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仮面ライダーゼロワン 第19話「カノジョは家売るヒューマギア」感想

恐怖が生み出す悪意

1000%おじさんの「一理あるけどお前が言うな」感よ

仮面ライダーゼロワン 変身ベルト DXザイアサウザンドライバー

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  • 発売日: 2019/12/28
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • ヒューマギアを恐れる者たち

 お仕事勝負2回戦ということで、「住宅販売」という子どもにはわかりにくい勝負内容が出てきたなぁと感じた今回のゼロワン。住宅販売員ヒューマギアの「住田スマイル(すみだ・スマイル)」と不動産会社の営業マンである「新屋敷達己(あらやしき・たつみ)」の2人が2週間でどれだけ家を売れるのかどうかを競うというものですが、この時僕は「営業をするヒューマギアが存在している」ことに対して驚きと恐怖を感じました。これまで登場してきたヒューマギアの多くは単純ながらも重要な作業をする職場で、なおかつ人手が足りない場所に配備されていており、俳優や声優といった人間ならではの仕事を担当するヒューマギアもいたもののごく少数でした。しかし今回相手の感情を推しはかり、ニーズに合わせた駆け引きをするまさに人間だからこそ出来る仕事である営業を可能とするヒューマギアが現れた以上、人間の優位性が失われつつあるように思えます。実際劇中で新屋敷が言及していたように、もしヒューマギアが人間よりも営業が出来ると証明されれば人件費などのコストがかからないヒューマギアばかり起用され、多くの人が路頭にさまようことが危惧されます。新屋敷が物件を破壊したりスマイルを罵倒して池に突き落とすなどの妨害は続けること自体は決して許されるものではありませんが、人間の地位が脅かされている現状を考えると彼がここまでしてしまうほどに追い詰められていることにも自然と納得してしまいます。(彼がスマイルに放った「ヒューマギアは家で寝ることも食事することもないのに家の何がわかるのか」という発言がまた一理あると思ってしまう理屈なのがまた・・・・・・)

 そして今回新屋敷を煽ってスマイルを暴走するよう仕向けた垓の「人工知能には自我を抑制する理性が存在しない」という発言もまた興味深いです。人間は欲望や衝動を道徳心や倫理観、そして理性でもってコントロールするものですが、人工知能はそれらが欠落しているからこそ暴走する恐れがあるのでしょう。ヒューマギアが暴走する原因は16話で明かされたようにアークに人間に対する敵意を持たせたからなのですが、今回スマイルが暴走したのは人間に対する憎悪が突然芽生えた時にそれを抑える機能が存在しないからのようにも思えます。ヒューマギアが理性のラーニングをしないままシンギュラリティに達するまでに急成長した結果、人間に牙をむくようになってしまったのは人間のように「〇〇をしてはいけない」「〇〇は守らなければならない」などのような社会で暮らしていくために必要なことをじっくり学ぶ機会がほとんどない人工知能ならではの問題点があるからだと言えます。そういった意味では垓がヒューマギアを廃そうとすることにも少し納得出来てしまいます。それはそれとしてここまで仕組んだお前が言うなとは思いますが。

 

 

  • 滅のヒントを追う者

  或人たちがお仕事勝負で四苦八苦している一方、不破の方は前回出てきたレイドライザーを人々に渡す謎の人物を追っていました。滅への尋問を続けた結果レイダーやレイドライザーといった名称まで聞き出し、さらにそれらを追うことでその謎の人物と出会えるであろうことまで教えてもらったおかげで今後の不破の目的がはっきりし、滅亡迅雷.netとの決戦の後関わることが少なくなっていた或人たちとの絡みが復活しました。ここまで蚊帳の外だった彼が別口で動きつつ再び本筋に関われるようになったのは嬉しいことです。

 また今回新屋敷にレイドライザーとキーを渡した謎の人物の声が明らかに女性だったことが気になります。前回は男性の声で喋っていたのになぜ突然声が変わったのでしょうか?謎の人物は複数人存在するのか、それとも声などを使い分けることが出来るのか、といった推測が止まらなくなるいっぽうです。

 

 

 今回ヒューマギアを恐れる人間の純粋な悪意やそれらを憎むヒューマギアを制御出来ない現実を突きつけられかつてないほどに意気消沈する或人。これまでの感想でも散々書きましたが、或人には「人間とヒューマギアの両方が笑顔になる」という理想ばかりを追い求めるあまり、人間とヒューマギアの軋轢やそこから生まれる悪意や敵意に対して恐ろしいまでに無頓着という問題があります。夢ばかりが先行していてヒューマギアが人間に不利益をもたらす場合を全く想定していないため、新屋敷のようなヒューマギアを傷つける人間への対策が出来ないというのはいささか現実が見えていないと思われても仕方ありません。劇中のラストで垓に「利益を上げられない社長など1%の価値もない」と言われてしまうのも経営者としてかなり痛いです。

 これまで理想を求めすぎて現実を見てこなかったツケがここにきて一気に回ってきたかのように辛い展開が続きますが、次回以降、或人がこれらの問題にどのようにして向き合っていくのか楽しみにしていきたいです。

 

 

 ではまた、次の機会に。