「ありがとう」を伝えたい
本編後のシャゴン「赤い巨人の首を傾げるポーズには気を付けろよ。あとデカい空飛ぶキノコも体当たりしてくるから危険だぞ」
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- 鋭い疑惑の目を向ける者
今回のアークは若干シリアス。謎の地震が多発する地域の調査に向かったユウマたちが、途中見つけた旅館「あけぼの荘」での宇宙人の疑惑を調査していく様子が描かれてました。何と言ってもシュウの様子が険しくなっているのが印象的で、これまでの朗らかさはどこへ行ったのかレベルでの威圧感に動揺を覚えます。旅館の従業員たちに問い詰めたり、即座に行動したりといつになく忙しなかったです。挙句の果てにはあけぼの荘の番頭であるヌマちゃんこと「ヌマタ」の正体を探り当てるや否や、彼への容赦のない尋問を繰り広げたのは少々ショッキングでしたね。
ただヌマタ(クロコ星人)を庇うユウマに反論するシーンで、シュウの抱える焦燥の正体が見えてきました。言葉巧みに人を騙し、時には利用してから処分する狡猾な宇宙人を多く見てきたからこそ不信感を抱いているのが伝わってきます。そのうえ「同僚が騙されて殺された」話を出された以上はもうどうしようもなかったです。怪獣と戦ってくれるアークのように宇宙人全員が悪ではないものの、得体が知れないものをすぐに信用することが出来ないシュウの気持ちも理解出来るので複雑な気分にさせられました。
(余談ですがアークのことは信用している点について、『パワード』の第6話を思い出しました。「ジャミラを敵と認識したのはウルトラマンと違って戦う相手がいないから」「宇宙人というだけで敵と決めつけるのは恐ろしいこと」といった劇中のセリフが頭の中で巡ってきましたね)
- 想像して寄り添う者
そんな宇宙人への疑心暗鬼に駆られていたシュウに対して、ユウマや女将さんはヌマタの言葉を信じて行動していたのも今回の大きな見どころ。特に女将さんと給仕のおばさんに関しては、ヌマタの境遇を知ったうえで彼を番頭として働かせてくれた回想シーンでウルっときました。ヌマタの境遇を案じ寄り添ってくれる器の大きさ、そして優しさに溢れていますね。最後まで庇ってくれる姿も含め、生まれも見た目も異なる相手への思いやりは旅館の女将さんらしいほっこり感があったと思います。
そしてユウマはシュウとの視点の違いが大きく描かれていたのが特徴的。最大のポイントはヌマタと女将さんが交わしたハンドサインで、シュウが何かしらの暗号と解釈したのに対し、ユウマはこのサインを「暖かい」と感じたのが面白かったですね。(実際このハンドサインの意味の1つに「ありがとう」があったのが素敵)直感に近いモノですが、その感覚を信じてヌマタの話に耳を傾けたことに彼の他人を慮る人間性が垣間見えてきます。同じモノでも人によって見えているものが異なる……ということを描いた場面としても非常に興味深いです。
何より「相手の側に立つ」という形で本作のテーマである想像力を語っていたのが見事の一言。想像とは何も自分の中だけで完結するものではなく、時には相手が何を考えているのかに寄せる場合でも発揮されることを視聴者にわかりやすく伝えてくれていました。疑うことも時には大切、しかし時には相手を慈しんで信じる想像力も発揮するべきなのだと、今回は学ばせてもらいましたね。「怪獣使いと少年」のようなバッドエンドにならず、そこそこの希望を見せてくれる今回のエピソードに心が暖かくなりました。
- キノコ愛と感謝を忘れない素朴なあなた
