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ウルトラマンデッカー 第22話「衰亡のバズド」感想

哀しく虚しい復讐の果て

アガムスのチャンドラーへの異様な信頼度の高さは何なんだ

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  • 罰したいのは地球か、己か

 14話で衝撃の正体を明かして以降、度々カナタたちGUTS-SELECTと戦ってきたアガムス。今回のデッカーは、そんな彼が何故地球人を憎むのか、未来で何かあったのかがようやく明かされました。アガムス自身が語ったことを信じるならば、未来の地球人がバズド星にやってきたことで地球と交流を持つようになり、地球に侵攻中だったスフィアの戦いに加わったことでスフィアのターゲットにされたとのこと。そして何度もアガムスの話題に出ていたレリアという女性は、そのスフィア侵攻の際に死んでしまった彼の妻とのことです。

 この語りパートで個人的に意外だったのが、かつてのアガムスは積極的に地球人に協力していたことですね。自分の力が地球を救う力になれると本気で信じていたように感じます。(冒頭の回想シーンからして、アサカゲ博士としての面が本来の性格なのかもしれません)そしてそれ故に、「スフィアの侵略でレリアが死んだのは自分のせいだ」と自身を恨んでいるように見えました。地球人への逆恨みに近い形で復讐を成し遂げようとしていますが、その実アガムスが何よりも憎んでいるのは自分自身なのではないでしょうか。

 そう考えると敗れ被れな行動にも納得がいきます。スフィアを自分に寄生させて力を得たり、テラフェイザーでマザースフィアを呼び出そうとしたりと、その身を省みない行動は自分を罰しているのかもしれません。そうした自罰的な行動を取ってでも、この世界線のバズド星を救うために躍起になっていると思うとあまりにも痛々しいと思ってしまいます。(そもそも地球をスフィアに明け渡しからといって、バズド星が標的にされないわけではありませんし……*1

 特に今回はスフィアの同化の影響を受け、徐々に記憶がなくなっていく演出もされていたので見ていられませんでした。最終的には記憶を失ってしまうなど、悲しい復讐に囚われた者の哀れな末路に胸が痛んで仕方なかったです。(記憶喪失は演技かもしれないのですが)許せない点も多いものの、個人的にはアガムスには何らかの救いがあってほしいと思ってしまいますね。

 

 

  • その悲しみに応えるために

 そんなアガムスに対して、カナタたちが様々な感情を見せていたのも今回の見どころの1つ。未来の真実を知ったことで、地球の発展にバズドを犠牲にしてしまうかもしれないことを語るイチカの姿には何とも胸が打たれれます。またソウマのようにアガムスの行為を逆恨みと捉えるなど、別の意見もしっかり描かれていたことにも好感が持てますね。(本作は様々な意見が飛び交い、かつどちらか片方に偏りすぎないのがいいですね
 そんな中我らがカナタはあくまでもアガムスを救うことにこだわっていたのが素敵でした。相変わらずわからないことばかりだけど、今苦しんでいる相手を前に諦めたくない!という姿勢は実に彼らしいです。過去や未来はどうであれ、アガムス自身とキチンと向き合っているのがわかります。デッカーに変身してからのテラフェイザー戦でも、彼の復讐の虚しさを説きながら必死に心を砕くかのような呼びかけをしていたのが素晴らしかったですね。

 

 戦闘シーンではそんなカナタとアガムスの感情のぶつかり合いを、出来うる限り映像で表現したかのような演出が多く見られました。まず相手の必殺技を避けずに受け止め、自分の技を放つシーンでは、お互いの感情をそのままぶつけ合っているかのような印象を受けました。そう考えると周囲が陥没するほどの威力を発揮する様子は、さながら2人の感情の強さと大きさを表しているかのようです。

 そして途中生身のカナタとアガムス自身が殴り合う抽象的なシーンがこれまた印象的です。怒りの感情をむき出しにしてなりふり構わず攻撃するアガムスと、悲しそうな表情で拳を振るうのをためらうカナタの対比に情緒が揺さぶられます。特にカナタが本気でアガムスのことを想ってくれているのがわかる様子にジーンときましたね。上述の通り地球と自分を犠牲にしようとしている復讐者を、どこまでも純粋に心配してくれる主人公の優しさに何度も感動させられる回だったと言えます。

 

 

  • まさかまさかの有翼怪獣

 アガムスがGUTS-SELECT殲滅のために使役した怪獣「有翼怪獣 チャンドラー」。頭部の耳の形状以外ペギラにそっくりな見た目をしている*2ものの、「こんな怪獣いたのか?」と思った人もいるでしょうがそれもそのはず。初代『ウルトラマン』にて多々良島を舞台にレッドキングと戦っていたかなりマイナーな怪獣です。『パワード』でのリメイクを除いてまともな出番がなかったこのチャンドラーがまさかの数十年ぶりの登場を果たしたことには個人的にもかなりの衝撃です。

 さてそんなチャンドラーですが、初出の時は披露しなかった飛行能力や火炎放射などでカナタたちを追い詰めた……かと思いきや、実際はアガムスの思惑を読んだムラホシ隊長による作戦で迎撃を受け、難なく倒されてしまうことに。ガッツグリフォンの攻撃に敢え無く爆散するシーンは妙な哀愁が漂っていましたね。

 というかこのチャンドラーが追い詰められていたことに激しく動揺していたアガムスの方に目が移ってしまいます。大して強くもないチャンドラーに期待を寄せている辺り、バズド星では割と強い怪獣だったのでしょうか。あるいはチャンドラーくらいしか頼れるものがないほどにアガムスが追い詰められているのか……いずれにせよ、どこか悲壮感溢れる今回のエピソードをある意味で彩る怪獣だったのかもしれません。

 

 

 今回は他にもウルトラマンシリーズ定番の展開である「正体バレ」がラストに待っていた点も忘れてはいけません。特にバレてしまった相手がよりにもよってあのソウマだったのが興味深いですね。デッカーがカナタに戻る瞬間を目の当たりにして動揺はしているものの、驚きそのものは少ないなど、ソウマは薄々デッカーの正体に気付いていたのではないか?という考えが浮かんでくる一幕でした。

 加えて次回は記憶喪失のアガムスの件もあってかなり忙しいことになりそうです。次々と出現するスフィア合成獣、さらにテラフェイザーに集まるスフィアの大群など不穏な要素も満載で、そろそろとんでもないラスボスが来てしまいそう……という不安も湧き上がってきます。クライマックスが迫る中、カナタたちはどんな決断を下すのか気になるばかりです。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:ただアガムス自身、バズド星は救えない可能性もわかっているうえでこの復讐に身を投じているのかもしれない。

*2:そもそもチャンドラーはペギラのスーツを改造して製作した怪獣である。ちなみに今回登場したチャンドラーも、『Z』まで使用されていたペギラのスーツを改造したものとのこと。(監督の辻本貴則氏がそのことを自身のTwitterで明かしている)