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仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ 感想

光が降り注ぐ未来へと

100年の歴史を越え、親子の約束が継承される

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 毎年冬の風物詩である現行ライダーと前作ライダーの共演を描いたライダー冬映画。昨年度は諸々の事情で『セイバー』と『ゼロワン』の共演が果たされませんでしたが、今回は無事『リバイス』と『セイバー』の映画として、そして仮面ライダー50周年作品として『ビヨンド・ジェネレーションズ』が公開されることと相成りました。

 というわけで僕も去年の内に映画館に足を運んで観に行ったわけですが、ラスト付近で号泣するほど楽しめました。バイスとセイバーそれぞれの要素を見事に絡ませつつ、何より「仮面ライダーセンチュリー」としての物語として成立させた映画は実に面白かったです。というわけで今回はそんなビヨジェネの感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • “親子”と“約束”、そして“継承”の物語

 さて本作の最大の魅力は先程も書いた通り「仮面ライダーセンチュリー」及び「百瀬親子」の物語をストレートに描いたことと言えます。父と子が50年前の出来事から生まれた確執を乗り越え和解し、仮面ライダーとして悪を討つ・・・・・・ありふれているようでいてわかりやすく、それでいて非常に熱いストーリーを見事にまとめきったことに感動しました。親ほどドキッとするところも多かったようですし、親子2世代で観に行く映画に相応しい内容だったと思います。

 

 そんな映画ですが、個人的に本作は“親子”と“約束”、そして“継承”の3つのテーマによって構成されていると考えています。以下、それぞれの要素について語っていきたいと思います。

 まず百瀬親子ですが、これはわかりやすいですね。過去に交わした「一緒に新幹線に乗る」約束が果たされなかったことが原因で、息子の秀夫が父の龍之介を嫌悪するようになる前半は見ていて胸が締め付けられます。だからこそ、そこから後半の和解を経て共に仮面ライダーセンチュリーに変身する流れに感動させられるのです。

 何より自分も父になり、息子の真一と上手くいかない経験があったことで龍之介の想いを知る秀夫の構図が見事です。最終的に秀夫が真一と共に新幹線に乗ることで、龍之介と自分を重ね合わせて約束を果たすラストには号泣させられました。こじれた“親子”の関係が、子が親になり“約束”を“継承”していく形で解決していく内容は素晴らしかったの一言です。

 

 続けてリバイス&セイバー勢について。百瀬親子が主役ながら、こちらもしっかりと物語に関わっていたのが良かったですね。中でも一輝は龍之介たちの関係を修復するために奔走していたのが印象的でした。『リバイス』本編で度々家族の大切さを訴えてきた一輝だからこそ、「家族がバラバラになってはいけない」という想いに深く納得させられます。本編では現在不穏な部分が見え隠れしている一輝の家族観ですが、映画ではプラスに働いていることにホッとしました。

 また前作主人公の飛羽真は未来での戦いが印象深いです。異様に強かったデビルライダー相手にも諦めずに戦う、『セイバー』本編での不屈ぶりが改めて見れて興奮しましたね。そして裏切ろうとするバイスに「約束は破った方が辛い」と説教するシーンには驚かされました。この辺りはバイスの心変わりに対する見事な言葉だと思いましたし、何より本編で約束の重要性を説き続けてきたからこその説得力があります。約束を守ることの大切さが巡り巡って後輩に伝わるというシチュエーションも良いですね。

 そんなダブル主人公の仲の良さ、ある種の主人公交代の過程も見ていて楽しかったです。“親子”の大切さを説く一輝と“約束”の大切さを説く飛羽真、それぞれの物語の“継承”がここで見られた気がします。

 

 最後は何と言っても1号ライダー。こちらはメタ要素が強いですね。これまで藤岡弘、さんが演じてきた本郷猛を、本作はその息子である藤岡真威人さんが務めることで以前から話題になりました。まるで歌舞伎役者のような話には僕も驚きましたね。真威人さんがまだ17歳ということもあって本郷としては若すぎると感じるところもありましたが、本編を見て「これからの本郷猛像」としての期待がかかります。

