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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第23話「譲れない優しさ」感想

夢の花が赤く輝く

ここまできてどうやって終わるのか、それが問題だ

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  • 深き“愛”のぶつかり合い

 ついに始まった最終決戦。クワイエット・ゼロを止めようとするスレッタ陣営の奮闘と、対応するエリクト&プロスペラの激闘が描かれました。データストーム内の周辺ではスレッタのキャリバーンVSエリクトのエアリアルの戦いが、クワイエット・ゼロ内部ではミオリネVSプロスペラの攻防が繰り広げられていたのが印象深かったです。(誰が言ったか「妹が嫁を連れて実家の母たちに殴り込み」)

 まずお互いに相手のことを想っているスレッタとエリクトの意地のぶつかり合いが大きな見どころでしたね。最初からスレッタを巻き込みたくないと考えていたであろうエリクトに対し、自分の意志で2人を止めようとするスレッタにグッときました。それも憎しみではなく“愛”を持っているからこそ、家族が悪者になってほしくないというスレッタの健気さが特に胸に響きます。エリクトも冷淡な態度ながらスレッタへの愛情が感じられましたし、相手を愛しているからこそ止めたい/諦めさせたい構図はまさにサブタイの「譲れない優しさ」そのものだったのでしょう。

 そして“愛”の戦いはクワイエット・ゼロ内での嫁姑対決でも描かれていました。エリクトのために計画を進めるプロスペラに対し、スレッタのことを出して「親なら平等に愛しなさいよ!」と言い詰めるミオリネにはちょっと惚れ惚れしてしまいます。加えてシステムに介入するためのパスワードがミオリネ母が残したトマトの遺伝子コードだったことには膝を打ちましたね。前回サラッとトマトに込められた「母の娘への想い」が明かされていましたが、それが逆転の鍵になる展開は爽快感抜群です。何より「母は強し」と言ってきたプロスペラの計画を、ミオリネの母の愛が止めた構図も見事です。これまた母は強し、という名の愛の力が示されたと言えますね。

 まぁそうしてクワイエット・ゼロを食い止めるのに成功しましたが、最終的にエリクトはエアリアルとガンドノートごと大破してしまったのはかなりショッキングでした。L1惑星間レーザー送電システム「ILTS」という本作のコロニーレーザー枠からみんなを守るため、その身を犠牲にしたエリクトの家族への愛情には思わず涙が出てきてしまいます。ここまで過激にスレッタを追い詰めていたものの、エリクトは姉として妹を愛していたのは間違いないでしょう。お互いの愛の重さがのしかかり、それ故に意気消沈してしまいそうになるラストでしたね。

 

 

  • 兄弟喧嘩と意外な仲裁MVP

 スレッタたちの激戦の一方で、グエルとラウダの命がけの兄弟喧嘩が勃発していたのも今回のポイント。前回の時点でそうでしたが、唐突に乱入してきて面倒くさい感情を見せつけてくるラウダに少しだけ笑ってしまいます。とはいえグエルの気高さを理解しており、それ故に自分を頼ってくれなかったことに不満をぶつける様子はどこか悲しかったですね。ミオリネへの逆恨みはどうかと思うものの、全てを背負おうとする兄を憂う想いは本物と言えます。

 対するグエルもラウダの想いを受け止めたうえで「自分とラウダが傷つく」ことを恐れていた胸中を告白するのが素晴らしかったです。ここ最近は進んできたグエルですが、弟に関しては尻込みしっぱなしな辺りにラウダのこを大切に想っているのが伝わってきますね。父を殺してしまった時と同じシチュエーションで、弟の攻撃を受けたのがまた意味深です。この兄弟もまた、互いのことを想うが故にぶつかる“愛”の深い戦いを繰り広げていたと言えます。

 まぁそんな感じで本音をぶつけ合ったうえでの和解、身を呈したグエルの行動など彼の死亡フラグが積み重なってこれはグエル退場か……!?と胸がザワついたところに、フェルシーが救出してくれる展開には思わず声を上げてしまいました。兄弟喧嘩で死ぬとか笑えない」というごもっともなセリフと共にグエルのディランザを消化してくれるシーンに驚かずにはいられません。そしてガンダムシリーズにおいてほぼ100%の確立で片方が死ぬフラグのオンパレードを見事に破壊し、兄弟の問題を解決してくれたフェルシーには視聴者としても感謝の言葉が出てしまいますねある意味でガンダムの呪いを打ち破ってくれてありがとうフェルシーちゃん!!

