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ゴジラ S.P<シンギュラ・ポイント> 第13話(最終話)「はじまりのふたり」感想

抗えない未来(ゴジラ)を、覆せ。

これは、答えに“気付く”までの物語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやぁ、すごい最終回だった・・・・・・あまりにも強大なゴジラ、迫りくる破局を残り1話で如何にして解決するのかと心配していた中、ジェットジャガーの巨大化という特大のネタ要素をぶち込んでくるとは思ってもみませんでした。一応元ネタのジェットジャガーの巨大化要素も考えると決して予想していなかったわけではありませんが、ここまで堅実に進んできた本作でいきなりそれをするのはないだろう、とばかりに思っていたので意表を突かれた気分です。

 突然巨大化した理由もオーソゴナル・ダイアゴナライザーの力によるものだと説明がつきますし(思えば紅塵によってどんどん巨大化していくゴジラジェットジャガーの巨大化のための布石だったのかもしれません)、本作は「ジェットジャガーの巨大化」を如何に理屈づけて表現するか、という一点に力を注いだ作品だったのだと見終わった際に実感しましたね。

 

 またこの件で50年以上前からの謎についていくつかわかったこともあります。僕はこれまでユンと銘を引き合わせたのは2人のチャットを観測した葦原によるものだとばかり思っていましたが、実際は葦原の生きている過去へと飛んだペロ2こそがユンたちを導いた張本人だったことを今回理解しました。ペロ2は恐らく「ジェットジャガーを最強にするプロトコル」を完成させるため、過去へメッセージを送ることで葦原を誘導し、未来でユンや銘たちにこの状況へと引き込んだことが考えられます。葦原にアーキタイプの情報を送ってきたのも恐らくはペロ2の仕業でしょう。アーキタイプの構造という答えを先に知ってしまった葦原は構造の理屈の解明や破局の回避などの探索に躍起になっていたことが予想されます。

 ここまで書くとペロ2がまるで全ての黒幕のようですが、実際はこの子がいなければ世界は破局によって滅んでいた可能性があるので本作の功労者であることは間違いありません。それどころか時間逆行・ループといった概念に呑まれることなく目的を果たせたのは人間ではないAIならではの技とも言えるので、本当に良く頑張ったと思います。ジェットジャガーユング)と共に時間の中で試行錯誤した結果生まれたのがあの「ジェット・ジャガーPP」だと思うとちょっと感動を覚えます。巨大化したPPがゴジラとの戦いで顔を半壊されて(右目が潰されたのは芹沢博士のオマージュかな)も立ち向かい、「ありがとう有川ユン。そして、さようなら」と言うシーンには涙なしでは見られませんでした。

 時代を遡って奮闘し続けたペロ2とジェットジャガーが13話のサブタイトルにもある「始まりの2人」であり、ユンや銘、人々との出会いを経て成長していったジェットジャガーPPこそ本作のタイトルである「シンギュラ・ポイント」だったのだと、今ならわかります。最終決戦ではあまりの唐突さに首を傾げるところもあったものの、物語の積み重ねと熱さに一気にハマりこんでしまいましたね。

 

 

  • 「結果」を知る「過程」の物語

 さて最終回はペロ2とジェットジャガーが大活躍したわけですが、そうして明かされた「答えは最初から示されていた」という解答が印象的な回でもありました。ジェットジャガー覚醒のキーとなる歌は物語の開始時点から示されていたものの、それに気付くまでに多くの出来事が描かれました。長い道のりを経てようやく答えがあることに気付いていくのが本作のストーリーだったのだとわかります。

 ここでポイントなのが本作は“結果”よりも“過程”を重視していることですね。答えという結果は既に存在していた中で、それを理解するためには過程を経ることが重要であることを物語の中で強調し続けていたと言えます。最終回だけでも前述した通りペロ2とジェットジャガージェットジャガーPPを完成させるためにはユンや銘との出会いと日々が必要不可欠でしたし、銘が歌にコードが隠れているという発想に至ったのも李博士との会話が深く関わっていました。登場人物たちのやり取りがあってこそ未来を見つけ出したことがよくわかります。