 そんな真威人さんの本郷が龍之介に感謝するシーンは本作のラストとしてもかなり鮮烈でした。ショッカーの元研究員として本郷を改造人間にしてしまったことに負い目を感じている龍之介が、本郷から「守る力を貰った」と感謝を受けることで救われる様子はどこかウルッときます。(人によってはこの辺りの本郷に解釈違いを覚えそうですが、個人的には悪くないと思いました)

 何より仮面ライダーを生み出したこと」に感謝する構図が興味深いです。夏に公開された『スーパーヒーロー戦記』では弘、さん演じる本郷が石ノ森章太郎に感謝するメタネタが特徴的でしたが、本作ではその配役が真威人本郷と龍之介に変わっているのが面白いです。夏ではメタ的な「生みの親」に感謝し、冬では物語上の「生みの親」に感謝する・・・・・・現在も続く仮面ライダーシリーズからの感謝がこのシーンに込められていたと言えます。

 そんな重要な役割を父親から受け継いで見事やり切った真威人さんには拍手を送りたいところ。“親子”で仮面ライダーのお“約束”を守り、キチンと“継承”したことに感無量です。

 

 といった感じで、本作は3つのテーマを上手いこと活用していたと個人的には考えました。大分無理矢理なところがあったりしますが、概ね僕が感じたことをある程度説明出来たかと思います。

 またストーリー以外で良かった点も結構あります。例えばアクションに関しては映画だけあって通常よりもスケールアップしていたのが目に焼き付きました。セイバーとリバイス合わせて約14人いるライダーにそれぞれ活躍の場を与えていたことには感心しますし(デモンズとサーベラ&デュランダルの兄妹は若干不遇気味でしたが)、冬映画特有の各作品のライダーの共闘も見応えがありました。個人的にはジャンヌ&剣斬のコンビが特にカッコよかったですね。

 そして本作オリジナルのライダーであるセンチュリーのカッコよさは最高の一言。上述の親子の物語をしっかりやった後の変身シーン、そして戦闘に入ってからの盛り上がりには終始興奮しっぱなしでした。親子の約束の要である「新幹線」をモチーフにしたであろうデザインのエモさもたまりません。劇場限定のライダーでここまでお気に入りになったライダーもそうそういないです。センチュリーと共にラスボスに挑むクロスセイバー、そしてリバイスネオバッタゲノム」の活躍も相まって素晴らしい最終決戦でした。

 あとは50年後の未来で登場した「デビルライダー」、そして未来の狩崎が開発した「クローンライダー」軍団でしょうか。予告映像に登場した大量の過去作ライダーを如何にした登場させるのか、と最初は戦々恐々だったのですが、蓋を開けてみればなるほどこれは面白いと思いました。本人ではなく別物または飛羽真たちがガワを借りただけということもあり、気負わず見ることが出来て良かったです。

 

 

では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

百瀬龍之介&秀夫/仮面ライダーセンチュリー

 本作の実質的な主人公。上述でも語った通り、この親子の物語を中心としているのがビヨジェネ最大の特徴だったと言えます。過去の罪を背負う父と、現在を自分の子と生きる息子が未来のために力を合わせて戦うシチュエーションには何度も泣かされました。どちらもどこにでもいそうなありふれた一般人の風体だからこそ(一応龍之介はショッカーの元研究員ですが)、彼らがヒーローになる過程に感動させられたと個人的には思います。

 またやはりそれぞれを演じた中尾明慶さんと古田新太さんの演技力が素晴らしかったです。特に古田さんが演じる秀夫が本当に見事で、最初はくたびれたおじさんというイメージだった秀夫が父との再会を機に少しずつ子どもらしくなっていったことに驚かされました。秀夫が龍之介に切符を見せるシーンは癇癪を起こした子どものようでしたし、父との別れに泣きじゃくる様子には親に抱かれて泣く子どもの姿が見えました。彼らの演技あってこそのこの百瀬親子だったのだと改めて思いましたね。

