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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第10話「巡る思い」感想

心は届かず、伝わらず……

「スレッタ忘れった」とすれ違い展開の温度差にこちらの情緒が崩壊スレスレッタ

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  • 嫁の心、婿知らず

 6話とは別の形で辛い……という感情になってしまった今回の水星の魔女。株式会社ガンダムが設立されてから2か月、プロモーションの研究も軌道に乗り、何もかもが順調という中で起こってしまったスレッタとミオリネのすれ違いに心がすり減ってしまいました。スレッタに至っては前半からとても楽しそうにしている様子が描かれていた分、ミオリネのぞんざいな態度にショックを受けるシーンが余計突き刺さりましたね。ミオリネの花嫁としての自覚と責任を持ち始めた矢先に、「自分は必要ない」「自分が花婿でなければいけない理由はない」という事実を突きつけられる展開があまりにもエグかったです。ミオリネに渡そうと思っていたキーホルダーを落とすシーンは、スレッタの期待と失意をわかりやすく表していてもう……

 ミオリネ自体はスレッタのことをどうでもよく思ってはいない、というのがわかるのがかえって辛かったです。スレッタに任せきりだったからこそ負担を減らすために他人に頼ることを選んだわけですし、エランとのデートの件も以前の全否認を思えば彼女の恋心を認めてくれる心の広さを得たとも取れます。スレッタのことを深く想っていることが伝わってくるだけに、いつもの素っ気ない物言いで彼女に伝わらなくなることにもどかしさを覚えてなりません。何よりミオリネがかつて嫌っていた父・デリングの傲慢な態度と重なって見えたのが個人的にはショックでしたね。(同じ経営者の立場になったことで、父の意外な一面を知って和解の道を見出していた中でこれは……)思っていることを素直に見せない辺り、デリングとミオリネは悪い意味で似たもの親子だということが伺えます。

 どんな想いも言葉にしなければ伝わらない、伝え方を間違えば次第にすれ違っていく……この人と人がわかりあうことの難しさを描いている辺りは実にガンダムシリーズらしいです。特にこの2人の関係はここまで大きな問題もなく話が進んできたからこそ、これまでコミュニケーションを怠ってきたことのしわ寄せがきたように思えますね。前半は何かと微笑ましい一幕が多かった分、後半一気に襲い掛かってきた感覚を覚えます。おかげで見ている側としても感情の浮き沈みが激しかったですよえぇ。

 

 

  • 暗躍する者、心揺るがす者、労働する者

 スレッタとミオリネの他にも、御三家各陣営の思惑や動向が交錯していたのが印象に残りました。何と言っても1話でヴィム(グエル&ラウダの父)が計画していた「デリングの暗殺」が再び始動したことに衝撃を受けましたね。グラスレー側も協力するなど、デリングが孤立無援になりつつある状況に危機感を覚えます。(またこうなったのもデリングの独裁ぶりのせい、つまりはデリングもミオリネと同じでコミュニケーションを怠ったツケがきたとも取れますね)

 グラスレー側の協力に関しては、前回湿っぽい失恋をしたシャディクが積極的に参加していたのが興味深かったです。Cパートの語りで暗殺を以前から考えていたことが明かされましたが、それにしてもあの失恋から切り替えすぎだろ!?と動揺してしまいました。冒頭爽やかさを取り戻していたと思ったらあくどい一面はそのままなことにギョッとしてしまいますが、これはミオリネとの関係が終わったからこそとも取れますね。花嫁という心の拠り所を失ったことで、目的を果たすため際にタガが外れてしまったのでしょう。恋愛に関しては奥手なくせに、こういった悪だくみの時は思い切りがいいんだなお前……

