「強くなれ」
それは始まりの物語────
悪しき陰我!今こそ斬りさけ、牙狼<GARO>!!
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今月上映が開始された映画『牙狼<GARO> TAIGA』。深夜特撮ドラマの金字塔『牙狼<GARO>』の20周年を記念して制作された劇場版にしてシリーズ最新作です。本作はそんな20周年記念として原作者の雨宮慶太氏が久々にメガホンを取ったほか、あの冴島大河の若い頃を描いた作品ということでファンの間でも大いに話題になりました。かくいう僕も、初代主人公・鋼牙の父が主役の物語は昔からやってほしいと思っていたので発表時から心待ちにしていたほどです。
そういうわけで先日映画館に足を運び、本作を早速鑑賞してきました。その結果期待していた以上の牙狼成分で興奮と感動が同時に湧き上がってきましたね。初代シリーズの要素を引っ提げつつ、ファンならニヤリとくる絶妙なネタも豊富。それでいてシリーズ初見の人でも十分に楽しめるなど、バランス感覚も見事でした。そして“あの人”に関する素敵なファンサービスも……今回はそんな牙狼TAIGAの感想を書いていきたいと思います。
※ここから先は作品の内容に触れているのでネタバレ注意!!
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- 新機軸の雨宮牙狼ワールド
まず本作に関して語りたいことはその劇中世界における空気感。魔獣ホラーを狩る魔戒騎士の戦いの物語として、定番のエピソードをストレートにやってくれた印象です。まず主人公の大河がホラーと戦い討伐するというお約束の流れを踏んでくれるので、掴みとしてはバッチリでした。(牙狼映画は基本序盤にこの流れを踏んでくれるので安定感がありますね)それでいてガロの鎧召還時に99.9秒のタイムリミットが刻まれるなど、初代や『魔戒ノ花』などでも見られた演出をやってくれるのがグッド。おかげで本作が冴島家が主役の物語であることを強く実感しました。
加えて大河や吹奇(フキ)のビジュアルなど、ある種のファンタジー的装いが現代日本の中に溶け込んでいる世界観も魅力的。一見すると浮きそうな格好ですが、お祭りの風景などで違和感をあまり出させない工夫がなされていたと思います。そして人類の安寧を守る「聖獣(四神)」の情報が丁寧に説明されているおかげで、こちらもすんなり受け入れることが出来ました。時系列を考えると劇中の日本としてはいささか街並みが現代すぎるきらいがありますが、そこもあまり気にならないのは世界観の構築のおかげでしょう。まさにシリーズの創設者である雨宮慶太氏の描く、牙狼の世界観が十二分に発揮されていたと言えます。
対してアクションに関してはアクション監督を務める鈴村正樹氏の手腕が感じられるものとなっていました。鈴村氏といえば直近の前作『ハガネを継ぐ者』で独自の牙狼を生み出していたことが記憶に新しく、中でも生身のアクションが魅力的だったことを覚えています。流れるような剣捌きやつばぜり合いなどによるスピーディーなバトル、縦横無尽に動き回るカメラワークが、本作でも強く発揮されていました。中でもガロの鎧を召還してから基本一撃で決着が付く、短くも鮮烈な活躍はこれまたハガネを継ぐ者でも感じられた塩梅。この一瞬の輝きは「魔戒騎士にとって鎧は必殺技」というイメージをわかりやすく可視化しているものとして、個人的にも深く評価しています。
そんな鈴村氏謹製のアクションに、雨宮氏の要素が加わることでより強烈な映像が生み出されていたのが大きな見どころ。それを強く感じられたのが大河VS蛇道の決戦で、四神の力を借りた大河の戦いぶりはさながら魔法バトルのような様相を呈していました。蛇道の瞬間移動なども相まって、生身と特殊能力の融合による映像表現に舌を巻いた次第です。そして極めつけは最終決戦の墨絵。最終形態の蛇道龍がイラストで表現された時は面食らいましたが、四神のCGや実写のガロとこれまた共存出来ていたので本当に驚きましたね。雨宮慶太ファンタジーによる幻想的な画が、鈴村正樹アクションと見事な融合を果たしていたと思います。
総じてファンにとっては懐かしさを覚える要素を多分に含みながら、新しさも積極的に取り入れているので最後まで見応えがありました。パンフレットによると短い制作期間故に色々な苦労があったよう*1ですが、最終決戦などはそれを逆手に取って魅せる映像を生み出していたと感じています。20周年を迎えながら未だに見たことのないバトルを繰り広げてくれる牙狼のポテンシャルの高さ、新しい雨宮牙狼ワールドの創造をここにきて存分に味わえましたね。
- 受け継がれる想いと物語
