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気まぐれ漫画簡易感想 その12(デュエマ漫画編)

 

 

 突然ですが、「このブログで最も読まれているカテゴリーは何か?」と言われたら、これを読んでいる皆様方は何と答えるでしょうか。当ブログは仮面ライダーウルトラマンガンダムなど様々なサブカル作品のカテゴリーの記事がありますが、僕は間違いなく「デュエル・マスターズカテゴリーが最も読まれている」と答えます。デュエマアニメの感想を書いていることもあって、ここに訪れる多くの人がそちらを目当てにしていることでしょう。僕自身毎週アニメを見ているので、他の感想と合わせてかなりやりがいにしています

 とはいえデュエマはアニメだけでなく漫画も魅力的。というか原作者の松本しげのぶ大先生の漫画は本当に面白いので、こちらについてももっと話題になってほしいと常々思っています。というわけで今回は僕が読んできたデュエマ漫画の感想を書いていきたいと思います。僕個人の主観も入っていると思いますが、どうかご了承のほどお願いします。

 

 

 

 というわけで以下、漫画の簡易感想です。

 

 

 

 

デュエル・マスターズ キング 第7~8巻(完)

 

 

 まずは切札ジョーが主人公のジョー編の漫画について。まず7巻呈はジェンドルとの戦いの終盤から始まりましたが、何と言ってもジョーとモモキングがこれまで得てきたデュエマの歴史でジェンドルに立ち向かう構図が胸熱でしたね。目的も思想も持たずただ力のみを求める空っぽな敵に対し、仲間や家族たちと紡いできた絆で圧倒していく流れには早くも興奮させられます。ここまでの旅路で集めてきた超獣歴程によってモモキングが《未来王龍 モモキングJO》へと進化するシーンも最高にカッコよかったです。

 ジェンドルを倒した後はラストのアバクとの戦いへ。ジェンドルによって狂わされた自分の日常を取り戻すため、ジョーからデッキーを奪い取りその力を利用するアバクには終始お労しさを感じました。裏切られ奪われてばかりの人生から、他人の大切なものを奪う以外の方法を知らない“鬼”の生き方を貫く様子が本当に痛々しかったです。(それでいてヒミコの《EVE-鬼MAX》を利用するシーンで彼女に謝罪するなど、幼馴染に縋る未練を残しているのがまたいじらしい)唯一絆を育んでいるジャオウガとの関係も哀れですが、最後に自分を身代わりにしてアバクを救ったジャオウガにはどこか心振るえる面もあります。7巻に収録されている「ジャオウガの過去編」もあって、奪うことしか出来ない者同士の寄り添い合いが胸にくるラスボス戦でしたね。

 ジョーに関してもこれまた可哀想でした。デッキーを失うだけでなく、伝説の「デュエルマスターキング」になるシーンではジョー自身の大人びた顔つきに深い喪失感を覚えました。クリーチャーと人間を超越した存在となったことで、以前の子どもらしいジョーが失われてしまったように感じられたからです。運命の瞬間に子どものままではいられない、大人にならざるを得ない少年の悲壮な成長がこのシーンに端的に表現されていたと思います。それでも最後までアバクと戦い抜き、その力を手放す流れには一転して爽快感が味わえましたね。(中でも最後の決め手となった《あたりポンの助》を使うシーンは、1話で《はずれポンの助》を引いていたことを思うと感慨深いものがあります)力に溺れることの恐ろしさを覚え、純真ながらも聡明な選択をしたジョーに胸打たれました。

 そして最後の1話であるエピローグ、デッキーとジョーカーズがいなくなった後のエピソードには衝撃を受けつつもまたもや感動させられることに。デッキーでなくなったただのデッキケースに顔を描いて、デッキーとして話しかけるジョーの姿はショッキングすぎて胸が痛みっぱなしでした。大切な友達を失ったショックと後悔で一度は壊れてしまったジョーですが、その痛みを受け止めて立ち直るまでの過程にほろりとさせられます。ラストに成長し、画家になったジョーがかつての思い出を絵に描いて展示する最後にはかつてないほどの満足感を味わいましたね。ボルツとももちゃんがサラッとくっついていることにショックを受けたりもしましたが……少年時代の冒険や戦いを乗り越え大人になっても、あの頃の夢と純粋な気持ちを持ち続けることを忘れない内容に感極まってしまいっぱなしでしたよえぇ。

 最後のページで綴られた松本しげのぶ大先生のコメントも興味深いポイント。自分の思い描いた世界観を漫画やカードに込めたい大先生の想いやそれを通すための苦労……そこまでの道のりを断片的ながら知りえている身としては、それを終えた大先生の「ぼくもジョーといっしょに冒険していたのです」というコメントには深く頷かされます。そしてジョーが画家になるラストに描いている作者自身も驚きつつ、そうなるまでのジョーという独特の主人公が魅せる“子どもらしさ”を学んでいたことに読んでいるこちらも納得させられます。何とも奇妙ながら素敵なジョーの物語を最後まで、リアルタイムで追いかけられて本当に楽しかったです。

