ポケモンのゲームシリーズ最新作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』が先日、発売から1周年を迎えました。かなり広大な世界を巡る内容やシリーズの中でも屈指の傑作ストーリーで話題になりましたが、あれからもう1年経過したということに少々時の流れる速さを実感させられます。
それはともかく、そんなポケモンSV1周年を記念してYOASOBIさんがインスパイアソングを発表しました。タイトルはズバリ「Biri-Biri」。最初タイトルを聞いた時ビリリダマの曲かな?というジョークを考えてしまったのは内緒『響け!ユーフォニアム』で有名な作家・武田綾乃氏が手掛けた小説『きみと雨上がりを』の内容を元に、YOASOBIさん自身が作詞を担当したとのことです。
↑武田氏の小説については上のリンク先で読むことが出来ます。
そんな下敷きとなった小説と合わせて曲の感想を書きますが、一言で言うと「ネモに関する解像度の高さに感動した」といったところ。SVのライバルポジションであるネモが抱えているモヤモヤ、本気でポケモンバトルが出来ないことへの釈然としない感情が描かれており、まずこの時点で胸が締め付けられました。普段の明るい態度の中に隠れた鬱屈とした部分を、小説ではわかりやすく見せてくれているだけで唸らされます。
そこからゲームの主人公(小説内では「アンナ」という名前の女の子)との出会いからバトルを繰り返していくにつれて、ネモの見る景色が変わっていく過程がこれまた見事。自分の全力を受け止めてくれるライバルがようやく現れたことで、ネモがこの世界の美しさに気付いていく場面でウルっときてしまいましたよえぇ。ネモの内面を移すことで彼女の魅力を引き出してくれる作品として満点の内容だったと思います。
そんな小説から作られた曲も最高です。ネモが主人公との日々を重ねることで刺激を受けていく様子を表現しており、相手をライバルと見定めた瞬間を「キミに決めた!」という歌詞で乗せる辺りに、YOASOBIさんの作品理解度の高さが伺えます。他にもポケモンゲームの初代『赤・緑』から歴代シリーズのタイトルを歌詞の中に組み込むといった小ネタにもニヤリとさせられますね。MVの映像もこれまたエモに満ちた内容で本当に見応えがありました。(ゲンガーが2人の手を繋いであげるシーンがここすきポイント)見て・読んでゲームのSVをもう1周したくなるほどに、この世界観に入り込みたくなる素敵な体験をくれた両クリエイターに感謝を送りたいほどです。
というわけで以下、今週の簡易感想です。
ポケットモンスター テラパゴスのかがやき
第29話「オリオとモンスターボール職人」
今回はライジングボルテッカーズのメカニック担当・オリオにスポットが当たりました。モンスターボール職人の「カーナ」との出会いから意気投合する様子にオリオの離脱を予感したリコでしたが、全くの見当違いに終わってちょっと安心。視聴者視点からするとそんな馬鹿なとなりますが、冒頭での大変そうな様子とカーナとの楽しそうなやり取りを比べて危機感を覚える辺りが何とも微笑ましかったです。(リコたちのこういう子どもっぽい勘違いを見ているとほっこりしますね)
何より今回はオリオの「やりたいこと」について描かれていたのが注目ポイント。「やったことがないこと」という一見曖昧なものですが、見たことのないものを学んだり触れたりしていくことへのワクワクを味わいたい!というのはリコたちの冒険に通じるものがあります。順風満帆な人生ではなく、大変だけど未知なるものへの興奮を求める姿勢から、オリオもまたライジングボルテッカーズの一員であることがわかりました。
他にはオリオとフリードの信頼関係も見逃せませんね。ガラルマタドガスの大群を鎮めるために排気ガスを大量放出する作戦はフリードのポケモン博士らしさが出ており、同時にその詳細を聞かずともフリードの指示に応えるオリオに感動させられました。突拍子の無いことだろうと困難を突破してくれる……そんなオリオのフリードへの無言の信頼が感じられてニヤニヤが止まらなかったです。
Dr.STONE(3期)
第17話「JOKER」
