ここからが、ハイライトだ!!
毎回驚きながら楽しめた作品だった
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令和仮面ライダー4作目として制作された『仮面ライダーギーツ』。多人数ライダーによる生き残りバトルという『龍騎』を彷彿とさせる設定ながら、これまでの作品とは異なる世界観の構築やバトルの要素など多くの“イマドキ”を取り入れた作品でした。その結果、令和ライダーの中でもかなりの人気を獲得したかと思われます。僕にとっても毎週の放送でどうなるのか、予想のつかない点などを楽しみに見ていましたね。
先に評価点について語りたいと思います。
基本的に本作は様々な意味で「予測がつかない」展開というものに満ち溢れていました。まず第1話から参加者であるライダーが次々と脱落していき、メインキャラを除くと誰が退場するのかといった緊迫感、どこか仄暗い駆け引きの数々が目を引きます。またライダー同士のバトルではなく毎回異なるルールで競い合う形式上、普段の怪人や敵ライダーを倒す戦いとは大きく異なる頭脳バトルが繰り広げられているのも特徴的でした。登場ライダーの数や変身者の多種多様さも相まって、どんどん出てきてはいなくなるライダーたちに何かと目が離せなかったです。
ストーリーの流れに関してもデザイアグランプリを開催する運営側の思惑などに触れていき、その真実が明かされるたびに物語の雰囲気がひっくり返されることが何度もありました。視聴者がある程度予想出来たものも、別方向のサプライズを以て描くことで衝撃的なものに映ることがありましたね。オーディエンスの正体や理想の世界を叶える仕組みの秘密など、隠されている情報を定期的に明かすことで見ている側が飽きることなく驚かせられ続ける情報を提供し続けられていたと思います。
また近年のライダーシリーズでは珍しくゲストキャラがほとんど登場せず、基本はメインキャラのみで話を回していたのも印象深いです。これはゲーム参加者の物語を描いている都合上他の面々を出すのは難しかったということでしょう。そのおかげで英寿をはじめとしたライダーたちが抱えている問題や背景、それらを乗り越えていくストーリーが濃密に描かれていったとも言えます。同時に「黎明」「邂逅」「謀略」……といった章分けによる見やすさも大いに働いていました。
作品のテーマについて語る場合はやはり「幸せ」「願い」といった要素、それらの正負の両側面に触れたいところ。劇中で開催されるデザイアグランプリはデザ神になった勝者の理想が叶えられることから、願いのために他人を蹴落とすといった容赦のない生き残りゲームが展開されていきました。加えてそれを見世物にするオーディエンスの存在により、他者を傷つけあう行為やそれを見て楽しむ人間の醜悪さがこれでもかと伝わってきたことと思います。(またオーディエンスがデザグラを楽しむ様子が「本作を楽しむ現実の視聴者」に結び付く点にも膝を打ちます)「幸運の量は一定」といった理屈も幸せのイス取りゲームの恐ろしさに拍車をかけていましたね。
ここまでだと幸せを求める問題だらけになっていましたが、そのうえで自分の幸せのために戦うことの尊さなどをしっかり描いていたのでかえってスッキリするものになっていたのが面白いところ。過酷な境遇に身を置かれながらも、個人としての願いを諦めない……そのために誰かを犠牲にすることを良しとしない戦いは見ていてかなり気持ちのいいものになっていました。最終的に「誰もが幸せになれる」という一見綺麗事に思える理屈を、自然に物語の答えとテーマとして持っていったラストに舌を巻くばかりです。
そして特撮という作品上重要なアクションと販促、それぞれの側面は過去トップクラスだった点も見逃せません。前者はCGと様々な角度を駆使した多彩な戦闘シーンが特徴的で、必殺技を繰り出す瞬間の構図などは特にカッコいいものが多かったです。また劇中で登場する特殊能力を駆使したバトルも魅力的なポイント。中でも代表的である創世の力を駆使したギーツⅨの建造物の破壊・創造の絵面は迫力満点でした。主人公が圧倒的に強い要素も上手いこと働いており、物語のフレーバーと自然に合致していましたね。
続いて後者に関してはレイズバックルの使用頻度の高さが挙げられます。拡張アイテムが参加ライダー共通で使える利点から、多くのバックルが終盤まで満遍なく使われ続けました。主人公が他のバックルでフォームチェンジすることもあればサブライダーが主人公のメインバックルを使用する……多人数ライダーであることを活かし、小型から大型まで幅広く揃っているバックルによる活躍を魅せてくれました。個人的には一見性能の低い小型バックルでも、使い方によってはアームドプロペラのような唯一無二の個性を発揮するところが好ましかったです。総じてカッコいいライダーや、様々な装備を扱うバトルを見たい人に合致した内容に仕上がっていたと思います。
さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。
まずストーリーの難解さからくる登場人物の行動や、デザグラという舞台における不自然さを挙げたいと思います。序盤の謎に満ちた展開が続くこと自体はまだシンプルでわかりやすかったものの、中盤から敵味方が反転したり登場キャラの行動の変化に困惑させられる場面がかなり多かったです。例えば慟哭編でジャマトグランプリ側に回った道長が自然と英寿と行動するようになったりと、一応は理解出来るものの目まぐるしい転身ぶりでもあったので把握するのが大変でした。
終盤の景和の暴走なども典型例でしたし、さらに五十鈴大智は功罪共に大きすぎて視聴者としてもどう扱えばいいのか難しかったですね。これらの登場人物のやってきた行いに対してどう受け止めるのか、彼らの償いをどう感じて許すのか、視聴者として試されていた点はかなり大きかったと感じます。これ自体は一概に悪いことではありませんが、この見ている側の判断に委ねるキャラクターの扱いについては朝の番組としては少々難儀な内容なのでは……?と考えてしまう場合もありました。
またジャマトグランプリに参加するエピソードなど、わざわざ敵側の奇抜なルールに参加することになる展開にちょっとした疑問を覚えてしまったり。この辺りは否応なしに戦うほかなくなっている状況が多かったものの、ルールの強制力などは特に説明されていないので少々不自然に思ってしまうこともありました。ゲームの舞台を用意する関係上、参加者が逃れられない身に陥っていることをもっと表現してほしかったと思うところです。
続いて上述でも評価していたアクション面ですが、ライダーの活躍が見事だった一方で怪人側の描写で不満を覚える面もあります。というのも本作に登場するジャマトのバリエーションの少なさ、怪人としての個性の無さが物語の中で度々引っ掛かっていたからでしょう。ビショップジャマトなど派生の種類も存在していたもののそればっかりになっていたので、ジャマト戦の代わり映えの無さはどうしても気になってしまいました。ジャマト自身の主張がほとんどない点もあり、本筋にあまり関わらなかったせいで怪人としては過去作でも特に味気なかったです。
またジャマトに関しての扱いにも問題を感じています。最初謎の敵として登場し、後に脱落者から作られた・人為的に生み出された存在であることが判明するホラー要素を担っていたジャマト。さらに終盤ジャマトになってしまう恐ろしさなどを散々描いたうえで、ジャマトの共存についても触れてきた時は驚きましたね。上の大智の改心同様、唐突に感じたのもあって少々ピンとこない展開になってしまっていました。ジャマトを人間から作られる恐ろしい存在にしたかったのか、それとも人間のように考え生きている命にしたかったのか……その辺りが不明瞭なまま進んでいたので、結果的にどっちつかずな怪人になってしまった印象は否めません。(※この辺りの不満はVシネである程度解消されましたが)
総評としては「飽きさせないストーリーについてこれるか?」といったところでしょうか。「邂逅編」といった章分けによる展開の変化やメインキャラの描写を重視した点など、視聴者が見ていて楽しめる工夫が幾重にも施された物語に仕上がっていました。特に中高生や目の肥えた特撮オタクに刺さるものが多く、彼らのような世代から評価を受けていたと思います。実際過去のライダーを知っている身としても、本作の斬新さや濃密な要素が楽しめましたね。その分見辛い点も多く話の理解に時間がかかりましたが、それもまた個性として受け止めていきたいところ。令和ライダーの新たな方向性を決定づけた人気作品として認識していく所存です。
では以下、各キャラクターについての所感です。
浮世英寿/仮面ライダーギーツ
本作の主人公。近年のライダーの中でもかなり珍しいレベルの最強主人公で、最終的には『鎧武』の紘太のように神様になってしまう経歴も衝撃的でした。(「神様になった主人公」で前例があるライダーシリーズってとんでもねぇな)苦戦描写も少なく、戦闘以外でも周囲のみんなを引っ張っていくカリスマを発揮するといった要素も濃かったです。「やっぱり主人公は強くて頼もしい方がいい!」といった人ほど刺さるタイプのキャラクターだったと思います。