 

 

デュエル・マスターズ 紅蓮 第1~2巻(完)

 

 

 週刊コロコロコミック(コロコロオンライン)で連載していたデュエマの背景ストーリーのコミカライズ。あの「革命編」をベースにした漫画化でありながら、主人公はまさかのグレンモルト。しかも一人称が「僕」でどこか落ち着いているなど、これまでのモルトのイメージとは大きく異なるキャラクターとして描かれているのが最大の特徴となっています。目的も恋人のアイラを襲ったレッドゾーンへの復讐と、どこか仄暗い雰囲気を漂わせている辺りに、本作が単純明快な少年漫画ではないことが読み取れますね。

 ストーリー展開も革命軍VS侵略者を軸としながらもモルトの戦いをメインに据えていることもあり、上述の「復讐者として生きるべきか」の他にも「英雄の道と愛する人との道どちらを取るべきか」など、彼自身の内面が多く描かれています。特にモルトの戦いに対する消極的な姿勢が印象的で、強い者だけが生き残る弱肉強食の世界を歌うデッドゾーン(レッドゾーン)に「そんな恐ろしい世界では僕もお前も生きていけないじゃないか」と答えるシーンにはグッとくるものがあります。自分だけは常に勝者でいられる、奪う側で居続けると思い上がる侵略者に対し、この返しは本当に唸らされました。(それ以外にも本作は戦争の空虚さ、そうまでして戦わなければならないクリーチャーたちの悲しさを一貫して描いているようにも感じます)

 また本作のオリジナルキャラクター「ブラックアイラ」も中々の印象を残してくれました。本物のアイラを殺して自分だけがモルトを独り占めしようとするヤンデレキャラなのですが、最初から最後までモルトに振り向いてもらえない様子が見ていて気の毒になってしまいます。そして自分はモルトの1番になれないと思い知った後、苦しむアイラのために自分を犠牲にする最期には思わずウルっとさせられました。何のために存在したのかもわからない、それでも最後には愛するモルトのために命を捧げられたブラックアイラに涙が止まらなかったです。もういっそのことあのアイラをストーキングしている手のひらデュエチューバーがブラックアイラを幸せにするファンアート誰か描いてくれないかな……

 モルトやアイラ以外のクリーチャーたちのキャラ付けも興味深いです。火の国のドギラゴン王をはじめとした革命軍の王様たちはいずれも王に相応しい貫禄と度量を持ち合わせており、短い出番ながらそのカッコよさには惚れ惚れしっぱなしでした。対してレッドゾーンたち侵略者はチンピラ染みた性格が多く、どこか世紀末のヒャッハーを思わせる悪役ムーブを見せてきます。(しかしレッドゾーンは途中デッドゾーンに改造させられるわラストにレッドゾーンXになるわと扱いが散々で気の毒に見えてくるんですよね……)何より鮮烈だったのがギュウジン丸で、復讐のためならば自分の身すらも犠牲にするマッドサイエンティスト要素が全面に出ていました。自身が復活させたドキンダムXに殺される最期は背景ストーリーと同じながら、復讐をドキンダムに託して笑って逝く狂気ムーブには最高にゾクゾクさせられましたね。

 あとはやはり作者の森茶氏が描くクリーチャーの質感も魅力的。氏の代表作である『ゾイドワイルド』シリーズで評判だったメカニック作画の良さは本作でも存分に発揮されており、ドギラゴンやレッドゾーンのメカニカルなデザインを白黒で表現しきっていることに感動させられました。モルトも戦闘形態でその恩恵を受けており、2巻終盤の覚醒モルトVSデッドゾーンの戦いの作画は迫力満点の一言です。
 最終的にはFGOのレジライそっくりとネタにされているドキンダムとの戦いを目前にして終わるという「俺たちの戦いはこれからだ!」エンドで終わることに。事実上の内きりですが、最後の最後でモルトたち戦士の葛藤を描き切ってくれたので満足度は十分に得られましたね。モルトの物語としてみると中々に見応えのある内容でしたし、短いながらも面白い作品でした。

 

 

ドラゴン娘のどこでもないゾーン 第1巻

 

 

 続けて同じく週刊コロコロで連載中の作品、通称「ドラゴン娘」から。こちらは以前販売された神アートシリーズ「五人祭りでドラゴン♡サマー」で美少女に擬人化されたドラゴンクリーチャー5人を主役にしているのですが……作者がシュールギャグが得意なニャロメロン氏ということもあり、その例にもれずシュールな4コマ漫画となっています。単行本作者コメントの「めちゃくちゃ最高の食材を有名なコックが完璧に調理して、それを私が美味しく平らげた後私の得意料理のタコ焼きを皆さんに振る舞う」が凄く的確。『バンバンドリドリ』の時から続いている「原作なんか知るか!俺の好きにやらせてもらうぜ!!」とも言うべき氏のノリがそのまま抽出されているので、デュエマのデの出てこない全く関係のない内容に変な笑いが出てしまいます。(裏を返せばデュエマのことをまるで知らない人も楽しめる作品なのかもしれません)