 

 

  • 剣と共に想いを振るう片翼の堕天使

 最終決戦にまさかの乱入をしてきたラウダの搭乗MS(モビルスーツ)「ガンダム・シュバルゼッテ」。18話でその姿を見せていた機体ですが、出撃そのものは最終盤となってしまいました。しかしわずかながらの出番でもその強力な性能を見せつけ、搭乗したラウダのインパクトも相まって中々に強い印象を残してくれたのではないかと思います。

 まず外見で目を引くのは頭部の丸いリング。その天使の輪のようにも見える形状はグエル専用のディランザを彷彿とさせるものがあり、また関節部の多くがダリルバルデと共通しているのも特徴的です。シン・セーとジェターク社の共同開発というだけあって、ジェターク社の機体を流用しているのかもしれませんね。エアリアルなどの本作のガンダムと比べても武骨で角ばったシルエットをしており、ファラクトとはまた別のベクトルで異質なガンダムとなっています。

 また巨大な剣と思われる武器が背負われていることにも目が行きます。この剣はいわばシュバルゼッテ専用のガンビットであり、分離して7つの武装として使用可能となっています。エアリアルとはガンビットになっている武器が「盾」と「剣」で対照的なのが興味深いですね。)剣型のガンビットにはビームバルカンが内蔵されており、敵の距離に合わせてバルカンの射撃と剣の切り付けを使い分けられる仕様の模様。

 さらにはビット展開後の残った部分はそのまま実体剣としてビーム刃を展開し、無類の破壊力を発揮するようです。本作のガンダムらしくオールレンジでの攻撃を得意としていながらも、本質は剣を使った近接戦を得意とする機体となっています。この正面から戦うスタイルもジェターク社のMSらしいと言えますし、剣ばかりの武装やそれを片翼の如く展開するビジュアルもたまりません。ここにきて男の子の好きなモノを刺激してくれるようなガンダムが出たことに喜びつつ、もっと活躍してくれないかなぁとか考えてしまいますね。

 

 

 今回は他にも銃撃戦でまさかのMVPだったエラン5号やベルメリアさんがやっと覚悟を決めたこと、目覚めたばかりの身で娘たちをサポートしてくれたデリングなどサブキャラもまとめていい活躍を見せてくれていました。中でもプロスペラのマスクを撃ち落とし、ベルメリアさんへのフォローも忘れないスタイルには惚れ惚れさせられますね。何よりガンダムに乗らない」という言葉を本当に実現したうえで活躍したことにも驚かされます。一時期は死にそうにも思えた5号ですが、この調子なら最後まで生き残りそうな予感がします。

 

 そして何と言っても戦闘シーンの超絶作画に驚かされました。エアリアルガンビットの攻撃を辛うじて避け続けるキャリバーンの動きは、近年のアニメの中でも特に凄まじい劇場作品レベルのクオリティだったと思います。それ以外の作画も基本ぬるぬる動いており、終盤に向けて本当に気合が入っているのが伝わってきましたね。

 さらに驚愕したのがEDのスタッフクレジット。絵コンテが驚異の7人体制なうえ、金子祥之氏や吉沢俊一氏といった錚々たる面子が揃っていたことに唖然となります。他にも原画担当は大張正己氏をはじめとした方々が60人以上、動画ではufotableも参加しているなどとんでもない名前の数々です。僕自身アニメーター関連はそこまで詳しくないものの、これだけで十分にすごいとわかるくらいには感動しています。最終回の直前にここまでのアニメーションを魅せてくれたスタッフの皆様に感謝したいくらいです。

 

 

 さて次回の水星の魔女はいよいよ最終回。インターバルを含めると半年以上に渡って視聴者を騒然とさせてきた本作ですが、ついに終わることに興奮と寂しさを同時に覚えます。サブタイトルは「最終回」であるかのように表示されていましたが、これは放送ギリギリまでサブタイを隠す演出なのかと思います。下手に情報を与えず、視聴者に想像の余地を与えているのかもしれません。(もしそうなら最終回のサブタイは「祝福」とかにしてほしいですね)

 またクワイエット・ゼロは終わったものの、ペイル社と結託した議会連合やスペーシアンとアーシアンの問題などは同対処するのでしょうか。それ以上にエリクトとプロスペラ(エルノラ)の親子の復讐劇にどう収集を付けるのかが気になります。カギとなりそうなのが今回途中データストームを止めた謎の存在ですが、これはもしかしてエリクトとは別に存在するエアリアルの意志か何かですかね……?どう着地するのか全く予想が付きませんがここまできた以上、最後までスレッタとミオリネの物語を見届けたいと思います。待て次回!!

 

 

 ではまた、次の機会に。