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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第22話「紡がれる道」感想

少女たちよ、一歩を踏み出せ

曹操ウイングガンダム「ボロボロになっても会社やみんなのために再起する姿、CEOとして立派だぞミオリネ……!」

司馬懿デスティニーガンダム「会社放って自分探しの旅に出ていたどっかの誰かさんとは大違いですねぇ」

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  • 弱さを見せて“今”を進む

 クワイエット・ゼロを始めたプロスペラとエアリアル(エリクト)を止めるため、いよいよスレッタとミオリネたちが共に戦うことに。今回の水星の魔女はそんな彼女たちの進み続ける様子が目に焼き付きました。何と言っても最大の見どころと言えるのがスレッタとミオリネの再会で、失意のどん底に落とされていたミオリネがスレッタの「間違っても進み続ける」言葉で一歩踏み出したことに胸打たれましたね、

 個人的にはミオリネが自分からやつれた姿を見せたことに感動しました。彼女が弱い一面を見せるのは決まってスレッタ相手にだけでしたが、ここまでボロボロの状態で前に出るのはかなり勇気のいることだったのではないかと思います。特にここ最近はスレッタを守ろうと必死になっていたことを考慮すると、ようやく彼女は本音でスレッタを頼ることが出来たようにも感じました。ずっと強気でいたミオリネですが、弱いままの自分を晒せることで前に進めたのかもしれません。

 そんなミオリネを外に出したスレッタの言葉も素敵なポイント。上述の通り間違ったことを変えることは出来ない、それでも進み続ける……“過去”にこだわらず“今”を取る選択肢こそ彼女たちの成長の証と言えます。(地球寮の仲間たちが出迎えてくれたように、進んだことで得られたものもあるので間違いだけではないとわかる描写にもグッときます)「進めば2つ」という言葉をこれまで何度も問いかけてきた本作ですが、ここにきて彼女なりの「進んできたことを肯定する」答えを示してくれたように考えられますね。

 

 

  • 決戦に集いし頼もしい仲間たち

 スレッタとミオリネに限らず、多くのキャラたちが決戦準備に臨んでくれたのも今回の見どころの1つ。地球寮メンバーが言うまでもなく来てくれたので特に言うことはないのですが、そこにロウジとフェルシーが付いてきたのは予想外でした。中でもロウジがデミバーディングの調整で非常に役立ってくれたのもかなり意外です。あとニカ相手にキョドるロウジくんも可愛いね……死ぬかもしれない状況の中で和気あいあいとしているのは気になりますが、どんな時でも明るさを忘れない学生同士の関係はいい意味で癒しになってくれていたと思います。

 他にはグエルとエラン5号はもちろんのこと、シャディクも参戦することになるかもしれないことにはびっくり。立ち直ったミオリネの取り引きを受けるシーンで割とノリノリなのが笑えてきます。(推しに誘われて露骨にテンション上がる辺り本当にこいつは……)そして何気にベネリットグループ御三家の代表学生が揃って共に戦ってくれるのはテンションが上がりますね。こういった面でもまさしく最終決戦であることを実感出来ます。

 あと印象に残ったのはやはり大人組の対応でしょうか。基本は子どもたちが体を張る中、大人たちも大人なりに支えてくれるような場面が見られて嬉しかったです。特にケナンジ隊長の「あなたがたは学生なんです。責任は大人に取らせなさい」という言葉には深く感動しました。劇中の大人の多くが子どもたちに犠牲を強いてきた中、大人として子どもを守ろうとする発言がどんなに尊いことか……!ずっと言ってほしかったセリフで大人の責任を果たそうとする、ケナンジ隊長の株が爆上がりしましたね。最後の戦いに向けて、多くのキャラが積み上げてきた魅力を解放してくれるかのような回でもあったと言えましょう。

 

 

  • 彗星(ほうきぼし)となりて宇宙を翔ける白き翼

 ミオリネと共に前に進むため、スレッタが乗り込んだ機体「ガンダム・キャリバーン」。前回名前だけ明かされた「怪物」の名前を持つガンダムです。(名前からして「アーサー王伝説」に登場する選定の剣を思い浮かべそうになりますが、実際の元ネタは「テンペスト」に登場する怪物「キャリバン」でしょうね)その見た目は白を基調としており、そこに大量のパーメットが確認出来るデザインが特徴的。黒い2本のツノ(アンテナ)の形状といい、本作に登場するガンダムの中でもひと際「ガンダムのパブリックイメージ」に近い形状をしていると思います。それでいて丸みを帯びたボディなどから、エアリアルやルブリスの系譜であることが伺えるのも面白いところ。

