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ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(1期) 感想

夢と夢 繋いでいこう

「みんなの夢を叶える」物語に偽りなし

虹色Passions!

虹色Passions!

  • 発売日: 2020/10/21
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2020年の秋(10月~12月)に放映され、その後も何度か再放送を実施。そして現在2期が放送されているアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』。再放送で初めて視聴したメタレドはそのストーリーと映像に早くも魅了されました。(下記の記事に当時のハマりっぷりが書かれています。ちょっと恥ずかしい)

 

metared19.hatenablog.com

 

 虹ヶ咲はラブライブシリーズの中では「外伝」としての位置づけが強く、過去のシリーズとは大きく異なっています。しかし本作はその異質さを逆手に取って他にはない作品を形成していたと思います。

 そんな虹ヶ咲を見て僕がどの辺りにハマったのかを自分なりにまとめ、今回記事にして書き上げた次第です。あまりにも今更な話題ながら、よろしくお願いします。

 

 

  • それぞれの“調和”を求めて

 本作最大の特徴は何と言ってもオムニバス方式。1話ごとに各キャラクターをピックアップした内容を展開した基本1話完結型なのですが、本作はその完成度が高いの一言に尽きます。主役となる少女たちの悩みや迷い、そこから解決に至るまでの道筋をじっくり丁寧に描いていく内容を1話1話にまとめているのでとても見やすいです。クライマックスのライブシーンも劇中で上がったフラストレーションを物語の結論として昇華してくれる面白い演出となっています。総じて1話完結の作品としてよく出来ていると言えるでしょう。

 

 そして1話1話で描かれるストーリーが「それぞれの好きからくる不和」に焦点を当てているのも本作の特徴の1つ。登場人物それぞれが持つ「好き」をきっかけにして始まる他者とのすれ違いや葛藤、そしてその問題を如何にして克服していくのかが1話丸々使って描かれていきます。そしてその克服を「自分の好きを広げ、相手の好きも認めていく」という形で見せるのがこの作品の見事な点と言えます。

  わかりやすい例としては2話と3話があげられますね。各話の主人公である中須かすみと優木せつなが「互いの好きのために相手の好きを侵害してしまった」ことに悩み、それぞれが解決を目指していく様子が描かれていました。物語の大筋自体はベタですが、自分と他人の考えをそれぞれ肯定しつつ共存させていく内容は見事の一言です。

 

 彼女らがそれぞれソロアイドルとして活動している点も印象的ですね。過去作がグループで行動していたのに対し、各キャラの趣味嗜好に即したアイドル像をそれぞれ描いていたのは本作ならでは。同好会のメンバーが自身の好きを表現することに躊躇しない点も面白いところです。

 何より素晴らしいのが劇中で語られたように「仲間だけどライバル」「ライバルだけど仲間」という方向性。自分のスタイルを貫きつつ、仲間たちの手助けをしていく様子が中盤から大きく描かれていきます。上述の自分と他人の好きの共存の在り方に通じており、互いに磨き合う関係性であれど、決していがみ合うものではないというのが素敵なポイント。むしろ協力して高め合う姿勢は見ていて非常に心地がいいです。

 

 歴代のラブライブシリーズは個性の強いキャラたちが互いの在り方を尊重しあい、その結果生まれた集団での“調和”を見せてきました。しかし本作では「個」を重視し、ソロとして活動していく中で相手の個と共存していく形で“調和”を描いています。まさに多様性を重視してきた現代ならではの在り方であり、実に興味深いです。(かといって他のラブライブ作品を否定してはおらず、それもまた在り方の1つとして捉えられるのがまた素晴らしいです)まさに外伝に相応しい、別口からのアプローチを徹底した作品と言えますね。

 

 

