新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

ポケットモンスター(2019) 感想(総評)

夢と冒険と!ポケットモンスターの世界へ!!

レッツゴー!!

様々な要素を駆け足ながら魅せてくれる3年半だった

※2023.5.7に追記しました。

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

 アニポケことアニメ『ポケットモンスター』シリーズ。その最新作として2019年に放送が開始された本作は「新無印」「青無印」といった通称で呼ばれており、サトシの物語のフィナーレを飾ることにもなる重要なシリーズとなりました。同時にもう1人の主人公であるゴウの成長や彼らの関係も描かれ、実に濃密な約3年半を共に過ごすことになりましたね。今回はそんなアニポケの感想を『めざせポケモンマスター』も交えて書いていきたいと思います。

 

 

 先に評価点について語りたいと思います。

 まず上述の通り、本作はサトシの物語を終わらせるための大きな区切りを描いていたのが特徴的でした。ポケモンワールドチャンピオンシップという舞台とダンデのような最大の敵を用意し、かつてない強敵に勝利することでサトシの夢の1つをようやく達成させたと言えます。以前から不満の声が多かったサトシのリーグ戦績に対し、前作『サン&ムーン』に続いてサトシがチャンピオンになることで花を持たせることで有終の美を飾るのが本作の大きな目標の1つだったのかもしれません。

 極めつけはラスト1クール『めざせポケモンマスター』でサトシの夢の物語を再定義してくれた点。1つの目標を叶えたことでサトシの夢は果たしてどうなっていくのか、それをポケモンとの日常を交えることで見事に表現してくれていました。「世界中のポケモン全員と友達になる」という夢も、ここまでの物語のおかげで説得力があり見ている側として深く納得する答えとなりましたね。

 何より個人的には本作のサトシは「子どもっぽさ」と「頼もしさ」のバランスがちょうどよかったと感じました。前者は10歳の少年相応の無邪気だったりするところ、後者は長年の物語で培われてきた主人公としての格とも言うべきものですね。時に同年代の仲間やポケモンたちと仲良くしていると思ったら、いざという時は過去の経験から来る言葉や行動で助けてくれる……どちらのイメージも崩さないまま魅せてくれる塩梅が素晴らしかったです。ファンの1人としては、ある程度理想的なサトシを見ることが出来た印象です。

 

 そしてサトシと共にダブル主人公を張ったゴウに関してもかなり力を入れていると思いました。彼はこれまでのアニポケ主要キャラとしては珍しいタイプで、いわゆる「陰キャ」に分類されるキャラです。友達がほとんど存在せず、基本1人で行動しがちで人付き合いもよくわからない、そんなサトシとはまるで正反対の子どもとして描かれていまいした。過去作のサトシの仲間たちと対面した時の態度からも、友人関係でぎこちなさを残す少年として描かれていることは一目瞭然です。

 そんなゴウがリサーチフェローとしてサトシと共に行動することで人やポケモンたちとの触れ合いを知り、少しずつですが学んでいく様子はとても微笑ましかったです。特にゲットしたポケモンとのエピソードがポイントで、大切に想っている仲間にどう気持ちを伝えるか・どう向き合っていくかをゴウは重点的に学んでいったと思います。中でもヒバニーやメッソン、サルノリ関連は印象深いですね。最初は何を考えているかわからなかったものの、彼らの想いを理解して歩み寄っていくストーリーはどれも素敵でした。

 上述のサトシとの関係も面白いところ。基本同年代の友人として時に仲良く、時に喧嘩したりと何気ない間柄を築いていくのが目に見えてわかりやすかったですね。同時に頼もしいサトシのアドバイスなどを受け、彼に背中を押してもらうことで前に進むこともありました。ある程度成熟しきっているサトシに対してまだまだ未熟だからこそ成長し続けるゴウ、といった対比が為されていたのかもしれません。時には対等な友人、時には頼れる先輩であるサトシのおかげで成長する主人公としてゴウをしっかり見守ることが出来ましたね。

 ゴウの夢である「ミュウに出会う」とそれを達成するためのプロジェクト・ミュウに関しては結局のところ途中の一時休止で終わってしまったものの、彼の物語の区切りにおいてかなり重要な展開だったと思います。夢を追いかけるうえでの過酷さや無情な現実、それを如何にして受け止めていくかがゴウにとっては大切な要素でありました。言うなればゴウの物語は夢を叶えるのではなく「叶えるためのスタートラインに立つ」こと。本作では内向的な少年が一歩を踏み出し、自分の世界を広げていくまでの物語だったと言えます。

 

