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Fate/strange Fake-Whispers of Dawn- 感想

偽りの聖杯戦争の幕が開く

テレビシリーズも決定してワクワクしかねぇぜ!

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 Fateシリーズの一角である小説『Fate/strange Fake』のアニメが7月についに放送されました。元々は去年の大晦日特番にて放送する予定だったはずが延期し、ここまでかかってしまった結構道のりが大変だった作品。延期が発表された時は残念に感じ、あれからずっと楽しみにしていたので、約半年後にようやくアニメが見られることが何よりも嬉しいです。そして原作を読んでいた頃からあの「偽りの聖杯戦争」が映像化されたらどうなるのか?という期待を抱いていましたが、それがようやく叶えられることにも大きな喜びを覚えます。(感想の方は遅れに遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした

 

 まぁそうして見た本作ですが、何と言っても作画のクオリティが凄まじいの一言。ストーリー序盤の目玉とも言えるギルガメッシュVSエルキドゥの対決を迫力ある構図と動きで見事に魅せてくれました。おかげで原作でも語られていた大質量のぶつかり合いともいえる戦いを思う存分堪能することが出来ましたね。天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)と人よ、神を繋ぎ止めよう(エヌマ・エリシュ)の激突はもちろんのこと、その直後のギルの宝具乱射もとてつもない量を披露してくれたのも衝撃的でした。

 そんな目玉シーン以外でもヌルヌルした作画が見られましたが、基本は普通といったところ。しかし各キャラの見せ場など、肝心の場面では気合を入れているかのように感じられたことには好感が持てますね。(個人的には署長が二十八人の怪物(クラン・カラティン)を披露するシーンがここすきポイント)原作ファンが見たい部分を優先して見せてくれている、といった印象を受けますし、その辺りの需要をわかってくれているのは何より嬉しいです。

 ストーリーに関しては基本的な要点を抑えているものの、これだけだとわかりにくいのでは?と思う点も散見されました。聖杯戦争や各陣営の関係性などの説明を端折っているいるような面も多かったです。やはりというか何というか、地の分で重要なことを説明する小説をアニメ化する際の問題が露骨に出てしまったように感じます。雰囲気そのものはある程度掴めますが、本作は原作を既読済みの方が理解が深く楽しめるファン向けのアニメ化なのでしょう。とはいえFateシリーズをある程度知っていれば楽しめるくらいの仕上がりで好評で良かった良かったとちょっとホッとしているところです。

 

 では以下、各陣営に関する所感です。(アニメ化されていない部分や真名についても触れているので閲覧注意!!

 

 

アーチャー陣営

 みんな大好き金ぴかことアーチャー「ギルガメッシュ」と舞台であるスノーフィールドの先住民代表「ティーネ・チェルク」の陣営。本作序盤の実質的なメインキャラであり、本作の序盤は親友エルキドゥの参戦でかなり舞い上がっているギルが特に見ものとなっていますね。召喚された直後は不機嫌だった男の親友と相対した時の気さくな態度は見ていて何とも微笑ましいです。そしてティーネのサポートもあってかつてないほどの本気を見せるシーンも実にド派手で惚れ惚れさせられました。(天地乖離す開闢の星を撃つ際の詠唱が『FGO』第1部第7章の時のものだったのも良き)慢心王ではなくなり、かつてないほどノリノリになっているギルガメッシュはかなり新鮮です。

 マスターのティーネは元々ギルガメッシュを召喚したマスターから令呪を奪った存在ながら、ギルガメッシュから大分優しく扱われているのが特徴的。ギルが子どもには優しいという面もあるのでしょうが、それ以上にティーネが初対面からしっかり礼を尽くしていた大きいでしょうね時臣との差はやっぱり「面白いかどうか」なのかな……今回はほとんど出番がなかったものの、この先ギルに言われた通り彼の王としての威光に尊敬の念を抱いていくのでそれを見るのが結構楽しみです。

 

 

バーサーカー陣営

 厳密にはジャック・ザ・リッパーではない何者かのバーサーカージャック・ザ・リッパー」とエルメロイ教室の問題児「フラット・エスカルドス」の陣営。本作屈指の聖杯戦争エンジョイ勢にしてギリギリ癒し枠です。そもそもフラットが「聖杯を見たい」「英霊と友達になりたい」という動機で参加しているのでかなりコミカルに描かれているのが面白いですね。とはいえ『エルメロイ教室の事件簿』でも度々見せていたフラットの異常性が垣間見えるので、決してただのコメディリリーフではないことには注意したいところ。おもちゃのナイフで召喚したり令呪の構造を一瞬で理解したりと結構ヤバいよなこいつ……バーサーカーも狂戦士のクラスに反して理知的で、どんな姿にもなれる特性もあって結構なジョーカーとなっています。

 またフラットの先生である「ロード・エルメロイⅡ世(ウェイバー・ベルベット」の苦労人ぶりが見られるのも魅力の1つ。フラットの予想外の行動に頭を悩ませて悪態をつく、そんなロードの可哀想な一面もこの陣営のコミカルぶりに一役買っていると思います。(あとグレイがちょっとだけ出てくれたのが嬉しい!)一方で時計塔側から今回の聖杯戦争を探るポジションになっており、色々と見逃せない陣営になっていると言えるでしょう。

