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ウルトラマンブレーザー 第15話「朝と夜の間に」感想

からすといっしょに かえりましょ

楽しさも悲しさも両方経験して、子どもは成長していくんだなぁ

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  • 少年たちのおかしなおかしな日々

 今回のブレーザーゲント隊長の息子・ジュンくんが主役のエピソード。クラスで浮いている男の子の「アラタ」くんに半ば強引につるむようになり、そこで描いた絵が実体化してしまう子ども目線の話が展開されていたのが印象的でした。本作が基本しっかりした大人たちが主体だったのもあり、快獣ブースカ』を思わせる子どもたちの無邪気なやり取りがメインの構成はかえって新鮮に映りましたね。そのせいか全体的にコミカルな描写も多かった気がします。(大きく実体化したガヴァドンをおしくらまんじゅうするフリで隠すシーンなどは、通りすがりの主婦のテンションもあってひと際おかしかったです)

 何といってもガヴァドンとのやり取りの微笑ましさが素晴らしかったです。未知の動物を拾ってどうやって世話をすればいいのか悩む子どもたち……そうしたシチュエーションは多く見られますが、ウルトラマンで久々にこれが見られたことにはちょっと嬉しくなりました。いつもの日々に怪獣という非日常が紛れ込み、それらと少年少女たちが試行錯誤の中で触れ合い仲良くなっていく過程は見ている側の心を温かくさせてくれます。他にもアラタくんの妹の「ツムギ」ちゃんが秘密基地のメンバーに途中加入していく点も、こうしたストーリーのお約束を守っていてニヤリときたり。

 あとはやはりジュンくんが童心に返っていく過程も注目ポイント。劇中でも語られていましたが、ジュンくんは家族の事情を察して遠慮する「我慢してしまういい子」として描かれている節が多く見られます。それ故友達とガヴァドンとの日々で少しずつやんちゃになっていく姿が見られて少し嬉しくなりました。そうして子どもが子どもらしくあれる、その大切さを描く本作の前半にとてつもない好感を抱くことが出来ましたね。

 

 

  • 切ない別れの果てに……

 その一方で子どもたちの青春の暴走のようなものも描かれていたのも忘れてはいけません。秘密基地の件やガヴァドンで叱ってくる大人たちに怒り、大人たちに捕まえられないほど大きいガヴァドンを作り出そうとする場面にはおかしさと困惑が同時に襲い掛かってきました。その結果ガヴァドンの出現で街に混乱が発生してしまい、彼らの浅はかさや後悔に繋がっていく物語の運びには唸らされます。大人たちをぎゃふんと言わせたかったものの、「こんなことになるなんて」と感じさせるジュンくんたちの反省もキッチリも描かれていたのもグッド。

 さらにアラタくんたち兄妹がもうすぐアメリカに引っ越してしまう話が展開され、ジュンくんがせっかく出来た友達と離れ離れになってしまうストーリーにもほろりときました。ガヴァドンを大きく描いたのも、お別れしてしまう前に何かしらのお別れを残しておきたい彼らなりの反抗だったのかもしれません。結局引っ越しそのものは止められなかったものの、アラタくんたちもガヴァドンのことも思い出に残った辺り、ここまでの出来事は決して無駄ではなかったと思います。

 秘密基地で繰り広げる楽しい時間が終わってしまう理不尽、それを止めるために精一杯反抗するものの何もならない無情感……そうしたものを味わいながらも、彼らなりの落としどころを見つけて大人になっていくような内容でした。総じてジュブナイルとしてハイテンポながら、ひたすら丁寧に作られているという印象を抱きますね。ジュンくんが両親ともしっかり向き合うラストからも、ほろ苦くも喜ばしい成長が感じられます。「子どもと怪獣のふれあい」が大好物な身としても、かなりグッとくる回として感動が止まらなかったです。

 

 

  • 奇妙奇天・摩訶不思議な夢想の化身

 ジュンくんたちの絵から生まれた「二次元怪獣 ガヴァドン」は初代『ウルトラマン』にて初登場した怪獣。映像作品に本格的な再登場を果たし、さらにウルトラマンとの戦いを繰り広げたのは実に57年ぶりとなります。アズールレーンをプレイしている指揮官諸兄には「新条アカネ(着せ替えスキン)の頭上にいるアレ」と説明すれば伝わるかと思います。生物らしさが感じられず、どちらかというと餃子や白いイルカのような印象を抱かせる平べったい見た目が珍妙で可愛らしいですね。このまさに「子どもが描いたゆるい怪獣」デザインが57年前の時点で生まれていたことにも改めて驚かされます。

