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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第16話「罪過の輪」感想

復讐の輪にて魔女は笑う

プロスペラとかいう相手の痛いところを突いて不都合な指摘を有耶無耶にすることにかけては右に出る者はいない姑

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  • 見えてくる問題と本題

 今回の水星の魔女はオープンキャンパスでの大事件後の様子がようやく描かれることに。初っ端からスペーシアンとアーシアンの小競り合いの激化やアスティカシア学園から離れる者たちなど、色々とエグい光景ばかりでした。MS(モビルスーツ)による襲撃が発生した以上こうなるのは必然でしたが、表向きの平和が剥がれていく過程は見ていて中々にキツいです。ノレアに殺された生徒の仲間たちが地球寮に八つ当たりするシーンなどは、まさしくそうした理不尽に襲われた者たちの憤りが感じられました。(八つ当たりはダメだけど、彼らも大切な人を奪われたのだからやり切れん……)

 そんな様々な裏側事情が明らかになってくる中、最も衝撃を受けたのがスレッタの洗脳ぶり。再会したミオリネとの会話を楽しんでいる中、彼女に指摘されたことを「お母さんが言うなら」と答えるシーンには怖気が走りました。以前から垣間見せていた母への依存がまさかここまでとは思っても見なかったです。(答える前に逡巡している様子を見せてくる辺り、スレッタ自身の意志もあるようが母親に自我を支配されている子どもがどれだけ痛々しいのかを、ここにきて思い知らされた気分です。

 同時にプロスペラが「デリングこそ自分たちの仇」であることをミオリネに暴露するなど、ミオリネにとって息をつけなくなるほどの展開ばかりだったのが印象に残りました。自分たちが人殺しと復讐の輪の中にいることを教え込み、ミオリネを追い詰めていく様子には唖然とするほかありません。何よりプロローグと本編の関係がようやく登場人物の口から語られたことがショッキングで、それでいて興奮のポイント。視聴者視点ではある程度見えていたことが劇中の人物にも視覚化され、本作における本題がようやく動いてきたことを実感しました。

 

 

  • 恐ろしき魔女

 まぁそんな感じで色々とエゲつない話が多かったのですが、その話の大半を担っていたプロスペラには特にドン引きしっぱなしでしたね。エリィを自由にするためにパーメットスコアを8にして彼女が動けるデータストームの範囲を広げることなど、目的を明かす中で見せる狂気に鳥肌が立ってしまいます。同時に復讐について語るシーンも強烈で、死んでいった者たちの怨嗟の声に押されている言い回しにはゾッとしっぱなしでした。能登麻美子さんの演技の素晴らしさを改めて確認出来た点においても一連のシーンはかなり鮮烈です)

 その一方でプロスペラのレスバテクニックには呆れてしまいました。自分たちにとって不都合な指摘や質問を受けても、相手の痛いところを突くことでねじ伏せる強引っぷりに別の意味でドン引きせざるを得ません。スレッタの件で憤るミオリネに上述の復讐の件を話すなど論点のすり替えもいいところですが、それで彼女を一度黙らせているうえ総裁選への参加を誘い込ませているのですから恐ろしいです。目的のために開き直って突き進む無敵っぷりが、プロスペラが嫁姑戦争で一歩リードしている要因なのかもしれません。

 何よりどんな状況に転んでも自分にとって都合がいいように立ち回り、何だかんだで良い状況に駒を進めているプロスペラには唖然となりました。恐らくは娘と復讐に向けた歪んだ感情を糧にいかなる手段を選ばない点が、エルノラ・サマヤをプロスペラ・マーキュリーという魔女に押し上げているのでしょうね。(進めているようで自分に意志では何も出来ていないスレッタ、強化人士を提案しながらも人道的問題から目を背けられなかったベルメリアさんと比べても吹っ切れすぎています)ある意味で誰よりも進めば多くを手に出来るを実現しているのは、プロスペラである気がしてくる回でした。

 

 

  • そこにいるのは少女(エリィ)?それとも……

  主人公サイドがてんやわんやの中、エラン5号擁するペイル社がようやく動き出したのも印象的。ここにきてエアリアルを直接奪う指令を5号に出した時は驚きましたね。これまで目立ったことをしてこなかった反動なのかは知りませんが、いずれにしてもこのタイミングでガンダム奪取とは大胆すぎて清々しさすら感じます。

 しかしエアリアルに乗り込んだ5号の前にエリィの幻影(?)が現れたことで一気にゾッとさせられました。不埒者をデータストームで弾くだけでも恐ろしいのに、幼い少女が複数人出てきて「あなたはダメ」と言ってくる絵面はホラー要素が強すぎます。4号の時は何ともなかったのに、今度はエアリアルの中のエリィの自我らしきものが出てきた謎も相まって本当に怖かったです。エリクトお姉ちゃんが4号が良くて5号はダメな理由は「スレッタに優しくしてあげたかどうか」とかそんなんだったりして……

 一方で今回のエリィの様子に不信感を抱きました。5号に姿を見せた時の落ち着いた雰囲気、何より人間味のない様子はプロローグでのエリィのイメージとはずいぶん異なる気がします。ビットの数に合わせて複数人存在しているのも不思議ですし、エアリアルの中にいるのは本当にエリクト・サマヤなのか?といった疑問が湧いてきました。

 個人的な妄想ですが、彼女はエリィ本人ではなくエリィの人格を模倣したエアリアルの可能性が今現在頭に浮かんでいます。冒頭のプロスペラの説明で「ルブリスにエリィの生態コードを移植したのがエアリアル」であることが判明しましたが、その時点でエリィの意識そのものは消滅して、エアリアルの人格がエリィの真似をしているだけなのかもしれません。(思えばエアリアル視点の小説でエアリアルの一人称が「僕」の時点であまりエリィっぽくないですね)だとするとプロスペラが存在しない娘の幻影を追い続けている哀れな人になり果てるのですが、はてさて真相は如何に。

 

 

 というわけでいつにも増して全体的に暗い回でしたが、グエルをはじめとしたジェターク社のパートは逆に安心感が凄まじかったです。前回の時点で精神的に大きく成長したグエルがもう宇宙に帰ってきただけでも驚きなのに、ラウダとの再会も果たすスピード展開のおかげで困惑と歓喜が止まらなかったです。

 中でもそのまま兄が生きていることに安心して倒れたラウダに良かったねぇ!と言ってあげたくなります。ペトラがグエルの帰還に素直に「おかえりなさい」と言ってくれるシーンも温かったですし、ジェターク側のキャラの健全な関係にはホッとさせられますね。グエルがこの後総裁選で何を担ってくれるのかはまだわかりませんが、ここまで来た以上何かしてくれることを期待したいです。

 

 

 そして次回のサブタイは「大切なもの」。グエルが読み上げたことから彼が話のメインになりそうですが、どのような活躍をしてくれるのか気になるところ。グエル自身今回と同じように覚悟を決めた者として、自分の大切なものを守ってくれそうな勢いが感じられてワクワクさせられますね。次の総裁を決める戦いが繰り広げられる瞬間を待ってみる所存です。

 

 

 ではまた、次の機会に。