続いて本作のストーリー部分についてですが、こちらはやはり「親子の物語」を全面に据えていたのが特徴的でした。牙狼シリーズにおいて親子はほぼ毎回存在している要素ですが、制作側が意図的にメインにして描いたのは実は今回が初めてとのこと。(雨宮氏自身、インタビューで過去作の親子の物語について「それらはあくまでサブストーリー」だと明言していますし)それ故様々な形で親子関係を描き、後の大河の物語を想起させる流れになっていたと言えます。
そうして描かれたのが四神の1人、白虎の話。記憶喪失の頃に惹かれ合った妻と彼女との間に設けた息子、残された片割れとの再会を願う白虎のいじらしさに早くも魅了されましたね。老人となった息子の顔を一目だけでも見たい、そんな感情を早い段階で説明してくれるので、彼の奔放な行動にもすぐ理解を寄せることが出来ました。最終的に息子との対面を果たし、彼の幼少期にしてやった肩車を果たすシーンは思い出すだけで泣けてきます。種族を超えた親子愛という、ある種テンプレな話を奇をてらわずストレートにやってくれたのはかなり好印象です。
その一方でフキが息子の側に立って、白虎に物申す場面があるのが面白かったですね。再会出来ることが本当に幸せなのか?それは親の身勝手なのではないか?こうした疑問を彼女に担わせたのは上手いと感じました。両親を知らない経験があるフキだからこそ、子どもとして視点を用意したことに感心を覚えます。そんな彼女が最後に顔も知らない両親の英霊を見て、静かに涙を流すシーンも印象に残りました。残された子の寂しさを背負いながら、見守ってくれた親の愛を感じ取る瞬間もまた親子の形を描いていたのでしょう。
そして親と子との絆を、大河が1人異質な形で見守っていたのが個人的に注目したいポイント。彼だけは父親が存命なものの、劇中には登場しないので親子の物語に入り込めない様子が目に付きました。それだけに本筋からは蚊帳の外にも見えますが、そこは白虎との師弟関係で補っていたと考えています。7日間だけでも大切なことを教えてくれた師匠と再会し、彼から教わったことを実践で発揮することで受け継いだことを証明する。この時の大河は、ある意味で白虎の子どものだったのかもしれません。単純な血の繋がりだけではない、過ごした時間でも深い関係は成立することを大河の視点で描いてくれていました。
何よりこれら親子の形を経験した大河が、後に父親として鋼牙を育て上げると思うとシリーズファンとしては胸が高鳴ってきます。白虎やフキの姿を見て、自分の子どもに思い描いた父親であろうと振る舞っていたことを想像するだけでワクワクしますね。また初代で息子に遺した「強くなれ!」という言葉も、ラストにフキから受け取ったものだと判明する流れにこれまたグッときました。大河もいずれ技術や言葉に込められた想いを次の世代に託す側になるのだろう……それを予感させる終わり方に本作の主人公が彼である異議を見出したところです。牙狼において一貫している「継承」の物語を、こうした胸熱の形で魅せてくれたことに感銘を覚えましたね。
では以下、各キャラクターについての所感です。
冴島大河/黄金騎士 牙狼(ガロ)
本作の主人公にして、後に初代主人公の父親となる“赤き眼”の黄金騎士。予想よりも大分穏やかな性格をしていて、フキや白虎とも適切な距離を取っていたのが目に留まりました。おかげで白虎が少年時代の大河に向けた「誰よりも強く優しい騎士になれる」という言葉に納得がいきますね。戦闘時の凛々しい表情と普段の柔和で優しい笑顔のギャップも、想像していた大河とは異なる魅力を発揮していました。
戦闘に関しては歴代主人公の中でもかなり余裕たっぷりで、一度蛇道に倒された時以外は一貫して安定感があったのが印象的。(ここまで頼もしく見える主人公は『-VANISHING LINE-』のソード以来でしょうか)一方でザルバの霊視予知や四神の力を行使するためにガンガン寿命を削っていく、危なっかしい一面はある意味で冴島家の系譜を感じます。心強さとどこか危ういバランスは、何とも大河の奇妙な味を形成していましたね。というかバラゴにやられたのはこんな感じで寿命削りまくって衰えたのもあるんじゃ?などと考えてしまったり……
また今回若かりし大河を演じた北田祥一郎さんが実に素敵でした。壮年の大河を演じた故・渡辺裕之さんを彷彿とさせる顔立ちだけでも印象的なのに、立ち振る舞いやアクションのキレも見事なまでにカッコよかったです。(上述の笑顔も、北田さんの優しそうな表情も相まって本作の大河にハマっていましたね)ここまでの人材を見つけ出した牙狼スタッフの手腕に感動しつつ、北田さんのさらなる活躍を望んでしまうほど。難しいとは思いますが、また何かしらの形で北田さんが牙狼に出てくれたら嬉しいですね。
吹奇(フキ)
一作につき大体1人は出てくる女性魔戒法師。毎回恒例のサポート役かと思いきや、それに留まらず上述の親子の話にキチンと入ってくる重要なポジションを担っていました。親の顔すら知らない子どもからしたら白虎の行動に物申したくなる様子は個人的にもなるほどな……と腑に落ちた点で、それまで地味だった彼女のキャラクターが一気に立ったように感じましたね。それでいて最後に白虎の想いを汲んで上げるなど、素直で優しいので好感が持てます。