あけぼの荘の番頭・ヌマタの正体である「茸狩宇宙人 クロコ星人」は、本作でついに登場した宇宙人です。4つの目と鳥のくちばしのような口が特徴的な見た目をしています。ビジュアルとしては『セブン』のペガッサ星人に似ていますが、目じりが下がっているためどことなく弱々しいイメージを抱きますね。劇中でのオドオドとした態度も相まって、庇ってあげたくなる雰囲気が出ていると言えるでしょう。(何よりヌマタを演じているアキラ100%さんの演技力も、彼に対する庇護欲を湧き起こしてくれました)
そんな見た目に違わず、目的も地球のキノコ採集と結構平和なもの。密猟ではありますが歴代の侵略者と比べればかなり温厚な目的であり、茸狩(きのこがり)宇宙人の別名は伊達ではないと思います。そのうえキノコの胞子を宇宙船の材料にしていたり、その宇宙船もまんまキノコの形状をしているなどキノコにこだわりまくっているので驚きました。ありとあらゆる場面でキノコを重宝する珍妙さは、キャラクターとして中々に愉快と言えます。
そんなクロコ星人の1人であるヌマタですが、仲間に置いて行かれ地球に取り残されるという中々に不憫な境遇の持ち主。語り口も相まって思わず同情を寄せてしまいます。無論劇中のシュウが懸念しているように演技の可能性も考えられましたが、その後の捨て身の特攻もあってその疑惑はあっという間に晴れました。むしろ長いこと寂しさを抱えながら、受け入れてくれた女将さんたちへの感謝を忘れない心優しい人柄であることを読み取れた次第です。
- 人を襲うは極めて厄介な害獣なり
第1話以来の再登場となる鎧甲殻獣 シャゴンは、以前ウーズに寄生されていた地球在来の怪獣。あの時はウーズのせいでアスファルトなどを食べさせられていましたが、今回は本来のシャゴンとしてユウマたちに襲い掛かったのが印象深いです。元々が肉食であることを知っていましたが、いざ旅館に逃げ込んだ人間たちを食べようと迫る様子は非常に怖かったですね。窓から足が見えたり、突き破られた天井から顔を覗かせる光景は巨大な怪物としての恐怖を存分に引き出していました。
さらに今回、シャゴンが群れで獲物を分け合う習性が判明したのが興味深かったです。人間を建物に追い詰めてすぐに襲うのではなく、先に仲間を呼ぶのはなるほど肉食動物の生態としては理に適っていると言えるでしょう。ただその結果2体目や3体目と、新たなシャゴンが次々と現れたのはこれまた脅威に感じましたね。着ぐるみの都合上なのか2体以上画面に映ることはありませんでしたが。アークもバリアーと光輪を組み合わせた高速回転カッターや、ソリドアーマーの必殺技で何とか数体退けるので精いっぱいだった辺り、中々のピンチだったかもしれません。
ちなみに最後に残ったシャゴンはアークに睨まれ撤退していきましたが、アークが倒さなかったのは今後のシャゴン全体への警告も兼ねていたのではないかと思います。この個体がアークとこの地域を脅威に感じ、他の個体にそれを伝えてくれたら人間が襲われる事例も多少は減っていくことでしょう。無闇に倒しても簡単に解決しない問題に対して、互いの領域を侵害しない形で対応する姿勢は個人的に評価したいところです。
さて次回は本編はお休みで、代わりに特別総集編が放送されるとのこと。この時期になると総集編を挟むのは定番で、毎年のことなのでだいぶ慣れてきましたね。むしろここ最近の総集編は1つのエピソードとしても凝っているのが多いので、本作でも密かに期待しています。(例によって感想の方は個別感想をお休みして、簡易感想の方にまとめる予定です。ご了承ください)
そんな次回の総集編ですが、SKIPのフジヤマ市分所に所属する中村さんを主役としたエピソードが展開される模様。彼の視点で星元市の戦いが語られるようですが、他の地域の人たちからしたら星元市がどれほど異質なのか明らかになりそうで地味に楽しみです。(そしてユピーのマスコット的活躍の可能性にもワクワクしますね)
ではまた、次の機会に。