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ウルトラマンオメガ 第9話「カネナリ怪獣パーク」感想

「楽しい」はどこにある?

「おい人、心の豊かさってなんだ?」

「なんだろうねぇ……」「分け合うことかな」

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  • 色んな意味で“普通”な社長の苦悩

 2週間ぶりとなるオメガ本編は、工事現場にて発見された怪獣・グビラを巡る物語が展開されました。本作世界でもかなりの大金持ちらしい社長が怪獣を見世物にするとんでもない計画を立てている中で、ソラトたちの頑張りが目に留まる回になっていたと思います。(ただ初っ端から封鎖された現場に入るために、割と無茶なことをするソラトたちには笑ってしまいましたが

 今回の注目ポイントはやはりカネナリコーポレーションの社長「カネナリ・ジョウジ」周辺の描写でしょうか。最初こそ友好的な態度を見せてきましたが、部下への叱咤や厳しい言動などから雲行きが怪しくなっていき、上述の計画がバレる時点でとんでもない!となるわかりやすさが飛び込んできました。「保護」など耳障りのいい言葉を言いながら結局金儲けを何よりの目的にしてくる辺り、ストレートな拝金主義者としてのイメージを抱きましたね。

 ただその一方で冷酷な人ではない様子もチラホラ見せていたのがこの社長の面白いところ。グビラが暴れ出した際にアユムたちの人助けを目の当たりにして、すぐに手伝ってくれるシーンには驚きつつ感動しました。これはすぐに改心したというよりも、元からこれくらいの優しさは持ち合わせていたのかもしれません。(なので改心というよりは「反省」と表現した方が良さそうですね)怪獣への対策も彼なりにしっかりやっていましたし、完全な悪人とは言い切れないでしょう

 また後述のソラトのお金の話などからして、金を稼ぐために周りが見えなくなっていたのも読み取れますね。会社のことや色々背負っている立場だからこそ、利益を上げるために余裕を無くしていた背景がそれとなく見えてきます。話の流れを見ればバカな行動に出てしまったものの、そこに肉付けされた要素から単なる愚か者では終わらない……良くも悪くもどこにでもいそうな“普通”の人間としての社長を見た次第です。

 

 

  • 分け合い助け合い、豊かさを得る

 そんなカネナリ社長の話から、ソラトの「お金」に関する疑問が出てきたのも大きな見どころとなっていました。冒頭金欠でバナナを取り合うソラトとコウセイ、その懐事情に同情しつつ(前作といい不況の世知辛さをわかりやすく描いているな……)、その後の「お金を集めてどうするのか?」は中々に面白い流れだと感じましたね。ソラトにとってお金は「何かと交換するもの」くらいの認識でしかないからこそ、ハッとさせられる質問だったと思います。

 さらに社長の楽しそうではない態度を訝しむなど、一連のシーンから裕福は必ずしも幸福ではないといった描写が挟まっていたのが興味深いです。カネナリ社長については上で書いた通り、金儲けのために心の余裕を失っているのは何とも皮肉に映っていました。お金は何かを得るために稼ぐものですが、その先に楽しさ・幸せといった「心の豊かさ」が無ければ本末転倒……そういったメッセージが伝わってきます。

 では心の豊かさとはなにか?という話ですが、それはラストのソラトとコウセイのやり取りに込められていました。ジャンケンで手にしたバナナを、半分こにして分け合う光景には思わず感動させられます。他にもグビラの襲撃で大損害をこうむったものの、社長をはじめとして助けてもらった社員の感謝のシーンは短くもグッときました。お金のような即物的なものでなくても、大切な人との日々などが幸福……ひいては心の豊かさに繋がっているのかもしれません「きっと未来の幸せは分け合えば膨らむ」だよねウマショー!

(今回のエピソードのように、監督の市野龍一氏が手掛けるエピソードがこういう人情話がしれっと挿入されるので結構好みですね*1

 

 

  • 螺旋角鯨の、電撃&狸寝入り

 工事現場にて眠っているところを発見された「深海怪獣 グビラ」。7話に登場したゴモラと同じく初代『ウルトラマン』の怪獣であり、こちらは海中に生息する怪獣の代表格と言えます。『ウルトラマンX』での再登場以降、ニュージェネウルトラマンに度々出演する常連としても有名です。また『トリガー』や直近の前作『アーク』では、代わりに地中で生活出来るように進化した亜種・オカグビラが出てきたりとバリエーションも豊富だったりします。

 ビジュアルは縦に平べったい体にドリル状のツノ、鋭い歯を持っている点が特徴的。どこかマヌケなように見えて、ところどころの鋭さで威圧してくるギャップはさながらゆるさと恐ろしさが同居しているかのようです。何より魚やイッカク、サメといった複数の水生生物の特徴を引き継いでいるのがわかるのが面白いですね。(あとは名前の由来と後述の潮吹きからクジラが最も大きなモチーフなのでしょう)

 そんなグビラですが、本作で独自の要素を引っ提げてきたのも見逃せません。まずソラトの説明によると「寝たふりをして獲物をおびき寄せる」習性を持っている点。獲物が来るまでじっと身を潜める生物は現実にも数多く存在しますが、従来のグビラのイメージとは異なる生態だったのでかなり意外でした。そのうえ様々なバイタルチェックすらかいくぐり、本当に眠っていると欺いてくるほどなのですから驚きです。

 他にも特殊な潮吹きでオメガを苦しめていたのも印象的。雨のように降ってきたソレを浴びたオメガが苦しんでいるのが不可解でしたが、電撃のようなエフェクトを纏っていることから電気を帯びていたのでしょうか。体内で電気を作り出し水を通して攻撃しているとしたら、これまた過去のグビラには無かった技として衝撃を受けますね。総じて新しいグビラ像を提供してくれるほど、意外性抜群の個体だったと思います。*2

 

 

 そして次回は何とソラト&コウセイのコンビに取材の手が伸びるとのこと。とある女性のジャーナリズムが2人に密着取材を敢行させるようですが、そのせいでオメガの正体がバレそうになる展開が待っていそうです。他にも怪獣を取り逃がしたことでソラトとコウセイがケンカしてしまうらしいですし、次回は肝を冷やすことになりそうですね。

(ちなみに次回の登場怪獣はデマーガ。再登場怪獣が続きますが、今回のグビラのように何かしら追加要素があるのを期待してしまいます

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:個人的に好きな市野監督回を挙げるとすれば『ジード』第5話「あいかた」や『R/B』第7話「ヒーロー失格」辺りだろうか。

*2:余談だが今回のトライガロンVSグビラは、世にも珍しい四足歩行怪獣同士の対決でもあるので個人的にはかなり印象に残っている。