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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第17話「大切なもの」感想

守るために“捨て去る”ことを

主人公以外みんな覚悟キマりきってて見ているこっちが辛くなってくるんですけど!!

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  • 花嫁の悲壮な決意

 おおぅ、もう……という声が思わず出てしまいそうになる、そんな感想を抱いてしまった今回の水星の魔女。前回異常な面を晒してきたスレッタの問題を如何にして解決するのかと期待していた中、予想していたよりもずっと冷たい突き放し展開に絶句することになりました。

 何といっても決闘で再びグエルと戦うことになったスレッタが、ミオリネの作戦により敗北に追い込まれたことに衝撃を受けました。これはミオリネの作戦勝ちであり、スレッタをプロスペラの支配から切り離すことと、プロスペラの「もう1度決闘をさせてほしい」という要求を呑む双方をこなしたやり口には思わず舌を巻きます。グエルに事情を話して協力してもらうなど、ここぞとばかりに頼れる人脈をフル活用した辺りにも感心させられますね。このクレバーさは流石と言ったところです。

 一方でミオリネの突き放し方に関しては複雑な感情を抱きました。スレッタに全てを話したところでどうにもならない以上、悪役を演じて母や自分への依存を絶つ意味は理解出来ます。しかしわかっているつもりでも、スレッタに対する冷たい演技には胸が痛みました。ミオリネ自身胸が張り裂けそうな気持ちでやっているであろうことが読み取れるので、泣き叫ぶスレッタと相まって見ていられなかったです。スレッタをガンダムの呪いから解放するために、自分を悪者にして全てを背負おうとするミオリネにどうしようもないやるせなさが湧いてきましたね。(そして大切な人を敢えて冷たく突き放す態度が父・デリングとそっくりなのがまた何とも言えない気分にさせられます)

 

 

  • 進んで失った魔女

 肝心のスレッタは、上述の通り子どものような泣き叫び方をしていたのが印象的。決闘の場で信じていた相手に裏切られた困惑と、大切な人に見放されたことへのショックを受けるシーンはさながら親に見放された子どもを見ているかのようないたたまれなさがありました。特にホルダー制服を没収された際の彼女の様子は凄まじかったですね。それほどまでにホルダーであること、そしてミオリネの花嫁であることがスレッタにとってアイデンティティになっていたことが読み取れます。

 あとはエアリアルの「ごめんね」にもびっくり。ずっと視聴者には聞こえなかったスレッタへの言葉が出てきたのも驚きですが、それ以上にミオリネの作戦に加担したように見えたことが衝撃的でした。(とはいえエアリアルがスレッタを巻き込ませたくないことは以前からわかっていたことなのでまぁ納得ではあります)加えてプロスペラのマスクが光っていた描写も忘れられません。恐らくはエアリアルの意識はプロスペラに移ったのでしょうが、スレッタを復讐に巻き込ませずに自分は母の元に戻る構図にこれまたやるせないものを覚えました。これでスレッタはホルダーやエアリアルと、何もかもを失ったというわけですね。

 というわけでスレッタの敗北からの流れ全てに情緒が揺さぶられた内容でした。スレッタを多くの呪縛から解放するためには必要なな作戦だったとは思います(「進めば2つ」の言葉に対して「進んでも失うものがある」ことを教え込むという意味でも見事)が、何だかんだで仲が良かったスレッタとミオリネが引き裂かれる絵面は心にきますね。ミオリネとグエル、そしてエアリアルたちがスレッタのためを想っているだけにこれで良かったのだろうか?もっといい方法があったのではないか?とつい考えてしまいます。ただここから如何にしてスレッタが這い上がるのかという期待も湧いてきたので、今後の彼女に注目していくつもりです。

 

 

