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映画 仮面ライダーガヴ お菓子の家の侵略者 感想

時空を超えた絆────

夏の大冒険が始まる!!

酸いも甘いも噛みしめて、今こそ大切な願いを守り抜け!!

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 毎年恒例・夏の風物詩である仮面ライダー&スーパー戦隊の劇場版が今年もやってきました。今回は『仮面ライダーガヴ』と『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』という、ノリもテイストも何もかもが正反対の作品同士の映画ということもあってどうなるのかという期待がありましたね。特にガヴはお菓子モチーフ故一見ほんわかしたイメージでありながらストーリーそのものは非常にほろ苦い、そんなテレビシリーズ本編の延長線上としてどのような重い内容が飛び出してくるのか。鑑賞前からドキドキしっぱなしでした。

 そんな胸中のまま映画館に足を運んだわけですが、面白いけどしんどい……胸熱だけど辛い……という気分を味わうこととなりました。本編でも見られたダークで救いのない描写の応酬なうえ、スプラッタな部分で言えば本編以上という想像以上に衝撃的な内容が展開されました。その分ショウマたちの戦いに心が震えテンションも上がったのですが、劇中のある人物の行く末もあって観終わった後の喪失感が半端なかったですね。(直前のゴジュウジャーや『ゴチゾウのなつやすみ』が明るかったのもあってギャップも凄まじいです)というわけで今回はガヴ夏映画の感想を書いていきたいと思います

 

metared19.hatenablog.com

↑同時上映のゴジュウジャーの感想は上の記事を参照。

 

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • 幸せな世界のボトルネックとして……

 まず本作は予告で描かれた通り、本編とは異なるパラレルワールドが舞台となっています。人間もグラニュートもほぼ同じながら、ある2つの要素が異なっていることでまるで別の平和な世界が展開されているのが驚きでした。絆斗をはじめとして性格は全く同じはずなのに、立ち位置が異なるだけでまるで別人のように感じる塩梅だったのも絶妙。(大食いグロッタなど、やたらコミカルで微笑ましかったのもここすきポイント)いわゆる“if”の世界観であるものの、異世界としての没入感も十分だったと思います。

 そんな別世界になった最大の要因として、闇菓子とショウマの有無が克明に描かれていたのが印象的。ストマック社は健全なお菓子会社として人間界にも馴染めているほか、絆斗の母親やコメルといった闇菓子による被害者も存命していることが序盤の内にわかりました。ある程度本編を見ていればわかるものの、闇菓子が存在しないだけでここまでみんな平穏無事になっていると思うと面食らってしまいますね。またそれだけに闇菓子がどれだけ大勢の人生を狂わせているか、本編がどれだけ悲惨なのかを改めて感じ取りましたがゾンブとブーシュがあまりにも歴史の分岐点過ぎる……

 まぁ闇菓子はいいとして、問題はショウマの存在について。ブーシュがみちるさんを攫わなかったからか彼が生まれることなく、みちるさんも普通に人間の家族を持って幸せそうに暮らしている光景には複雑な想いを抱きました。彼がいない世界の方がみんな幸せだと突き付けられている構図に胸を痛めずにはいられません。ショウマ本人は悪くないとはいえ、彼の存在がブーシュの罪の証でもあるという残酷な真実を見せられた気分に陥ってしまいます。(微妙に設定が異なるものの、「主人公のいないパラレルワールド」という点で米澤穂信の小説『ボトルネック』を彷彿とさせるものがあります)救いがあるけど救いがない、そんな世界観に舌を巻きましたね。

 

 

  • 残酷な真実は覆らない

 本作のもう1つの特徴として挙げられるのがスプラッタ描写。敵勢力「ミューター」が何らかの実験を行っていることは事前に仄めかされていましたが、ショウマのクローンを作ってはお腹のガヴを引き剥がしてボス「カリエス」が使う絵面には思わず絶句してしまいました。要所要所の描写をぼかしているものの、内臓らしきものがチラッと見えているなどかなり挑戦的な面もあるのが恐ろしいです。他にも爆炎などでクローンたちが建物ごと処分させたことを匂わせるなど、直接的でなくても察してしまう表現が悍ましくも見事。テレビ放送ではないとはいえ、子どもも見る作品でここまで猟奇的な描写に挑戦したことに感嘆と恐怖が同時に湧いてきましたね

