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牙狼<GARO>-月虹ノ旅人- 感想

受け継がれてゆく黄金の物語

これぞ史上最高の大団円……ありがとう、牙狼GARO>!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冴島雷牙(さえじま・らいが)を主人公にした劇場版の製作が発表されてからはや5年……流牙、レオン、雷吼ら他の主人公たちの映画が次々と公開されていく中でいつ公開されるかわからず、もしかして映画の話はなくなってしまったのだろうか、と不安になる時もありましたが、とうとうこの時がやってきました!!そして意気揚々と劇場で見た雷牙の物語は本当の本当に最高でした!!

『魔戒ノ花』において感じていた不満点をほぼ全て解消しつつ、ファンの期待に120%の形で応えた本作はまさに「初期からの牙狼ファンへの感謝の気持ち」が詰まった作品と言えます。長いこと待たされたもののその分最高の時間を貰った気分です。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 雷牙の主人公としての魅力

 まず本作において注目すべきなのが主人公である雷牙のキャラクター性の補完について。「鋼牙の息子」にして「最強の黄金騎士」という触れ込みで登場した雷牙はホラーとの戦いにおいては無類の強さを誇り、それでいて他者を気遣い、慈しむ優しさを備えており、欠点らしい欠点が見当たらない最強の名に偽りなしの人物です。しかしTVシリーズ『魔戒ノ花』においてはその最強っぷりが仇となり、主人公として見るとかなり魅力の薄いキャラクターになってしまっていました。弱点というものをほとんどそぎ落とし、既に完成されているがゆえに物語の中で成長することもなかったため、本編ではマユリやクロウといった仲間たちの描写に尺を割かれ、雷牙を主体とした物語が少なかったため(「風鈴」や「少年」などの雷牙の過去を掘り下げた回もちゃんとありましたが、それでもやはり描写不足だと感じたのは否めなかったです)、「鋼牙の息子」以上のキャラクター性が見られなかったのが残念でした。彼に限らず多くの創作における二世キャラの宿命なのですが、”「○○の子供」という要素がなくてもキャラクターとして魅力的なのか”という点において、雷牙はかなり厳しい立場にいたと言えます。

 そして今回の『月虹ノ旅人』では、この問題を雷牙を「家族の帰りを待つ子」として描くことで見事に解決させていました。母を探しに旅立った父の帰りを待つ中で「必ず帰る」という言葉を信じ続けている一方、その信じる心が揺らぐことがあると劇中で明かす雷牙。そんな自身の心の弱さを恨み、強くあり続けようとする姿を見せることで彼が「最強であろうとひたむきに進み続ける健気な少年」としての一面を我々に見せてくれました。そしてラストで父と母を待つのではなく、自分たちから会いに行くことを選択した場面では、親の帰りを待つ子を卒業して、心の弱さを克服した彼の確かな”成長”を感じ取ることが出来ました。演じている中山麻聖さんの高い演技力もあり、従来の雷牙の優しさと強さを強調しつつTVではほとんど見せなかった弱点や欠点をさらけだすことで、ようやく魅力的な主人公になったと言っていいでしょう。

 

 

  • 冴島家の物語

 もう一つこの映画で語るべき話題が冴島家三世代の揃い踏みです。初代主人公である鋼牙とその父大河の登場により劇場に足を運んだ人たちの興奮度が一気にクライマックスに入ったのは言うまでもないことでしょう。(かくいう自分も大興奮で見ていました!)

 本作の素晴らしい点は最早レジェンドと化した2人をただ出しただけではなく、彼らに「雷牙の父(または祖父)」という新たな一面を与えたことです。魔戒騎士としてどこまでもストイックで他者と関わることが苦手だったものの、カオルたちとの出会いで少しずつ成長していった鋼牙。そんな彼が雷牙との再会を果たした際に開口一番「強くなったな」と彼に対して慈しむように喋りかける姿に驚き、終盤未来の雷牙が受けるはずだったガジャリの試練を全て背負っていたことが明らかになった時には、あの鋼牙が「自分の子供のために我が身を投げ出すことの出来る親」になれたことに確かな感動を覚えました。