性格に関しても飄々とした態度で全てを見通すスカしっぷりが特徴的。目的も「母親に会う」といったシンプルなものでそのために悩まず行動していたので、ミステリアスながらストレスフリーで見られたかもしれません。といっても正直人間味が感じられないキャラでもあったので、個人的には親しみを覚えられないのが問題と考えますね。転生者にして神になった男の超然的な態度を好ましく思えるかどうかで、評価が変わりそうな主人公であったとも言えます。
ツムリ
本作のヒロイン。当初こそ得体の知れないナビゲーターらしい存在感を放っていましたが、徐々に便宜上家族になった英寿に振り回される場面が多くなったのが印象に残りました。ただ最初のミステリアスな雰囲気はどこ行った!?と思う一方で、「姉さん」と呼ばれて即座に否定する必死さが魅力的に感じましたね。
終盤ではミツメに代わる次代の創世の女神として用意された事実などショッキングな身の上が判明し、それらを巡った物語も展開されるのが興味深かったです。また最後までライダーに変身することなく、見守る側の役割を全うしてくれたのも好印象。英寿の軌跡を見てきたナビゲーターとして、十二分の活躍だったと思います。
桜井景和/仮面ライダータイクーン
2号ライダーにして一般人(?)枠。いわゆる「巻き込まれ側」として登場し、序盤から視聴者の目線で物語を進めてくれる存在だったと言えます。英寿が何を考えているのかわからない分、デザグラの過酷さに戸惑ったり立ち向かったりする景和のわかりやすさには大いに助けられましたね。人々を助けたい一心で行動する善良さもあって、劇中では何度も好印象を抱きました。
一方で姉に対する愛情の深さ故の問題、そこからくる暴走と迷走なども彼を語るうえで外せないポイント。姉が危機にさらされた時の反応など以前からその兆候を仄めかしていましたが、いざ姉が死んでからの豹変ぶりには度肝を抜かれました。人々の幸せを願う姿も嘘ではないものの、身内を何よりも優先する人間臭さはある意味で一般人として完成されていましたね。だからこそケケラの策謀を乗り越え、ヒーローになっていく過程に感動させられます。
鞍馬祢音/仮面ライダーナーゴ
ちょっとお騒がせな3号ライダー。映像配信者としての側面や家庭環境の問題などの背景など、序盤からお労しい要素全開のヒロインでした。それだけでも重いのに、「殺された本物の鞍馬家長女の代わり」という事実のショックは本当に大きかったです。デザグラの倫理的な問題やそれらを非難するオーディエンスの醜さなど、本作の意地の悪い部分の被害を一手に受けていた可哀想な役回りでもありました。
そのためキューンとのやり取りなど、中盤での感動要素も多かったです。慟哭編での悲劇から創世編での家族との和解など、多くの問題を解決してから幸せを目指していく過程には大いに勇気付けられました。上述にもあるネガティブな側面を受けながらも立ち上がる、本作のポジティブさを同時に担っていたのも祢音の大きな特徴です。
吾妻道長/仮面ライダーバッファ
実は景和よりも2号っぽかった気がする4号ライダー。英寿に次ぐベテラン扱いでピリピリした態度とは対照的に、言動や行動の節々から感じられる根っこの真面目さなどが感じられる絶妙なキャラクターでしたね。また要所要所で脳筋ぶりを発揮していた(マグナムバックルを使いながら銃で殴るという戦闘スタイルは本当におかしかったです)のもあり、早い段階から愛されキャラとしての地位を確立していたと思います。
そしてデザグラで死んだ親友の徹への想いや、彼を踏みにじったデザグラに対する憤りも道長の魅力。真っ当に生きようとする人を蹴落とす、醜いエゴに対して怒りで異を唱え続ける姿には何度も胸打たれました。途中でベロバに協力するなどなりふり構っていられないところもありましたが、そちらに関しても道長の不器用ぶりを考えると十分に理解出来ます。それ故に最終的には仲間たちを放っておけない立場に戻って一安心しましたね。
というわけでギーツの感想でした。本編の放送終了から約半年経って、ようやくの投稿になってしまいました。現在放送している『ガッチャード』など他の作品の感想やリアルでの忙しさもあったものの、ここまでかかってしまったことは正直情けなく思っています。当ブログでの本作の感想を待っていた人に対しては、本当に申し訳なく思っています。
僕自身ギーツという作品をどう受け止めていいのか迷っていたのですが、ようやく何とか文章にすることが出来てホッとしています。本作を楽しんで見ていた人にこの総評がどう映るのか気になるところです。同時に、少しでも本作への楽しんだ感情などが伝わってくれれば幸いです。このまま勢いでVシネギーツの感想にも着手していきたいですね。
ではまた、次の機会に。
↓以下、過去の感想一覧です。