新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

機動戦士Gundam GQuuuuuuX 第12話(最終話)「だから僕は…」感想

夢が、交わる。

時に傷付き迷いながらも、ニュータイプの歩みはきっと続いていく

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

  • 絶望の中で始まった閉塞感

 シャアによってイオマグヌッソの隠された機能が発動し、その結果向こう側のガンダムが召喚される場面から始まったガンダムジークアクス最終回。前回から引き続き動揺しっぱなしでしたが、シュウジが語ったこの世界の秘密の方には聞き入りましたね。大方の予想通り、シャロンの薔薇ことエルメスに乗っているララァはシャアがガンダムに殺された世界からやってきた事実に膝を打ちました。本作の世界がそんな彼女の絶望と「シャアを救いたい」という願いから作られたモノだと本編でハッキリ説明され、改めて世界観の複雑さとララァの健気で救われない性質を実感します。

 そしてシュウジの目的が薔薇の中のララァを殺すことだと明かした時は面食らいましたね。シャア本人に否定された今、彼女の心を守るためには彼女を殺すしかない……という、理屈はわかるもののあまりにも残酷すぎる選択に思わず切なくなってきます。シャアを生かすために世界を作り出したララァとはまた別に、そんなララァの心を優先してしまうあまり手段が極端すぎる気がしなくもありません。大切な人を守るためには“こうするしかない”と思考を閉ざして、袋小路に入っているのがこのシュウジという少年の正体なのだとここで理解出来ました。

 それはそれとして、シュウジの説明前に思いっきりファーストガンダム41話の映像が使われる演出には思わず吹き出してしまいました。さらに新規映像付きで池田秀一さんのシャアと、潘恵子さんのララァが喋ったことにも驚かずにはいられなかったです。(そして後述のジークアクスの覚醒時には古谷徹さんまで……!)当時各キャラを演じた声優さん本人を起用してくるという、最後の最後にやってきたことには最早感嘆するほかなかったです。声が違うことで本作のシャアやララァとは別世界の同一人物であることも察せられる点も秀逸ですし、やりたい放題ながらもしっかり筋道を立てている点に思わず頷かされた次第です。

 

 

  • 強くなると決意する少女の“自由”

 さてララァを殺してこの世界を無かったことにしようとするシュウジを止めるため、ジークアクスを駆るマチュの決戦が描かれたのが今回の大きな見どころ。まずはニャアンと速攻で和解して、彼女とマヴになって共闘する展開にグッときました。ジーアクス&ジフレドという、本作の2機のガンダムのコンビネーションが初代ガンダムと相対すシチュエーションが何ともたまらなかったです。ニュータイプ同士による高速戦闘ながら、2機の連携がハッキリと感じられるものだった点も見事の一言。(ニャアンがまたもや味方の頭を掴んで誘導する戦法を披露してきた時は笑いましたが)

 そして今回の戦闘とキラキラを通じて、マチュのニュータイプ観が明らかになったのも見逃せません。ニャアンの行動を「1人で生きてきたこと」と肯定し、シュウジに「自分の心を縛らないで」と諭す場面は、マチュらしい自分の正直な姿勢が出ていると感じましたね。恐らくマチュはそうした自分の心のままに行動し、たった1人でも戦い続けられる強さこそが“自由なニュータイプの在り方”と考えているのでしょう。個人的に抱いていた「わかり合う可能性」のニュータイプ観とは真逆なのですが、「明日の私はもっと強くなってやる!」という力強い決意のおかげで中々に納得出来るものになっていたと思います。

 何より本作の登場人物は閉塞した状況で「こうするしかない」と半ば諦めている・開き直っていることが多かったので、上述のマチュの姿勢がより輝いて見えました。ほとんどの人間が現状への悲観を見せる中、マチュだけはそれに反抗してでも自分の意志を貫こうとしていたのは言うまでもありません。その過程でお尋ね者になったりと過酷な目に遭いながらも、躊躇いも後悔もせずに前に進み続けるマチュだからこそ見ていてスカッとさせられます。総じて窮屈な環境ならぶっ壊してでも飛び出して、自分の衝動を信じて突き進む……ジークアクスという作品はそんなマチュの物語なのだと改めて感じました。

 

 

  • “白い悪魔”を名を受け、異なる宇宙に降り立つ戦士

 “向こう側”より現れシュウジが乗り込むこととなったMS(モビルスーツ)“RX-78-2”「ガンダム」。こちらの世界の白いガンダムと同一の存在ですが、そのビジュアルは多くの人が知る『機動戦士ガンダム』に登場するガンダムそのものです。そのうえ後年の複雑なディテールなども存在しない、原典に忠実であるシンプルな造形をしています。まさしくアニメファーストガンダムのデザインに即しており、ガンダムのパブリックイメージを反映したデザインと言えるでしょう。

