新時代の全てを照らせ
絆を紡いできた新世代の物語、ここに終結!!
去年の12月にテレビシリーズが堂々完結した『ウルトラマンタイガ』。その劇場版が今年の3月に公開される予定だったのですが、新型コロナウイルスの拡大により公開を一時延期、その後長いこと待たされることになりました。しかし今月8月、その沈黙を破りついに劇場版が公開されることになりました。
約5か月もの期間を経て見た今回の映画は本当に素晴らしいものでした。1時間と少しの短い上映時間ながらファンが見たかったものをこれでもかと詰め込んでおり、『ギンガ』から続くニュージェネレーションウルトラマンの物語、そしてウルトラマンタイガの物語の完結編としても申し分ない内容に仕上がっていました。公開まで非常にもどかしい思いを抱かされましたが、その分本当に楽しい時間を味わうことが出来たので待っていた甲斐があったというものです。久しぶりに映画館で映画を見た点も含めて感無量でしたね。
※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!
- オマージュ・ファンサービスの極致
本作は『タイガ』の映画であると同時にニュージェネレーションと呼ばれるウルトラマンが集結するというお祭り映画としての側面も備えています。ギンガからロッソ&ブル兄弟までの歴代ニュージェネウルトラマンが変身前の姿も含め登場する非常に豪華な客演になっており、内容もまたその豪華さに相応しいものに仕上がっていました。
トレギアから溢れ出た「邪神魔獣 グリムド」を封印するために変身能力を失った、という体で変身前の人間としてのメンバーが登場しましたが、その時点からファンサービスの連続。カナちゃん社長と共に宇宙人相手に生身アクションを繰り広げるガイさん、持ち前の技術力でピリカを救う大地、そしてリーダーとしての風格をこれでもかと見せつけてくるヒカルとショウのコンビと各キャラクターの特徴を掴んだ活躍を見せてくれました。それ以上に(映画の)現行キャラであるタイガとヒロユキたちとの絡みもまた見事の一言。父と戦わなければならない辛い現実に直面したタイガに「かつて父親と戦った者」としてその想いに共感をしてくれるリクのシーンは少し涙腺にきましたし、前作の映画にてトレギアを止められなかった故にこの地球に被害が出たことを悔やむカツミを軽い口調ながらもフォローするイサミのシーンも彼ら兄弟の絆を感じられます。何より戦友であるタロウのことを誰よりも心配するヒカルは最高でした。このように歴代ニュージェネ作品を見てきた人なら思わず喜んでしまうようなファンサービスを十二分に展開してくれました。
バトルシーンに関しても念願のニュージェネウルトラマン8人同時変身から始まり、先輩たちの劇場版最強フォームが並び立つシーン*1などここでも歴代作品の良さを存分に見せてくれていました。(兄たちのために来てくれるアサヒもといグリージョも最高でしたね・・・・・・)また先輩ウルトラマンたちに留まらず、映画の主役であるタイガたちにも活躍のシーンを用意していたのも素晴らしかったです。念願のトライスクワッド3人の揃い踏みによるコンビネーションはもちろんのこと、父タロウの必殺技である「ウルトラダイナマイト」を使用して父を救ってみせるタイガの成長ぶりにはホロリときました。総じてこちらが「見たい」と思っている絵面を用意してくれていることに感動を覚えます。
またファンサービス以外にも様々なオマージュが仕込まれているのも今作の魅力。非常にネタが多いので全てに触れることは出来ませんが、やはりレイガ誕生の瞬間は取り上げるべきでしょう。11人のウルトラマンの力を結集させた「ウルトラマンレイガ」を誕生させるためにタロウの指示でタイガのウルトラホーンに5人のウルトラマンがエネルギーを送り込むシーンがありましたが、これは映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』のオマージュでもあります。
終盤強敵グランドキングを倒すために5人の兄がタロウのウルトラホーンにエネルギーを送り彼らと一体化することでスーパーウルトラマンになったタロウがグランドキングを倒すシーンで有名な映画ですが、このシーンをタイガで再現してくれたことに感激しました。少年時代のタロウのシーンから始まり彼が立派な戦士に成長するまでを描いたこの映画、彼の息子であるタイガの成長のクライマックスを飾る本作のオマージュ元としてはこれ以上ないチョイスです。グリムドの攻撃をものともしない圧倒的な風格と強さを見せつけたレイガもある意味でニュージェネ版スーパーウルトラマンというべき活躍ぶりでした。他にも看板をはじめとした場所に仕込んである小ネタなど一度見ただけでは網羅しきれない魅力が散りばめられています。他の作品を知らなくても十分楽しめる一方で、過去作を見ていれば必ずニヤリと出来るのがこの映画の素晴らしいところといえます。