 上述の特徴の他にも、本作のもう1つの特徴として忘れてはいけないのが「高咲侑(たかさき・ゆう)」の存在。作品の主人公ポジションに位置するものの彼女はアイドルではなく、むしろアイドルたちを応援するという独特な立場には当初驚きました。アイドルたちの歌う姿に感動する存在というのはシリーズではあまりにも異質で、それはどちらかというと視聴者の役目ではないのか?と最初は思ったものです。

 後々になって調べてみたところ虹ヶ咲の原作であるスマートフォン向けゲームにおいて、プレイヤーのアバターキャラのポジションをアニメで登場させたのが侑であることがわかりました。つまり上述で抱いた考えの通り、侑は視聴者側の存在だったわけです。*1

 

 実際序盤から中盤までの侑は各エピソードの主役たちに寄り添い、彼女たちの悩みの解決のヒントを与えていく様子が多く見られました。3話のせつなの時を除けば大きく目立った活躍もなく、裏方としての役割が多かったように思えます。

 しかしメインキャラたちの主役回を終えてからは事情が変わってきます。侑が同好会のメンバーに触発され、自身の夢を語り出す展開には衝撃を受けました。幼馴染の歩夢とのひと悶着もあったものの、それらを乗り越えて音楽の道に進み始める様子は、彼女がこれまでとは全く異なる存在になっていることが伺えます。

 とはいえ今まで視聴者と同じようにアイドルを応援していく立場だった侑が、彼女たちの好きを目の当たりにすることで自分の夢を見つけ出していく流れはかなり感動的でした。何よりこれまで視聴者のアバターとしての側面が強かった侑が、1人のキャラクターとしての個性を獲得していったと思うと、それまでの過程を含めて感慨深くなってきます

 

 侑がその答えに至るまでに上述で書いた好きの在り方を経験しているのがまた素敵ですね。劇中で侑が語ったようなアイドルとファンが互いの夢を支え合っていく関係性を、彼女自身で体現してみせるのも見事です。本作はオムニバスであると同時に、「侑が視聴者の手を離れ、「高咲侑」という1人の少女として確立していくまでの物語」であったのだと思います。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

高咲侑

 本作における主人公ポジション。彼女については上でほとんど語ってしまっていますが、それ以外では「相手の個性を受け入れてくれる」という印象を抱きました。それぞれの好きの形を尊重し、それを叶えるためにどこまでも引っ張ってくれるような力強さが各所で感じられます。(3話での「ラブライブに出られなくてもいい」発言にはかなりビビりましたが)アイドルの在り方を第一に考えてくれる、ファンの鑑のような存在でしたね。

 だからこそ仲間を応援するだけでなく、自分自身の夢を叶えようとした時は感動を覚えます。ファンとして終わらず、1人のキャラクターとしてようやく侑が動き出したように感じました。13話(最終話)の同好会全員の歌を恩返しとして受け取る描写や、その後転科試験を受けるラストシーンまで、目の離せない主人公だったと思います。

 

 

上原歩

 悩める花の乙女。彼女に関しては侑の幼馴染兼もう1人主人公ポジションとして、当初は印象が薄いと感じていました。主役エピソードである1話も早々に終わってしまい、目立った活躍がないまま終わってしまうのかと思いきや・・・・・・10話以降の暴走に仰天したのは今もなお記憶に新しいです。侑に対する依存や束縛はこれまでの幼馴染枠の中でも特に衝撃的です。

 しかし12話で彼女自身現状に戸惑っていることがわかってからはこれまた見る目が大きく変わりました。侑だけが世界の全てであった歩夢にとって、それ以外の人々を受け入れていくことへの恐怖心を抱いてしまうというのはわかりやすい悩みと言えます。そしてその恐怖を乗り越えて、侑だけでなく自身を慕うファンの子たちにも目を向けて世界を広げていく成長ぶりにこれまたウルッときましたね。

 

 

