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ウルトラマンブレーザー 第7話「虹が出た 前編」感想

恵みの雨か

滅びの嵐か

まさかのゲント隊長曇らせ回だったでござる

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  • その曇る表情が見せるものは……

 前後編の前編である今回のブレーザーは、初っ端から「逆さ虹」という自然現象発生の報告からスタート。その怪現象の正体を探る中、「横峯万象(ヨコミネ・カズノリ)」教授とゲント隊長の朗らかな関係が描かれていました。怪獣研究の権威である教授の人柄や研究を嬉々として話す隊長の様子がまず印象的で、彼のフランクなキャラと相まって教授との仲の良さを自然と想像することが出来ましたね。実際前半で釣りの席に同伴するシーンでは、冗談や皮肉を交わしつつも気兼ねの無い間柄が築かれていることが察せられます。とはいえ、この時点から隊長は教授に何かしらの目星を付けていたようですが……

 そんな前半の不穏ながらも微笑ましいやり取りを終えてからの、教授の真意が明かされるシーンは一転してもの悲しいものがありました。怪獣を排除する人間を傲慢とみなし、ニジカガチによって全てをリセットしようとする教授の考えを否定する中、ゲント隊長の見せた辛そうな表情はもう見ていられなかったです。「初めてです、先生の抗議が面白くなかったのは」というセリフからも、恩師に対する失望や憐れみ、その他様々な感情が読み取れました。誰に対しても親しげながら、目の前の仕事や使命を優先出来る隊長の性格故の悲哀がここに込められていたと思います。その後も身内が起こした事件ということもあっていつになく必死でしたし、隊長の曇りっぷりを心配せずにはいられなくなる回でしたね。

 

 

  • その考えに至らせたものは……

 そして今回のゲストキャラである万象教授は、ウルトラマンシリーズでも度々登場する「怪獣や自然優位の考え」を持つ人物でした。怪獣との共存そのものは確かに理想的ですが、それがこじれにこじれて人間そのものを害悪とみなすに至るのはある意味で見慣れたものです。怪獣との調和を重視するあまり人間を軽んじる極端な思想は過激ながら、怪獣もまた1つの生命として見てくれている点では個人的に好感が持てますね。(とはいえニジカガチを利用している教授もまた、彼が嫌う「自然を意のままにしようとする傲慢な人間」そのものになっているのが皮肉に満ちていますが)

 とはいえ教授そのものにも何かしらこう考えざるを得ない出来事があったらしい描写がチラホラ見られたのが気になりますね。ニジカガチを蘇らせるために腕に謎の腕輪と痣を身に着け、不思議な力を行使するまでに至る経緯は確実にあったはずです。それが今回明かされた教授の幼少期の過去から来ているのか、それとも別の要因があるのかはまだ不明。ですがゲント隊長との関係からして決して悪人ではないことも事実。現状本来の人物像があまり描かれていないので掴みどころがありませんが、後編では教授の心のうちなどを掘り下げていってほしいところです。

 

 

  • 畏れ敬え、天より禍福をもたらす神の御身を

 富士の樹海より目覚めた怪獣「天弓怪獣 ニジカガチ」。本作の世界において古来より「虹蛇神(にじかがち)」伝えられてきた神とされる存在です。虹夏ガチ勢ではない。乾いた大地に恵みをもたらす神と感謝される一方で、邪な心に対しては嵐と共に現れて全てを奪い去る荒神として恐れられてきたとのこと。これまでもゲードスやドルゴといった伝承上の怪獣が出てきましたが、どこか可愛げがあったあちらと比べると生物らしさが全く感じられなかったのがまた不気味です。

 見た目はオーソドックスな二足歩行スタイルながら、全身がグレーの装甲でおおわれている武骨さがまず目に留まります。そして頭部は顔の意匠が全く存在しない兜のようなプロテクターを纏っており、その風貌は生物というよりも鎧武者の出で立ちです。さらにその頭部のプロテクターが開くことで拝める素顔は、名前の通り蛇を思わせる凶悪なもの。地味な装甲の色とは打って変わってカラフルな色合いをしていますが、それがかえってこの怪獣の毒々しい攻撃性をより高めているように思えます。

 劇中では復活して周囲の気圧を操作(急な気圧の変化で周囲の人たちが高山病のような頭痛に悩まされるのが妙にリアル)し、大気を吸収して雨を作り出す業を早速披露。さらには日本列島周辺に台風を7つも発生させるという、並の怪獣でも操作不可能な自然現象まで操るぶっ飛びっぷりまで見せてきました。この生物の範疇を超えた描写の時点で、これまで本作で登場してきたどの怪獣よりも強大な存在であることが印象付けられましたね。

 そして戦闘ではアースガロンといったSKaRD側の攻撃を受けてもビクともしない防御力を発揮していました。ブレーザーの激しい攻撃にもほとんど動じず、逆にこちらの腕や尻尾の一振りでブレーザーを転がす膂力はまさに圧倒的。極めつけは頭部を露出させた状態で放つ虹色の光線で、その威力たるやブレーザーのスパイラルバレードと相殺するほどのもので衝撃度も半端なかったです。そんな強力な光線を連射出来る点も驚異的で、中ボスに相応しい力の差を思い知らせてくれました。果たしてこの怪獣に対抗する術はあるのでしょうか。

 

 

 というわけで7話の感想でした。かつてない強敵が現れウルトラマンが一度負けてしまうという、シリーズの前後編のお約束を見事にやってくれたのが素晴らしかったですね。それでいて上の教授との対面シーンやニジカガチの神とも言うべき存在感など、本作ならではの要素も盛り込んでいて実に楽しい前編でした。

 また今回は教授の過激さとニジカガチの強さが印象に残りましたが、同時にブレーザーの方も見逃せません。ニジカガチが放った光線を前にして一度消滅・撤退するシーンで、個人的にブレーザー自身の意志が見えました。というかあの場面はゲント隊長を助けるため、ブレーザーは敢えて変身解除したように思えるんですよね。やはり彼もまた宿主を気遣う精神があるということでしょうか。

 ともかく何かと意志らしきものを見せてこなかったブレーザーがようやくその片鱗を出してきたのは興味深いところ。ずっと気になっていたブレーザーの正体に近づく一歩が踏み出された気分です。この調子でブレーザーには一方通行なやり取りを止め、ゲント隊長としっかり対話する姿勢を見せてほしいですね。

 

 

 さて次回は前後編の後編。ブレーザーでも倒せなかったニジカガチ打倒のため、SKaRDがいよいよアースガロンの新装備を導入することになるようです。今回も名前がチラッと出てきた装備ですが、未だに調整中の兵器がどこまで通用するのかが不安ですね。神の如き脅威に、どのような攻略をみせてくれるのでしょうか。

 またゲント隊長と万象教授の対話がどうなるのかも気になるところ。人間の文明を一度負わせようとする教授に対し、隊長の言葉は届くのか……隊長をこれ以上曇らせないためにも、教授には何とか生きて償う道を選んでほしいところですね。

 

 

 ではまた、次の機会に。