 同時に本作のゲストキャラである「タオリン」の存在も重要となっており、ミューターによって造られた「もう1人のショウマ」としてのポジションがこれまた悲壮感を漂わせていました。記憶喪失故こちらのせかいのはぴぱれ以外に居場所がなく、自分の正体を知った後のショッキングな様子にも鑑賞中胸が締め付けられた次第です。これまた本格的なスプラッタではないものの、絵面のグロテスクさでこちらを唖然とさせる容赦のない物語のギミックだと感じました。ショウマもタオリンも、この世界における“異物”であることが否が応でも突き付けられる残酷さに開いた口が塞がらなかったです。

 またタオリン周りの印象に残る描写として、彼が何も為せないまま退場する展開はかなり意外なモノとなっていました。お腹に同じガヴがあるためタオリンも仮面ライダーに変身するかと思っていたのですが、変身出来ないまま怪人態になって戦いに参加したので驚きが大きかったです。そのうえカリエスに歯が立たないまま倒され、お腹のガヴを奪われる絵面は凄惨すぎて目を覆ってしまうほどでした。ただこれに関してはどれだけ想いが強くても劇的な逆転劇をもたらすわけではない、シビアな要素が反映されていると思いましたね。総じて本編からより無慈悲な部分が強調されており、見ているだけで胸が苦しくなってくるガヴの本質を突いてきたと言えるでしょう

 

 

  • 熱き想いで未来を守る

 以上の描写から鑑賞中何度もショックを受けて、最後にはぐったりとした気分で帰ることになりましたが、それだけでは終わらないのがガヴという作品。タオリンの願いを聞いたショウマがこの世界を守るために奮闘し、他の面々も戦いに参加していく後半からの展開には一転して興奮を覚えました。この辺りはショウマのいじらしさがガッツリ出ており、関係ない世界だろうとそこに暮らす人たちのために戦う姿勢に惚れ惚れさせられますね。別世界のみちるさんの無事を見届けるものの姿を見せず、幸果相手にもタオリンの形見のゴチゾウを渡して去っていく切なさを残していったのが見事にこちらの心を撃ち抜きました

 ショウマ以外にも後半から本編世界の絆斗&ラキアが参戦するほか、この世界のランゴらストマック兄弟が戦うなど夢のようなシーンもてんこ盛り。特に後者はランゴたちがショウマを助けるという、本編ではあり得ないシチュエーションを実現させてくれたのでファンとしては感涙ものでした。他にも「ウエハウスゴチゾウ」でヴァレン&ヴラムがガヴの武器を使用するという、ありそうでなかった武器交換のアクションが見られたのも印象的。テレビシリーズを視聴している人がこれが見たかった!という光景を、存分に叶えてくれたのは感激と言うほかありません。

 アクション面の激闘も本編から格段にパワーアップしており、CGやカメラワークなどより迫力のある構図に仕上がっていましたね。こちらに関しては生身のカリエスの戦闘から最終決戦まで気合いが入っており、映画の大スクリーンも相まって見応えたっぷりの映像が広がっていたので非常に楽しかったです。お馴染みの戦闘BGMがより長尺で流れ、それでいてお馴染みの決め台詞である「どうする?」も外さない……こちらの見たいものをしっかりと押さえつつ、さらに発展させた戦闘シーンとして満足度の高いものを見られたと思います。

 そして「ヘクセンハイムゴチゾウ」を使って変身した映画限定フォーム「ヘクセンハイム」ですが、ここ数年のライダー映画の中でも長丁場のアクションで活躍したのもあって一気にお気に入りになりました。何より本編同様、お菓子を味わって生まれた力で立ち向かう構図は変わらなかったのが良かったですね。上でガヴは劇的な逆転劇がないと書きましたが、その分本編の合間に描かれた日常パートで生まれたゴチゾウがしっかりと意味を為す展開になっています。それを一貫して描き、突発的ではないもののパワーアップの下地を整えるガヴの魅力をよりマシマシで味わえる映画。本作にはそんな印象を受けました。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