中須かすみ

 欲張りな女王様。初代から続くネタキャラの系譜として、見ていて結構楽しいキャラでした。行動力は誰よりもあって主張が激しいので、侑に次いでみんなを引っ張っていく力を持っていたと思います。序盤の物語の大部分は彼女が動かしていたと言っても過言ではありません。一方でせつなとの諍いで自分の非を認め、反省していく姿勢も良かったです。

 そして彼女に関しては8話の活躍が最も印象深いです。後述のしずくの悩みに「しずくを好きな自分」を見せて、彼女に大きなきっかけを与えていく姿には思わず感激しました。他の誰よりもちやほやされたい願望を持っていると同時に、ちやほやしてくれる人たちにも笑顔でいてほしい・・・・・・そんな優しいワガママこそかすみの本質だと思いましたね。

 

 

優木せつ菜

 燃え上がるヒロイン。個人的な推しその1)本作の始まりにして本名とは別の名前(芸名)で活動しているスクールアイドルという初めてのポジションとして注目のキャラですね。そして上述の「好き」の在り方を象徴している存在、というのが彼女に対する個人的なイメージです。自分の好きを相手に押しつけてしまったことに悩み、その答えを見つけ出していく流れは鮮烈でした。

 その後も自分の好きを主張しつつ、相手の好きに目を向けていく様子には惚れ惚れしました。特に12話の歩夢との会話は凄まじかったですね。相手の悩みの原因に自分が関わっているとは露ほども知らず、そのまま迷いを打ち払ってくれるコミュ力の高さには舌を巻くばかり。ある意味で侑とはまた別の、ヒーローのような存在だったのかもしれません。

 

 

宮下愛

 明朗快活元気女子。「オタクに優しいギャル」を擬人化したような子だなぁ、という第一印象をまず初めに抱き、その後実際めちゃくちゃ明るく優しい性格だと判明してからはあっという間に気に入りました。どんなことにも偏見を抱かず、ありのままを受け止めてくれる人間の大きさには感服してしまいます。それでいてダジャレ好きというのも面白いところ。

 何と言っても愛は「誰かと繋がる」ことに関して、他の同好会メンバーとは大きく異なっているのが最大の特徴。他キャラが起こしてしまう他者との不和というものがほとんど存在せず、ソロアイドルの在り方に疑問を抱いく流れは彼女ならではです。みんなと楽しみを共有していくことを何よりも重視する中、ソロとしての壁を乗り越えていくのは愛のアイデンティティと言えるかもしれません。あいだけに

 

 

エマ・ヴェルデ

 心優しい天真爛漫娘。これまでシリーズで登場していたハーフやクォーターとは異なる、初の純外国人としてちょっとした驚きを与えてくれたキャラです。そばかすなど垢抜けない特徴もありつつ、みんなを優しく抱きしめてくれるお母さんのような温かさを持っているのが魅力的でしたね。それでいて食いしん坊というのがまたチャームポイントになっています。

 そんなエマですが、愛とはまた別のベクトルで他キャラと大きく異なっています。というのも彼女自身の悩みというものがほとんど見られず、どこまでも他人のことを気にしているキャラクターだったためですね。最初から完成した精神面を持っているからこそ、誰かの手助けに尽力する姿は中々に興味深いです。それでいて自分のやりたいこともはっきりしているので、侑と同じようでこれまた異なる、母性の塊のような様子は見ていてほっこりさせられます。

 

 

天王寺璃奈

 ハイパーゲーミングガール。個人的な推しその2無表情キャラでこれまた驚かされたキャラです。しかし感情がないわけではなく、むしろ感情豊かなキャラクターはギャップ満載で実に可愛らしいです。主役回ラストから使うようになったボードの登場も衝撃的で、他にもゲーマーで機械に強いなど、インパクト抜群の個性を多く引っ提げてきていました。

