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ウルトラマンブレーザー 第10話「親と子」感想

純真な問いに揺れ動く心

後輩のデマーガくんが親になったことにはレッドキング先輩(『Z』出演)もニッコリ

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  • ほのぼのヒルマ家と鋭い一人息子

 今回のブレーザーゲント隊長が一家で過ごす日常からスタート。妻「ヒルマ・サトコ」と息子「ヒルマ・ジュン」の家族と和気あいあいとしている隊長が珍しくて、冒頭からその微笑ましさに顔を綻ばせてしまいました。サトコさんやジュンくんの押しの強さに少々タジタジになっている様子も、普段の隊員を引っ張る隊長とはまた違った印象を抱きましたね。何よりSKaRDの隊長ではなく、1人の父親として家族と暮らしているヒルマ・ゲントをようやく見れたことにまず感動させられます。

 個人的に驚いたのが、隊長が家族には「施設課に所属している」と噓をついていること。言われてみればSKaRDは極秘の部隊のため隠しておくのは当然なのですが、それを差し引いても如何にもな後方部隊所属であることにしているのは意外でした。恐らくは家族に心配をかけないために前線に立っていることを隠しているのでしょう。(劇中でもサトコさんの心配性な面が描写されていましたし)部下からの電話をそれっぽい演技で乗り越えていくシーンは、副隊長のフォローもあって彼らの苦労っぷりに少々クスっときましたね。

 

 そんな円満でも全てを話しているわけでもないヒルマ家の中で、特に異彩を放っていたのが息子のジュンくん。怪獣の卵から孵ったベビーデマーガをワクワクしながら見つめたり、質問を適当に返す父に「適当なこと言わないでよ!」とズバッというはっきりとした性格が素敵です。そのうえデマーガが赤ちゃんを守ろうとしていることを見抜いたうえで「それを倒すのは悪いことなの?」と問いかけるシーンには胸打たれました。シリーズで度々触れられてきた「人間と怪獣の共存問題」を、ジュンくんが見せてくれることにまず喜びを覚えます。

 みんなの安全のために怪獣を倒さなければならないことを理解しつつも、同じ立場の怪獣たちの側にも立てる姿勢は子どもならではの姿といえます。「違くね?」など語彙力が少々変わっているなりに、大人以上の感性で鋭い指摘をしてくるジュンくんに早くも好感を抱かずにはいられなかったです。父・ゲントをも動かしたジュンくんの言葉に感激しつつ、これからも彼なりの純真な視点で大人たちに問いかけていってほしいですね。

 

 

 上述のジュンくんの言葉を受けデマーガVS防衛隊の現場に向かったゲント隊長。ブレーザーに変身してデマーガの親子をどう対処するのかと期待していた中、突如としてブレーザーの左腕が、トドメを刺そうとする右腕を止める様子を見せてきたので驚きました。右半身と左半身がそれぞれ意思を持って反発し合っているかのような、異様な光景に困惑が止まらなかったです。(左手で自分の顔を殴りつけたりするところは少々シュールで笑ってしまいましたが)血管が走っているかのような左半身のみの反逆に、ブレーザーのデザインが左右非対称である理由が込められていそうな可能性をここで覚えましたね。

 このお互いを殴り合うかのような様子は間違いなくゲント隊長とブレーザーの意見の対立が起こっているのでしょうが、どちらが怪獣を倒そうとしていてどちらがそれを止めているのかが気になります。息子に疑問を投げかけられた隊長がブレーザーを中断しているようにも見えますし、逆に異星人の観点から人間側の傲慢だと判断したブレーザーが止めにかかったようにも見えます。(個人的にはゲント隊長が止めたと考えています)2人とも怪獣を倒すべき動機やそれでも助けようとする理由がはっきりしている分、どちらがやっていてもおかしくないと考えられるのが絶妙だと思いますね。

 まぁ止めていたのは誰かの答えはどうあれ、重要なのはゲント隊長とブレーザーの意思が別々にあるという事実。一体化してから初めて争ったという点に、2人の考えにズレがあったことが感じられます。これまでは怪獣を倒すために無言の協力が出来ていたものの、今回のように時には反目し合う可能性があると考えると両者はかなり不安定な状態にあるのかもしれません。それぞれの考えをどう伝えあうのか、自分たちはこれからどうやってお互いを尊重し合えばいいのか……ゲント隊長とブレーザーウルトラマンとして、それらを考えていかなければならない状況に立たされているように思えます。これまで以上に互いのコミュニケーションが必要になってきた主人公2人の今後に要注目ですね。