井上ショウマ(ショウマ・ストマック)/仮面ライダーガヴ

 ご存じガヴの主人公。別世界にいきなり迷い込んで戸惑う様子だけでなく、自分がいない世界に複雑な心境を見せるので初っ端から同情を寄せずにはいられなかったです。特に母・みちるが普通の娘を持ってひだまりを経営している光景に、甘えたい気持ちを抑えて普通に接するので見ていられなかったですね。テレビシリーズ本編でも思ったことですが、他人に気を遣いすぎて自分を犠牲にしまくる性格に何とも言えないもどかしさを覚えます

 それだけに自分とは関係のない世界でも守るとする、ショウマのヒーロー性が本編以上に描かれていたのが魅力となっていました。わずかな時間とはいえ、タオリンと過ごした日々がこの世界を守る動機に繋がっていくのもあって納得感が強かったです。最後にこちらの世界の幸果を励まして去るシーンといい、ほろ苦い現実を見せながらも前向きに進み続ける本作のテーマ性を体現した主人公だったと言えるでしょう。

 

 

タオリン

 本作のゲストキャラにしてキーパーソン。素朴な性格故ショウマ同様に親しみやすかっただけに、最初こそ警戒したもののすぐに愛嬌を感じましたね。そして平行世界におけるショウマのポジションを担っていたことから薄々気付いていましたが、この世界のショウマそのものだとわかった時の衝撃は凄まじかったです

 正直サプライズ要素として彼が仮面ライダーに変身してショウマと共闘する展開を期待していたのですが、物語の方向性からしてそうならなかったのも納得ではあります。(何の脈絡もなく怪人態に変身した時は困惑しましたが)自分は存在するべきではなかったという現実を突きつけられながらも、ショウマや幸果にとって大切な人でもあったとして、こちらの心に残るキャラクターに仕上がっていたと思います。

 

 

甘根幸果

 ご存じガヴ屈指の良心にしてみんなのヒロイン。今回は本編世界の幸果は序盤と終盤以外ほとんど出番がなく、平行世界の幸果をメインに描かれていました。しかし世界が変われど幸果さんは幸果さん!とばかりに、タオリンを引き取ってショウマも受け入れてくれる度量の広さに感服しましたね。安心感という意味では間違いなく彼女が最強でしょう

 それだけにタオリンを失い、ショウマも去ってしまった後の幸果については色々と考えてしまうところがあります。お別れも出来ないまま大切な人を失ってしまった人物として、かなり悲惨な結末を迎えてしまったように思えてなりません。幸果ならいつかは立ち直れるだろうと思うものの、ショウマと別れてから何も描かれていないので余計に心配になってきますね

 

 

辛木田絆斗/仮面ライダーヴァレン

ラキア・アマルガ/仮面ライダーヴラム

 2号&3号ライダー。幸果と同じく前半は平行世界の本人がメインとなっていました。絆斗に関しては母親が存命で仲良くしていることにほっこりした反面、塩谷さんとは知り合っていなさそうなのがちょっと寂しいところ。一方ラキアはシータ&ジープの小間使いにされているのが意外過ぎて吹き出しましたね。表向きは爽やか&ゴマすりすぎて何事かと思いましたが、裏で双子に人使いの荒さに「ダルッ」とぼやいている様子を見て相変わらずなのはわかりましたが

 本編世界の2人は終盤ようやく参戦しましたが、状況がわからないままでもミューターと戦いつつ人助けしているのでヒーローとしての安心感を感じました。この辺りの善性の強さはショウマ同様、2人とも根がお人好し故にどこか胸が温かくなってきます。別世界の自分とのやり取りという小ネタを挟みつつ、最後の決戦への参加に間に合って良かったといったところです。

