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ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突 感想

俺たちが、行く。

星を胸に宿して 神話となれ

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 2023年に放送開始された『ウルトラマンブレーザー』。今年の1月に無事大団円を迎え、ウルトラマンシリーズの中でもかなりの反響を呼びました。僕も本作の1話に衝撃を受け、その後凄まじいこだわりで描かれた内容に半年間魅了され続けましたね。

 そんなブレーザーの映画がついに公開され、映画館に足を運んだのですが、シンプルな怪獣特撮映画とも言うべき内容にテレビシリーズとはまた違った興奮を覚えました。小難しい話や展開は一切なく、ひたすらに怪獣との決戦や親子のストーリーを魅せていく内容は見事の一言。何よりブレーザーで観たかった要素がてんこ盛りだったので、惜しいところもあると思っていた身としても満足度の高いものに仕上がっていたと言えます。というわけで今回はそんな劇場版ブレーザーの感想を書いていきたいと思います。

 

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • 大怪獣決戦を楽しむ

 まず本作は映画としての壮大なストーリーが繰り広げられるわけではなく、むしろちょっとした単発エピソードの拡大版とも言える内容が描かれていたのが特徴的。頻発する怪獣災害の原因と思われるナノマシンダムドキシン」を巡るSKaRD隊員たちの戦いがシンプルにまとめられており、謎の宇宙人襲来→その衝撃的な正体→最強怪獣・ゴンギルガンとの決戦とスムーズに進んでいくので非常に見やすかったです。(最も暗躍するダムノー星人から感じる不審な要素が中盤にて……という伏線はしっかり存在しますが)後述の親子の関係など以外に気にするような要素もないので、ストレスフリーで怪獣に立ち向かうブレーザーとSKaRDを注目出来ましたね。

 アクション面に関してもテレビシリーズの迫力はそのままにスケールアップを果たしたような印象でした。冒頭でのタガヌラーズグガン戦の時点からド派手なカメラワークが炸裂し、その後のダムノー星人とのいざこざ、そしてゴンギルガンとの決戦でよりインパクトのある光景が連続で映し出されていたのが目に焼き付いています。キーパーソンである「マブセ・ユウキ」を救出するまでの作戦も第1話を彷彿とさせる降下構図でグッときますし、数分に一度の頻度でダイナミックな絵面が展開されていたと言えます。被害の規模や世界的な危機感に関してはテレビシリーズのヴァラロン辺りには劣るかもしれませんが、戦闘時のワクワク感は決して引けを取らないものになっていました。

 戦闘シーンでのブレーザーの活躍はもちろんのこと、作品のアイドル・我らがアースガロンがテレビシリーズ以上に活躍したのも見逃せないポイント。従来の立ち位置であるブレーザーのサポート役に留まらず、ゴンギルガンの弱点を探し出しエミとヤスノブの援護射撃に繋げる攻撃を行うなど、これでもかと的確な行動でSKaRDを引っ張っていきました。中でもゴンギルガンに向かい合ってのアースキャノン発射は最高の一言。相手側も口から破壊光線を出す直前の状況で、両者一歩も引かずにゼロ距離で撃ち合う構図は惚れ惚れするほかありません。テレビ本編ではどこか惜しいと思っていたアースガロンの多大な戦果を用意してくれたという点でも、本作は本当に面白かったと思います。

 

 

  • 孤独を癒す繋がりの戦い

 ブレーザーといえば「コミュニケーション」をテーマの1つとして描いていたのが特徴的ですが、本作でもそのテーマに沿ったストーリーを発揮。特に親子や家族の関係性をフィーチャーした内容には、個人的にテンションが上がりました。まずゲストキャラであるマブセ親子の関係は典型的な放置家庭で、それに対する息子のユウキくんの寂しさが事件を引き起こしてしまう展開はベタながら胸にくるものがありましたね。(ユウキくんの政治的な批判も孤独の裏返しで締めるのが面白いところ)仕事に追われながらも理想的なヒルマ家があったからこそ、この親子のディスコミュニケーションが響いてきましたし、それを改善させるための働きをするゲント隊長に感動したと言えます。

 またゲント隊長は隊長で妻のサトコさんの不審な行動とそれを不安に思うジュンくんで、家庭の不和の可能性を示唆していたのが面白かったポイント。結果的には全くの杞憂だったのですが(この辺りは見ている内に真相に気が付きますね)、SKaRDとしての職務を全うする中でジュンを信じて後を託す隊長のやり取りはハラハラさせられるものがありました。SKaRDの隊長として以上に、ヒルマ家の父親としての側面が強調されていたヒルマ・ゲントという人間に魅入られましたね。妻子を持つ隊長として家庭の話をもっとやってほしい!と個人的に想っていたので、これらの要素を押し出してくれたことには感謝しかありません。

 そして映画のボス怪獣であるゴンギルガンですが、ユウキくんの感情を呑み込んで暴走した理由に彼の“寂しさ”とリンクしていった仮説を描いてたのが興味深かったですね。怪獣の死骸から生まれた命を持たない生物故に生まれながら孤独を持っており、ユウキくんの寂しさに共鳴していったと考えると結構辻褄が合う気がしてきます。同時に命を持たないからこそ生命や感情を欲していたという可能性も、コミュニケーションを描いている本作らしい怪獣だと思いました。(ただこれらの要素を全て劇中の人物たちが口頭で説明してしまう演出には何だか野暮に見えてしまうなぁ……などと思ったり)ともあれ寂しさから始まった事件を、家族や仲間の繋がりを持って解決していくブレーザーという作品の懐の深さを感じ取った次第です。

 

 

 本作は他にもちょくちょく入るギャグが印象に残りました。満を持してのブレーザー変身時の後ろからこっそり覗き込むシーンや、戦い終わって倒れるアースガロンをブレーザーが慌てて抱えるシーンなど、ウルトラマンのコミカルな要素は健在。それ以外にも様々なギャグが挟まれており、一貫して緊迫感溢れる本作の空気を少しだけ和やかにしてくれていましたね。個人的にお気に入りなのは「子どもの成長は早いですよ……」→「でもいきなり50mになるとは思わないじゃないですか!?」で、ユウキくん大ピンチの状況ということもあってこれは笑っていいものなのか……?とちょっと困惑するところがあったり。

 

 

 というわけで劇場版ブレーザーの感想でした。いやぁ終わった時の満足感は良かったですね。大きな感動や興奮は少なかった分、安定した内容で「そうそうこういうのでいいんだよ」と頷かせてくれる映画だったと感じています。ブレーザーという作品のポテンシャルの高さを最大限活かし、大スクリーンで楽しめる迫力満点の怪獣映画として仕上げてくれていたので本当に面白かったです。

 同時にブレーザーの物語はこれで終わりという寂しさも抱いてしまいます。サトコさんの第2子の話で祝福ムードになるラストにウルっときながら、映画館が明るくなっていった時の余韻はちょっと悲しかったです。映画でもゲント隊長が最後まで正体バレしなかったなぁ、などと考えながら、ロスを激しく感じてしまいましたね。しかしそれだけブレーザーという作品を楽しんでいた証とも言えますし、次に始まるであろう新ウルトラマンを楽しみにしつつ、この物語の終わりを祝福したいと思います。

 

 

 ではまた、次の機会に。