 原典と同じく子どもの落書きが宇宙船を浴びたことで生まれた怪獣ということもあり、知性などはほとんど感じられない小動物のような可愛らしさがありました。絵柄によるものなのかジュンくんの性格に由来してのことなのかは不明ですが、攻撃性が全く感じられない無害な一面が強調されていたように思います。また紙に描かれた食べ物の絵を食するなど、本作で新たな生態が判明したことにが驚かされましたね。

 子どもたちによって巨大な姿で実体化しても寝ているだけでしたが、ここまでのサイズになると居るだけで大きな被害を被るのが厄介なところ。そして驚くべきことにその柔らかい体で大抵の攻撃を跳ね返す意外な防御力を発揮していました。ミサイルはポヨンポヨンと跳ねるわ、ブレーザーのチルソナイトソードの雷撃も受け流すわとまるで手応えが無かったことには唖然とするほかありません。原典ではある程度ボロボロになっていたのとは対照的に、攻撃能力は全く持たない分まさにぬいぐるみを殴っているかのような感覚を見せていたと言えます。

 あとは原典で登場した厳つい「ガヴァドンB」に変わらなかったことは意外でした。俗にガヴァドンAと呼ばれているこの形態のみとなったのは、ジュンくんやアラタくんたちがそれほど暴力的な怪獣をイメージしていなかったのもあるのかもしれません。そんな子どもたちの無邪気な想いが込められたガヴァドンは最終的に星になってしまいましたが、だからこそのロマンチックな情緒も感じさせてくれる怪獣になってくれましたね。

 

 

 というわけで15話の感想でした。いやぁ10話で鋭い指摘をしてくれた時から好きになったジュンくんの主役回として申し分ないストーリーでしたね。彼の子どもらしい一面を描きつつ、どうしようもない現実に打ちのめされながらも少しだけ前を向いていく過程に切なさが胸に込み上げてきて仕方がないです。アラタくんとはメールとかではなく手紙(海外だからエアメールになるのでしょうね)でやり取りする約束をするのも素敵ですし、夕焼けと共にガヴァドンと別れ、日が沈むんでからアラタくんたちと別れる流れも実に綺麗です。まさにサブタイにある「朝と夜(夕焼けから日が沈むまで)の間に」という話だったことが伝わってきました。

 他にもブレーザーの戦闘シーン(というほど戦ったわけではないですが)もいつも以上にコミカルで面白かったです。久々のスパイラルバレード大喜利まさかのUFOキャッチャーだったことに度肝を抜かれつつ、何もしても動じないガヴァドン相手にヘトヘトになっていく様子は非常にシュール。そのうえで子どもたちに「やめて」と言われる絵面には同情を覚えつつも笑いが止まらなかったですよえぇ。

 あと余談ですが、今回ガヴァドンを最初に発見してテレビでインタビューを受けていたおじさんを演じていた内野惣次郎氏は、何と初代『ウルトラマン』のガヴァドン登場回で当時子役として出演していた本人とのこと。この情報を後々知った時は衝撃を受けました。内野氏は今もガヴァドンとの思い出を大切になさっているようで、それ故に氏が今回ガヴァドンと再会を果たせて本当に良かったと思いましたね。そうした粋な配役をしてくれた製作スタッフにも感嘆の意を向けたいです。

 

 

 さて次回は地底より新怪獣・モグージョンが出現する模様。シリーズ定番の地底怪獣と見せかけて、ジェロニモンを彷彿とさせる派手なトサカが気になる怪獣です。そして話によるとこのモグージョン、別名が「幻視怪獣」で相手に幻を見せるようですが……SKaRDメンバーがそれぞれ抱えている過去のトラウマなどが掘り起こされる予感に、いや~な感覚を覚えます。攻略のカギを握るのはエミと「アーくん」なる存在とのことですが、アーくんってもしやアースガロンのことかな?

 

 

 ではまた、次の機会に。