 何と言っても今回の冒頭とラストでも見せた「ペロペロ*1たちの語りには「遠回りも回り道も寄り道も人間の愚かしさも、その全てが必要だったのだとわかる」といったものまで含まれていたことには驚かされましたね。一見無駄に思えるものさえも肯定し、結果に辿り着くまでの重要な過程であることをこのセリフは示しているように感じます。(何気にこの手の創作のAIが「人間の愚かしさ」を肯定するのは珍しく思えますね)

 また劇中で度々議論された「未来が既に決まっているのなら今を変える意味があるのか」という問いに対する答えもこの過程に示されていると考えます。最終回のペロ2の過去へのメッセージ、そしてユンたちの現在での奮闘があってこそ、破局を回避するという未来が勝ち取れました。未来が既に決まっているのだとしたら、それは過去と現在の行動があってこそ。未来という“結果”を変えるためには、現在という“過程”に行動することこそが必要だった・・・・・・これこそがこの作品における決まっている未来への解答だと僕は思います。示された”結果”に意味を見出すのは“過程”ということを本作は教えてくれたのだと感じましたね。

 

 

  • 目覚める銀色の巨獣

 紅塵を青い結晶に変え無力化し、平和を手に入れた本作。ずっと赤く染まっていた世界が青空に包まれた中でEDテーマの「青い」に繋がるエンドにはひたすら美しさを感じました。

 と感動していたのも束の間、EDが終わった後のCパートでメカゴジラが出てきた時は開いた口が塞がりませんでした。そういえば海がミサキオクにあった骨を持ち出していましたが、それをベースにメカゴジラを作り出したと居るというのですから驚きです。見た目は初代メカゴジラですが、ゴジラの骨を素体にしている」というのは機龍のテイストでかなり興奮しますね。銘とBBに味方してくれたスティーブンが関わっているというのも結構ショッキングです。(そういや演じている三宅健太さんはアニゴジでメカゴジラシティを作ってたな・・・・・・)

 そして葦原が生きていたというのが何よりの衝撃でした。生きている可能性については7話の感想で言及しましたが、特に説明もなくすっと現れたのですからギョッとしてしまいます。こんな大の大人が集まって悪い顔しているのでどんな悪いことを企んでいるのか、と想像してしまいますが、この作品の傾向からして実は重大な事態に対応するためにメカゴジラを作っているようにも思えます。もしや金星から3つ首のあいつがやってくるとか・・・・・・?

 

 しかしこういったラストを用意してくる辺り、実は2期があるのでしょうか。2期の可能性もありそうですが、ゴジラという作品自体思わせぶりなラストでそのまま終わってしまうことが多いので、このラストもそのオマージュではないかと疑ってしまいます。(『GMK』のゴジラの心臓ラストは当時本当に怖かったです)実際ここまで綺麗に終われたので敢えて続きを描く必要もないかと思われます。

 とはいえ僕自身2期があったら見てみたいというのも本音です。どうせなら次はメカゴジラを大活躍させてほしいですね。

 

 

 というわけで最終回感想でした。どうにかここまで完走出来てホッとします。ゴジラのテレビアニメということでどうなるのかと思っていましたが、蓋を開けてみれば非常に面白かったです。毎回毎回難しい話が展開されそれを理解しながら追うのに必死でしたが、何だかんだで楽しい作品だったと胸を張れて言えますね。

 垢抜けない見た目に反してどんどん面白くなっていく登場人物、増えていく謎とそれに対する答え、そして怪獣たちの圧倒的な存在感など魅力的な要素がたくさんありました。これまでの枠組みに囚われない内容は『シン・ゴジラ』以降の新世代ゴジラの1つに相応しい作風だったと言えます。ゴジラシリーズのファンとしてここまで見てきて本当に良かったです。

 

 そして総評に関してですが、1つの記事が非常に長くなってしまうであろうことを考慮して後日別の記事にしてあげようかと思います。そこで評価点や不満点などをまとめて書いていく予定ですので、ここまで読んでくれた皆様ももう少しだけお付き合いしていただけると幸いです。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:恐らくは時間をループしていく中で生まれていった無数のペロ2とジェットジャガーたちの分裂思考体である。