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ウルトラマンブレーザー 感想(総評)

行くぞブレーザー!!

個人的にもトップクラスに楽しめたウルトラマンだった

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 2023年に始まったウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンブレーザー』。『ウルトラマンX』や『ウルトラマンZ』などと手掛けた田口清隆氏を監督に据えた本作は、いわゆる「ニュージェネレーション」と呼ばれるシリーズのフォーマットに則らない独自性を貫いたことで話題となりました。野獣のような立ち振る舞いのウルトラマンや新規怪獣の大量投入といった要素も特徴的で、僕自身リアルテイストのストーリーにも毎回新鮮な気持ちで楽しめましたね。

 

 

 先に評価点について語りたいと思います。

 本作は何といってもブレーザーが「喋らないウルトラマン」であることが大きなポイントとなっていました。最近では有名声優を起用し一体化した人間と会話するウルトラマンも当たり前になってきた中、敢えて時代に逆行するかのように言葉を発さずにいる存在として主人公のヒルマ・ゲントと一体化を果たしたウルトラマンを出してきたことに驚かされました。それどころか昔のウルトラマンならほんの少しでも地球人の言葉を発する中、このウルトラマンは全く喋らない。さらに戦闘中は野生児のように吠えるスタイルと相まって歴代のウルトラマンの中でもかなり異質な存在に仕上がっていたと思います。

 そんなブレーザーとゲントを主役とした物語のテーマは「コミュニケーション」。異なる種族がわかりあうという過程は過去作で散々やってきたというのもありますが、本作はそこに“未知”を加えることで一層深いものとして描いていました。上述のブレーザー然り、終盤物語に関わってくるV99然り、そのほとんどが何者なのか劇中であまり語られず、視聴者にも詳細はわからないまま話が進んでいく内容は結構斬新です。そのため見ているこちら側もブレーザーやV99は何なのか?という疑問に駆られ、そこから未知なるものへの恐怖を抱いていく過程を味わえました。

 それらの未知に対する様々な感情を感情を制御しつつ、「知ろううとする」「通じ合う」ことに重きを置いた本作のコミュニケーションは中々に秀逸でした。敵と思われたV99も相手のことがわからない怯えから攻撃していることを知ったうえで、争う意志がないことを伝え回避する最終回はまさにそれを表していたと言えます。そしてゲントとブレーザーの関係もまた同様で、最初は何を考えているのかわからなかったブレーザーがゲントと心を通わせていく過程は特に丁寧に描かれていました。コミュニケーションはただ話すだけではあらず、言葉を交わすとも通じ合えるというメッセージの強さには大きく頷かれるものがあります。

 

 テーマ以外だと、バラエティ豊かなエピソードの中で各人の掘り下げやリアリティ志向の強い作風が特徴となっています。シリアスからコミカルまで幅広いのはウルトラマンシリーズの伝統ですが、本作はその中でも特にメインキャラを据えた単発エピソードが多かったですね。毎回誰かしらが主役として描かれ、それぞれのキャラクターがよく表れながら各エピソードの“味”を魅せていました。『ウルトラQ』を大きく意識した9話や冴えないサラリーマンが主役の22話など、小ネタも多くて楽しかったです。

 また全体を通して社会人としての苦悩や葛藤が数多く見られたような気もします。所属する防衛隊と上層部の軋轢のような大きな問題から、実家の親との折り合いをつけるといった個人的な悩みまで、大人が抱える苦しみについて幅広く取り扱っていたと感じました。この描写は上のコミュニケーションのテーマにも通じるところがあり、それらに対して自分が相手に踏み込んで解決へと導いていく展開でスッキリさせてくれるのでこちらとしても安心して見ることが出来ましたね。

 さらに上述のV99の情報を隠蔽する上とそれを暴こうとする面々、といった感じに中盤からのミステリーやサスペンスの要素も見逃せません。これらは断片的に明かされていく情報によって視聴者が考察を広げていくという楽しみに繋がっており、話が進むにつれ毎週の情報開示が楽しみになっていく過程は実に面白かったです。サイドエピソードを充実させつつ、本筋はどこか仄暗い駆け引きに話を持っていく構成は本作の大きな魅力となっていました。

 

 そしてアクション・特撮面に関しては、まず新規怪獣の多さに驚かされましたね。過去作の怪獣の再登場が当たり前になってきた近年としては珍しい体制で、序盤から新たな怪獣たちが次々と出てくる光景に目を輝かせることとなりました。全話数の約半分を占める12体の新怪獣は、従来のシリーズらしさを取り込んだものや独特なものまで個性豊かなものばかり。再登場怪獣たちもわずかながらの登場ながらいずれも凝った登場を果たしており、古参のファンならニヤリとくる演出も見られました。見たことのない怪獣も、見覚えのある怪獣も合わせて魅力を引き出してくれていたと考えます。

