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ウルトラマンブレーザー 第9話「オトノホシ」感想

モノクロの世界に音楽が色づく

ウルトラQへのリスペクトと音楽の世界の切なさの融合……お見事!!

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  • 音の楽しみを見出した侵略者の果て

 アンリの過去回想から始まった今回のブレーザーは、彼女ととある音楽団の美しくも悲しい物語が描かれました。10年前偶然知り合った「筑士芳一(ツクシ・ホウイチ)」たちとその音楽団が始めた地球侵略、その背景にある音楽への憧れが描かれた展開はどれもグッとくるものがあり、個人的にもかなり見入り・聞き入ってしまいましたね。演者の演奏も本格的で、音楽への造詣がさほどない僕でも彼らの演奏には圧倒されました。

 何といってもツクシのおじさんたちの音楽に対する感情が素晴らしいの一言。ただ地球を侵略するだけで終わるはずだった日々が、音楽との出会いで彩られていく経緯には大いに共感させられます。(おじさんたちの回想シーンで「最初はモノクロだった画面が、音楽との邂逅以降カラフルになっていく」演出がまた素敵です)その一方で侵略者としての使命を全うしなければならず、大好きな音楽をその手段に用いてしまう構図は何とも悲しい影がありました。愛した音楽と侵略行為の板挟みにあっているおじさんたちの姿に痛々しさを覚えずにはいられません。

 そんなおじさんたちをアンリは必死に阻止したわけですが、楽家にとっての命でもある手を撃って演奏を止めることしか出来なかったのがまた悲しかったです。おじさんの愛する音楽を守るために、おじさんから音楽を引き離すしかなかったアンリの心中や察するに余りあります。対するおじさんは残念そうであると同時に、憑き物が落ちたような表情を見せるのがまた切なさを加速させますね。大切な音楽で愛着の湧いた地球を傷つけなくて良くなったものの、おじさんにとってこれで良かったのかとつい考えてしまいます。侵略以上のものを音楽から見出した素敵な宇宙人の物語として救いようのない結末故に、悲劇のオペラを1本観終わったかのような感情に駆られる回でした。

 

 

  • 東儀氏の奏でるノスタルジーの挑戦

 同時に今回は音楽を用いた『ウルトラQ』リスペクトの演出が多いのも大きな見どころでした。まず登場したガラモンやセミ人間がQ初出ということもあり、「ウルトラQ』メインテーマ」を編曲したものでガラモンを操る展開には思わず感激してしまいましたね。不気味でおどろおどろしいものの、どこか耳を傾けずにはいられないこの曲を美しくアレンジし本作のBGMとして昇華してくれていました。極め付けに今回の特殊EDとして流れた点(何と映像も当時を思わせるモノクロ仕様!)も見事で、ウルトラQという作品のイメージを音楽で印象付けてくれるのは素晴らしい判断だったとつくづく思います。これまでのシリーズのQを意識したエピソードの中でも特に印象に残る回でしたね。

 そうした音楽で本作を彩ってくれた作曲家にして雅楽師東儀秀樹(とうぎ・ひでき)氏の活躍も忘れてはいけません。ツクシのおじさん役として出演してくれた(息子の東儀典親氏も音楽団の一員として出演しています)だけでなく、本作の挿入曲を全て担当してくれました。上述のQのテーマだけでなく、今回オリジナルの「風の出逢い」「チルソナイト創世紀」まで全て氏の作曲・編曲というのですから驚きです。個人的にお気に入りなのはチルソナイト創世紀で、勇壮ながらもどこか憂いを感じさせる音楽にたまらなく惹かれます。(これらの曲の演奏は東儀典親氏のYouTubeチャンネルからも聞くことが出来ます。*1ので良かったらどうぞ)このようにウルトラQのノスタルジーを感じさせ、物語を盛り上げてくれた東儀氏に最大の感謝を。素敵な音楽と演技をありがとうございました!!