銃という切り札の対策もしてきた強敵モズを相手に、ついに危険な切り札(ジョーカー)である氷月を投入!復活した矢先に裏切るかもしれない危険性を孕みながらもこうせざるを得ない緊張感、そして氷月が千空たちの側についてくれた時に興奮が見事に描かれていました。何といっても氷月のちゃんとしている(優れている)相手への敬意はもちろんのこと、モズのズレた回答から味方になってくれる流れがはっきりしていたのが良かったですね。ハンサムな素顔を晒して「ちゃんとしてますよ、私の仲間たちは」という場面は最高にカッコよかったです。まぁ氷月が戦ってくれているとはいえモズに勝てるわけではないのですが。
一方イバラの邪知暴虐が本性を見せ始めたのも今回の見どころの1つ。味方すら犠牲にする卑劣な手段にキリサメが異議を唱えるシーン(頭首が健在だった頃の回想シーンでキリサメの忠誠心を見せるのがここすきポイント)に胸熱を覚えたのも束の間、頭首石化がバレた途端彼女を石化させる切り替えの早さには何度見てもビビります。それ故頭も切れる厄介な相手に役立たずかと思われた陽が銃で一矢報いるのがこれまた最高でしたね。陽のMVPっぷりは上の氷月に並んで今回のサブタイである切り札(ジョーカー)を体現していたと思います。何より原作でも特に盛り上がった部分のアニメ化にテンションが爆上がりしっぱなしですはい。
呪術廻戦(2期)
第41話「霹靂-弐-」
前回の時点で戦闘シーンがヤバかったのに、さらに超えてきやがった!!伏黒が重面春太を倒すため調伏出来ていない式神「魔虚羅(まこら)」を召喚。自分もろともの戦法に出た伏黒を救うため、宿儺と魔虚羅という奇妙なマッチングが始まった時はその激しい戦いに呆然とするほかなかったです。建物を次々と破壊しながら戦う両者はさながら地震と台風がいっぺんに来た感覚で、巻き込まれた人々が無情に吹っ飛ぶ様もあって怪獣映画を観ているかのような気分に陥りました。それが漏瑚戦をも上回るハイクオリティ作画で描かれているのですから感嘆するほかありません。極めつけの宿儺の領域展開「伏魔御廚子(ふくまみづし)」は最早何が何やらとなり、ひたすら圧倒されてしまいましたね。
そんな宿儺の驚異的な強さが前回に続いて描かれたことに興奮を覚えた一方、虎杖が体を取り戻してからの様子には胸が苦しくなってしまいました。宿儺がやったこととはいえ自分のせいで大勢の人が無くなったことにショックを受けるシーンは見ていられなかったです。(伏黒もまさか自分が魔虚羅を出したせいでこうなるとは思っていなかっただろうし、後々深く後悔しそう……)OPの「SPECIALZ」がここで流れる特殊演出も相まって、息を飲むと同時に主人公の境遇への哀しみを引き出されてしまった気分です。特に虎杖が慟哭の後、絶望と狂気に染まった無表情を見せてのラストはあまりにも衝撃的でした。そのためここまで主人公のメンタルを削ることある!?と思ってしまいますね。
葬送のフリーレン
第11話「北側諸国の冬」
アウラたち魔族を倒したフリーレンたち。今回はそんな一行が戦いの後始末を含め、穏やかな旅の日々に戻っていく様子が描かれました。血生臭いバトルが続いていたこともあってか、ゆっくりと日常を過ごしていく過程にどこか胸が熱くなりますね。グラナト伯爵ら城下町の住人たちとも良好な関係を築いていく光景、そして死者を悼むシーンがダイジェストで流れる演出にも不思議と情緒を揺さぶられました。
そして後半では武道僧(モンク)のエルフ「クラフト」が登場。ついにフリーレン以外のエルフが出てきましたが、半裸でのスクワットやらシュタルクと添い寝やらのインパクトが強すぎてそれどころではなかったです。とはいえ北川諸国での極寒を共に乗り越えていくシーンなど、決して悪い人ではないことは十分に伝わってきます。それでいてフリーレンとの会話も意味深で、長い時を生きるエルフ同士故の共感といったものがあるように感じました。
何よりクラフトが語った女神への信仰が興味深かったですね。「自分の功績を褒めてもらう」という考え方には特に感心させられました。人の死が誰かに忘れ去られることだとしたら、自分を覚えてくれる“誰か”の存在はなるほどその人の生きる糧となるでしょう。かつてハイターが語ってくれた話も含め、ファンタジー世界の宗教の描き方として実に素敵な考えだと思います。
遊☆戯☆王ゴーラッシュ!!
