新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

ウルトラマンタイガ 第25話(最終話)「バディ ステディ ゴー!」感想

君だけの答え

これは、この地球で出会った若者たちの奇跡の物語である!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 救うための戦い

  前回のラスト、ピリカを救うため巨大なウーラーを相手に猛然と立ち向かっていったトライスクワッドでしたが、エネルギーを丸ごと喰らう特性の相手に為すすべなく二度目の敗走を喫することになってしまいました。

 しかしその後ウーラーの体内にいたピリカが「ウーラーをその悲しき性から救ってほしい」という旨の助けが伝えてきたのは意外でした。確かに前回の時点でウーラーは自らが満たされない理由も知らないまま周囲のものを貪る哀れな怪獣だという認識でしたが、てっきりラスボス怪獣だと思っていたのでそれを助けるために動く展開にしたのには意表を突かれましたね。また前回から登場していたヴィラン・ギルド出身のマグマ星人とマーキンド星人が協力してくれるのもまたベタながら熱かったです。(「稼ぎ場である地球を滅ぼされては困る」といった打算的な理由からではなく「ピリカの覚悟に免じて」共闘してくれるマグマ星人が男前すぎる・・・・・・)

 周りが恐ろしい存在だと認識している怪獣を救うために奔走するのは第2話においてヒロユキが助けられなかったゲスラの「チビスケ」を思い出します。ただあの時と異なるのはタイガにすら理解を得られないまま1人でチビスケを助けようとしていたヒロユキが今回、E.G.I.S.のメンバーや敵対していた宇宙人とも力を合わせていく点です。タイガがこれまでの戦いで仲間と力を合わせることを知ったように、ヒロユキもまた一緒に戦ってくれる仲間との絆を獲得したということでしょう。それを強調するかのように劇中で見せた「社長やホマレ先輩にはとっくの昔にヒロユキ=タイガだとバレていた」というウルトラシリーズ全体から見てもかなり珍しいタイプの正体バレは気づいていてあえて追求しなかった社長たちの人の良さやヒロユキへの信頼を感じさせてくれます。

 

 

 ウーラーの体内にホワイトホールを発生させて無力化させている内にエネルギーを与える作戦を決行するヒロユキたちをよそに、その光景を楽しそうに観劇する霧崎(トレギア)。宇宙人を迫害しておきながら同じ宇宙人であるウルトラマンは自分たちを守ってくれるからと応援する矛盾を抱えた地球人を見て「混沌」と例え、タイガたちを邪魔するなど相変わらず嫌らしさ全開です。

 しかしここでタイガがトレギアの光線を自分の光線と合わせることでそれをウーラーに食べさせることに成功し、「怪獣を救ったウルトラマン」としてトレギアに手を差し伸べるのは本当に予想外でした。ここまで散々自分や仲間たちにえげつないことをしてきたあのトレギアを「光を守護するウルトラマン」だと認めたタイガの心の広さにも驚きますが、それを屈辱と捉えるトレギアを見ていると彼の抱える心の闇がほんの少し見えてきたように思います。前述のウルトラマンだけ特別扱いする地球人や過去に何度も言ってきた「光も闇もない」発言など、トレギアはウルトラマンが絶対的な光の存在であることを否定したがっていたのかもしれません。「ウルトラマンは光、正義でなければならない」という考えを強要されるのを拒み、他の宇宙人と何が違うのかと問いかけ続けていたと考えると、光の戦士として両親や兄弟たちの寵愛を一身に受けてお手本のようなウルトラマンになったタロウに対してコンプレックスを感じるのにも納得できます。ウルトラマンという固定概念”そのものに対するアンチテーゼになろうとしたものが、トレギアという存在なのかもしれません。

 しかしこの世界に光も闇もない、と言い続けているトレギアが誰よりも光と闇、正義と悪といった概念に囚われているのは皮肉としか言えません。タイガやヒロユキの闇を引き出すことに固執したり、自分が怪獣を救ったという事実を受け入れようとしないなど、どれだけ否定しようとも自分が光の存在であることを意識し続けていることがわかります。終盤のタイガとの決戦の際に朝日をバックにしたタイガの姿にタロウの面影を見た時など、コンプレックスの元であるタロウの息子として彼を見続けていたのかもしれません。(またタイガが偉大な父へのコンプレックスを克服してからようやく自ら「タロウの息子」だと名乗るなど、上手い具合にタロウに囚われているトレギアとの対比になっています)そして親友という光に囚われたまま敗北を認めたかのように笑いながら倒されるという最期は、トレギアというウルトラマンの哀れさを感じるものでした。最後の最後まで、彼は光から逃れることが出来なかったのかもしれませんね・・・・・・

 

 