 具体的にいうとデスゲームでインフレが止まらなかったりローカライズ版の寄せ書きを渡されたり、刺してきた蚊相手に60年以上力み続けたりと、文章だけだと意味不明だし実際に見ても意味不明な絵面がひたすら続きます。深く考えなくても良さそうな気がしますし、意外と深そうな気もする展開の連続は中々に趣深いです。他にも大量のゲームや漫画、ネットミームのパロディが盛り込まれており、その元ネタについて言及するのも面白いところ。(「ニャオハ立つな」ネタから「デジモンの進化シーン」に繋げるネタのセンスには感心しました)そして個人的にはニャロメロン作品の特徴である「各コマのタイトルがオチ」な点で毎回フフッとさせられていますね。

 不条理シュールギャグながら登場人物のキャラ立てもしっかりしているのもポイントの1つ。「地封院ギャイ」(《地封龍ギャイア》)と「熊田すず」(《悪魔龍ダークマスターズ》)は比較的常識人のツッコミ役として確立されていますし、「流星アーシュ」(《流星のガイアッシュ・カイザー》)の歪んだ愛情表現はかつてないほど印象に残ります。他にも元ネタであるカードを意識したネタもふんだんに盛り込まれており、中でも1話に出てきた「怖い犬」はネット上の読者たちの間で「これは《ケンゲキオージャ 〜究極火焔〜》を指しているのではないか?」とこじつけ考察されており、その空気感を味わうのも楽しかったです。シュールながら確立するべきところはきちんとされているのでキャラを掴みやすく、それらの内容をデュエマ好きとネタにするのが何より楽しい作品なのかもしれません。

 

 

デュエル・マスターズ WIN 第1巻

 

 

 ラストは現在コロコロコミックで連載中のデュエマWIN。新主人公・斬札ウィンと彼と共に行動する邪神くん(《アビスベル=ジャシン帝》)が繰り広げるストーリーは、今までのデュエマ漫画にはないミステリアスでホラーチックな要素が魅力的な内容となっています。またこれまでの世界観を一新したことで「この世界ではクリーチャーはどうなっているのか?」といった疑問を持ったまま読み進められるのが個人的には面白いと感じるポイントですね。

 さてこの漫画のWINですが、アニメと比べると大分ダーク寄りの作風なのが目に付きますね。特に主人公のウィンのキャラクターにその傾向が強く、不敵な態度を取る彼には不気味なものを感じずにはいられません。デュエマの際に見せるクレバーさはもちろんのこと、日常でもどこか得体の知れない雰囲気を醸し出している辺りが何とも恐ろしいです。普段からニコニコしていて親しみやすいようでいて、どれほどピンチな状況下でも飄々としているウィンからは「何を考えているのかわからない」という恐怖が引き出されます。

 ウィン以外のキャラにもアニメとは異なる様々な印象を抱きます。現在仲間となっているマズキとケンドラは漫画だと実際に暴力を振るうくらいには凶暴ですし(バットにピコピコハンマーが付いていたりカイザのデッキを真似るくらいファンボーイっぽいなど可愛らしい部分もありますが)、プリンス・カイザの威厳漂う態度はライバルキャラとしてもかなり好印象です。何よりウィンの危険性を考慮するカイザとボウイという、まるであちら側がヒーローのような描写も興味深いところ。主人公が闇文明使いだからこそ、周囲のキャラの敵味方の感覚も逆転しているかのような感覚を覚えます。

 そして巻末のおまけ漫画「大先生への道 ~ウィン 誕生までのあれこれ~」が例によって楽しかったですね。ジョー編序盤の単行本でも描かれていた「新主人公が出来上がるまで」を綴った裏話的内容でしたが、今回は如何にして闇文明使いの主人公の発想に辿り着いたのかが語られていました。新しい主人公なんて書けない!と嘆いていた大先生に、「たとえば次の主人公は闇使いにするとか」と提案したイマムー軍曹にはあんたが言ったのか!?と衝撃を受けました。大先生自身も陥っていた「主人公は火文明使いでなければならない」という固定観念を取っ払い、彼が大好きな悪魔や妖怪の要素を全面に出せるナイスな鶴の一声だったと言えます。大先生も火文明主人公に囚われていたんだなぁ、と意外に思いつつ、今度こそ作者として好きにやれることを願うばかりです。

 

 

 デュエマの漫画と言えば特典カードについても忘れてはいけません。大抵初版にカードが付いてくるのですが、これも大切に保管しています。基本的にコレクションとして扱っているのですが、たまにデッキに入れたりして遊んだりもしていますね。(一時期ジョー編2巻に付いてきた《ダチッコ・チュリス》をボルツの相棒のダチッコに見立て、【赤単ビートジョッキー】に入れたことがあります)こういった特典を集めるのも、漫画のデュエマを追う醍醐味だと個人的には思います。

 

 

 ではまた、次の機会に。