 このキャリバーンの機体性能の特徴としてまず挙げられるのがデータストームのフィルターが搭載されていない点。そのためデータストームのフィードバックをモロに受けてしまう危険性を孕んでいますが、その分わずかなパーメットで他のガンダム以上のパーメットスコアを叩き出せる性能の高さが目に留まります。パイロットへの危険を代償に通常の機体を超える性能を有する……絵に描いたようなピーキーな機体ですが、本作のガンダムの恐ろしさをさんざん見てきた後だとそれがどれだけ恐ろしいモノなのかが伝わってきますね。なるほどパーメットに耐性を持ったスレッタに乗ってほしいと言われるのも納得ではあります。

 そしてキャリバーンを語るうえで欠かせないのが主要武器である大型ビームライフル。長大な砲身を腰に据えて放つことで、ガンドノート数機をまとめて破壊するほどの威力を発揮します。さらに後ろには巨大スラスターが付いており、キャリバーンの高速移動もその推力を用いることで行う模様。火力と機動力を両立させた強力な武器ながら、それを失えば戦闘力が一気にガタ落ちする辺りも実にピーキーで面白いです。

 何よりこのビームライフルの形状が「箒」に見えるのが興味深いですね。後ろが広がったライフルを腰に置いて移動する姿は、さながら多くの人が想像するであろう「箒で空飛ぶ魔女」のイメージそのもの。水星育ちのスレッタがこの機体を苦しみながらも乗りこなすことで、『水星の魔女』のタイトルを回収してみせたのは見事というほかありません。まさしく彼女がポジティブな意味での魔女として翔けるに相応しいガンダムと言えるでしょう。

 

 

 というわけで色々と盛り上がる要素満載でテンションが上がる回でしたが、結構唐突な要素も多かった気がします。まず最初にスレッタとグエルがミオリネをかけて決闘!ということでフェンシングを始めた時は目がテンになりましたし、デリングがようやく目覚めたことに今更感を覚えました。まぁ前者は初代『ガンダム』最終回のアムロVSシャアのオマージュなのは明らか*1ですし、後者は「父の日だから」で説明が付きます。が、やはり尺の短さもあっていきなりぶっこまざるを得なくなった印象を受けてしまいますね。

 そして極めつけはラウダの乱入。前回のラストから襲い掛かってくるのは覚悟していましたが、おおよそ最悪のタイミングでやってきたので笑ってしまいました。よりにもよってグエルと戦うことになるというのも、彼の間の悪さに拍車をかけていますね。(スレッタが姉妹対決をする中こっちは兄弟対決へと発展するという)ミオリネへの復讐に燃え、シュバルゼッテを駆る暴走っぷりには最早愛おしさすら覚えます。ここにきて弟と戦う羽目になったグエルには心底同情する一方で、ラウダのこの感情の矛先がどこに向かうのか実に楽しみになってきました。

 

 

 さて次回のサブタイトルは「譲れない優しさ」。「優しさ」という言葉からして、恐らくこのサブタイは家族を止めたいスレッタVSスレッタを巻き込みたくないエリクトの対決を指しているのでしょう。お互い相手を想っているのにぶつかり合ってしまう切なさがあるものの、そこまでしてでも己の優しさを通そうとする姉妹に目が離せません。果たしてどちらの優しさが勝つのか、次回も見逃せないことになるでしょう。

 そして先日、ガンダムシリーズYouTubeチャンネルで水星の魔女のクライマックスPVが公開されたことも忘れてはいけません。*22クール目の内容をまとめつつ、新規セリフで今後の展開を予想させる内容に興奮が湧き上がってきます。個人的にはスレッタの「お母さんを悪い魔法使いにしたくない!」という必死な言葉にウルウルきますね。残り2話という中でこの物語が如何なる結末を迎えるのか、最後まで見届けたいと改めて思いました。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:このフェンシングのシーンは初代ガンダムに限らず、元ネタの1つであろう『少女革命ウテナ』のオマージュとしても取れるとか。

*2:動画に関しては以下のリンクを参照。https://www.youtube.com/watch?v=ppsSmDPjx1I