 

 

ストマック兄弟

 本編では敵の幹部、しかし映画では味方という奇跡のポジション。闇菓子やショウマが存在しなければ人間を襲うこともなく、普通のお菓子会社の職員として真っ当に暮らしているようでどこか喜ばしいものを覚えました。(ランゴに関しては初登場が「何!?」と驚いていてそこは本編と変わらないんだな……とか思ったり)何かが違えばこうして人間と敵対せずに平和でいられたかと思うと、切なくも微笑ましく感じてきますね。

 そして待ちに待った戦闘シーンでは、敵のクラープを兄弟のコンビネーションで撃破してくれるので最高に盛り上がりました。グロッタの腕力で双子が人間砲弾の如く飛び回ったり、ランゴが攻撃時にバリアを妹弟たちに貼って爆風から守るなどニヤリとくる要素満載でしたね。(欲をいえば人間態ではなく怪人態での勢揃いも見せてほしかったところ)ショウマとの絡みはないに等しいのですが、背中に手を当てるシーンなどストマック末弟として守ってくれているかのようにも見える絶妙さで感無量の一言です。

 

 

カリエス仮面ライダーカリエス

クラープ

 本作の敵キャラ。グラニュートとは異なる別怪人として出てきましたが、「別の世界を滅ぼす」一点に力を注いでいる異常性に慄くこととなりました。映画の尺の都合上大した掘り下げが無かった分、ただただ世界を蝕む異常な存在として印象付けてきたとも言えます。変身後のライダー含め虫歯モチーフということも相まって、見ているだけで危機感を煽られましたね。(特にカリエスの変身エフェクトは2フォームどちらもおどろおどろしくて怖かったです

 大ボスのカリエスは気分で世界を壊し、部下のクラープも実験を楽しむなど危険人物としてこれでもかと描写されていました。(クラープの方はカリエスの気まぐれに困らされる苦労人のイメージもありましたが、それ以上にマッドサイエンティストとして強烈すぎる……)それでいて生身のままでもショウマたちを圧倒する実力など、ボスに相応しい風格を兼ね備えたカリエスには感動を覚えるところもありますね。残酷で絶望的なまでに強いラスボスというのも、実に良いものだと再認識しました。

 

 

万津莫/仮面ライダーゼッツ

 毎年恒例・映画にて先行出演を果たした次回作のライダー。今回は別世界の絆斗の夢の中に登場し、彼からミューターを守る活躍を見せていました。(ここまで本編にガッツリ関わらない先行出演も久々ですね)昨年同様、生身の変身者から変身シーンまで見せてくれてかなり嬉しかったです。変身者の万津莫はパッと見ただけでわかるハンサムな人物で、手足の長さも相まってヒーロー的非実在性すら感じましたね。

 変身や戦闘に関してはまず、ベルトの「ゼッツドライバー」を取り付ける動作が印象に残りました。腰に当てると見せかけて、胸にかけるフェイントは「今度のライダーは胸にベルトがある!」ことを強調しているのがわかります。そして夢の世界ということでビル街を捻じ曲げたりと空間操作を披露していたのが興味深かったです。まさしく劇中のセリフ通り「夢の世界では無敵」であることを、何となく理解した次第です。(あと余談ですが、主人公のネーミングやハチャメチャな能力に高橋悠也氏作品のイメージを見ましたね。そのため『ゼッツ』の脚本は高橋氏の可能性も考えてみたり)

 

 

 というわけで映画ガヴの感想でした。とにかく印象的なことが多すぎて、まとめるのが大変でしたね。その分本作を楽しんだ気持ちなどもしっかり伝わる文章に仕上がったかな、とも感じています。夏映画としてはここ最近とは異なるしんどさがありつつも、盛り上がるべきポイントをしっかりと押さえた内容は最高の一言でした。もう一度見るのは覚悟がいるかもしれませんが、お辛さに見合った面白さだと思います。そんな想いを感じ取ってくれたのであれば幸いです

 

 

 ではまた、次の機会に。