 一方でその無表情をコンプレックスに感じている点も特徴的。内向的で友達を作れず、1人で出来る遊びばかりしていたという話も妙に生々しいです。自分のことを誰よりも嫌いになりつつある様子は見ていて辛かったですね。しかしそれ故にコンプレックスを個性として受け入れ、自分の出来ることに力を注いでいく過程が輝いていたと言えます。ステージに立って踊る中、自分さえも気付かない内に出来ていた「一瞬の笑顔」もあって、大きな共感と感動を呼んでくれたと思います。

 

 

近江彼方

 頑張りやな眠り姫。のんびりしていてちょっとだらしがないと思いきや、勉強も家事もバイトもアイドルも全て全力で頑張る姿で印象を大きく変えてくれたキャラでした。しかも妹の遥に尽くす様子まで見せてくれるので、世話焼きなお姉ちゃんとしてのイメージが感じられましたね。意外と真面目で気遣いも出来る性格からも意外なギャップがあります。

 そんなお姉ちゃんの主役回は妹との不和が最大の特徴。自分のせいで姉に無理をさせていると思っている遥の誤解を解くため、悩みながらも奔走する様子は思わず応援したくなりました。遥にとって負い目になってしまったアイドル活動を誇りに思い、自分の活動も認めさせていく流れには思わず感嘆してしまいます。姉妹やみんなの好きを諦めない貪欲さも彼方の魅力と言えますね。

 

 

桜坂しずく

 自信を手にした大女優。かすみの同級生として当初は彼女の濃さに押されていたイメージがあるキャラ。歩夢とはまた別の意味で印象の薄かったのですが、主役回にそれが彼女の悩みに繋がっていることが判明してからはかなり驚かされました。波風を立てずに上手に他人と付き合おうとする当たり障りのない性格が、彼女の「演技」であるという話の流れにはまんまと騙されましたね。

 そしてその演技こそが彼女の抱えている悩みの根源というのが面白いです。みんなに望まれているキャラを演じてきたしずくにとって、本当の自分をさらけ出すことに恐怖を覚えるというのも理解出来ます。それ故最終的に演じてきた自分も受け入れ、ありのままを見せるようになる流れは実に素晴らしかったです。(余談ですが、本作のライブシーンの中ではしずくの歌と踊りが個人的に1番好きですね。演劇の芝居がかった演出が最高です)

 

 

朝香果林

 クールなロマンチストウーマン。当初はせつなの正体を見抜いたりするなどキレ者としての印象が強かったのですが、その後徐々に明らかになっていくポンコツ属性にびっくりさせられました。エマに色々助けてもらっている様子には笑いつつも大いに癒されましたね。それでいて他のキャラが言いにくいことをズバッと言ってくれる、同好会に発破をかけてくれるポジションであったのもグッド。

 果林はエマの主役回である5話の主役でもあり、9話と合わせて主役回が2話ある特殊な立ち位置が特徴でした。そしてその両方で周囲のイメージとのギャップに悩む様子が見られたのが印象的です。本来の自分をさらけ出すことを躊躇してしまうのは上のしずくと同じですが、彼女に関してはみんなが抱く自分であろうとする責任感からきているのが興味深いです。そのためありのままを見せても大丈夫、と安心出来る同好会のメンバーと通じ合っていくのが素晴らしかったですね。

 

 

 というわけで虹ヶ咲アニメの感想でした。かなり今更になっての感想ですが、何とか書き上げることが出来ました。他のシリーズとは別物であるからこその魅力を最大限引き出している本作に感動し、その想いを綴りましたが、それを少しでも感じ取ってくれたら幸いです。

 そして虹ヶ咲といえば現在2期が放送中。嵐珠たち新キャラの登場やユニットの結成など新要素を投入しつつも、1期と変わらない作風を貫いてくれているので相変わらず非常に面白いです。特に上で書いたような侑の在り方について、この先を大きく描いてくれていることに期待がかかります。果たして2期ではどのような結末を迎えるのかも楽しみにしつつ、今回はここで筆を置きたいと思います。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:名前の「ゆう」読みもYou(あなた)=視聴者自身という意味合いの由来があるとかないとか。