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仮面ライダーギーツ 第41話「創世Ⅲ:漆黒の将軍」感想

純粋な願いが、黒きエゴで塗りつぶされる

令和の敵キャラは大スクリーンで演説をやりがちな件

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  • 変わらなかった青年が堕ちる時

 前回に続いて景和関連でしんどい展開ばかりだった今回のギーツ。姉・沙羅を失ったことで心が折れてしまったのは言うまでもありませんが、部屋の荒れようなどでこれでもかと見せつけてくるのが何とも辛かったです。以前までの優しい性格はどこへやら、荒みまくった態度を見せていたのも胸に来ましたね。

 そんな彼の傷心にケケラがつけ込んでくるのは予想通りだった一方、景和がツムリに頼んで後述のバックルを作らせたことにはショックを受けました。復讐を果たす力を得るためとはいえ、ツムリの同情を利用してくる景和は正直言って見たくなかったですね。(ただ異性への詰め寄り方からしこいつヒモの才能があるな……と同時にちょっと感心してしまったり)目的を果たすためにダメ男としての側面を発揮していく景和の様子は見ていて本当に苦しかったです。

 ただ一方で景和という人間の本質が見えてきたのは興味深かったです。沙羅の存在の大きさが判明したことで、彼は身内本位の一般人であるように思えてきました。世界平和といった願いが基本漠然としているのも多くの人が「何となく」抱いているようなものに過ぎず、お人好しに見せかけて自分のエゴのために行動しているのが桜井景和なのでしょう。目の前のことでいっぱいいっぱいになっているのは以前から描かれていましたが、それが真に迫るほどになるほど追い詰められているのが今の景和の状態とも言えます。

 善良な一般人だからこその視野の狭さもあり、景和の人間性がここにきて妙に生々しさを帯びてきているように感じました。一方でそうなるのも当然なのかもしれない、と視聴者が納得いくほどに景和の不自然さなどが描写されてきたこれまでの構成にも舌を巻きますね。劇中で「俺は何も変わっていない」と本人が言っていたように、結局のところ彼は序盤から何も変われていないのでしょう。そんな景和がここからどこまで堕ちていくのか、気になるものの怖くなってきましたね。

 

 

  • 復讐の刃を光らせ猛撃する漆黒の狸将軍

 

SET AVENGE.

 

BLACK GENERAL!

BUJIN SWORD!!

 

READY FIGHT……!!

 

 景和がツムリに創世の力を使って作らせた「ブジンソード」レイズバックルで変身したタイクーンの最強形態「ブジンソード」。待ちに待ったタイクーン個人の強化フォームですが、闇堕ち同然ともいえる状況で手にしたこと、何よりこれまでのタイクーンのカラーリングとは大きく異なる黒いボディカラーから真っ当な強化とはあまり思えませんね。デザインもニンジャとコマンドの両フォームをベースとしていながら、顔を覆い隠すバイザーと漆黒のマントが追加されたことでまるで別物の印象を受けます。上述の変身音にもある通り、さながら遊び心を排した「黒い将軍」のようです。

 戦闘能力に関しては通常バッファを一方的に追い詰めるほどに強化。専用武装である「武刃(ブジン)」を用いて敵を切り伏せる戦闘スタイルになっており、向かってくる相手の攻撃をいなして自分の斬撃をぶつける構図はまるで居合といったところです。激しく動くこともなく、最小限の動きで敵に最大のダメージを与えているようにも見える姿は、以前の素早さを活かしていたタイクーンのイメージとはだいぶ異なっていますね。さらにバックルの刀の部分を納刀→抜刀するシークエンスを経て必殺技を撃つ流れも中々に渋いです。(墨のような黒いオーラが画面を覆い尽くす演出も良き)景和の心の荒みようをそのまま反映させたようなフォームのため素直に喜ぶことは出来ませんが、強化フォームとしてはとてもカッコよさげに仕上がっていると思いました。

 

 