 ペイル社はベルメリアさんがスレッタたちに協力してくれている一方で、CEOたちがスレッタとエアリアルの確保を諦めていないことが判明。ついに投入された新エラン(強化人士5号)の話術で、スレッタの心に大きな動揺を与える展開には目を剥きました。このナンパが上述のスレッタとミオリネのすれ違いに貢献(?)していることや、亡き4号の心情を考えるとちょっとフラストレーションが溜まりそうです。ペイル社の面々は特に裏で色々やっているくせに、それが表沙汰にならないどころか上手くいきまくっているのが余計に腹立たしいですね。結果的に1番甘い汁を啜っている気がするので、彼女らに何らかの報復がくることをつい期待してしまいます。

 そしてグエル……改めボブは、汗水流して働く喜びを見出していた────キャンプを楽しんでいたと思ったら今度は肉体労働に励んでいる光景には変な笑いが出てしまいました。ただ父が仕事を斡旋してくれたのか自ら逃げて働いているのか定かではありませんが(偽名を使っている辺り後者でしょうか)、割とエンジョイしているのが微笑ましかったですね。物言いはキツいものの優しい上司とのやり取りにもほっこりさせられますし、本編の貴重な清涼剤としての存在感は相変わらずでちょっと安心しました。でもそんな平穏も謎のガンダムの襲撃によって破られてしまうのが何とも……ガンダムに振り回されてしまいがちなボブの明日はどっちだ……?

 

 

  • 荒れた大地に立つ少女たち

 恐らく今回最大のポイントとなったのが地球の状況。長らく気になっていた本作の地球がどうなっているのか、ようやくその一端が明かされました。以前からアーシアンの扱いの悪さについて触れられていた中、大地や自然がほとんど荒廃している光景には絶句していましたね。日本の学校と思われる廃墟*1で過ごす少女たちや、男がやせ細った農作物を収穫する様子にも驚かされます。アド・ステラにおける地球の悲惨さはガンダムとしては珍しいと感じましたが、同時に現実の資源の問題などを考えると、現実でもあり得そうにも思えました。

 そんな妙なリアリティに不安を覚える中、そんな地球で暮らす謎の組織「フォルドの夜明け」の構成員にこれまた仰天。「ノレア・デュノク」と「ソフィ・プロネ」という2人の少女がガンダムに乗っていたことに驚愕してしまいました。幼い子どもがMS(モビルスーツ)に乗ってハイジャックや襲撃の仕事をこなす……ガンダムシリーズでは割とありふれた設定であるものの、いざ映像にされるとやはり辛いです。幼くしてアウトローに身を置いている彼女たちの存在が地球の現状を端的に表しているとも言えますね。

 またニカがフォルドの夜明け所属であることが示唆されたのが個人的には最もショッキングでした。単なるシャディクの連絡係だけでなく、組織を率いる「ナジ・ゲオル・ヒジャ」という男が彼女の父親“役”であることも明かされ、ニカという少女の境遇が何となく見えてきましたね。(スレッタに好意的だったのも、エアリアルを狙っていたのでは?と勘ぐってしまいます)少なからず罪悪感を抱いているような表情が、かえって彼女の「こうせざるを得なかった」状況を物語っているように思えました。ニカ含めた彼女たちが今後どうなってしまうのか、それが心配になるばかりです。

 

 

 というわけで10話の感想でした。相変わらず1話にこれでもかと展開を詰め込んで、視聴者に驚きと衝撃を与えてくるので見ていてかなり疲れましたね。(とりあえずみんな腹を割って話し合えよ……と思ってしまいます)特に今回は先が気になる要素がてんこ盛りだったので、早く続きが見たい!!という衝動に駆られてしまいます。

 しかし悲しいかな、来週の放送はいったんお休み。次は2週間後ということに別の形でショックを受けてしまいました。Cパートでガンダム2機が出てくるという引きをしてきたおかげでよりもどかしく感じてしまいます。まぁそうぼやいていても仕方ないので、次回「地球の魔女」ではどんな展開が待っているのか、ひとまずは首を長ーくして待っていたいと思います。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:劇中の店の看板や「5年1組」など、日本語表記から映っていた場所は日本であることが読み取れる。