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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第18話「空っぽな私たち」感想

彼女らの手にあるものは

スレッタだいすきクラブはどいつもこいつも言葉が足りない!

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  • スレッタの真実と解き放たれる時

 前回に続いてお辛い展開が待っていた水星の魔女18話。何と言ってもスレッタの前に現れたエアリアル(エリクト)が、彼女の出生といった様々な事実を教えてきたのが衝撃的でしたね。まずスレッタの正体は予想通りエリィの遺伝子を元に造られた「カヴンの子」というリプリチャイルド、すなわちクローンだったことに息を呑みました。それだけでなくガンビットの中にいる子どもたちもエリィのクローンであり、エアリアルはまさしく「エリクト・サマヤと彼女の模造品」で構成されている存在だという事実は中々にショッキングです。

 そしてスレッタはエアリアルのパーメットを引き上げるための「鍵」の役割を担っており、エアリアルが自力で動けるパーメット8に到達しようとしている今、彼女の存在意義はもう……これがまたキツかったです。概ね考えていた通りの事実だったことにガッツポーズを取りたかったのですが、エリィにはっきりと「いらないの」と言われたスレッタのことを思うと素直に喜べません。スレッタにとって大切なものが一気に失われていく展開を、まさか2話連続でやるとは思っても見ませんでした。

 こうして振り返ってみると、スレッタ自身で勝ち取ったものは地球寮のメンバー以外ほとんど存在しない「空っぽ」であることがわかります。ミオリネの花婿というポジションもエアリアルの協力があってこそでしたし、それらがなくなった今、スレッタにとって頼れる仲間たちとの交流こそが彼女の今後を決める手がかりとなりそうな予感がしますね。

 そして宇宙に放り出されて泣きじゃくるラストは胸にきましたが、同時にこの瞬間スレッタはエアリアルというゆりかごからようやく解き放たれたとも取れます。家族の庇護下を離れ本当の意味で生まれたスレッタがどうなっていくのか、目が離せないことになりそうです。

 

 

  • 愛情も言葉にしなければ……

 そんなスレッタの扱いに涙を禁じ得ない回でしたが、それ以上にスレッタを突き放す連中の言葉の足りなさに色々愕然となる内容でもありました。上述のエアリアルに関しては「スレッタはもういらないの!」という発言も全てスレッタを解放するためなのは理解出来ますが、もっと説明してやってほしいとも思ってしまいましたね。(もっとも全てを説明したらしたらでスレッタの許容量が爆発しそうですが)前回のミオリネ同様、スレッタを想う一方で彼女に無頓着なのが引っ掛かってしまいます。

 また今回はプロスペラがスレッタへの愛情らしきものを見せていたのが意外でした。てっきり彼女のことをエリィ解放のための道具にしているとばかり思っていたので、学園に戻るよう諭すシーンに驚きを隠せません。これまで復讐者として暗躍している風を装っていたものの、プロスペラの内心は家族思いのエルノラ・サマヤのままなのかもしれませんね。(あるいは最初こそ道具にするつもりだったスレッタと共に過ごしている内に、彼女への情が湧いてきた説も考えられます)エリィの復活や復讐そのものが止められなくなっている今、スレッタをそこから引き離すのが彼女なりの親心とも読み取れました。

 

 まぁそれはそれとしてちゃんと言葉にして言えよ!!と叫ばずにはいられないのも視聴者的には重要。ミオリネもグエルもエアリアルもプロスペラも、スレッタに幸せになってほしいと思うあまり彼女の気持ちを蔑ろにしているのが何とも言えません。何よりスレッタはみんなと一緒にいること望んでいるのに、みんな「スレッタには自分は必要ない」と思ってしまっていることにモヤモヤしたものを覚えます。スレッタを含めたみんながあまりにも自分の気持ちを隠そうとするので、お互いにお互いの気持ちをぶつける話し合いって大事なんだなぁ……とつい思ってしまいました。

 その分ラウダたちからお礼を言われたことを受け、拳よりも言葉で解決する道を模索するチュチュの成長にはかなり感動させられますね。今回チュチュがミオリネの真意を知るために彼女に会いに行く選択を取ったのもあって、余計に他のみんなのだんまりっぷりが目に付きます。自分の気持ちに正直に、ハッキリと口にする大切さが問われているかのような内容に、チュチュの爽快感とその他のじれったさを感じずにはいられない回でもありました。

 

 