  • それぞれの苦悩

 景和以外にも味方側が全員曇っていたのも今回の特徴。上述のようにツムリは景和のお願いに応えてしまうほど彼に同情していましたし、戦えないことに歯噛みする祢音や自分でステージ2の寄生ジャマトを倒していく道長も見ていて胸が痛みました。特に道長は自分が罪を背負うことでジャマト騒動を終わらせようとしているのが悲しいですね。大局的には正しい行いかもしれないものの、反感を持たれても仕方のない行為だと言わざるを得ません。(しかも道長は言い訳をしないので余計に景和との話がこじれる地獄)道長の不器用さがここにきて仇になってきている気がしました。

 祢音は他には父・光聖と面会するシーンでやたら他人行儀だったのも印象的。彼ならもう一度仮面ライダーになれる力を与えてくれるかもしれないという目的で来た中、「自分をここから出せ」としか言わない父に心の底から失望しているのが丸わかりでした。母も母で祢音を縋ってくる姿が狂気的でしたし、家族関連で未だに苦しめられる彼女に同情を寄せずにはいられません。

 そんなどこを見てもお通夜ムードな中唯一明るく振る舞っていたのが英寿で、ツムリをブティックで変装(という建前で着せ替え人形化)させていたのがどこか微笑ましかったです。彼にとっても沙羅の死は悲しいはずなのに、ツムリたちを気遣うのは流石と言ったところ。しかしツムリ本人はそこまで乗り気ではなかったためにあまり盛り上がらなかったのが残念でしたね。「愛がなければ人は幸せになれない」という、ツムリの呟きには見ているこちらも顔を伏せずにはいられませんでした。(そんなやり取りが繰り広げられていたブティックの店名が「LOVE LESS」なのが余計酷い……)前回に続いて景和と沙羅の姉弟が、英寿たちにとってどれだけ重要なのかを思い知られされる回でもあったと思います。

 

 

  • 悦楽と謀略の敵サイド

 主人公たちが辛い目に遭っている一方で敵側はやっぱり楽しそうだった件。中でも大智が謎のカルト宗教を始めていたのが衝撃的でしたね。突然「世界は消滅する」とか放送をしながら、人々の不安を煽ってくる光景は中々にシュールでした。(令和になってから似たようなことをやっている敵キャラが毎年出ている気がする……)それでそこそこ人が集まっているらしいのがまた恐ろしいです。犠牲者になったであろう人の顔面が浮かび上がった人面樹を育てている描写もあり、狂気的なままエンジョイしまくっている様子には思わず慄いてしまいます。

 他にも景和をそそのかすケケラや道長を嘲笑うベロバ、サポーターコンビは例によって絶好調。何でもかんでも自分の思い通りになっていて嬉しそうなので見ているこちらはフラストレーションが貯まる一方です。特にケケラの景和を奮い立たせようとする言動は『ビルド』のブラッドスターク(エボルト)を彷彿としましたね。元凶のくせにいけしゃあしゃあと主人公たちを立ち上がらせる演技の良さには複雑な感情を抱きます。

 あとはデザグラ運営側なのですが、ジットは顔が険しいままなので何を考えているのか少々わかりにくかったです。しかも何も望んでいないかのような言動や「強い願い」について語る様子など、意味深な行動が気になって仕方なかったですね。(まぁ英寿とウィン相手に生身で圧倒する実力の方がもっと気になりましたが)同盟相手が楽しそうにしている中、1人だけ淡々と目的を果たそうとしていそうなジットには要注目となりそうです。

 

 

 そして次回は景和の復讐がさらなるステージに突入。ジットやケケラと結託し、大智に狙いを定めるようです。確かにそもそもの元凶はこの男なので復讐の矛先を向けるのは当然ですね。ただケケラたちと手を組んでいるのが不穏です。自分の理想の世界を実現するためにツムリを利用しようとしているようですし、完全に英寿たちと敵対する流れになってしまうのでしょうか。

 他には予告でチラッと映った謎の怪人が気になりますね。見た目や立ち振る舞いからしてベロバとケケラが変身した姿のようですが、これは例のブラックカードによるものでしょうか。新たな力を得たサポーター2人が何をしてくるのかにも目が離せなさそうです。

 

 

 ではまた、次の機会に。