先日の2月1日、週刊コロコロ(コロコロオンライン)にてデュエル・マスターズの新たな漫画の連載が始まりました。『Duel Masters LOST(デュエル・マスターズ ロスト) ~追憶の水晶~』と銘打たれた本作はデュエマの生みの親である松本しげのぶ氏が原作、『ニンジャラ』などを手掛けた金林洋氏が作画を担当するというデュエマの歴史上でも珍しい外伝漫画となっています。当ブログを読んでくれている方なら、以前投稿した雑記記事にて存在を知っていることでしょう。
↑連載前の情報について語った時の話は上の記事を参照。
上の記事でも書いたように僕自身楽しみにしていた作品ですが、いざ公開された第1話を読んだ時はある意味で度肝を抜かれましたね。松本大先生の作画ではないものの感じるしげのぶイズム、少年誌という枷から解き放たれた絵面の暴力などに一瞬で惹かれてしまいました。ファンが薄々感じていた、ポジティブなデュエマの裏に隠された陰鬱でバイオレンスな側面を余さず魅せてきた印象です。というわけで今回はそんなデュエマLOST第1話の感想を簡単に書き綴っていこうと思います。
- 闇に魅入られたウィン
本作でまず驚いたのが高校生になった主人公・斬札ウィンの変わりよう。「記憶喪失になっている」という情報は事前に掴んでいたので覚悟していたのですが、お出しされた高校生ウィンの生活ぶりはあまりにも衝撃的でした。
昼間は寝てばかりでバイトもミスを重ねてクビになる、道行く奴に殴られるうだつの上がらなさには何とも言えない情けなさがあります。それでいて夜には仲間と集まってバスケしたりファミレスで駄弁る……と不良まっしぐらな昼夜逆転生活はどちらかというと自堕落な大学生のソレです。この健全とは言えない生活は、アニメや漫画の健康的優良児なウィンを知っていると余計にショックを受けてしまいます。
あとは全体を通して触れられる「夜を好んでいる」「デュエマを遠ざけている」といった特徴にも切ないものを覚えました。昼間に友達とデュエマを思い切り楽しんでいる時はまるで対照的です。中でも印象的なのがタンスにしまっているたった1つのデッキで、漫画『デュエマWIN』の1話で大量のカードに囲まれていたシーンとの対比のように描かれている気がしましたね。
このように色々とショッキングではあるものの、一方でウィンは元々こういった闇寄りの人物なのだろうとも思います。アニメで明かされた母親の件や漫画などで度々触れられるサイコパス的表現からして、一歩間違えばこうなってしまう可能性はあったということでしょう。それだけにそんなウィンを真っ当な道に進ませたパパリン(斬札ガッツ)って、この子の人生においてすごい重要な人物だったんだろうなぁとか思ったり……
ウィンが記憶を失った経緯についても考えたくなりますね。気になるのは本作のウィンは度々見ている「真っ暗な宮殿でうつむき泣く子どもの夢」で、見開きのシーンからしてその子どもは明らかにウィン本人でしょう。宮殿はマイハマ学園にある女神の教会なのではないか?とも考えましたが、本作のヒロインである「クリスタ」絡みの可能性もあります。現状では情報が少なすぎてこれ以上読み取れませんが、このシーンはしっかり覚えておきたいところです。そしてウィンについての秘密が明かされていくことを心待ちに構える所存です。
- クリーチャーの前では人は無力に等しい……
本作でもう1つ、というか最も話題になっているグロ描写ですが、クリーチャーの襲撃によって人々が呆気なく殺されるシーンもこれはこれでショッキングでした。デュエマという作品はデュエルの勝敗に関係なく人死にが出るので昔から読んでいる読者ほど「まぁいつものデュエマだな」みたいな感想になりがちですが、人体の断面図がハッキリ見える絵面で攻める作画は訓練された人でも結構ギョッとするものになっていたと思います。むしろ少年誌のフィルターから外された場合のデュエマってこれほどエグいものなのかと、感動すら覚えますね。
