つながる絆は最強パワー!!
新たな時代に向け、今こそ進化(トランスフォーム)せよ!!
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45周年を迎えた『トランスフォーマー』シリーズのテレビアニメ最新作『トランスフォーマー アーススパーク』の日本放送分が先日無事に完結しました。お馴染みのメンバーを揃えた作品に見せかけて、従来のシリーズにはない要素をいくつも引っ提げた意欲作として大きな衝撃と興奮を呼んだと感じています。それでいて初代アニメ『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』に繋がっているかのような節もあったりと、往年のファンがニヤリとくるポイントまで抑えているのが絶妙でしたね。
昔から様々なトランスフォーマーのアニメや映画を視聴してきた身として本作もチェックしましたが、これまでにない魅力的な物語を形成していたと感じています。テランという新種のトランスフォーマーが織りなす成長物語や、戦争が終わってからの世界観だからこその展開の数々、それらが見事に噛み合って見やすく楽しい作品に仕上がっていました。今回はそんなアーススパークの感想を、「家族」と「戦後」という2つのキーワードを中心に取り上げ書いていきたいと思います。
- 「家族」が織りなす共存の在り方
まず本作の特徴の1つである「家族の絆」について。人間とトランスフォーマーの異種族交流は過去のシリーズでも定番でしたが、アーススパークでは家族の枠組みでトランスフォーマーとの共存を描いていました。何と言っても物語のキーパーソンでもあるテランたちを、地球のマルト家が一家の一員として迎え入れる展開が大きな魅力となっています。母のドットがオプティマスたちと戦友という設定も活かし、トランスフォーマーに理解のある家庭がスタート時点で既に構成されているという、非常に味わい深いものとなっていました。
またテランたちが生まれたばかりの子どもという点を活かしていたのも面白かったですね。情緒や理性が育ちきっておらず自由奔放な子どもとして、主人公のロビー&モーたちと同様に成長していく過程が丁寧に描かれていました。特に序盤はわがままな彼らが大人の言うことを無視したり、逆に助言を経て学びを得るエピソードの多様さが目立っていた印象を受けます。「知らない人の言うことを鵜呑みにしない」「相手を見た目やイメージだけで決めつけたりしない」といった、子どもが見る番組らしい教育的な部分に繋がる要素もまた膝を打つポイントになっていました。
他にもテランが地球生まれ故に故郷を持たない、という点が彼らのアイデンティティに刺さっていました。後述の戦争の件でトランスフォーマーが忌み嫌われている現状、自分たちは何故ここにいるのか?と悩むエピソードが中々に興味深かったです。それだけに「故郷は場所じゃない、愛してくれる人のことだよ」といった言葉が目頭を熱くさせてくれました。ここに人もトランスフォーマーもない、種族の垣根を越えた愛情があるということを大いに感じた次第です。
そんなテランやマルト家が成長を重ね、中盤から物語の中核を担うようになっていった流れも大いに注目しました。はじめこそオプティマスやバンブルビーに頼りきりだったのが、徐々に彼らのみで事件を解決していくので視聴者としても感慨深いものを覚えます。人間もトランスフォーマーも家族として、一丸となって困難に立ち向かっていく様子はまさに理想的な共存の形の1つかもしれません。20話にオプティマスが「人とトランスフォーマーの絆」と例えたのも納得の光景は、これまでの作品とはまた異なる感動を生み出していたと言えます。
- 「戦後」だからこそ残すべきものは
もう1つの特徴である「戦後の世界観」は対照的に、最初から仄暗いものに触れていたのが印象的。そもそも物語開始時点でオートボットとディセプティコンの戦争が終結している設定が珍しく、オプティマスとメガトロンが既に仲間になっている構図には驚きを隠せなかったです。(それだけにドット母さんの活躍も含めて前日譚を見てみたくなってきます)そんな一見すると争いを止めて平和になったように見える光景ですが、徐々にそう簡単にはいかない現状を描き始めていくので回を重ねるごとに息を飲むこととなりました。
まずは野良ディセプティコンの存在。戦争が終わったことで行き場を失った彼らが隠れて悪事を行ったり、追われたりする様子が目に映りました。大半は危険な荒くれ者ばかりだったもの、彼らはそれぞれ戦争の影に引っ張られていたのが切なさを加速させていたと言えます。差別主義者と成り果て戦争を続けようとしたショックウェーブや、戦争再開の可能性に恐怖し人間不信に陥ったタランチュラスなど、各々異なる形で戦後の闇を担っていました。そんなディセプティコンを鎮圧しやり直すチャンスを与える、本作の戦いは総じて戦後処理に近いモノだったのだろうと改めて思いますね。