 

 

  • 熔鉄怪獣が見せる新たな“親”と“子”としての姿

 今回登場した「熔鉄怪獣 デマーガ」は『X』で初登場して以来、ニュージェネレーションウルトラマンの作品で度々登場してきたニュージェネを代表する怪獣の1体です。スダンダードなゴジラ体型の2足歩行で、口から熱光線を発射し肉弾戦もこなすオーソドックスな暴れっぷりは何とも安定感があります。しかも今回は子どもである「ベビーデマーガ」も登場。デマーガをそのままデフォルメしたかのような小柄なデザインが何とも可愛らしいです。中でもギョロっとした目がチャームポイントで、人間大サイズなのも相まって少々生々しいものの愛嬌を感じました。(ところどころで「平成ゴジラシリーズ」に登場するベビーゴジラを彷彿とさせますね)

 そんな愛らしいベビーのために、通常のデマーガが親として戦ったのが大きな見どころ。ベビーに乱暴した人間への怒りから進撃する姿が勇ましかったと同時に、ベビーを守るために身をかがめるシーンには胸が締め付けれらました。これまで登場してきたデマーガは良くも悪くも“いつもの敵怪獣”という印象があったので、今回子どもを必死に守る親の一面を覗かせてきたのはかなり新鮮でかつショッキングでしたね。『Z』のレッドキングのように、再登場で親子怪獣としての新しいイメージを今回のデマーガは確立させてくれたと言えます。今までとは異なる魅力を引き出す理想的な再登場怪獣となったデマーガとベビーデマーガに感謝したいところです。そして最終的に倒されずに済んだので、親子にはこのまま地下で安らかに眠っていてほしいですね。

 

 

 というわけで10話は怪獣との共存問題をほんのり加えつつ、ゲント隊長の家族とブレーザーの不安定さを同時に描いてみせた回となりました。上述でも触れたようにようやくゲント隊長が父親として描かれたことを喜ばしく思ったと同時に、ウルトラ戦士としてはっきりしていない点に不穏なものを覚える内容でしたね。人間と怪獣の親子を同時に描くことで、それぞれの立場に感情移入させていく展開はベタながら好みです。防衛隊側の容赦のなさに苦々しいものを感じつつ、これからの隊長とブレーザーウルトラマンとしてやっていけるのか不安にさせていく辺りも興味深かったです。(余談ですが、今回のサブタイのタイトルコールの「ベビーを背中から庇うデマーガとヒルマ親子が重なる」の影絵イラストが秀逸で、本作の影絵の中でも特に好きになりました

 また今回またもやブレーザーが新たな技を披露していたのも見逃せませんね。レインボー光輪から冷気を発生させてデマーガを凍らせたり、スパイラルバレードを金色の光に変えてデマーガ親子を包み地下に眠らせるなど、ウルトラマンらしい「そんな技あったの!?」と驚かせてくれる多彩な新技が多かったです。中でも衝撃的だったのが咆哮で、口を光らせて防衛隊のミサイルを全て撃ち落とす光景には度肝を抜かれましたね。これまで散々吠えてきたことでブレーザーアイデンティティとなった叫び声ですがが、それがそのまま武器になるとは思ってもみませんでした。『ゼアス』以来のウルトラマンが口を開く絵面も相まって、凄まじいインパクトになったのは言うまでもありません。

 

 

 さて次回は宇宙から飛来してきた謎の隕石との戦いが描かれる模様。予告からしてこの隕石が怪獣なのは間違いないものの、そのちょっと変わった見た目にはギョッとしてしまいますね。ユニークすぎて若干シュールなのでこれが脅威?とも思ってしまいがちですが、ウルトラマンの怪獣の強さは見た目に左右されないのでとんでもない強敵であっても不思議ではないのでしょう。むしろ今回の件もあってブレーザーと上手く息を合わせられないかもしれないゲント隊長の方に不安を抱いてしまいます。ニジカガチの時とは別の危機が押し寄せてきた中、隊長は如何にして立ち向かうのでしょうか。

 

 

 ではまた、次の機会に。