 ウーラーを救い、トレギアとの因縁に決着をつけたもののピリカを救うことが出来なかったという悲しいラストになるかと思いきや、まさかのピリカ生存!は嬉しかったんですけど何故無事だったのかちゃんと説明して欲しかったところです。またマグマ星人とマーキンド星人がそのままE.G.I.S.に入社したのにも軽く驚きです。前回まで1話でまとめきれるのかと心配していた最終回ですが、終わってみれば驚きかつそこそこ納得させてくれる展開の連続でキチンと終わることが出来て良かったです。いやぁ本当にお疲れさま!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンタイガ』総評

 

 というわけでここ最近毎年新作のTVシリーズを作ってくれるほか、アニメ作品などの幅広い展開も含めて現在絶好調の円谷が送り出した新作『ウルトラマンタイガ』は「タロウの息子が他の星のウルトラマンとチームを組む」という1つだけでも番組が作れそうな設定を複数組み合わせつつ、それでいて主人公が小規模ながらも1つの組織に身を置いている点など往年のウルトラマンらしさも残した意欲的な作品でした。

 

 先に評価点について語りたいと思います。(※本作はボイスドラマも配信していましたが、あくまでTVシリーズ単体を見た感想について語りたいと思います)まず本筋について、これはシリアスながら「仲間と共に力を合わせる」「自分らしくある」ことの素晴らしさを説いていて偉大な父親に対してコンプレックスを感じていたタイガがヒロユキたちとの交流を経てそれを乗り越え、名前通りの「大きな我(じぶん)」になっていく過程を丁寧に描いていったと思います。またヒロユキたち人間サイドも仲間を得て成長していて本作はまさに人とウルトラマンが共に成長していく物語であったと言えます。

 また本作のテーマの1つであろう「宇宙人との共存」について。過去のシリーズで何度も提示されてきたテーマですが本作では地球に隠れ潜みながらその貧しい暮らしに反旗を翻したりするなど宇宙人たちが難民のように描かれており、そこから犯罪に手を染めるものや彼らを迫害する地球人など両者の溝をこれでもかと見せながらもホマレ先輩とE.G.I.S.の関係のように地球人と宇宙人が手を取り合える可能性を示すという、厳しい現実に一筋の光明を見せる構成にこの問題についてなぁなぁにしないという強い決意を感じます。

他にも1話1話のストーリーの完成度も高く、前述の陰鬱ながらも希望を残すものから昭和の懐かしさを感じさせてくれるコミカルなものまでバラエティ豊かな内容だったのも素晴らしいです。何よりこれまで敵対してきた宇宙人や怪獣と共存したり共に戦ったりするなど、既存のキャラクターたちが持つ過去のイメージを覆して新たな魅力を開拓したことについては拍手を送りたいです。

 特撮面に関しても素晴らしいの一言。特にジオラマ・ミニチュアのクオリティはここ最近の作品の中でもブッチギリの高さで、派手に壊される建物はもちろん、動き回る人間との合成と組み合わせた画作りは大人になった身でまるでウルトラマンがその場にいるかのように錯覚してしまうほどです。かつての暗黒期の円谷を考えるとこれほどの映像を再び作れるほどになったことに感動を覚えます。そして特撮を支えるアクションも見事。過去のニュージェネシリーズよりも玩具の操作が簡略化した分スピーディになったほか、力強さが自慢のタイタス、素早い動きが得意なフーマといったウルトラマンごとの能力の違いも見ていてハッキリとわかるくらいそれぞれのカッコいい動きを堪能することが出来ました。

 

 

 

 

 

 さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。まずトレギアの扱いについて。トレギアというキャラクター自体はいいものの彼が介入したせいでどこか後味の悪くなるオチが多かったのはまずかったと思います。トレギアという悪のウルトラマンの非道さを見せたり、タイガたちとの因縁を作っていくためというのはわかりますが、明らかにトレギアが出てこなくても問題なかったエピソードがちらほら見受けられます。(17話についてはミードを殺す必要があったのか、と感じました)全体的にトレギアが場の雰囲気をメチャクチャにしているせいでどこかとっ散らかってしまった印象が強いです。この理由から個人的にトレギアは「とにかく嫌な奴」というイメージを抱きましたが、製作側はトレギアをどのように見てほしかったのか気になるところです。また本筋自体の進展があまりないせいか週一で見ているとどこか退屈に思えてしまうところがあります。前述の通り1話1話の完成度が高いだけに全体で見ると満足度で劣ってしまうかもしれません。

 他にもせっかくウルトラマンが3人いるのに、タイタスとフーマの掘り下げについてはボイスドラマのみで行われて本編ではあまり出番がなかったのは非常に惜しいところです。日常パートでヒロユキとやり取りするのはほとんどタイガで2人は戦闘以外ではあまり目立たなかったせいでいつものタイプチェンジとしてのイメージから脱却しきれなかった感じが否めませんでした。劇中で成長していったタイガと違いヒーローとして成長しきっていただけに活躍の場が少なくなってしまったのは残念です。

