新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

ウルトラマンブレーザー 第20話「虫の音の夜」感想

言葉がなくとも伝わるもの

事後承諾は……マズい(仕事のトラウマ)

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

  • 無口なナグラ親子から伝わること

 今回のブレーザーは予告通り、テルアキ副隊長が主役。以前から実家が農家であることが語られてきた中、とうとうその副隊長の故郷への帰省と家庭事情が描かれることになりました。父「ナグラ・ショウゴ」が倒れたという知らせを受け副隊長が急遽帰ってきたものの、それは彼に結婚させるための嘘だと判明した時は変なため息が出てしまいましたね。何より序盤から息子と父親のピリピリとした空気が張りつめている様子に、この親子の関係性を何となく察することが出来ます。(そんな両者の仲を取り持つお兄さんには同情を覚えますね)

 とはいえ結婚云々はまだしも、テルアキ副隊長に防衛隊を止めてもらいたいというお父さんの気持ちも理解出来ます。子どもを怪獣被害が多発する現場にいさせたくない、というのは親として当然の心境と言えるでしょう。一方で副隊長の家族や故郷に対する複雑な感情も見え隠れしており、それぞれの想いが伝わってくるだけに見ていて身を詰まされるものがあります。また田舎から出てきた人物の描写としてテンプレが多いからこその故郷での“息苦しさ”も感じられたり。

 そんな中突如発生した作物の被害とその原因であるズグガンの発生、それに(事後承諾という名の無断出動で)対処するSKaRDメンバーの戦いによって家族の話が有耶無耶になっていったのは正直唖然となりましたね。しかしその過程でSKaRD隊員としての息子を見て、お父さんが自然と諦めていく様子が描かれていたのが見事でした。まるで怪獣という脅威に果敢に立ち向かう姿から「もう以前のあの子ではない」と悟ったかのように見えます。その後畑の土を見て「アイツが守ってくれた土だ」と嗚咽するラストも印象的で、言葉を交わさずとも理解しあっていくことが伝わる演出に思わず息を飲みました。最初こそ口を開かない親子にやきもきしたものの、口を開かないままでもわかりあえた描写で一気にすっきりさせられる回だったと言えます。

 

 

  • 地より這い出て侵食・行軍する甲虫群

 今回登場した怪獣は「地底甲獣 ズグガン」。タガヌラー以来の昆虫型怪獣にして、モグージョンに続く地底怪獣です。白い骨のような装甲に覆われたボディと青白い発光部分、さらに複眼と大きく裂けた口が特徴的で、分類的には地球怪獣ながらその見た目はさながらエイリアンを思わせるものがあります。幼体と成体の2種類が現在確認されており、前者は人間と同じくらいのサイズ、後者はウルトラマンに迫る50m級と差が大きさです。(このサイズの差はウルトラシリーズではあるあるなのですが)また幼体の時点では杵のように太くてずんぐりしているだけだった前肢が、成体になってからは鋭い大鎌の形状に変化しているのが興味深いです。

 そんなズグガンの生態は地球上の大気の大部分を占める窒素を主食としているようで、その捕食ペースは豊かな土壌を軒並み植物が育たたないレベルにまで駄目にしてしまうほど。これに関しては地下に存在する巨大な卵から、複数の幼体が次々と生まれているため大きな被害に発展したのだと思われます。このように虫怪獣らしい繁殖スピードを持っているうえ、鈴虫を思わせる特殊な鳴き声で巣や卵の危機を知らせる仲間意識の強さもあって中々に厄介。今回はその鳴き声を利用して一網打尽出来たものの、生まれたばかりの幼体までもが迷わず守勢に入る生態は通常倒すのに苦労しそうです。

 戦闘では幼体・成体共に口から発射する特殊な粘液を主な武器としている模様。この粘液はアンモニアが含まれており、空気中で即座に凝固してコンクリートのように硬くなる性質を持っています。(この粘液は巣の形成にも使われているとのこと)さらに成体は粘液に加えて前肢の鎌、頭部から発射するトゲなども持っておりより攻撃的に成長しています。劇中ではブレーザーの動きを粘液で封じたうえでタコ殴りにする様子が印象に残りましたね。害虫の如く周囲に多大な被害をもたらしつつ、戦闘でもブレーザーを苦戦させるほど……地球怪獣ながら侮れない存在だったと言えるでしょう。

 

 

 前々回のヒルマ家、前回のアオベ家に続いてナグラ家の物語が展開された今回。親子揃って不器用な態度故にどう収集を付けるのかと思っていた中、怪獣退治の最中で自然と和解していく描写には舌を巻きましたね。わかりにくいところもチラホラあったものの、それらも見返していく内に理解が進んでいくので面白かったです。細かい演技で登場人物の感情の機微を表現する、ある意味でブレーザーの緻密な部分が出ていたと思います。

 他にもテルアキ副隊長の人となりが改めて描かれていたのも大きな見どころでした。家族の前では頑固な一面を見せつつも、仕事では公私混同せずしっかりと自身の役割こなす辺りは流石といったところ。加えてズグガンの卵を爆破する際に短く謝るシーンも印象深く、これまで何度も描かれている副隊長の「地球怪獣との共生」の姿勢がわかりやすく表れてたと言えます。このようにナグラ・テルアキという人物の魅力を端的に魅せてくれる回としても実に良く出来ていましたね。

 あとはやはりSKaRDが「怪獣対策講座」なる謎の寸劇をやる羽目になっている点にクスっとさせられました。冒頭の妙にじわじわくる練習シーンの破壊力はそこそこ高かったです。加えて棒読みのアンリと対照的に演技派のエミ、気合が入りすぎてアドリブを入れまくるヤスノブといった各人の違いも見ていて楽しかったですね。SKaRDの出動禁止命令やハルノ参謀長の謹慎処分など不穏な描写が見受けられますが、概ねほのぼのとしているので気楽に見ることが出来ました。

 

 

 さて次回は14話に登場したデルタンダルが再び出現。以前の個体よりも強力なようで、そんな強敵相手にアースガロンのさらなる新装備が投入される模様。しかしその新装備の試験運用の際に何かしらトラブルが発生したようで……?予告映像にうなだれるヤスノブの様子から彼に何かあったようですし、早くも胸をざわつかせてしまいます。以前はなすすべがなかったデルタンダルを今度こそ攻略出来るのでしょうか。

 

 

 ではまた、次の機会に。