- 壮大な親離れ・子離れの物語
また本作の最大の魅力としてあげておきたいのがタイガとヒロユキの成長物語としての一面です。テレビシリーズではタロウの息子である重圧に押しつぶされそうになっていたタイガがヒロユキら仲間たちの絆によってコンプレックスを克服し、「俺はウルトラマンタロウの息子!」と堂々と名乗れるようになるまでを丁寧に描いていましたが、本作はそこから一歩先、父親を超えるまでを描いていました。トレギアとの問答にて息子のタイガに危機が迫っていることを知り、それがトレギアの罠だとわかっていても息子を助けに行く選択をしたタロウ。その結果彼はグリムドの闇にその身を乗っ取られ最強の敵としてタイガの前に立ちはだかることになってしまいました。(このように本作のタロウは「過保護な親」として描かれているのが特徴です)
タイガはそんな父親と正面から向き合い、仲間と力を合わせることで彼を救い出します。その成長を見たタロウがグリムドとの決戦で上記のレイガ誕生のために仲間たちにタイガにエネルギーを送ることを指示する場面はタイガの成長ぶりから彼に全てを託せると確信したからと言えます。グリムドの攻撃を防ぎ切り膝を付くタロウの前に立ち、グリムド相手に敢然と戦うレイガのシーンはまさに「親世代から子世代へのバトンタッチ」そのものです。テレビでタロウの息子となったタイガが父親を超え、タロウも息子の成長を認める、”息子の親離れ”と”父親の子離れ”を同時にやってのけた見事な構成でした。
そしてもう1つ、本作はヒロユキの成長と別れも描かれていました。ウルトラマンとしての力を宇宙人たちに狙われていたヒロユキですが、本人はそんな状況に陥っているとは露知らずE.G.I.S.での仕事と地球を守る使命に張り切っている最中。それ故にカナちゃん社長らE.G.I.S.のメンバーや、ニュージェネ先輩たちから守られることになりますが、その事実を知ってからはただ守られるのではなく、タイガたちと共に自ら困難に立ち向かっていく強さを見せてくれました。タロウを助けに向かう彼をただ心配するのではなく、帰るべき場所として見送ってくれる社長たちのシーンからも彼が信頼を勝ち取ったことが伺えます。
同時に最終決戦の前にタイガたちがヒロユキに自分たちが自力で実体化出来るまでに回復したことを彼に明かし、それでも自分たち抜きでヒロユキがやっていけるのかが心配で今まで打ち明けられなかった想いを吐露しますが、ここでもヒロユキは彼らを心配させまいとする強さを発揮します。戦いを終えた後「離れていても僕たちは相棒だ」という言葉を伝えてタイガたちと分離し、宇宙に飛び立つ彼らを見送る選択を選んだヒロユキ*2はテレビで度々見せてきた「危なっかしい若者」ではなく、「ウルトラマンの相棒に相応しい1人の人間」の顔になっていました。タイガと同じく、彼もまた”過保護な仲間たちからの親離れ”を果たしたのです。
タイガとヒロユキ、共に成長してきた2人の主人公がそれぞれの成長を見せ、それでも互いの絆は健在であるを示してくれるラスト・・・・・・本作は「タイガとヒロユキの2人はもう大丈夫」というメッセージをファンに伝えてくれる完結編に相応しい内容だったと言えます。
では以下、各キャラクターについての所感です。
工藤ヒロユキ
ご存じ本作の人間側の主人公。タイガたちトライスクワッドとの気心の知れた関係は相変わらずです。一方で本作では序盤から向こう見ずで無鉄砲な一面が発揮されていて、テレビシリーズではあまりピンとこなかった「熱血バカ」が納得出来る形で表現されていました。
上記の通り物語の前半で仲間や先輩たちから過保護なレベルで守られますが、それらをものともせず自分の身で戦う姿は非常にカッコよかったです。自分を心配するタイガたちを激励し、笑顔で見送るなど最初から最後まで見ていて気持ちのいい好青年でした。
ウルトラマンタイガ
