたらす呪いに振り回されながらも、当人たちが目的のために前進する選択を取る姿は主人公として実に魅力的だったと思います。(余談ですが9話でサクヤがロゼとして決意をするシーンなど、葛藤の部分を早々に描いてくれたのが好印象。おかげであまりフラストレーションを溜めることなく鑑賞することが出来ました)

 あとはやはり、最終話で描かれたギアスに対する解釈が注目ポイント。ルルーシュがギアスを“願い”や“祈り”と捉えていたのに対し、アッシュがギアスを“誓い”として語るシーンには思わず見入りました。「こうなってほしい」ではなく「こうありたい」という意志の強さというべきでしょうか、目的の達成のために自身に課す宣言を補強してくれるものとして、ギアスを肯定してみせたことに感心させられます。彼女らにとってギアスはあくまで勝利のために必要な最後のカギであり、決断はいつだって本人たちの意志によるものだったのでしょう。ギアスを使うものの頼りすぎない辺りが、個人的にも深く刺さりましたね。

 そうして最終的にノーランドを倒し、故郷を取り戻したサクヤの結末に関しては色々と思うところはあります。アッシュの死やサクヤが自分の声ごとギアスを封じたことに、呆然としながら映画館を後にした記憶は忘れられません。しかし偽りから始まった2人の関係、復讐と奪還の物語の終着点としては納得のいく結末でもありますね。アッシュと声を失うことで父を奪った全てにケリをつけたという意味では、サクヤは目的を果たしたと言えるでしょう。同時に「王の力はお前を孤独にする」というギアスユーザーの末路が、本当の意味で通じ合える人物(アッシュ)との別離という点も秀逸。2人への思い入れが深いだけにショックが大きかった反面、この喪失感こそコードギアスとしてのロゼの終わり方だったのだと考えます。

 

 

 

 

 (ここから先は批判が多いので見たくない方はブラウザバックを推奨します

 

 といった感じにコードギアスの空気を感じつつ、ロゼもといサクヤの物語に没頭出来た本作。一方で駆け足気味な展開には首を傾げることが多かったです。まずアーノルドとの決着やキャサリンの改心など、終盤になっていつの間にか処理されてしまったのは大いに残念でした。(キャサリンに関してはサクラとのやり取りが丁寧に描かれていただけに、もう少ししっかり見せてほしかったと思っています)両者の因縁や掘り下げが気になっていただけに、雑に終わってしまったことにどうしても不満が出ます

 他にもハルカをはじめとした七煌星団ももっと活躍させてほしかったところ。個性的な面々が多かっただけに、ロゼのサポートがメインになってしまったのが惜しいと感じています。総じて尺の少なさから大急ぎで片付けた要素が多かったイメージがありますね。サクヤとアッシュの描写に力を入れていた分の弊害なのでしょうが、登場人物の数に対して御しきれていなかった印象が否めなかったです。

 

 

 というわけで奪還のロゼの感想でした。コードギアスにおけるそういうのでいいんだよを随所にちりばめつつ、独立した作品として面白くなっていたのは本当に素晴らしかったですね。ロゼとアッシュの軽快な戦略と戦術、それを取り巻く登場人物の個性の強さはいずれも本作を好きになる魅力にあふれていたと思います。何よりルルーシュに頼らずともシリーズが続けられるという証明になったのが最大の成果。再来年のシリーズ20周年に向け新作が制作中であることが先日のイベントで報じられました*1し、この先も復活したコードギアスを盛り上げながら見守っていきたいところですそして新作は是非ロゼR2とか復活のアッシュ、というかサクヤたちの物語の続きお願いします……!!

 

 

 ではまた、次の機会に。