共に行く。
手と手を取り合う時、男と巨人は今「ウルトラマン」になる
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- 仲間と支え合い、立ち向かう
ゲバルガに歯が立たず撤退を余儀なくされてしまったゲント隊長たちSKaRDメンバー。彼らがハルノ参謀長に叱咤されるシーンから始まった今回は、再度ゲバルガに挑む面々のしたたかさがまず目に留まりました。参謀長から「お前たちだけの力で一度でも怪獣を倒したことがあったのか」と手厳しい評価を受ける様子は見ていて心苦しかったのですが、その後は仕切り直してゲバルガの対策に勤しんでいたのであまり気にならなかったですね。(表向きは厳しいものの裏で根回ししてくれる参謀長もここすきポイント)
その対策も9話で登場したガラモンから採取されたチルソナイトを使うなど興味深いものばかり。加えてゲバルガをおびき寄せるために1話でゲント隊長が率いた部隊の隊員たちも召集されるなど、どこか懐かしい空気感が味わえました。これまでの戦いで築いてきたものを総動員し、目の前の強敵に立ち向かおうとする構図は見続けている側にとっては純粋に燃える展開と言えるでしょう。
またゲント隊長の前に出すぎ問題にようやくメスが入ったのも素晴らしかったです。危険な役回りを率先してやろうとする隊長にアンリとエミが止めるシーンには思わずおおっ!と唸りました。前回から気にしていた隊長の欠点を部下が補おうとしてくれる様子に、どこか感動せずにはいられません。隊長の「俺が行く」に対し「行かない」とすぐ返してくれる2人、さらには隊長の悪癖を冗談交じりに指摘して釘を刺してくれるかつての部下たちに、ゲント隊長の人望の厚さも感じられてほっこりさせられましたね。
- 同じ想いとわかり合う時
そして今回最大の目玉と言えるのがゲント隊長とブレーザーの一時的な対話シーンですね。前回の戦いでブレーザーに不信感を持ち始めた隊長に、ブレーザーが話しかけてくる(ゲント隊長の声を真似て話しかけている?)瞬間は中々に衝撃的。過去の記憶を流し込むかのような演出には最初困惑したものの、そこから隊長がブレーザーの真意を汲み取っていくので難しく構えることなく見れました。
そこで判明したブレーザーの想いが「ゲント隊長を守ろうとしていた」なのがまた素敵なポイント。前回の時点ではは自らの身の危険を察しての行動かと思っていましたが、そもそもが一体化している隊長を案じてのことだった事実にホッとさせられます。これまで何を考えているかいまいちわからないのがブレーザーの難点でしたが、彼が相手のことを思い遣れる優しい人物であることも同時に察することが出来て嬉しかったです。(デマーガ親子を庇った件は恐らく「ジュンくんのお父さん」としてのゲント隊長の面子を守ろうとしていたのかもしれません)
何よりその意思疎通、そして研究所爆破事件で一体化していた事実を知る過程を経て“2人は同じである”と通じ合う場面も見逃せません。上述の通り得体の知れない存在だったブレーザーが、自分と同じように誰かを守るために戦っているのだと知れたのはゲント隊長にとって大きな収穫だと言えるでしょう。そして自分は1人で戦っているのではないと知り、ブレーザーと共に戦う姿勢を見せる姿にテンションを上げずにはいられなかったです。「俺が行く」と1人で危険を被っていた隊長に、「行くぞブレーザー!!」と相棒のように頼れる存在が出来た……実に胸熱な展開で、2人のウルトラマンとしての一歩に相応しい始まりでしたね。
- 轟くツルギ、稲妻を纏いて邪悪を断つ
上述のわかり合いが描かれ再び立ち上がったブレーザーの新たな武器「チルソナイトソード」。ゲバルガ対策としてヤスノブたちが開発した「チルソナイトスピア」をゲバルガの口から抜いた際、突如として変化した奇妙な入手過程にまず驚かされます。デザインに関しても一目で剣だとわかる形ながら、ところどころ滑らかな曲線を描いている形状と中心部のガラダマが特徴的。ブレーザーと同じく、どこか骨を思わせる有機的な見た目をしていると思います。