ご存じ本作のウルトラマン側の主人公。テレビシリーズではタロウの息子であることに悩み続けていたものの仲間たちの支えのおかげで見事吹っ切れましたが、本作はそこからさらに「父親と戦い超える」という最大の試練を前に見事成し遂げてくれました。テレビで彼の苦悩と成長をしっかりとやったからこそ今回の活躍があったと言えます。
また”親離れする子ども”として描かれていたのと同時に、ヒロユキの身を案じて彼に話を切り出せないでいる”子離れ出来ない親”としての一面も見せてくれました。最後にヒロユキの成長を実感して飛び立つ瞬間なども含めて非常に味わい深いキャラクターでしたね。
ご存じトライスクワッドの仲間たち。本作ではタイガとヒロユキを中心として物語が展開されたために少し影が薄かったのですが、2人の関係を一歩引いた目線で見守る大人な様子を見せてくれました。
一方戦闘シーンでは序盤と決戦時共に中々に印象的。持ち前のスピードを駆使してところ狭しと大暴れするフーマにマッスルポーズや「近い!」などの叱咤で見ている人たちに笑いを誘うタイタスと、出番が少なくともしっかりと活躍してくれる2人のキャラの濃さを改めて感じ取りました。
E.G.I.S.メンバー(佐々木カナ&宗谷ホマレ&旭川ピリカ)
ご存じヒロユキの大事な仲間たち。今回はヒロユキに狙われていること秘密にしたまま彼を守る「保護者」のように描かれていましたが、事件を知ってもなお立ち向かうヒロユキの強さを認めて彼を見送る選択をしてことに感動しました。短い出番ながらも彼らの絆の深さを実感します。
またテレビシリーズの最終回で新たに社員として加わったマグマ星人とマーキンド星人も登場してくれたのは嬉しかったです。序盤のダダたちとの戦いで受けた怪我が原因でフェードアウトしてしまったものの、存在を忘れずしっかりと出してくれたことに感謝したいですね。でも最後のタイガの別れの時くらいには出して欲しかったかも
霧崎/ウルトラマントレギア
ご存じ『タイガ』の敵キャラクター。超全集でルーゴサイトをはじめとした他のニュージェネ世界の事件にも関わっていたことが判明しある意味で「ニュージェネレーションシリーズにおける最大の敵」として君臨した非常に濃いキャラクターです。
テレビシリーズでも度々見せてきた煽りスキルと陰湿さは健在で、本作ではさらにタロウとの対面から彼のキャラクターに更なる掘り下げがされました。光や正義などに対するコンプレックスの源流であるタロウに対する屈折した感情が深く描写されていて、タロウが闇に堕ちた時の「やっと私のものになってくれたね・・・・・・」というセリフ*3などからも彼が誰よりもタロウから離れることが出来なかったことが感じ取れます。(ある意味でタイガたちにとは対照的に”親離れ出来なかった”とも取れますね)光を信じられずに爆散するという最後まで哀れな姿をさらしましたが、死ぬことでようやく彼はウルトラマンの宿命から解放されたのだろうとも取れますね。
ご存じタイガの息子にして伝説のウルトラ兄弟ナンバーシックス。テレビシリーズではあまり出番がなかったのですが映画でようやく登場を果たしました。
上記の通り本作では息子タイガのことを心配する「過保護な親」として描かれていましたが、仲間とともに自らを助け出したタイガの成長ぶりをその目で確かめて彼に全てを任せるようになるまでの流れはまさに「子を認める親」でした。ここにきてタロウもまた成長したのだと言えます。
また一方でトレギアの親友して彼を止めようとするシーンも印象的でした。しかしトレギアに対する優しい態度がかえって彼の心を逆撫でしてしまう辺りは何とも言えない気持ちにさせられます。特にトレギアに「光の国に帰ろう」と優しく言う場面はお前そういうところだぞと内心ツッコんでしまいましたね・・・・・・
湊カツミ/ウルトラマンロッソ
ご存じウルトラマン兄弟の兄。本作ではニュージェネの先輩として1番最初に登場を果たしたため非常にテンションが上がりました。前作の映画『セレクト!絆のクリスタル』で一足早くトレギアと戦っていた者として彼を仕留めきれなかったことを重く受け止める責任感の強い性格は相変わらずで、イサミにフォローされながら戦いに臨む姿は中々にカッコよかったです。
戦闘では生身のまま宇宙人たちと戦ったりグリムドとの最初の戦いでタイガを的確にサポートするなど、当時から大きく成長していることがわかるように描かれていたのが嬉しかったですね。ヒロユキを守ろうとする姿から先輩としての風格が出てきたと思います。
湊イサミ/ウルトラマンブル