さてこの辺りの描写で触れておきたいのはやはりクリーチャーと人間の圧倒的な力の差。終盤不良グループの1人(「陸上ハンマー投げエース」らしい)を喰い殺したクリーチャー《うごめく者ボーン・グール》はデュエル・マスターズ第1弾に収録されたカードの1枚ですが、そのパワーはわずか2000しかありません。999999とか555555とか文字通り桁外れのパワーを持ったクリーチャーがひしめく中では貧弱そのものですが、そんなクリーチャーでさえ人間にとっては脅威であることがよくわかります。それどころかパワー500の《予言者クルト》にすら、一般人は歯が立たないと思われます。
そもそも最後にプレイヤーにダイレクトアタックを決めれば勝ちとなるデュエマのルール上、パワーの数値はあまり関係ないのでしょう。どれほどパワーが低かろうとクリーチャーである以上、非力な人間はその攻撃を受けたら一撃で死ぬ……だからデュエマには人間の身を守るための「盾」が必要ということですね。デュエマがライフの概念を「シールド」と呼称する理由、そして製作者たちの考えが読み取れる非常に興味深い内容にもなっていたと言えます。
あと外せないのが本作のヒロインの1人「ニイカ」の存在ですね。ウィンと気兼ねない関係を持っている友人のように描かれていますが、断片的に見せる不穏な描写の数々にはドキッとさせられます。特に「闇の王に逆らう者は、こうなるのよ」のシーンは日常的な仲間とのじゃれ合いの中で唐突に挟まれたのもあって本当にビビりました。ウィンを慕っているようですが、それは彼本人ではなく「闇の王としてのウィン」を崇めているという意味なのではないか……?とも考えてしまいますね。天真爛漫な少女に見せかけて油断ならないニイカにも、目が離せません。
他にも気になる要素がたくさんあるのですが、それらをまとめるととんでもなく長くなってしまうので残りは箇条書きで割愛します。
- 冒頭の語りに映っていたのは《策士のイザナイ ゾロスター》っぽい?
- ナイキとかデミとか現実に即したものが多そう
- 夜の繁華街を練り歩くエッチな美少女……一体何スタなんだ……
- 普段は頼りなさそうだけど不良をボコすウィンはまさに“昼行燈”といったところ
- でもニイカからタコさんウインナーをあーんしてもらっているシーンだけ爆発しろ!
- 《ブック=ラギルップ》はニイカちゃんに気に入られたようで良かったね(アニメでは最近使われないことにボヤいていたので)
- メガネくんの優越感に浸っている感じ、嫌いじゃないぜ
- 光っているからレアカード=売れば金になる?という一般層のカードゲームに対する認識が妙にリアル
- 《天頂と停滞と水晶の決断(パーフェクト・ゼニス)》なる新カードの効果や如何に
- 透明の壁を以て現実と異世界の曖昧さを表現するシーンが素晴らしい
- ウィンとの再会に興奮する《アビスベル=ジャシン帝》、怖いけど何か可愛い(先日公開されたCMの声色がまさにウッキウキといった感じでした)
- アビスに混じる《デスブレード・ビートル》は何なんだ……?
といった感じでデュエマLOST第1話の感想でした。いやぁ色々語りたいことはありますが松本大先生がやりたいことを全力でやってるな!と感じられる1話でしたね。『錬人』で感じ取っていた作者に込められた陰鬱かつショッキングな要素を見事に抜き出し、読者を驚かせる代物へと昇華していることにも感動させられます。何より松本しげのぶ作画をブラッシュアップさせ、漫画そのもののノリも引き継いでいる金林先生の画力と構成にも舌を巻くばかり。この2人のタッグが魅せるデュエマLOSTの第2話が早くも楽しみになってきました。(一方でデュエマ公式は松本しげのぶという個人に任せすぎてこの人がいなくなったらどうするんだ……?という不安もよぎりますが)現在連載&放送しているデュエマWINの漫画とアニメと合わせて、本作をこの先も堪能していきたいです。
ではまた、次の機会に。