 またシャロンの薔薇(エルメス)同様別世界の機体の機体であるためか、存在そのものが異質で後述の巨大化などをはじめとした超常現象を纏っているのが特徴的。劇中では機体そのものにゼクノヴァ反応が確認されただけでなく、シャリアやキシリアがその姿を見ただけで何かの悪寒を覚える様子を見せていました。(向こう側の世界でガンダムと関わった人物だけの既視感なのでしょうか)またシュウジの言動からしてこのガンダム自体に意志が宿っている風にも取れますね。ララァに絶望を味わわせてしまったことへの後悔や罪悪感か、はたまた本来存在しない世界を修正するための世界的な意志か……いずれにしても、単なるMSと片付けられない機体なのかもしれません

 武器に関してはビームサーベルとシールド、頭部バルカンのみと非常に寂しいのですが、シュウジの操縦テクニックも相まってかなりの実力を発揮。ジークアクス&ジフレドのマブ戦術にたった1機で拮抗する辺り、1対1なら歯が立たなかった可能性がありますね。そしてまさかの巨大化という謎の現象まで引き起こし、圧倒的な質量差で追い詰めていった時は笑いと驚きが湧き上がりました。(何故かG3カラーに変化しているのもちょっとじわる)唐突ながら絶望感溢れる絵面によってマチュとジークアクスの前に立ちはだかったという点で、本作のラスボスに相応しい活躍を果たしたと言えますね。

 

 

  • 月の眠りを解き放つは、暖かな“人の心の光”

  シュウジのガンダムとの最終決戦でたった1人……否、1人と1機で立ち向かうことになったマチュとジークアクス。そこでジークアクスがマチュの奮起に応えるかの如く覚醒するシーンには度肝を抜かれました。何と言っても歯に見える部分がガバッ!と、エヴァンゲリオン初号機よろしく開いたのは衝撃的でしたね。以前から口が開きそうだと視聴者の間で言われていましたが、いざ本当にそうなった時の絵面のインパクトは半端なかったです。その結果両肩・両膝から展開されたビームユニットで巨大ガンダムのビームサーベルを防ぎきる性能を発揮。そのうえビームサーベルを長大な斧状の武器に巨大化させて、ガンダムの首を切り落とすほどの力も出していました。

 そしてシャリアの説明からジークアクスに搭載されたオメガ・サイコミュの本来の名が「エンディミオン・ユニット」であることも判明。シャロンの薔薇と同じく向こう側から流れ着いたオーパーツとのことですが、どこかで聞いたことのある人物の声で話すなど明らかに意志を持っていることが確認されます。この時点でエンディミオン・ユニット、ひいてはジークアクスに存在しているのが初代主人公のアムロ・レイの意志であることがわかりますね。そのオーパーツとはどんなものかははっきり描写されていないものの、彼が「ガンダムがララァを殺す世界」から来ていることから原典のアムロそのものかそれに類する世界出身である可能性が高いです。*1

 余談ですがエンディミオン・ユニットの名前の元ネタである「エンデミュオーン」はギリシャ神話に登場する美男の名前です。月の女神セレーネと結ばれるものの、神ではなく人間のため老いと死から逃れられない問題に直面。大神ゼウスの提案で美貌を維持するために永遠の眠りにつくことを選び、今もなおセレーネに見守られながら眠りについているという話で有名です。

 その名を冠したパーツが眠りについたララァを目覚めさせ、悪夢の世界から解放させるというのは何とも意味深なモノを覚えますね。しかしマチュの「日々進化する」という言葉を借りるならば、時を止めて一時の幸せを得るよりも、傷付きながら自由のために進み続けることに意義があるのかもしれません。そういった意味では、エンディミオンの名で閉塞感を打ち破るアンチテーゼになっていると捉えられるでしょう。ただ古谷さんが『美少女戦士セーラームーン』でタキシード仮面もといエンディミオンを演じていたせいでそちらを思い出した人も多いのだとか……

 

 

  • 赤い彗星は1人の青年に還る

 今回は他にもシャアとシャリアのシーンも大きな注目ポイント。再会そのものはしれっと果たされた中、シャリアがシャアを攻撃した時は面食らいましたね。しかしジオン再興のためにアルテイシアを擁立する準備を整えていたこと、そのためにいつか人類の粛清を行うであろうシャアが邪魔であることには大いに納得出来ました。特に後者は『逆襲のシャア』で実際に粛清に走っているシャアが見られるので、シャリアの主張に困ったな……その通りすぎて何も言い返せない……となりましたねハイ。*2

