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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第1話「魔女と花嫁」 感想

その魔女は、ガンダムを駆る。

混沌の世界を駆け抜け、無垢なる瞳は何を見る

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 『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。待ちに待った新作ガンダムが、ついに放送を開始しました。衝撃的なPROLOGUEを経て、本編がどのようなことになるのかドキドキした人も多いでしょう。かくいう僕も、今回の放送を心待ちにしていました。

 当ブログではこれまで『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』や『SDガンダムワールド』2作品、『ガンダムビルドリアル』に『ガンダムブレイカー バトローグ』などの感想を書いてきましたが、本格的なガンダムシリーズの感想は『鉄血のオルフェンズ』以来。それ故久々の新作ガンダム視聴に気合が入ってきていたのですが、プロローグとはまた異なる「百合成分高め」な衝撃を与えてきた1話には度肝を抜かれましたね。同時に「大人たちからの“呪い”を受けた子どもたち」の物語のように感じた1話の感想を、今回書いていきたいと思います。

 

 

  • “呪い”に縛られた少女たち

 本作の大きな特徴として最初に挙げられるのが主人公である「スレッタ・マーキュリー」と「ミオリネ・レンブラン」。初っ端から百合的関係を視聴者に炸裂させてきたこの2人の、対照的ながらどこか通じ合うような様子が興味深かったです。

 まずスレッタは初対面の相手とはあまりうまく話せない典型的な「コミュ障」として描かれていたのが印象的。加えて外の世界について多くを知らず、新しいものに目を輝かせる「田舎のおのぼりさん」的キャラクターも可愛らしいですね。それでいて許せないことにははっきりと異を唱えるなど、ここぞという時の芯の強さが感じられるのが素敵です。エアリアルを勝手に使われたことで怒るシーンなどでは、彼女なりに譲れないものがあることが伝わってきてどこか安心しました。

 対してミオリネは強気で反骨心の塊のような子。コロニーからの脱出で死にかけるうえ、助けてくれたスレッタに頭突きするアグレッシブな初登場には面食らいました。そして誰に対しても険しい表情を見せる姿が引っ掛かった反面、その気丈さの裏にある“強がり”が垣間見えたような気がします。後述の環境故自分の意思が無視されていることを考えると、強引にでも行動しないと周りに訴えることが出来ないのかもしれません。要所要所で根は悪い子ではないことがわかるので、強がっていないといられない彼女の境遇に早速同情を覚えます。

 

 このように推しの弱い少女と強い少女の凸凹の組み合わせが微笑ましかったのですが、それ以上に彼女らがそれぞれ親の呪縛に縛られているような描写が目につきましたね。スレッタは「お母さん」に言われて学園にやってきたことが明かされていますが、それ以外にも母から言われたことを忠実に守っている姿が何とも不気味でした。女生徒たちに母に言われて付けてるヘアバンドのことを指摘された際も嬉々として答えるなど、「母親の言いつけ」に対して疑問を覚えていない様子に不穏な何かを覚えずにはいられません。ここまでくると「逃げたら1つ、進めば2つ手に入る」という教えも、娘が目的を投げ出さないために仕込まれた“呪い”の言葉のように聞こえてきます。

 一方ミオリネは父親「デリング・レンブラン」の作った学園に縛られている点が特徴的。MSによる決闘で勝った者がミオリネの婚約者になるという時代錯誤なルール、そして学園の生徒全員から優勝者のトロフィーのように扱われている彼女の現状には思わず絶句してしまいました。デリングが何故こんなルールを作ったのかはまだわかりかねますが、自分の政治の道具として娘を使っているのは明らかです。上述のミオリネを追い詰めている箱庭を作った父親の愛なき仕打ちには嫌悪感を覚えますね。

 形は違えど、親によって自分を抑え込まれている点はスレッタもミオリネも同じ。目的達成のための道具のように扱われていることがひしひしと伝わってくるだけに、この2人がとにかく不憫に思えてなりません。そのためスレッタたちが如何にして、親からの呪縛を乗り越えていくのかに今現在注目しています。とりあえずは最初にミオリネがスレッタの異常性を指摘することに期待しながら、2人の動向を見守っていきたいですね。

 

 

  • 箱庭の子どもたち

 主人公たち以外にも、本作は1話から濃い面々が揃っていましたね。中でも「グエル・ジェターク」の実力を鼻にかけた高慢ちきぶりには見ていて胃もたれを起こしてしまいました。彼に限らず、如何にも曲者といった生徒たちの描写には何だかんだでワクワクしている自分がいます。