 また軍事シーンの凝った要素も印象深いです。こちらは田口監督の作品では割と恒例となっており、ウルトラマンらしい非実在性と上手いこと共存させているビジュアルには毎度のことながら感心させられました。アースガロンはまさにその代表で、如何にも玩具のような外見と色合いながら軍事描写と違和感なく溶け込んでいるのは見事の一言。そのうえ体を捩じったりするブレーザーの奇抜な動作も交わっており、異質な宇宙人と共闘する特殊部隊の絵面が非常にマッチしていました。同時にそれらが合わさって緊迫感のある光景が生まれていることにも驚愕させられます。夜景での戦闘など絵になるアングルも多く、戦闘シーンではよく息を飲むことがありましたね。

 あとは余談ですが、放送時に25周年を迎えた『ウルトラマンガイア』オマージュと思われる要素もいくつか確認出来ました。怪獣が地球の防衛本能の如く外敵に立ち向かう描写はもちろんのこと、シーガル・ファントップの出撃や特別総集編のパルなど様々な形でガイアを彷彿とさせるものにどこか注目してしまいます。敢えてニュージェネガイアをやらなかった分、こうしたリスペクトを魅せることでファンを喜ばせる采配は悪くないと思いますね。

 

 

 

 

 さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。

 さて本作は上述の通り単発のエピソードの豊富さが魅力的でしたが、その結果本筋の進展がイマイチ遅かったのが気になりました。特に終盤は非常に慌ただしく、これまで開示していなかった情報をまとめてやる辺りでひっ迫感を覚えましたね。V99の正体などについても正直最終回まで引っ張っておくほどのことはなかったとは思うので、もう少し早い段階で真相を明かしつつゆっくり話を進めておいてほしかったと思わなくもありません。(ただこの辺りの急展開はXでも見られましたし、田口監督の手癖のようなものなかなぁ……などと勝手に個人的解釈しているところもあります)

 またブレーザーの正体や掘り下げについても消化不良に感じました。そもそもブレーザーが地球に訪れたワームホールの事故についてはほとんど語られておらず、彼が何のために来たのかという疑問が結局のところ残ってしまっているように感じます。そのせいかV99との繋がりも薄く、ブレーザーのキャラクターそのものに劇的なドラマが生まれにくくなっていたのも痛かったですね。その辺りは仲間たちからの正体バレ含めて劇場版でやる可能性もなくはないので、個人的にも期待したいところです。

 

 あとはメインの登場人物の描写・掘り下げに関してはいくつか不満が残るポイントがありました。まずSKaRDメンバーに関してですが、本編での扱いにどこか格差を感じる作りになっていたように思います。本筋においてはゲント以外だとエミばかりが目立っており、ヤスノブやアンリはメイン回を除けば影が薄い点が気になりました。エミは父親と過去の事件の因縁があり役割も唯一無二ということで動かしやすかったのでしょうが、終盤はほぼ彼女の独壇場になっている印象がどうしても否めません。どうせならヤスノブやアンリたちにももう少し出番をわけてほしかった、と言いたくなってしまいますね。

 ゲントに関しても防衛チームの隊長という特徴はよく出ていた反面、家庭を持つ父親としての描写が不足していたように感じます。そもそも妻と息子の出番が非常に遅く、彼が家庭ではどのような人物なのか中々掴めなかったことにはヤキモキさせられましたね。(そのため序盤では視聴者の間で「家族は既に故人であるかも」なんて噂も持ち上がるほどでしたし)いざ家庭の様子が描かれてからもそちらが描かれることは数回といった程度で、隊長と父親の二足の草鞋というキャラクターとしてはアンバランスになってしまったと言えます。息子のジュンなどは短い出番ながら興味深いキャラクターだったので、彼の授業参観に出席出来るかどうかといったエピソードも欲しかったとつい思ってしまいます。

 

 戦闘に関してはやはりアースガロンの勝率についてはちょっと引っかかりましたね。最後まで単独で怪獣を倒すことがない点でどこか地味になってしまったイメージもあります。アースガロンの活躍については要所要所でブレーザーをサポートしたり最終回での対話システムの活用など様々なあるのですが、戦闘でも何かしらの見せ場が欲しかったことも本音ではあります。個人的にはそこまで批判することではないと思うものの、アースガロン本体に華々しい白星があれば文句なしだったかもしれません。

 あとはブレーザーのフォームチェンジなしを貫いた姿勢はお見事だと思う一方、現代だとどこか物足りなく感じてしまうところもありました。スパイラルバレードやレインボー光輪といった必殺技を様々な方法で魅せていたものの、絵面そのものはやはり代わり映えがしなかったのも事実。ブレーザーの驚きのアクションに頼りすぎな面もあったので、より多彩な技を用意するべきだったかもしれません。とにかく奇抜で独特な宇宙人として魅力的なブレーザーですが、ウルトラヒーローとしては少々及第点だったかもしれないとも思えます。

 

 

 総評としては「手堅くまとまった優等生ウルトラマン」といったところでしょうか。初めて見る人にもおすすめかつ、昔からのファンからも満足のいく非常によく出来た作品に仕上がっていました。現代としてはどこか時代錯誤な面はいくつかあるものの、それがまた本作の個性に昇華されていたとも言えます。話題性もあって個人的にも毎週楽しみに見ることが出来ましたね。ニュージェネのお約束から脱却して、従来のウルトラマンらしさとこれまでにないウルトラマンを融合させた本作は本当に面白かったです。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