 作品そのものについては従来のシリーズ以上に、バラエティ豊かな作風が取られていたのも大きな特徴でした。基本1話完結のエピソードがほとんどのため毎回毎回異なる内容が送られており、時にクスっときたりウルっときたりする幅が非常に広い印象を受けました。これには様々な地方に行く展開が大きかったと言えるかもしれません。過去作のオマージュなどで展開を踏襲しつつ、それまでになかったエピソードも多く取り入れることで出来たことでしょう。ポケモンとアニポケの歴史を上手いこと利用してみせた内容でしたね。

 そしてその歴史を使った展開と言えばやはり過去キャラのゲスト出演。客演自体は以前も何度かあったものの本作の規模は過去最大で、『めざせポケモンマスター』も加えればほぼ全ての主要キャラが登場していました。長年再登場に恵まれなかったキャラなどにもスポットが当たっており、この網羅っぷりには少々驚かされるところです。ジムリーダーや四天王といったキャラたちも意外な出番で姿を見せることが多く、これまでのキャラクターを総出演させようとする気概が感じられましたね。エピソードによっては過去キャラのファンが唸らされる展開もいくつかあったのが素敵なところです。

 ポケモンに関しても同様で、伝説・幻のポケモンが意外な形で登場することもありました。加えて本作は上述の通り様々な地方を巡っていくこともあり、出てくるポケモンに縛りがほとんど見られなかったのも興味深かったです。異なる地方出身のポケモンが絡んだりする絵面も多く、見ていて中々に楽しかったです。特にゴウは行く先々でポケモンをゲットしていくので、ゲット後のポケモンたちの特殊な関係に見入ることが出来ました。(ゲットだけでなくポケモン化石発掘やポケモン交換など、最近アニメではあまり描かれなくなっていた要素を拾ってくれたのも嬉しかったです

 アニメの花でもあるバトルは過去作と比べると迫力不足ではあったものの、その分様々な要素が絡み合う混成ぶりが魅力でもありました。何と言っても当時の最新シリーズのダイマックスを主要とするだけでなく、メガシンカZワザといった過去作の目玉を全て用意してくれたのは大きかったです。特にサトシはこれら全てを用意したうえでマスターズトーナメントに戦うのが面白かったですね。これらを全て使用したバトルはゲームでは再現不可能だったため、アニメ独自のルールとして割り切って見ることが出来ました。

 

 

 

 さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。

 最初にエピソード関連について取り上げていきます。上述の通り1話完結でバラエティ豊かな内容が魅力的なものの、その1話完結にこだわりすぎているとも取れるのが問題に感じました。時には掘り下げ不足に思える回があり、その回のうちに悪役があっさり改心するなど首を傾げる展開も多かったです。解決策も偶然見つかるなどご都合主義的なところも時々見受けられましたし、前後編にしてでもじっくり進めてほしかったと思うことが何度もありましたね。

 中でも目玉であるソード&シールド編が4話で終わってしまったことには愕然としました。当時の現行ゲームを下敷きにしたストーリーとして様々な伏線を事前に貼っていたのに対して、本筋に突入した瞬間駆け足で進んであっという間に解決したのはかなりもったいないと思います。多少本筋に突入する時期を遅くしてでも、ローズといったキーパーソンやザシアンとザマゼンタたち伝説のポケモンたちを事前に登場させておくべきだったと考えずにはいられなかったです。(というかもっとガラル地方の物語を重点的にやってほしかったですね)

 

 登場キャラも1話で出番が終わってしまうことが多く、もう少し出番を増やしてほしかったところ。マリィのような原作ゲームで人気の高いキャラが1話のうちに出番終了したことには正直唖然となりました。他にも団長さん&隊長さんといった謎のそっくりさんのおっさん枠も途中で終わってしまうなど、色々と中途半端だったという印象は否めません。1話限りのゲストを多少削ってでも、彼らの出番を少しでも増やすべきだったのではないでしょうか。

 そして過去作キャラの客演に関しては大きな出番の格差が感じられたのも大きな不満点。シロナといった一部のキャラが何度も登場するのに対し、それ以外のキャラは同じく1話限りの出番だったりして終わることがありました。時には本当に少し映っただけのキャラもいるので、ますます特定の優遇に対してバランスが悪くなっていると感じてしまいますね。やるべきことや出すべきキャラが多かったあまり、駆け足でやるしかなかったという事情が垣間見えるのも寂しいところです。

 

 ポケモンバトルもそうした要素の弊害からかだいぶおざなりにされているところもありました。ゲーム準拠の効果発揮が多くなったのは良かったものの、それに対して動きなどがだいぶ制限されたように感じるバトルが多かったです。ゲームのターン制バトルを意識しているのかはわからないのですが、棒立ちで大技を出し合って終わる味気ないバトルもあってその時はガッカリさせられましたね。