第85話「時空教室」
クァイドゥールの策略によって彼のデッキとされてしまった遊飛たち。カードにされた仲間たちが敵のデッキとして使用されるという衝撃展開だったのですが、学校のような仮想空間で待機させられるシーンがシュールすぎて呆然と視聴してしまいました。白いTシャツにカードのイラストが描かれていたり墓地が体育倉庫だったりと、さながら生徒たちという人形で遊んでいる様子に笑っていいのかと困惑せずにはいられなかったです。
しかもユウディアスがデュエルで敗北し、クァイドゥールの目的が「全宇宙をカードに変える」ことだと判明する展開にも鳥肌が立ちました。自分以外をゲームの駒として遊ぶクァイドゥールの所業は子どものような無邪気さもあって、より上位存在としての恐ろしさを強調させていたと感じます。デュエルの後に解放されたもののそれは一時的、クァイドゥールの気分次第でまた呼び出されるかもしれないというのがこれまたゾッとさせられますね。
またクァイドゥールが今回のデュエルで使用したカードは遊飛たちのカードだったわけですが、上級モンスターばかりで案の定手札事故を起こしていた点には逆に大笑いしてしまいました。ネツゾーとアサカのカードがなかったらどうするつもりだったのでしょうか。(恐らくまだデッキとして「調整している」真っ最中なのかもしれませんが)一方でクァイドゥールの新たなエースであるトランザム・プライム・アーマーノヴァがユウディアスと重なるシーンが意味深でしたね。このカードこそがユウディアスの正体など、そういった“何か”があるような気がしてなりません。
トランスフォーマー アーススパーク
第8話「いいもん?わるもん?スインドル」
モーとスラッシュを誑かして仲間にしようとするスインドル。今回はそんな彼の悪辣な本性に慄くことになりました。ウソ泣きやハードトップとの過去など息をするように嘘をついて2人を騙し、用済みとなれば即座に排除しようとする手段の選ばなさにまずゾッとさせられます。それ以上にバンブルビーを相手にした時など、いつもの語尾やおどけた態度が無くなってからは本当にビビりました。声色は変わっていないはずなのに別人レベルの豹変に見えてくる……加藤さんの吹き替えも相まって、スインドルの悪役としての恐ろしさがこれでもかと盛り込まれていたかと思います。
そんなスインドルに最初は騙されたものの、徐々に違和感に気付いて立ち向かうモーたちも見どころの1つとなっていました。個人的にはスラッシュがスインドルから離反した理由が「友達のモーを銃で脅したから」なのが素晴らしいです。一方でモーはスラッシュの盾を拾いに行ってあげたり(拾った盾でスインドルの攻撃を防げる辺り、モーもやはりTF世界の人間だなぁ……)と、この2人の絆が読み取れました。何より鬱陶しいと思っていたルールが「自分たち子どもを守るため」であることを学ぶ流れも見事の一言。前回と合わせて、子どもたちに向けた教育的なエピソードとしてわかりやすかったですね。
そういえば私事ですが不肖メタレドは、先々月にポケモンスカーレットのメインシナリオの最終章「ザ・ホームウェイ」を無事クリアしました。いやぁ1年近くかかってようやくクリアするという体たらくでしたが、何とかやり切ることが出来て一安心です。内容も歴代のポケモンゲームの中でも特に凝ったストーリーとなっていたので各ルートの終盤に行くにつれてのめり込むことが出来ました。特にラスボスとの最終決戦における“あの演出”には興奮のあまり内心叫びまくってしまいましたねはい。このままDLCを導入して続けてプレイしていくのもアリですが、ひとまずこの後はジムリーダーとの再戦や学校最強大会などをのんびりマイペースにやっていきたいと思います。
ではまた、次の機会に。