 そうして赤いガンダムVSキケロガという意外すぎるマッチングに驚きつつ、ややあっさり目な決着からのお互いに別の道に進むオチにホッとさせられました。シャアがシャリアから警戒されていることを知ったうえで、彼に殺されないよう穏やかに生きると選んだのは上手い落としどころだと思いましたね。何よりシャリアがシャアを妄信しているわけではなく、彼の危険性を理解しながら時には排除することも辞さない点に感心を覚えます。(シャアというかキャスバルへの謎の感情の重さを見せたキシリアの後ということもあって余計にそう感じます)

 シャアとしても時には自分の過ちを指摘し正してくれる、真の理解者を得られたのは幸運と言えるでしょう。これまでの作品におけるシャアはジオン・ズム・ダイクンの息子といった肩書きなどに引っ張られて、周囲への期待を背負いながら極端な行動に走ることが多かった印象が強いです。それだけにアムロやカミーユのように、自分のロマンチストで危うい本質を理解してくれる存在がどれだけ重要かが彼を知るファンほど理解出来るかと思います。シャアも満更ではない様子でしたし、この調子で平穏無事に隠居してほしいですね。

 

 

  • それぞれのその後、マチュの行き先は……

 さてキシリアの排除やソドンクルーのニュータイプへの冷めた印象など様々な展開が超高速で描かれましたが、EDも情報量が多くて最後まで見応えたっぷりでした。まずシャリアの思惑通りアルテイシア(セイラ)がジオンの柱となっていくことが確定してちょっと安心。ランバ・ラルなど信頼出来る側近も確認出来ますし、これまでで最もジオン公国の今後を担うに相応しい結末を迎えたことでしょう。(ただセイラさんの心情が全く描かれていないので、彼女がどう思っているのか気になります)それはそれとして、シャリアがしれっと変なマスクを付けているのを確認出来た時は思わず吹き出してしまいましたが……

 他にも後半ずっと空気だったポメラニアンズの現在(何でゾッグを買ったの?)が明らかになったり、タマキ母が娘の無事を確認して喜ぶ姿など見逃せないシーンが盛りだくさん。中でもこの世界のララァがシャアと出会うシーンに思わず涙が出てきました。待っていた彼がようやく来てくれて、驚きと喜びが入り混じった嬉し涙を流すララァの姿からは50年近くかかってようやく彼女が救われたのか……!という感動を覚えます。何故スラムのような場所にいるのかは謎ですが、彼女の笑顔を見ているだけでそんなことはどうでもよくなってくるくらい嬉しかったですね

 そしてマチュに関してですが、かつての約束通りニャアンと地球の海で過ごしている様子にこれまたほっこり。このシーンからこれまでのED映像で流れていた2人の同棲している様子は、やはり本編後の出来事なのだろうという確信を得られました。そのうえで現状に満足しておらず、唯一この場にはいないシュウジのいる場所に向かおうとする旨の言葉にマチュらしさを感じましたね。向こう側に行く方法は全くわからないものの、「いつか会える」というガンダムの言葉を信じる姿には一種の爽快感を覚えます。最後に彼女の自信にあふれた笑顔が見られて、個人にも大満足の一言です。

 

 

 というわけでジークアクス最終話の感想でした。把握しきれないほどのオマージュを用意しながらやりたい放題やりつつも、やるべきことを果たしてハッピーエンドをキチンと用意してみせたことに思わず拍手してしまいましたね。マチュを中心とした少女たちのジュブナイルとシャリアメインの戦後の後始末。それぞれを主軸にしたストーリーを貫き通して、ファーストの“if”を描きつつこれまでとは全く異なる味わいを生み出してみせたと考えます。

 過去作の履修の必要性や多少強引な展開などもあって好き嫌いなどははっきり分かれているかと思いますが、個人的には毎週非常に楽しめました。毎回毎回様々な驚きを用意して飽きることなく、リアルタイムでの反応に一喜一憂出来た体験だけで有意義な作品だったと捉えられるでしょう。今季アニメで最も疲れるけど最も刺激的だったと、胸を張って主張していく所存です

 さて総評に関してはこれまた後日に投稿予定。評価点や不満点を交えつつ、本作に関する僕が抱いた感想をまとめていきたいと思います。そちらの方も読んで、ジークアクスへの個人的な感情を読み取っていただければ幸いです

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:アムロの思念が残っていることから、目下エンディミオン・ユニットの正体に最も近いのは『逆襲のシャア』にてアムロが最後に乗った機体「νガンダム」のパーツ(アクシズショック後にどこかに焼失したサイコフレーム?)ではないかと個人的にも予想している。

*2:個人的な妄想だが、シャリアはアルテイシア(セイラ)からシャアがソロモンを落とそうとしていた時のことを聞いた可能性があるのではないかと考えている。