 

 

  • 奇怪な機械人形、操るは蝉たちの演奏撃

 今回登場した「ロボット怪獣 ガラモン」は上述の通りウルトラQ』初出のロボット怪獣。(意外とロボットだということを知らない人も多いんですよね)赤いかき揚げのようなトゲトゲボディや少々でっぷりしたお腹、前方にチョコンに垂れた両手などどこか愛らしいコミカルな見た目は約60年以上経った現代でも強烈なインパクトを誇っています。しかしロボット故感情というものがなくただ無表情のまま侵略のために進撃する様子は、一転して不気味なイメージを植え付けてきますね。

 本作で初めてウルトラマンと戦ったガラモンですが、その見た目とは相反した異様な強さには度肝を抜かれました。初戦のアースガロンとの対決ではピョンピョンと飛び跳ね相手の攻撃をかわし、自分は体当たりで翻弄といった具合。そのうえ手をシンバルのように叩いて高周波を発生させるといった小技まで持っています。それ以上に最大の特徴といえるのがその打たれ強さで、あらゆる攻撃を吸収するお腹やブレーザーが痛がるほど強固な赤いトゲでほとんど傷一つ付くことなく暴れ回っていました。前回ニジカガチを倒したレインボー光輪もある程度耐えていましたし、防御力に関しては本作屈指と判断しても良いでしょう。

 そんなガラモンを操っていたツクシのおじさんたちこと「宇宙怪人 セミ人間」も見逃せません。チルソニア遊星より飛来してきた彼らがガラモンを音楽で操る操縦方法は、翅をこすりつけて音を出すセミらしいユニークな侵略と言えます。その演奏は上述の通りまさに鮮烈でしたが、同時に「これで最後」と覚悟したうえでの最後の足搔きにも聞こえました。さながら地上に出て日の目を見てから1週間で息絶えるセミが、その限りある時間で精一杯鳴き続けたかのような……本作の顛末含め、おじさんたちの最期にどこか切ない感情が湧き出てしまう活躍でしたね。

 余談ですがこのガラモンとセミ人間はそれぞれピグモンバルタン星人というそっくりさんが存在している(※見た目は似ているけど関連性は全くない)ことでも有名です。前者はガラモンの着ぐるみの流用、後者はセミ人間を元に成田亨氏のデザインで誕生した経緯を持ちますが、いつの間にかあちらの方が有名になってしまいました。そういうこともあって、元となった両者がこうして目立ってくれたのは嬉しいところ。ガラモンとセミ人間も、これからちょっとずつでいいので有名になっていってほしいですね。

 

 

 音楽とノスタルジーなどの印象が強い回でしたが、他にもゲント隊長がブレーザーと対話を果たした(?)前半も注目ポイント。突然片目がブレーザーになったかと思ったら、ヤスノブの野菜ジュースを勝手に飲む行動を取ってきたのでちょっとギョッとしてしまいました。野菜ジュースが好きなのかな……?これはゲント隊長の体にブレーザーが侵食しているようにも見えるのですが、どうなのでしょうか。これまでのウルトラマンと比べてもかなり異質な行動に、困惑せずにはいられません。

 その直後に謎の空間で星々を象ったブレーザー(さしずめ「ウルトラマンブレー座」とか?)に、ゲント隊長が会話を試みるシーンも印象的。手を叩くのに対して光って答える、というのは実用的で感心させられるものの、隊長の話しかけ方が初対面の子どもに近づく際の口ぶりっぽいので何とも微笑ましかったですね。子持ちの隊長らしい対応ですが、ブレーザーがそれにどこまで答えてくれたのかが気になります。恐らくブレーザーも隊長との意思疎通を果たそうとしているのでしょうし、だからこそあんまりうまくいかなかった結果にもどかしさを覚えます。2人が本当の意味でコミュニケーションをとることが出来るのは、果たしていつになるのでしょうか。

 

 

 次回は何とデマーガの親子が登場。ニュージェネの代表的怪獣となってきたデマーガに、ついに子どもが出てくるのというのは何とも感慨深いですね。予告に映った人間大のベビーデマーガも可愛らしくてつい顔が綻んでしまいます。しかし地球防衛軍は親子共々撃滅を命じてくるので、ベビーの愛らしさをかき消すほどの重苦しい話になってしまいそうです。

 そして見逃せないのがゲント隊長の妻子!ずっと気になっていた隊長の家族の登場に思わずテンションが上がってしまいます。休日を過ごす円満な家族の前に現れたデマーガの親子とそれを撃滅しなければならないSKaRD……同じように子を持つ怪獣に対して、息子の前でゲント隊長が取る行動や如何に。何よりこれまでは隊長としての一面ばかりが描かれていたヒルマ・ゲントの、父親としての一面がようやく見られることに期待が止まりません。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:こちらのリンク先を参照。https://www.youtube.com/watch?v=4NzQqnt7ZcM