 

 

アサシン陣営

 山の翁の教団に所属していたアサシン「狂信者の女性」と6つの魂と姿を持つ死徒ジェスター・カルトゥーレ」の陣営。まぁ陣営と言っても召喚の儀式中にアサシンがジェスターとその部下をまとめて殺したので、単独で動くアサシンをジェスターがストーカーする、という奇妙な構図が形成されています。ジェスターに関しては型月世界の吸血種である死徒聖杯戦争のマスターになる、というのはありそうでなかった設定なので、個人的にも結構注目しているマスターだったりします。ただこいつ早々にアサシンの心を壊すことに執着している変態なんですがね……

 アサシンの方は教団への信仰心のあまり、歴代ハサンを狂わせた聖杯戦争そのものの破壊を目指す極端なキャラとして描かれているのが特徴。異常ながらも一途な信仰心を持つ一方、それ故にハサンになれなかったという背景が何とも悲しい人物なので結構可哀想に思えてきます。(それはそれとしてハサンへの疑いそのものを断とうとする側面はヤバいと思いますが)歴代ハサンの宝具をほぼ全て再現出来る反則ぶりながら、どこか危うい人物なのでそこまで強くなさそうに見えないのも魅力となっているといった感じでしょうか。

 

 

キャスター陣営

 本物を越える贋物を生み出す劇作家のキャスター「アレクサンドル・デュマ」とスノーフィールドの警察署長を務める「オーランド・リーヴ」の陣営。この陣営は警察官にキャスターが造り出した宝具を装備させて「人間の手による英霊の打倒」を目指しており、こちらもかなり異質な雰囲気を放っています。(上述でも触れましたが、そうして結成された「二十八人の怪物」をお披露目するシーンの物々しさが何とも印象的)しかしキャスターのわがままもあって威厳を保つのが中々上手くいかないのはご愛敬

 一方で署長はこの偽りの聖杯戦争を始めた黒幕側の人間である点もこの陣営の特徴。このような戦争を仕掛けた側にして一般人の被害を好まないなど、戦争を始めた側とは思えない面を覗かせている署長のはっきりしなさにはどこかモヤモヤを抱えてしまいます。「フランチェスカ・プレラーティ」との会話は、この陣営の黒と白が交じり合ったような感覚を覚えましたね。

 

 

ライダー陣営

 ありとあらゆる「」の概念がサーヴァントと化した最悪のライダーとそんな災厄を夢の中で召喚してしまった少女「繰丘椿(くるおか・つばき)」の陣営。イレギュラーの中でもトップクラスにイレギュラーな陣営であり、聖杯戦争のせの字も知らないのがかえって厄介です。椿は性格こそ普通の女の子ですし、彼女の怯えに反応してギルとエルキドゥの戦いに割って入れる辺りに、このライダーにはまともな思考が存在していないことが読み取れます。

 そんな椿周辺の描写に関してですが、やはり全体的にホラー調なのが印象的でしたね。夢の中で椿は優しい両親に愛されているが、実際はライダーが病で親たちを操り人形にしているからであり……という構図にはゾッとさせられます。穏やかそうに見えて体に謎の斑点がのぞくなど、個人的には映像化されたシーンの中で特に見入ってしまいました。聖杯戦争に積極的に関わらない分、独立した恐怖を見せてくれる存在になっていると言えます。

 

 

ランサー陣営

 生前のギルガメッシュの盟友である「エルキドゥ」と召喚の触媒として作られた狼の「合成獣(キメラ)」の陣営。貴重なエルキドゥ本人の登場(『バビロニア』に出ていたのはキングゥでしたし)と言えるので、個人的にもかなり興奮させられる陣営でもあります。ちなみにエルキドゥが静かに召喚されるシーンは、かえって彼の神秘性を表しているかのようでちょっと興奮させられました。

 エルキドゥに関してはやはり上述のギルガメッシュとの対面時にて、彼とはまた別にテンションが上がっているのが丸見えで微笑ましかったです。基本的にはマスターの狼の意思を尊重しているものの、親友と戦いに誘われたらついそっちを優先してしまうお茶目なところにはちょっと笑ってしまいます。そう考えるとこの陣営も負けず劣らずエンジョイ勢なのかもしれませんね。

 

 

 他にも黒幕の1人である「ファルデウス・ディオランド」や映像媒体でついに本格登場した魔法使い「キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ」、そして存在しないと見せかけて……のセイバー陣営など気になるキャラクターが多数登場していますが、今回はここまで。とにかく登場キャラが多くて全てを把握するのはかなり疲れますが、その分群像劇としての本作の魅力がよく出ていると思います。ここから先はさらに多数のキャラが入り乱れるので、結構楽しみです。

 そしてそんなFakeも1回限りのアニメでは終わらず、連続テレビアニメとして後々放送することが決定したのが喜ばしいです。エイプリルフール企画でさわりのみ作られたものの、実際にシリーズ化した本作の原作小説と似たような道を辿っているようで余計に心躍ります。続きはいつ見られるかまだわかっていませんが、それまでを楽しみに待機していく所存です。

 

 

 ではまた、次の機会に。