 一方大河は鋼牙に対して非常に厳しく、しかしその厳しさの中に優しさを秘めた人物でありました。大河は劇中列車の夢に囚われていた雷牙の前に「バデル」という少年の姿で現れ、あらゆる手を尽くして彼を現実に引き戻そうとします。物語の後半、その正体を雷牙に明かす際も孫を前にした祖父のように微笑みかけるなど徹底して優しい面を全面に押し出しています。また戦いを終えた後に鋼牙に労いの言葉をかけるなど、彼が「子と孫を愛する父親」であることを我々に改めて教えてくれました。

 そしてクライマックス、王牙(オーガ)の鎧を手に入れたバラゴとの戦闘シーンでは、一つしかない牙狼の鎧をどうやって3人で使うのかというファンの疑問に「鎧を3人で着回す」という形で答えた時には膝を叩きました。鎧の一部をそれぞれが装着した状態でコンビネーションを駆使して戦い、さらに大河→鋼牙→雷牙と連続で鎧を身に纏ってバラゴを追い詰めていく場面は、牙狼が「古より代々受け継がれたきた鎧」であることを存分に発揮していました。(また砕け散るバラゴに対して啖呵を切る3人の後ろにこれまで冴島家を支えてきた仲間たちを映していく演出を入れたのもニクイですね)鋼牙たちに新たな魅力を与えつつ、家族で共に困難に立ち向かっていくことを描き切った本作はまさに「冴島家の物語」として完璧な集大成だったと言えます。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

冴島雷牙黄金騎士 牙狼

 前述した通り、TVシリーズでの問題点を解消したことで主人公として非常に魅力的になった雷牙ですが、マユリを気遣い、彼女のために危険にも果敢に飛び込んでいくヒーロー然としたキャラクターは依然健在でした。また父親の言葉を疑ってしまう自分に負けないようにする真摯さも明かされ好青年っぷりにますます磨きがかかった気がします。

 

冴島鋼牙黄金騎士 牙狼

 我らが初代主人公。かつての強さはそのままに我が子を想う父親になった姿には昔からのファンほど感動できるのではないでしょうか。TVシリーズにおいて明かされなかった「何故鋼牙は帰ってこないのか」「彼はカオルを助け出せたのか」という疑問の答えにおいても、彼が父親として成長したことを物語ってくれました。

 

冴島大河黄金騎士 牙狼

  鋼牙の厳しい父として描かれてきた大河ですが、今回は子と孫に対してかなり優しいです。特にバデルの姿で何かと雷牙を説得していく様子は正体がわかった途端かなり孫煩悩なおじいちゃんではないかと思いました。(また他の人も勘違いしたのではないかと思いますが、僕は当初バデルの正体が鋼牙ではないかと考えていたので正体が大河だとわかった時には非常に驚きました。でもコミュ障の鋼牙があんなに気の利く少年になれるとは思えないので納得といえば納得

 

ザルバ

 牙狼シリーズの代名詞ともいえる魔導輪。今回は雷牙たちのサポートに徹していて影が薄かったのですが、序盤から終盤まで雷牙の身を案じる発言が多く、彼と雷牙の絆の深さを感じ取ることが出来ました。またTVシリーズでは最後まで口にしなかった鋼牙の名前を口にするなど、かつての相棒たちのこともしっかりと覚えているのがわかるのも良いファンサービスでした。

 それと本編とはあまり関係ないんですが、冴島家三代が揃った際に鋼牙と大河がつけているほうのザルバがぼやけた状態で三つ同時に喋るシーンはちょっと笑ってしまいました。あれは一体どういう理屈でああなっているのか気になるところです。

 

マユリ

 本作のヒロイン。かつての力を失ったものの雷牙の心の支えとして最後まで彼のために戦う健気さには心打たれました。特にマユリが育てた「」が反撃のきっかけになるのは『魔戒ノ花』のキーパーソンであった彼女らしいと言えます。であった終盤逃げ回るシーンが多かった印象がありますが、それが最後にあのシーンに繋がると考えると納得です。

 

クロウ/幻影騎士 吼狼

  ある意味本作で最も救われたキャラクターTVシリーズにおいては最強キャラの雷牙に見せ場を奪われ、黒幕だった毒島エイジと最も因縁が深いのに彼との決着をつけることが出来ず(『魔戒列伝』で一応戦えたんですけどね)、活躍らしい活躍がないまま終わってしまいました。「不遇な魔戒騎士ランキング」なんてものがあったら間違いなく1位です。

 しかし映画では鎧に囚われた雷牙を救い、魔城の結界を打ち破りマユリの花を届けるなど八面六臂の大活躍!バラゴには一撃で倒されてしまったもののサブ騎士としてこれまでの不遇っぷりが嘘のような優遇ぶりで本当に良かったです。(スタッフもさすがに悪いことしたと思ったのでしょうか?)