  • 苦難の中で戦い抜いた若者

 スレッタとミオリネの悲しい様子とは対照的に、見事活躍してくれたのがグエルですね。エラン5号からスレッタを救うシーンからずっとカッコよかったのですが、その後もかつてないほど葛藤を繰り広げていた姿が印象に残りました。これまで経験したトラウマに苦しむ様子にまずハラハラさせられ、ジェターク寮の仲間たちの声援を受けてそれを克服していく流れに胸打たれることになりました。これまで数々の地獄を味わいながらも、戦えるほどにまでなる過程はまるで主人公のようです。(また「そんな世界はないよ」といった言葉から感じられる重みが、グエルの成長を味わい深いものにしています

 そしてグエルが再び駆ることになったダリルバルデの奮闘も素晴らしかったです。父親との繋がりである機体で戦ったことや、以前は毛嫌いしていたAIに助けられて戦い抜けたなどエモい要素満載のバトルを魅せてくれました。何よりグエルがジェターク寮やスレッタのためにそういった手段も用いるようになったのが嬉しかったですね。意地やプライドを捨て去り、ボロボロになってまで大切なものを守り抜いたグエルとダリルバルデの雄姿には感動しっぱなしでした。

 まぁ上述のこともあって素直に喜べないところもあるのですが……グエル自身スレッタを突き放すやり方に苦い表情を見せており、彼にとっても辛い選択であることが読み取れます。それでもみんなのために、ミオリネと共に全てを背負うつもりでしょう。決闘の戦利品としてエアリアルを手に入れてプロスペラの計画を狂いを生じさせてくれそうなのはグッジョブですが、彼らにガンダムの呪いを背負いきれるのかという不安と心配も湧いてくる勝利でした。

 

 

 今回はミオリネ&スレッタ(&エアリアル)&グエルの描写がメインになっていましたが、それ以外にも色々と気になる人物は多かったです。まずシャディクはペイル社にガンダムを利用したビジネスを提示するなど、着実に他の勢力を抱き込もうとしているのが見て取れました。しかしグエルが決闘で勝利したことにより、シャディク自身が望んでいた「御三家の後ろ盾」と「ガンダムの保持」を彼に横から搔っ攫われたことには笑ってしまいましたね。(一方で「グエルとミオリネが一緒になる」というかつての望みは果たされているのがまた酷い)

 また前回エリィから酷い目に遭ったエラン5号ですが、波乱万丈な転身ぶりを遂げていたのが少々意外。スレッタに無理やり迫ってグエルにのされるのはまぁいいとして、グラスレー側に自ら下ったことには唖然となりました。(狂犬ノレア&ボロボロニカと一緒の部屋でくつろいでいる絵面のシュールさよ)全体的に情けなさが目立つのですが、何としてでも生き残ろうとする姿勢にはかえって好感が持てますね。ガンダムシリーズでここまで生き汚いキャラは珍しいので、彼が死なずに生き延びる展開を思わず期待してしまいます。

 

 そんな感じで17話の感想でしたが、全体的に「捨てる」がテーマだったと思います。大切なもののために今あるものを捨て去る覚悟が見られたのが印象的でした。スレッタのために彼女との関係を断ち切ったミオリネやプライドではなく周囲の人間の繋がりを選んだグエルと、傷ついてでも前に進む姿にはやはり惚れ惚れさせられるものがあります。残るはスレッタが母やエアリアルへの依存から抜け出すだけですが、果たしてスレッタはミオリネたちのためにそれらを「捨てられる」のか、非常に気になるところです。

 

 

 さて来週は2クール目序盤をまとめた特別総集編になる模様。6話の時もそうでしたが、続きが気になるところで総集編は中々にもどかしいです。とはいえ水星の魔女の総集編は何だかんだで見応えがあるものが多いので、こちらにも期待しておこうと思います。(感想に関しては次回個別ではなくなる可能性があります。ご了承ください

 ちなみに次回の本編サブタイは「空っぽな私たち」。「私たち」は間違いなくスレッタのことを指していると思われます。母やミオリネを失って自分に何もないことに気付いたスレッタが、ここから這い上がっていく過程が描かれるのでしょうか。それにしても私“たち”とは一体……!?どこか不穏にも聞こえるサブタイに、ドキドキするほかありません。

 

 

 ではまた、次の機会に。