 

 

五十嵐一バイス仮面ライダーリバイバイス

 『リバイス』の主人公コンビ。本作では一貫して百瀬親子の仲を取り持とうとする一輝と、終始コミカルなバイスが見れました。一輝は家族のことになるとすぐ熱くなるお節介で押しつけがましいところがあるのですが、上述の通り本作ではそれがポジティブに描かれているので安心して見ることが出来たのが大きいですね。彼の家族像はこういった物語では理想として綺麗に映るのだと感じました。

 バイスの方は一輝たちの会話にいちいち茶々を入れてくる緩さもあって前半は愉快でしたが、未来での戦闘であっさり裏切ろうとする辺り悪魔としての根は健在なのだと再確認しました。それでも飛羽真に約束の大切さを教えられ(プラス未来の狩崎からのご褒美のバイスタンプもあって)、「約束を守ると良いことがある」と学んだオチに微笑ましくなりました。まだまだ油断なりませんが、見ていて楽しいキャラだと思います。

 

 

 神山飛羽真/仮面ライダーセイバー

 『セイバー』の主人公。冬映画における先輩ライダーの頼もしさは彼においても健在で、登場が遅かったものの出てきた時の安心感は凄まじかったです。特別編で一輝と面識が出来たからかすんなりと協力してくれたので見やすかったですし、縁の下の力持ちとして何かと一輝たちリバイス勢を支えてくれた印象を受けます。

 何と言っても未来での奮闘ぶりが良かったですね。散々触れたバイスへの説教もさることながら、デビルライダーに何度も追い詰められながらもその度に奮い立って仲間を激励する姿には感動しました。本編で見せてくれた立ち上がり続ける飛羽真のヒーロー像が、最高の形で描かれていたと思います。未来での戦い以外では苦戦らしい苦戦が無かったことも含め、彼が先輩ライダーに相応しい貫禄を身に着けたことに感慨深くなりました。

 

 

本郷猛/仮面ライダー1号

 全ての始まり、最初の仮面ライダー。龍之介の過去回想といった場面でのみ登場し、物語そのものには関わらなかったのですが、彼の成長に大きく影響を与えていたのが面白かったです。「元々は敵と同じ存在である者が、人類の自由と平和のために戦う」という仮面ライダーの要素を受け継ぐものとして、何より龍之介が息子と共にヒーローになるまでの過程には必要不可欠な存在だったと思います。

 そしてこれまでの弘、本郷ではなく、息子の真威人本郷だったのが特徴的です。真威人さんの演技は当時の本郷らしさを出すためにちょっと無理をしている感がありました(頑張ってドスの利いた喋り方にしているのがどこか微笑ましい)が、当時の本郷猛を今風に表現していたものとしては十分に素晴らしかったと感じました。ラストシーンなどで時折弘、さんの面影を感じさせる表情を見せてくれたのもグッド。新しい1号ライダーとして、これからも本郷猛を演じていってほしいところです。

 

 

 というわけでビヨジェネ感想でした。非常に面白かった反面シンプル故にどう書けばいいか悩みましたが、何とかまとめきれました。去年の内には書きあげられなかったものの、新年1発目の感想記事として無事投稿出来て良かったです。これを機に続々と他作品の感想も書いていきたいところ。

 あとはやはり現在放送中のリバイス本編が気になりますね。去年は牛島家といった様々な謎と不穏要素を残していった分、2022年ではどんな物語が展開されていくのかについてかなりドキドキしています。映画で明るい家族を描いた中で、テレビシリーズではどんな歪な家族を描いていくのかおっかなびっくりしながら見ることになりそうです。50周年を無事終えた仮面ライダーが、この先どう広がっていくのか非常に楽しみです。

 

 

 ではまた、次の機会に。