 中でもとんでもなかったのがマスターズトーナメント。名前の通り勝ち残りのトーナメント方式であることと上述の問題が合わさったことで、1話数分のバトルで決する1回戦が実に多かったです。各地方の強豪を集めた大会なのに、そのほとんどが塩試合で終わってしまうのは如何なものかと思いました。そのくせ例によって一部のキャラとサトシの試合は数話に渡って繰り広げられており、ますます出番に格差を生んでいたことに頭を抱えずにはいられなかったです。

 個人的な意見ですが、マスターズトーナメントに関しては無理をしてでもリーグ戦方式にするべきだったのではと考えています。負ければ終わりにするのではなく何度も戦わせることで時には負けるものの時には勝つようにして、それぞれに見せ場を用意しつつチャンピオンたちの格を保つことが出来たのではないでしょうか。全てのキャラを満遍なく活躍させることは不可能だとは思いますが、それでももう少しどうにかしてほしかったです。

 

 

 総評としては「慌ただしいものの何とか駆け抜けた物語」といったところでしょうか。回収すべき要素の多さにてんやわんやして、後半になるほどその問題が顕著になっていくように感じました。加えて本作は放送開始初期から新型コロナウイルスでの休止や総集編が頻繁に起こっており、様々な苦境に立たされたシリーズだったとも言えます。後半の総集編はいずれも工夫が凝らしてあって個人的にはものすごく好感が高いのですがね……総集編はこれくらい頑張っているのがいいのよ……)当初の予定通りにはいかなかったのかもしれないと思わずにはいられません。

 とはいえ約3年半に渡る内容をやり切り、サトシを卒業させた点は見事だと思いました。バラエティ豊かな内容も何だかんだで概ね楽しめることが出来ましたし、サトシとゴウ、そしてコハルといった少年少女の物語にキチンと区切りをつけたことも大きく評価したいです。何より当ブログを開設したばかりの頃から感想を書き続けた作品なので愛着が湧いたのも個人的には大きいですね。ここまで本作を最後まで見届けたファンの1人として、完結に大きな感謝を送りたいです。

 約3年半のアニポケ、今までありがとうございました!!

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

サトシ

 ご存じ我らが主人公。上述の通り年相応の少年らしいところと頼もしいヒーローらしさ両方を併せ持つ先輩主人公として、物語を最後まで引っ張ってくれていました。相棒のピカチュウとの関係も安定しており、全体的に見ていて安心感に溢れていましたね。

 そして世界のチャンピオンに勝利するなど、彼の物語の大きな終わりを描いていたのも印象的。ポケモンマスターが何なのかをラスト1クールにわたってじっくり見せてくれていたのもあり、卒業をすんなりと受け入れることが出来てホッとしています。

 

 

ゴウ

 もう1人の主人公。好奇心旺盛ながらどこか人と馴染めないことが多い現代っ子のような子どもでした。両親が不在がちな故の鍵っ子描写やソウタとの過去など見ていて胸を締め付けられる過去も多く、狭い自分の世界に閉じこもりがちな点が異質故に放って置けないキャラを形成していたと言えます。

 そこからサトシとの出会いから様々な経験を積んでいき、他者の想いに寄り添い尊重する力を付けていくのがとても素敵でしたね。サトシが成長している分、ゴウの頑張りを親戚のような目線で応援して楽しむことが出来ました。

 

 

コハル

 ヒロインにして実質3人目の主人公。当初は全くと言っていいほど出番がなくほとんど空気キャラになりかけていたものの、中盤から少しずつ彼女メインの物語が展開されていくのが印象的でした。イーブイと出会ってからは積極的な面も増え、活発な少女として活躍してくれたのが良かったですね。

 彼女に関しては「何もないところからのスタート」がポイントだと感じました。性格もスタンスも一般的な普通の女の子として描かれており、ポケモンに対してもあまり興味を抱いていないのはかなり珍しかったです。そこからモヤモヤの原因であった自分の夢について考えるようになり、イーブイと共に夢を見つける旅を続けることにしたラストは何ともオシャレで微笑ましかったです。

 

 

 さて来週はアニポケ新シリーズがいよいよ始まりますね。リコとロイという新主人公たちがどのような物語を巻き起こすのか、今から期待で胸が高鳴ってきます。(僕以上に姉の方が新アニポケを楽しみにしていたり……)新シリーズの感想も基本簡易感想で書き、時々個別感想にする予定ですので、これからもよろしくお願いします。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

 

(2023.5.7追記)以下、各話感想リンクを追加しました。それぞれの感想についてはこちらから探してください。

 

metared19.hatenablog.com