 一方でこの「アスティカシア高等専門学園」での彼らの生活の“歪さ”も目に留まりました。上述でも触れた決闘のルールをはじめとして、MSを使った試合で全てが決まるような生活に疑問を抱かず生活していることには何とも言えない寒気を覚えます。隔離された空間で暮らす故に決闘の競争や娯楽を求めているのかもしれませんが、彼らもまたスレッタのように無自覚なまま大人たちに縛られているように思えてなりません。

 そんな学園を作り出した大人たちの策謀も今回の時点で描かれているので、子どもたちがより大人たちの都合に振り回されている印象が強かったです。彼らは彼らなりに自分たちのコミュニティを築いているつもりでも、結局は井の中の蛙に過ぎないといったところでしょうか。この学園で粋がっているグエルが余計に滑稽に見えて仕方がないですね……だからこそ、学園という箱庭で暮らす子どもたちが自ら決起していくのではないか?といった展開を期待してしまいますね。彼らがどのようにして呪いに気付いて解放されていくか、それが今から楽しみです。

 

 

  • 水の星より飛翔する蒼き翼

 ガンダムと言えば忘れてはいけないのがMS(モビルスーツ)の存在。特に今回は1話ということで、スレッタが乗る主役機「ガンダムエアリアル」が驚くべき活躍を見せてくれました。プロローグで驚異的な性能を見せたルブリスと似たような戦法でグエルの「ディランザ」を倒した数分の出来事はかなり衝撃的です。搭載されている11基の「ビットステイヴ」がとにかく万能で、合体してシールドになったと思ったらオールレンジ攻撃で反撃してくる攻防一体ぶりは驚異の一言です。

 ただ乗っただけのミオリネと、GUNDフォーマットを駆使したスレッタでは動きがまるで違ったのも印象的。特にスレッタがビットを手足のように動かして、あっという間にディランザの四肢を破壊するシーンに驚愕させられました。無駄な動きをせず、的確に相手を無力化する彼女の技量には舌を巻くばかりです。まさにスレッタにしか乗りこなせない、彼女専用のガンダムであることがこれでもかと伝わってきましたね。

 あとはやはり上述でも触れた「ガンダム・ルブリス」との関係性も気になるところ。その酷似したデザインから系列機であることはわかるのですが、これが「ルブリスを改修した機体」なのか「ルブリスを参考にして作った別の機体」なのかでエアリアルの印象が大きく変わってきそうな気がします。今のところは前者の可能性が高いのですが、そうなるとどのような経緯でルブリスがエアリアルになったのかについて考えてしまいますね。この辺りの謎についても、おいおい明かされることを期待したいです。

 

 

 というわけで水星の魔女1話の感想でした。例によって長くなってしまいましたが、自分なりに上手くまとめられたのではないかと思います。過酷なプロローグと今回感じた違和感から「大人たちの呪縛」を取り上げましたが、この予想が当たるかどうかはまだわかりません。主人公が子どもたちとは言え、大人に立ち向かっていかない可能性もあります。

 ただスレッタとミオリネの境遇、そして本作の世界の在り方故に、彼女たちには是非自らの運命に抗ってほしいと考えてしまいます。とりあえず今は百合成分を楽しみつつ、ガンダムらしさがどうやって表面化していくかを見守っていく所存です。(そして本編後の『ガンプラくん』を数少ない癒しとして摂取し続けたいです)

 

 また余談ですが、第1話放映後の番組公式HPにて小説『ゆりかごの星』が公開されました。番組のTwitterなどのリンクでそのページを見れるものの、公式HPからだとどこに入るかで大分迷ってしまいましたよえぇ。(ちなみに「MUSIC」のページから入れます)

 

g-witch.net

 

 上のリンク先に掲載されている小説を早速読んでみましたが、エアリアル視点で幼いスレッタの成長を見守っていくのが興味深かったです。内向的なスレッタや復讐に囚われたお母さんに胸を痛めながらも、ひた向きにスレッタの平穏と可能性を想う様子は何とも健気です。(一方で謎のゲームとかでスレッタを「復讐の道具」に仕立て上げたお母さんはさぁ……)本編のエアリアルに人格があるわけではないものの、大事な“姉”の身を案じる弟(妹?)のことをつい応援してあげたくなりますね。これを読んだことで、次回からの物語が俄然楽しみになってきました。

 

 

 ではまた、次の機会に。