 スレッタ関連以外だと、地球の暴動を止めようとするミオリネも印象に残りました。株式会社ガンダムとジェターク社の実績を積み、総裁選に勝つために積極的に動こうとする様子は中々に勇ましかったですね。エアリアルという兵器を使って話し合いの場を設けようとするものの、武力そのものは用いないという考えも素敵です。後述のシュバルゼッテの件もそうですが、株式会社ガンダムの「医療としてのガンダム」の理念を突き通そうとする姿勢には思わず応戦したくなります。

 とはいえそれで地球での暴動を止められるかというと怪しいものがありますね。ミオリネなりによく考えたうえで行動しているのはわかりますが、アーシアンスペーシアンたちが話し合いに応じてくれるとはあまり思えません。結局のところ戦争を知らない人の考えに過ぎないので、この先の展開でミオリネが現実に打ちのめされる展開などが大いにあり得そうな予感がしてきました。(その場合は実際に地獄を見てきたグエルが支えになってくれそう)

 また他勢力の暗躍についても気になります。シャディクはさらっとペイル社との協力も取り付けたりプロスペラとの取引の場を設けたりと、下準備を着々と進めているのが流石といったところ。現状ミオリネたちの最大の敵として、彼女たちの目の上のたんこぶになりそうです。さらにベルメリアさんが運び屋もとい宇宙議会連合のおばさんたちに捕まったのが気がかりですね。ここにきて宇宙議会が新たな勢力となり、スペーシアンとアーシアンの関係修復の邪魔に入りそうでドキドキさせられます。一筋縄ではいきそうにない状況ですが、ここまできたからにはミオリネには頑張ってほしいです。

 

 

  • 空っぽな「誰かの代わり」たち

 他にも今回気になったことはマルタンの懺悔にセセリアが登場したり(ネットで「メスガキ懺悔室」とか言われてて笑う)本物エランのパイロット適性の低さが強化人士のモデルに繋がったなど色々ありましたが、個人的にはラウダが闇落ちらしき陰りを見せ始めたのが目に焼き付きました。兄が会社を引き継いだことで「所詮兄さんの代わり」というレッテルに思うところがあるような描写にドキッとさせられます。兄想いではあるものの、この辺りのコンプレックスが今後の波紋を呼びそうですね。

 そんなエリィの代わりであるスレッタやグエルの代わりであるラウダ、本物エランの代わりであるエラン5号など「誰かの代わり」である人物が多く登場した今回。サブタイトルの「空っぽな私たち」とはこの面子のことを指しているのかもしれません。他人の代わりであるスレッタたちが、如何にして自分だけのアイデンティティを獲得していくのか、彼女らにはそういった“自己の確立”に期待したいところです。

 

 

 そしてMS(モビルスーツ)関連ではついに「ガンダム・シュバルゼッテ」が登場したことも見逃せません。ガンプラでの情報解禁から長いこと待たされた分、今回の登場にはテンションが上がりましたね。予想通りジェターク社が開発していたガンダムだという情報にも驚かされます。(しかし1クール目の時点で既にガンダムに手を出していたヴィムはさぁ……)誰が乗るのかは未だに決まってはいませんが、ジェターク社の切り札として今後シュバルゼッテが台風の目になるかもしれません。というかそうなることを期待したいです。

 またベルメリアさんたちがMS型のガンビットガンドノート」を制作している様子も目に留まりました。恐らくは14話に登場したガンヴォルヴァのマイナーチェンジ版といったものでしょうが、何故今になってこれを作り出しているのかとつい考えてしまいますね。エアリアルガンビットそれぞれにエリィのリプリチャイルドがいることが判明したこともあり、彼女らそれぞれのためにエアリアルと似た体を作ってあげているのかもしれません。この機体の完成と同時にエアリアルのパーメットがスコア8に到達した時、エリィたちはそれぞれ自分の意志で動き始めるのか……とその光景を想像すると、何とも言えない焦燥を覚えそうになります。

 

 

 さて次回のサブタイは「一番じゃないやり方」。これは最善ではない次善の策、という意味でしょうか。(英題が「Not the Best Way」ですし)恐らくは用意していた最善策を潰され、別の方法を取るしかなくなる状況に誰かが陥るのかと思われます。十中八九ミオリネがそうなるのでしょうが、その過程が辛そうなので早くも胸が痛んできますね。というか今回予告を読み上げたのがシャディクな辺り、絶対あいつが何か仕掛けてくるだろ……色々と不安が込み上げてくるのもあって次回も見逃せません。

 

 

 ではまた、次の機会に。