 

 

 総評としては「もっと彼らの活躍が見たかった!」ですかね。気になる点は多々あるものの同時に良いと思った点も多いので作品全体としては非常に好みです。

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

工藤ヒロユキ

 本作の地球人側の主人公。何かと「キャラが薄い」と言われがちですが、それはタイガたちと比べて、という話でかつて自分を助けてくれたタイガのために身をていすなど仲間想いの勇敢な青年という点で一貫しておりヒーローとしての資質を十分に兼ね備えていたキャラだったと思います。(ただホマレ先輩が言っていた「熱血バカ」については最後まで違和感がありました)それでいて人当たりがよいので優しい印象を与えてくれるスタンダードな主人公と言えます。

 

 

ウルトラマンタイガ

 ウルトラマン側の主人公。光の勇者。タロウの息子に生まれながらも自分自身を見てほしい悩みを抱えた若者で、ここから仲間を得ることで本当の自分を獲得していく、「成長していくウルトラマン」という非常に斬新なキャラクターです。戦闘ではどっちつかずのバランス型ながら先輩のものを含め非常に多才な技を使うので次はどんな技を見せてくれるのかというワクワク感がありました。あと日常パートのちょっと抜けているところがとても可愛らしいです。

 

 

ウルトラマンタイタス

 力の賢者。まさかのU-40出身でその筋骨隆々なフォルムのインパクトもあって番組開始前から絶大な人気を博したすごい人。トライスクワッドのメンバーの中ではかなり落ち着いていて常に一歩引いたところから意見する理性的な面と何かとパワーを第一にした考えを主張したり登場時にマッスルポーズを連発するお茶目な面を併せ持つ非常に濃い人物でとにかく存在感がありました。見た目通りのパワー型で圧倒的な力で敵をねじ伏せる戦闘シーンに惚れた人も多いと思います。

 

 

ウルトラマンフーマ

 風の覇者そして個人的に今作の推しウルトラマン。O-50出身ということであの輪っかのことをどう思っているのか気になる人物。放送前はタイガとタイタスのインパクトに負けてキャラが薄くなってしまわないかと心配しましたがいざふたを開けてみると忍者ウルトラマンという珍しい特徴と軽いノリでコミカルな性格のおかげで普通に濃くて安心でした。スピード型のウルトラマンで前述の忍者要素と合わさることで見たこともないようなスピード戦を見せてくれる名キャラクターです。

 

 

佐々木カナ

 我らがカナちゃん社長。とぼけたふりをしているものの宇宙人であろうとアンドロイドであろうと受け入れる心の広さを持っており、かつて宇宙人の子どもを助けられなかった過去からE.G.I.S.を作ったという経緯は「厳しい現実に打ちのめされながらも理想を捨てずに戦い続ける」人間の強さを視聴者に教えてくれます。あの会社で唯一の常人ながらもカッコいい大人として個人的に尊敬してるキャラクターです。

 

 

宗谷ホマレ

 ヒロユキの先輩で何かと頼れる兄貴分として描かれましたが、一方で喧嘩っ早いところもある暴走特急というイメージがあります。当初は宇宙人であることを隠しており、宇宙人としての苦悩を一手に担う役割として彼の主役回は重い展開ばかりだったものの、だからこそE.G.I.S.で学んだわかり合えることを教えてくれる存在だったと言えます。それはそれとして宇宙人としてはどこ出身だったのかといった情報が一切明かされなかったのは残念でしたね。

 

 

旭川ピリカ

 放送直前に俳優交代という衝撃情報の中、キッチリメインキャラクターとして活躍してくれたヒロイン。前半は他のメンバーと比べて影が薄かったものの、19話以降一気にその存在感を増して最後には最重要キャラとしての印象を残してくれたかと思います。何よりその衝撃の真実が明かされてから5話を見返すとこの時点で彼女の戦いは始まっていたのだと感心させられます。

 

 

霧崎/ウルトラマントレギア

 今作の敵キャラクター。圧倒的な煽りスキルと陰湿な性格、それでいてウルトラマンという存在そのものに対するコンプレックスを抱えた内面などベリアルとはまた異なる「悪のウルトラマン」を開拓した存在。しかしとにかく嫌な奴なので彼を受け入れられるかどうかでこの作品の評価が大きく変わるかと思います。(前作におけるツルちゃんのようなポジション)光や正義を否定したいもののそれに一番こだわってしまっている点も含めてかなり人を選ぶキャラクターかもしれません。

 

 

 何だかんだで半年間非常に楽しめた作品でした。来年の3月には映画もやるので、まだまだタイガの活躍を楽しめそうです。出来れば映画の感想も書いていきたいですね。

 

 

 ではまた、次の機会に。