そして戦争が残した憎悪や差別意識の描写にも度々胸を抉られました。本作の敵キャラであるマンドロイドたちがトランスフォーマーを憎み、滅ぼそうと暗躍していたのも彼らの背景を思えばやや納得してしまうところ。そもそも人間たちは地球に訪れた彼らの争いに巻き込まれた側なので、復讐に走ってしまうのも仕方ないと思えてしまいます。彼らだけでなく一般人からのトランスフォーマーの当たりが強いシーンも同様。(こちらに関してはトランスフォーマーが難民・移民であることを考慮するとより生々しいものを感じます)戦争が残した爪痕が、共存の道を難しくしているのは見ていて歯がゆくなってきます。
そんな戦後の傷を取り扱うからこそ、主人公の子どもたちに多くを学ばせていく過程が響きました。戦争を知らない世代に自分たちの過ちを教え、逆に怒りや憎しみの連鎖を断とうとするメガトロンたちの在り方には思わずウルっときてしまいます。具体的なメッセージも「自分たちと違う考えを持つ人の存在を受け入れ」「そのうえで胸を張って生きる」といった勇気づけられるものばかりなのがまた素敵です。そうして子どもたちが上述の成長を果たすのですから胸が熱くなってきますね。反戦の願いを込めて、今を生きる若者へ希望を託す……様々な形で戦争を描いてきたトランスフォーマーの中でも、特に心に残る物語を魅せてくれたと思います。
では以下、各キャラクターについての所感です。
ロビー・マルト
モー・マルト
人間側の主人公。序盤から年相応の無鉄砲さや向こう見ずなところが強調されており、彼らの子どもらしい態度に様々な感情を抱くことになりました。(第1話でロビーが自分の感情を説明出来ずに叫んでしまうシーンなどがここすきポイント)その分テランたちに寄り添う優しさは一貫していたのは素敵なポイントです。またどこか奥手だけど勇敢な兄のロビーと、積極的でやんちゃな妹のモーといったように、性格がわかりやすかったのも親しみやすい要因になっていたかと思います。
物語が進むにつれテラン同様頼もしくなっていくのですが、同時に彼らに託された使命の重さにはハラハラさせられることに。中でもサイバースリーブの不調でロビーが苦しんでいく過程は、こんな幼い子どもたちが何故ここまで背負わなければいけないのか……!?と思ったほどです。しかし未来の希望として先人に託されたからこそ、それらの試練を乗り越える強さが必要だったのかもしれないと今は感じています。それはそれとしてクインタスプライムに文句の1つくらい言ってもいいと思うぞ!
ツウィッチ
スラッシュ
トランスフォーマー側の実質的な主人公。最初に生まれたテランの2人として、ロビーたち以上に幼く手にかかる様子がまず目につきました。遊びに夢中になる様子は微笑ましい反面、周囲に反発して問題を起こす場面は見ていてヤキモキすることが多かったです。トランスフォーマーから見たら赤ん坊に等しい存在だからこそ、何も知らないまっさらな状態故の未熟さがこれでもかと描かれていましたね。
しかしロビーたちを守ったり、妹弟が生まれたりする中で徐々に精神が成長を遂げていく過程は見事の一言。戦う力を求めるのも大切な家族を守りたい、という純粋な気持ちがあるから応援してくなってきますね。特にツウィッチは指揮官ぶりなどからテランのリーダーとして立派になっていったのが本当に素敵でした。人間とはまた別ベクトルで、人間とトランスフォーマーの未来を繋げてくれる存在として成熟してみせたことに感動が止まりません。
ハッシュタグ
ジョウブレイカー
ナイトシェード
中盤から登場した新たなテラン。ツウィッチたちに取っては妹や弟にあたる存在ですが、あちらと比べると序盤からしっかりしていたのが印象的。特殊な技能を身に着けていた分、個性もかなり強かったですね。それでいてお姉ちゃんお兄ちゃんに甘えるくだりもあるので、サイズに反して小動物のような愛おしさを覚えることもありました。(特にジョウブレイカーは終始末っ子のイメージがありましたね)
また彼らは上の2人よりも自分たちのアイデンティティについて考える機会が多かったように思えます。故郷のない自分に苦悩するハッシュタグ然り、スキャンの対象に迷うジョウブレイカー然り。普通のトランスフォーマーでもなければ人間でもない、そんな出生からくる周りとの差に焦る場面は見ていて胸が締め付けられました。結果的には自分を見つけ出せたものの、そこに至るまでの彼女らの苦労を前にに涙が溢れそうになります。
ドット・マルト
アレックス・マルト
マルト家の両親。いずれもトランスフォーマーに理解のある人物として描かれており、テランのことも最初から受け入れてくれるので見ていて安心感がありましたね。特にドット母さんは早い段階で戦ったり、家族を守ったりと頼りになる大人としての存在感を見事に発揮していました。(片足が義足なのにあんな縦横無尽なアクションが出来る辺りやはりトランスフォーマー世界の人間は強いな……)メガトロンを説得して戦争終結に導いたという背景も、この勇ましさの前では納得するほかありません。