ヒルマ・ゲント

 本作の主人公。シリーズ初の隊長を務める主人公にして、テレビ作品としては珍しい妻子持ちといった点が大きな話題になりましたが、蓋を開けてみればそれ以上に自分を省みない「俺が行く」スタイルにハラハラさせられる人でした。頭の回転が速く優秀なばっかりに自分が行けば早いという結論に至りやすく、そのため容易く傷ついて周囲を心配させるところではウルトラ主人公でも結構な問題児だったと言えます。だからこそSKaRDの仲間やブレーザーたちとの交流を経て、彼らとの協力というコミュニケーションを獲得していくのが胸熱でしたね。
 自己犠牲精神を除けばフランクで親しみやすい人物として描かれていたのも好印象。隊員たちとも名前で呼び合う姿勢で連帯感を出し、そこから絆を育んでいく過程は見ていて癒されるところもありました。家庭を持つ者としてもぎこちなさを抱えながら息子や妻と触れ合う機会を見逃さない良きお父さんであり、おかげで愛着が湧いてくるキャラクターになっていましたね。最終回まで含め、そんな人望に熱いゲント隊長の魅力が本作を大きく引っ張ってくれていたと思います。

 

 

ウルトラマンブレーザー

 本作のウルトラマン。地球の言葉を話さず戦闘では雄々しく叫ぶだけと、従来のウルトラマンと比べても野性味あふれる存在感を放っていました。1話からビルによじ登ったり相手に飛び掛かったりといったアクションもあり、視聴者から「蛮族」と呼ばれていたのも納得ではあります。他にもイナバウアーからの槍投げや釣り、体を捩じらせるといった戦闘時の仰天アクションや、必殺技の攻撃性の高さもユニークで目を見張るものばかりでしたね。

 そしてゲント隊長とのコミュニケーションではまともに話せないせいで四苦八苦するものの、次第に心を通わせて良き相棒へと成長していく過程が魅力的。隊長の体を一時的に乗っ取ったりパンチで無理やり眠らせるなど強引な一面に笑ってしまいますが、それもまた彼のぎこちない優しさとして表れていました。最終回でのカタコトもそうした隊長への想いと優しさが込められており、本作のテーマを体現するウルトラマンとして興味深いキャラクターになっていたと感じます。

 

 

アオベ・エミ

バンドウ・ヤスノブ

ミナミ・アンリ

ナグラ・テルアキ

ハルノ・レツ

 SKaRDの仲間たちとその上司。本筋に大きく関わったエミと機械オタクのヤスノブ、パワー女子のアンリに気遣いの達人テルアキ副隊長と、それぞれの個性がよく出ているメンバーとなっています。彼らとゲント隊長を集めたハルノ参謀長も、厳しい物言いながら愛情と信念を感じさせる人物だとわかる描写にどこかフフッときました。いずれも本作を盛り上げてくれた良きメインキャラだったと言えますね。

 出番に関してはまぁやはりエミばかりが目立っている印象があります。そのせいで他の面々が割を食ったとまでは言いませんが、もうちょっと活躍させてほしかったかなと思わなくもありません。参謀長に関しても心情描写をもっと序盤の内から見せてほしかったですね。魅力的なメンバーだけに、もっと出番を!と望んでしまうところもあります。

 

 

アースガロン

 SKaRDの主力装備である特戦獣。怪獣らしいゴジラ体型と犬のような可愛らしさを混ぜ合わせたロボット怪獣として見事に活躍してくれました。怪獣撃破という意味では物足りなかったものの、防衛チームの戦力としてやるべき仕事はキッチリ果たしてくれたので力不足ではなかったと思います。装備に関しても換装兵装の多さが魅力となっており、それらが合わさっていくワクワク感もロボ好きとしてはたまらなかったです。

 あとはやはり中盤になってから会話用のAIが搭載されて、「アーくん」という愛称で親しまれていくのが面白かったですね。胡散臭いことで有名な石田彰さんボイスが無機質ながらどこか愛らしく感じるアースガロンの要素を押し上げており、おかげでSKaRDの一員としてのイメージが大きく備わっていたかと思います。それが最終回のV99との対話に繋がる展開も膝を打つほどのもので、コミュニケーションを助ける本作のMVPであることは間違いないでしょう。

 

 

 というわけでブレーザーの総評でした。ここ最近のウルトラマンの中でもトップクラスに楽しんだ作品だったので、個人的にもかなり気合いを入れて感想を書くことになりました。おかげで毎回毎回書き上げるのに苦労しましたが、それでも楽しかったと胸を張って言えますね。それだけにブレーザーが終わってしまったことへの喪失感も半端ないものの、そちらは来月末の映画で解消していこうと思います。そして夏から始まるであろう新ウルトラマンも楽しみにしつつ、今後もウルトラマンを堪能していく所存です。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

 

 

↓以下、過去の感想一覧です。

 

 

 

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