以前脅威的な硬さで苦しめてきたガラモンを構成する合金・チルソナイトで出来ているということもあり、その切れ味は絶大。ゲバルガの強固なボディはもちろんのこと、電撃を難なく切り裂く威力を発揮してくれました。さらにトリガーを数回引くことで「イナズマスラッシュ」「ライデンフィニッシュ」「オーバーロード雷鳴斬」といった必殺技を放つことも可能。ゲント隊長のネーミングかな?と思われる技があるな……中でもブレーザー自身が稲妻を纏い、発生させた黒雲から落雷のように落ちてゲバルガを真っ二つにしたオーバーロード雷鳴斬のインパクトには惚れ惚れさせられました。
他にもチルソナイトソードを手に入れたブレーザーの反応もちょっとした見どころ。ブレーザー特有の身をかがめて両手を前に突き出すポーズが、ソードを持っていることで剣を奉納する儀式のように見えたのは興味深いです。その後はおもちゃを買ってもらってはしゃぐ子どものような様子に吹き出してしまいましたが、全体的にブレーザーが一気にクールな戦闘を見せてくれるようになったと実感しましたね。
- 宇宙からの“ウェイブ”の謎
こうしてゲバルガを無事撃退することに成功したものの、どこか不穏な影を落としていたハルノ参謀長。彼が何者かに電話をかけた際の「セカンドウェイブ、退けました」という言葉には思わず耳を疑いました。いきなり出てきた謎のワードですが、聞き覚えがあったからです。それこそ本作の第1話のサブタイトルである「ファースト・ウェイブ」。バザンガが池袋を強襲していたあの事件と、今回のゲバルガの襲来は同じ事件である可能性が出てきたことに驚きを隠せません。思えば1話のサブタイの意味については薄々疑問を覚えていましたが、ここでその関連性を示してくるのは中々に興味深いですね。
バザンガとゲバルガはどういう関係なのかを考えてしまいましたが、「宇宙から来た怪獣」「生物とは思えない特徴を持っている」「何故街を襲っていたのか不明」といった共通点が結構多いことに気付きました。特に今回のゲバルガのEMPで都市部をマヒさせるという、明らかに文明社会を狙った工作は他の怪獣たちの破壊行動と比べても実に異質です。怪獣というよりも、侵略者による兵器の攻撃といった方がしっくりきます。
このことから恐らくバザンガとゲバルガは同じ人物によって造られた地球攻撃用の怪獣兵器なのではないか?参謀長ら上層部はその情報を何らかの方法で掴んでいるのはないか?といった仮説が浮かんできましたね。参謀長がSKaRDを立ち上げたのも、このウェイブが少なからず関わっていると見ていいでしょう。この怪獣たちを送り込んでいるのは何者なのか、そしてこのウェイブはいつまで続くのか……様々な疑問を残しながら、物語が本格的に動き出したことを実感させられましたね。
というわけで12話の感想でした。ゲント隊長がブレーザーと一時的にですがわかり合いウルトラマンブレーザーになっていく、1クール目のクライマックスに相応しい回だったと思います。本作が始まってからずっと不満に思っていたゲント隊長の独断行動や、ブレーザーが全く話しかけてこない問題が少しずつ解消されていく過程にどこかホッとさせられます。(隊長がロッカーに置いていったブレーザーストーンを届けるために壁を突き破ったところは笑ってしまいましたが)ここから2人が絆を育んでいくのだろうと思うと、ワクワクが止まりません。
また謎のウェイブの情報が出てきたのも注目ポイント。1話完結の話が続いていた中、突然縦軸の話が判明して本当にびっくりしました。ブレーザーが地球に来たことも関わっていそうな謎が出てきて、ここから先の2クール目が俄然楽しみになってきましたね。次のウェイブと宇宙からの怪獣はいつ来るのかも気になるところです。
さて次回はSKaRDとブレーザーのこれまでを振り返る総集編……と思わしき何かになる模様。振り返りそのものはするようですが、予告のどこかおどろおどろしい雰囲気にちょっとだけ身構えてしまいます。ウルトラQを彷彿とさせるところもあるので、もしかしたら意外なオカルト展開が待っているのかもしれませんね。いずれにしても、ただの総集編ではないことを覚悟した方がよいでしょう。
ではまた、次の機会に。