対してアレックス父さんは温厚なトランスフォーマーオタクっぷりが素敵の一言。大好きなバンブルビーと会えてテンション爆上げしたり、可愛い反応をちょくちょく見せてくれるムードーメーカーとなってくれました。それでいて家族の危機には敢然と立ち向かうギャップもあるのが中々の好印象です。母親父親共に、子どもたちの成長を見守る大切な人たちだったと改めて思いました。
オプティマスプライム
ご存じオートボット総司令官。本作における出番は少ないものの、ここぞという時に力になってくれる勇敢な戦士として存在感は十分にあったと思います。マルト家の行く末を遠くから見守り、助けてくれるその雄姿はまさに偉大なリーダーそのもの。これまでのシリーズで積み重ねてきたイメージがあるからこそ、安定性のある優れた先達になってくれていました。
またメガトロンとの仲が結構良好に描かれていたのも素晴らしかったです。愚痴を零すメガトロンを諫めつつ、ゴーストとの関係を取り持つ大人の対応には舌を巻くばかり。何より彼のことを誰よりも評価し、力になってくれる関係性に惚れ惚れしますね。「メガトロンは誰よりも同胞のことを考えている真の守護者だ」と言ってくれるシーンなどは特に胸打たれましたよえぇ。(『トランスフォーマー/ONE』を観た後だと余計に泣けてくる……)
バンブルビー
ご存じシリーズのアイドル的存在。お馴染み木村良平さんのボイスで明るく陽気なキャラを見せながら、子どもたちを統率し導く教官ポジションとして活躍してくれました。ただ『アドベンチャー』のビーと比べると、テランたちの子どもっぷりもあって保育士さんの気苦労を見ている気分になりましたね。序盤は指導を面倒がって誰かに押し付ける様子も目立っていたのが懐かしいです。
その分テランたちとはまた別の形で成長していったのが本作のビーの魅力でした。自分の考えを押し付けるのではなく、彼らが何を望んで何が出来るのかを考えて支持する柔軟さを身に着けたことに関心を覚えます。終盤まで活躍する場面も多かったですし、彼もまたマルト家の一員のように扱われていくので見ていてほっこりさせられましたね。
メガトロン
ご存じ“元”ディセプティコン破壊大帝。シリーズでも結構珍しい、最初から味方のメガトロンとして出てきたのでそれはもう驚きました。途中でまた敵対する展開を予想したもののそれもなく、最後まで味方でいてくれたことにも衝撃を隠せません。口調も好戦的ではなく理知的、子どもたちにも終始優しいといった要素もメガトロンのイメージを良い意味で覆してくれたと感じています。
そしてオプティマス側に回ったが故に部下たちから裏切り者扱いされるのがこれまた新鮮でした。戦争を終わらせた立役者の反面、恨みを買うことになった不憫な役回りに同情を覚えます。(とはいえスタースクリームの言動からして昔は相当な暴君だったことが読み取れますが)そんな苦難にも耐え、孤独な同胞や今の世代に平和を残そうとするからこそ本作のメガトロンは尊敬に値すると思いました。
マンドロイド(メリディアン博士)
本作のヴィラン。トランスフォーマーの腕を付けたマッドサイエンティストというイメージに最初はフフッときたものの、話が進むと同時に明かされる彼の背景に鳥肌が立つことに。戦争に巻き込んで片腕を奪ったトランスフォーマーを滅ぼさんとする、彼の常軌を逸した憎悪に何度もショックを受けることとなりました。洗脳装置などやり方は非道、しかし憎む理由には頷かざるを得ないといったバランス感覚に何とも言えない味を覚えます。
そして自分の体を少しずつ機械に改造していくのが本当に衝撃的でした。最終的にはサイボーグと遜色ないビジュアルになるうえ、何かと苦しそうなので痛々しさばかりが印象に残ります。それ以上にロボットたちを憎みながら、自分もロボットに近づいている矛盾を抱えているのが恐ろしかったですね。目的のために身を滅ぼしていく哀れな復讐者として、これまでにない強烈なキャラクターに仕上がっていたと思います。(一度トランスフォーマーを全滅させてから事切れたことから、ある意味で復讐を果たしたのがまた空しくなってきますね)
というわけでアーススパークの感想でした。いやぁ久々のトランスフォーマーのテレビアニメということでワクワクして視聴しましたが、期待以上に楽しめましたね。従来のファンほど見応えのある要素満載で、かつ初見でも取っつきやすい作風で結構万人向けのアニメになっていたと思います。個人的にもここ十数年で見てきたトランスフォーマー作品の中でぶっちぎりで面白かったです。1年間、本当に素敵な時間を過ごせました。
そしてアーススパークは現在シーズン2がアメリカ本国で放送中とのことで、こちらが日本で放送されるのかどうかが今のところ気になっています。向こうでまだ完結していない以上は日本上陸はないというのはわかっているものの、早く見て見たいという気持ちが湧き上がってきます。最悪日本未放送の可能性もありますが、ここは慌てず騒がず、作品の行く末を見守っていきたいですね。
ではまた、次の機会に。
↓以下、過去の感想が書かれた記事一覧です。