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機動戦士ガンダム 水星の魔女 PROLOGUE 感想

そのガンダムは福音か

それとも呪いか

“魔女”って……“魔女”ってそういう意味かよぉ……

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 10月からの放送が控えている『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。その前日譚であるプロローグを先日視聴しました。テレビ放送はまだ先ですが、配信先のU-NEXTの無料トライアル期間を利用して見た次第です。(余談ですが同じく配信されている『風都探偵』や『サンダーバード ARE GO(シーズン2)』も見まくっています。サンダーバードは何でシーズン1を配信してないんですかね……?

 まぁ、早速見た感想ですが…………色々とショッキングな始まりでしたね。予想はしていたものの、かなり殺伐とした展開とその中で生きる主人公の境遇に絶句してしまいました。世界観の説明もしっかりと伝わってきましたし、本作におけるMS(モビルスーツ)、そしてガンダムとは何かについてもある程度理解出来ました。何よりタイトルにある「魔女」の意味についてそういうことか!と驚きを与えてくる点が面白かったです。というわけで今回は、そんな水星の魔女の始まりの物語についての感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は作品の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • 血塗られた魔女の誕生日

 この前日譚は何といっても主人公である「エリー(エリクト・サマヤ)」の衝撃的な「4歳の誕生日」にして「ガンダム搭乗の日」にあります。突如襲い掛かってきた武装集団から逃げるために、4歳の少女が母親と「ガンダ・ルブリス」に乗って無自覚なままに敵機を撃墜していくエリーには言葉を失いました。爆発する敵MSを見て「ロウソクみたいでキレイ」と言うシーンの何とも言えない悍ましさといったらもう……序盤で可愛く描かれたエリーのキャラクターが、無垢で無知故に戦場で残酷に映える構成には舌を巻くばかりです。

 また本作のガンダムが“異端”として扱われている点もエリーの境遇の悲惨さに拍車をかけています。詳しいことは後述で触れますが、倫理の面で問題視されているために社会から排除されてしまったガンダムの技術に、エリーが魅入られてしまったかのような描写がとても恐ろしく感じました。劇中で「呪い」と揶揄されているガンダムですが、よりにもよって幼い子どもがその力を手にしてしまうというのはあまりにもエゲつないです。世間から迫害されているガンダムの申し子となってしまったエリーは、まさしくこの世界における「異端の魔女」になってしまったというわけですね。本作のタイトルの意味を、ここで嫌というほど理解しました。

 

 そんな世界の仕組みも大人たちの思惑も、果ては大切な父親の死も知らないまま誕生日を迎えてしまったエリー。そんな彼女が本編では成長して「スレッタ・マーキュリー」と名乗り、如何なる行動を取るのかが真っ先に気になってきました。プロローグ時点では何も知らないままでしたが、数年は経ったであろう本編では少なからず自分の境遇について理解しているはずです。一見して天真爛漫そうな見た目ですが、その内面には母親によって復讐を植え付けられている可能性もあると考えるとゾッとしますね。

 今回彼女たちが暮らすフロントを襲撃した「デリング・レンブラン」が理事長を務める学園に入学する以上、少なくとも何か目的があるはずです。(あるいは何も知らないまま母親に入学させられた可能性もありますが)個人的には今回見せてきた彼女の無垢な一面が、本編でもとんでもないギャップを見せてくるのではないかと考えています。いずれにせよスレッタの物語は、こちらが予想しているよりもずっととんでもないものになりそうです。

 

 

  • 宇宙を駆る肉体、そして恐ろしき兵器

 同時に印象的だったのが本作におけるガンダムの立ち位置ガンダムタイプが他のMSと異なる扱いを受けている以上何かしらの特徴を抱えているとは思っていましたが、義肢の延長線上にある「人間のもう1つの肉体」として作られたことには驚きました。現実の拡張現実や義肢などの技術の発展を見ていると、“その内現実でもこういったものが出来そう”という絶妙なリアリティを感じさせてくれます。「GUND(ガンド)」と呼ばれる義肢の技術を兵器(アーム)に転用したが故の“ガンド・アーム=ガンダム”というネーミングセンスも中々面白いです。

 そして形式上は兵器であるものの、その真の目的が宇宙進出にある点も興味深いです。生身の肉体では耐えられないような外宇宙での活動を可能にするため、ガンダムという肉体を求めるというのは実にSFチックです。劇中で「カルド・ナボ」がこの技術を「未来」と称していたのもよくわかります。ただ乗り続けていると廃人に近づいていく欠点は如何ともしがたいですね。本作の世界で批判されていることにも納得せざるを得ない塩梅がよく出来ていると思います。

 

 そんなガンダムの実力も今回の戦闘で遺憾なく発揮されていました。ルブリスの精密な動きとビットによるオールレンジ攻撃の驚異的な性能が、激しい戦闘シーンによってこれでもかと伝わってきましたね。(個人的にはシールドが複数のビットに分裂して攻撃に移るシーンが印象的)そして先述のエリーの攻撃など、リンクさえ出来れば子どもでも簡単に敵を倒せるということも……既存のMS以上に人殺しという手段を簡略化させてしまう力には、少々複雑な気持ちを抱いてしまいます。

 福祉医療の技術を軍事に転用、体の不自由な人でも驚くべき動きが可能になる点、そして戦争の道具としての倫理問題など、とにかく様々な要素を抱えた本作のガンダムある意味で現実にも通じる世界の核心を孕んでいるまさに物語の中心にいる存在に対して不穏なものを感じつつも、確かな興奮を覚えます。こんな恐ろしい機体が、本編ではどのように受け入れられていくのでしょうか。ルブリスと本編の主人公機である「ガンダムエアリアル」との関係性も気にしながら、今後に注目していきたいですね。

 

 

 というわけでプロローグの感想でした。まさかここまでエグい始まりになるとは思っても見ませんでした。ガンダム主人公としては史上最年少となる人殺しの経験をしたエリー(スレッタ)に対しては色々と複雑な胸中を抱えてしまいます。もうこの前のPVに映る彼女を純粋な気持ちで見れなくなりましたよえぇ。

 他にも上述のガンダムの扱いにも様々なことを考えてしまいます。特に劇中でデリングが「兵器が使用者の命を脅かしてはならない」「兵器は純粋な人殺しの道具であるべき」「人と人が殺し合うことこそ、戦争という愚かしい行為の最低限の作法」といった演説でガンダムを批判していましたが、秘密裏に研究者ごと抹消しようとする為政者の言葉故に欺瞞を覚えずにはいられませんでした。個人的にはこの言葉をのたまったデリングが本編では何を企んでいるのかにも注目したいですね。

 色々語りましたが、面白かったかというとものすごく面白かったです。おかげで来月からの本編が俄然楽しみになってきました。せっかくなので本編の感想も毎回書いていきたいと考えているので、その時はこれを読んでくれている皆様にも是非読んでほしいですね。次は『水星の魔女』本編でお会いしましょう。

 

 

 ではまた、次の機会に。