 

倉橋ゴンザ

 冴島家に代々仕えてきた執事として多くの作品に登場してきたゴンザですが、今回も周囲の人物を想いつつ自分の為すべきことに徹する姿には見ていて安心感を覚えます。鋼牙らかつての主人たちとの再会は果たせなかったものの、クロウにマユリの花を託す場面など、この人もまた「愛する主人たちの帰りを待つ者」であることを再確認できました。ただ本編後に雷牙とマユリが旅に出たあとのことを考えるとちょっと可哀想だなこの人……

 

白孔

 雷牙を惑わし、鋼牙をおびき寄せた今回の敵役。彼の扱いに対してはちょっと不満の方が強く、謎の人物として強者感を終始放っていたものの、結局バラゴ復活の依代だった肩透かし感がありました。仮面を着けていた意味もあまりなかったように感じますし、なにより演じている松田悟志さんがカッコよかっただけにあのまま出番を終えてしまったのは残念で仕方ありません。もう少しなんとかならなかったものか……、と思います。

 

バラゴ/暗黒騎士 呀

 復活した鋼牙最大の宿敵。彼が黒幕だと判明した瞬間、なるほど冴島家が集結した戦いにおいてこの男以上に相応しい敵はいないと納得しました。実際終盤まで雷牙たち3人を相手に圧倒し続け、どこまでも強敵としての存在感を発揮していました。

 さらにパチンコで登場した伝説の魔戒騎士「鷹皇騎士 王牙(おうこうきし・オーガ)」の鎧を纏ってきた時には衝撃を受けました。最期は親子三代の力に敗れたものの、ラスボスとして相応しい活躍を果たしましたね。(しかし京本政樹さんは全然見た目が老けないな……)

 

黒ノ列車の乗客たち

 牙狼特有の浮世離れした世界の住人たち。今回はまるで「風邪をひいた時に見る夢」みたいだと思っていたら本当に夢だったというオチにはちょっぴり驚きました。しかし和と洋のファンタジー要素が上手くミックスされた独特の世界観は健在で、雨宮ファンタジーの奥深さを再確認できました。

 また今回は涼邑零/銀牙騎士 絶狼を演じた藤田玲を始めとしたかつての牙狼の出演者たちが混じっていましたが、僕は初見で見破ることが出来ず後で読んだパンフレットで知ることになりました。悔しい!

 

御月カオル

 本作最大のサプライズ要素。未だに行方不明のまま鋼牙とともに帰ることは今回も叶わなかったものの、マユリとともに雷牙たちに花を届けるという先輩ヒロインとしての威厳を見事に魅せてくれました。また初代牙狼の重要な要素の一つである「カオルの絵」をラストに持っていったのが素晴らしかったですね。

 

 

 今回の『月虹ノ旅人』、鋼牙から続く冴島家の物語としてこれ以上ない出来であり、牙狼シリーズとしても過去最高峰の作品だったと言えます。それだけに今後牙狼がシリーズとして展開出来るかどうかの瀬戸際に立たされているのが気になります。「いっそのこと本作を以てシリーズをいったん終了させて有終の美を飾るのも悪くないのではないか」という考えがよぎりますが、それでもファンとしてはまた新たな『牙狼』を見てみたいというのも本音ではあります。というかいい加減流牙とジンガの決着を完全につけてほしい。とはいえ新しい作品が作られようともそうでなくても、ファンとして真摯に受け止めていきたいと考えています。

 とりあえずはこの最高の作品を作ってくれた雨宮慶太監督を始めとしたスタッフの皆様方に最高の感謝を。本当にありがとうございました!!

 

 

 ではまた、次の機会に。