ホラーとのバトルではあまり出番はなかったものの、四神を守るなど自分の役割を果たそうとしてくれるので何だかんだで応援したくなってきたほど。それどころか終盤ではまさかの「麒麟」の力を発揮して大河の力になったりと、いきなりながら強烈な活躍を魅せてくれたと言えます。彼女に麒麟が宿っていたことは若干唐突になっていたのが残念でしたが、フキの戦いぶりとしては申し分なかったです。
白虎
聖獣の一角。そして本作の中心人物であり、飄々とした態度に早くも見入りました。他の四神が割と真面目なだけに奔放に見えましたが、一方で人間との交流を楽しんでいるのもあって何とも可愛げのある人物像が見えてきたところです。映画冒頭から少年時代の大河を鍛えているシーンもあったので、人間が好きな自由人としてのイメージを掴むことが出来ました。本作の爽やかな空気感は、大部分が白虎のキャラクターによって形成されていたと言えます。
また置いていってしまった家族への想いや後悔を抱いているなど、単純な性格では終わらない背景を魅せてくれたのも大きな見どころ。この辺りの過去回想は独特の墨絵背景もあって、おとぎ話のようなテイストで楽しめました。そして老人となった息子と対面し、再び肩車してあげる際の穏やかな様子はかなり涙腺を刺激してきましたね。超常的存在でありながらどこまでも人間臭い、そんな白虎の魅力をここに見ました。
(余談ですが、老人となった白虎の息子役がかつてのシリーズで倉橋ゴンザを演じた螢雪次郎さんだとわかった時は内心声を上げましたね。*2大河と対面するシーンも相まって「やっと会えた」というセリフには別の意味でウルっときてしまいます)
蛇道
敵ボス枠のホラー。世界で一番のホラーになって……一般的なホラーとはまた異なる、浮世離れしたビジュアルが強烈でした。妖艶な雰囲気を漂わせながら、自分以外を喰らって己の力にする能力を持った怪物として恐怖の象徴をキチンと表現していたと思います。一度大河に倒されたかと思っていたら、手首だけ残して再生を図るなどしぶとさもやたら怖かったですね。一般人を金銭で雇い利用する狡猾さも相まって、歴代ボス格のホラーに並ぶ存在感を発揮していました。
ホラー全体に関してはハガネと継ぐ者の時と同様、特殊メイクによる異形の表現を行っていたのが良かったですね。序盤のキャンドリアはもちろんのこと、蛇道のホラー態は人間態の面影を残しつつも威圧感がマシマシになっていました。最終形態の蛇道龍も、墨絵による表現で十分に脅威としての印象を残してくれていたと思います。
「今朝の美人達」
本作最後にして最大の涙腺崩壊ポイント。「絵を描く青年」(言うまでもなく彼女の父親ですね)が大河に白い花をおすすめされるラストはかなり意味深で、この花は何なのかとEDが流れている最中ずっと考えていました。過去作に似たような要素があったかどうか、つい記憶を巡らせたほどです。なまじシリーズを追ってきたからこそ、花の意味についての繋がりを考えてしまいましたね。
そうしたらクレジットの最後にこの花の写真が映され、「撮影:渡辺裕之」と表示されたので驚愕しつつ涙をこぼさずにはいられませんでした。予想だにしなかった形で壮年の大河を演じた渡辺さんの名前が出てきたことに、そうきたか!という感心すら覚えます。制作陣から渡辺さんに送るメッセージは何かしらあるだろうとも思っていましたが、これまた粋な計らいを考えたものです。
『月虹ノ旅人』の出演を最後に鬼籍に入られた渡辺裕之さん。彼の大河をもう見られない事実には今もなお悲しい気持ちが湧いてきますが、この演出のおかげでいくらか心が和らぎました。あの人が遺した“想い”もまたこうして受け継がれている……多くは語らずともそうした心意気が込められた写真の使い方に、渡辺さんに向けた鎮魂を見た次第です。
というわけで牙狼TAIGAの感想でした。ハガネを継ぐ者も面白かったし牙狼20周年に何か新作をやってほしい!という願いを見事に叶えてくれただけでなく、大河のその後に繋がる大きな物語をやってくれたことに感謝したくなりましたね。ファンサービスを欠かすことなく、新しい牙狼に仕上がっていた点も見事。こちらが期待していることをほぼ全て達成しつつ、驚きを与えてくれた雨宮監督たちには拍手を送りたいです。
そして牙狼シリーズは今後も続いていく模様。個人的最推しである道外流牙を主人公としたテレビシリーズ新作の制作も決定し、まだまだ新しい物語が作られていくことを喜ばしく思います。制作状況など全盛期と比べるとパワーダウンしている印象は否めませんが、そんな中でも魅力的な牙狼を描いてくれる制作陣には舌を巻くばかり。アニメ新作もやってくれないかなと他にも期待しつつ、20周年のその先でも牙狼を応援していく所存です。
ではまた、次の機会に。