ご存じウルトラマン兄弟の弟。兄カツミと同じく直近の前作であるためか他の先輩たちよりも出番が多めでした。相変わらずの軽いノリでリクとちょっとしたもめ事を起こしたり霧崎を前にイケメンであることを呟いたりと重くなりすぎた空気を緩めてくれる良いムードメーカーとなってくれました。今度こそトレギアを止めようと勇むカツミに「俺たちで、だろ?」と支える様子は兄弟の絆を見事に表した名シーンです。
戦闘ではロッソと同じく成長を感じる一方で、グリムドの腹の口にルーブスラッガーを掴まれてどこにいったのか探してしまうギャグが挿入されたのも最高でした。兄弟の抜群のコンビネーションも含めて『R/B』の真骨頂をここでも発揮してくれて嬉しかったですね。
ご存じベリアルの息子。現在放送中の『Z』でもゲスト出演するなどニュージェネの代表といっても過言ではありません。本作では出番はあまりなかったものの子どもが飛ばしてしまった風船を取って上げるなど要所要所で活躍してくれました。
何よりタロウと戦うことに苦悩するタイガに「父親と戦わなきゃいけないってしんどいよね」と激励してくれるシーンは最高でした。悪魔と呼ばれた父ベリアルの唯一の理解者として、何より先輩としての的確なアシストをしてくれたと思います。
クレナイ・ガイ/ウルトラマンオーブ
ご存じ風来坊。聞きなれたハーモニカのメロディと共に現れるのが最早様式美と化しています。おたくの相棒別の宇宙で防衛隊の隊長やってますよ。
先輩としての出番はあまりなかったのですが、一方で生身アクションで存在感を放ってしました。特にカナちゃん社長との即席コンビで宇宙人をバッタバッタとなぎ倒していく様子は最高でしたね。戦闘の後にその辺にあったラムネを堪能する点も含めて「ガイさんらしい」絵面がかなり詰め込まれていました。
大空大地/ウルトラマンエックス
ご存じ繋がる絆の戦士。ウイルスに乗っ取られたピリカを持ち前の技術力で救い出して「違法なアクセスはしてはいけない」ことを劇場の子どもたちに教えてくれるナイスガイ。そしてこの件でピリカとのフラグが密かに立つ展開には地味に驚きました。
ピリカを助け出した直後、彼女たちが聞き込みをしていた相手であるファントン星人を見て思わず駆け寄ってしまうものの、自分の世界のグルマン博士とは別個体であることを認識するシーンで思わずニヤリとしてしまいます。一方で相棒のエックスの声を担当する中村さんが今回出演していないせいか、ウルトラマンになってからの掛け声を全て彼がやっていたことに少し違和感を覚えてしまいました。ライブラリ音声などは使えなかったのかとちょっと思ってしまいますね。
ショウ/ウルトラマンビクトリー
ご存じビクトリアンの勇者。相棒のヒカルとセットで「ニュージェネのリーダー格」として堂々とした佇まいだったのが嬉しかったです。
しかし一方で本人のクールなキャラクター故か口数も少なく、先輩たちの中でも一際出番がなかったのが残念なポイント。ただタロウを手に入れて舞い上がっているトレギアに対して「拗らせているな」と呟くシーンは評価が的確すぎて思わず吹いてしまいました。
礼堂ヒカル/ウルトラマンギンガ
ご存じニュージェネレーションの元祖。先輩たちの中でも特にヒーロー然とした明るいキャラクターとリーダーとしての風格もあって登場した時の安心感は半端ないです。
上記にもある通りかつてタロウと共に戦った者として彼のことを心配する様子がチラホラ見られました。父を救おうとするタイガに「タロウのことは任せたぜ!」と激励を送ったり闇から解放されたタロウを気遣ったりするシーンは『ギンガ』を見てきた一ファンとしてはこれ以上ないファンサービスでした。戦闘でも仲間たちを「行くぜみんな!」と引っ張るなど彼がリーダーをしていることに思わず感涙してしまいます・・・・・・
というわけでタイガとヒロユキの物語も本作を以て一旦終了となりました。しかし現在放送中の『ウルトラマンZ』の映画が公開されるとしたらその際に出てくれるのではないか?とついつい考えてしまいます。先輩として一回り大きくなった彼らの活躍に期待しつつ、今は現行のゼットとハルキの活躍をテレビで見届けようと思います。
ではまた、次の機会に。
*1:最強フォーム集結は『ウルトラギャラクシーファイト』でもありましたが、ギンガビクトリーを含めての集結は今回が初です。
*2:この一連のシーンは『ウルトラマンタロウ』最終回の「光太郎と一体化したまま1人の人間として地球で生きていく」ことを選んだ結末を意識しているように感じます。
*3:この辺りの俳優さんのねっとりとした演技が素晴らしいです。