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牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者 第9話「門(もん)」感想

その闇に触れることなかれ

導入しよう!騎士や法師のメンタルヘルスケア

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  • 或る法師の苦悩と狂気

 破滅の門の前でムツギ法師の真意、そしてゴドウの末路など様々な真実が明かされることになった今回の牙狼ハガネ。何といっても本性を表したムツギ法師に圧倒されることになりました。これまで見せていた穏やかで理性的な態度とは真逆の狂気的な笑み、そして過去回想での不安定な部分まで含め意外性が強かったです。そして前回の感想でも書きましたが、創磨やコヨリのことを見守る母親のような一面を見せていただけにこの変貌ぶりにはショックを受けてしまいますね。(劇中で創磨に父と違う判断を誘う慈悲を見せたこともあり、彼らへの愛情は嘘ではなかったと信じたいところ

 さてムツギ法師がゴドウと共に破滅の門の封印に向かうまでの出来事が語られましたが、「ホラーから助けた人間が他の人の命を奪った」という初手から重苦しい話が展開され面食らいました。クレアシティの治安の悪さを考えるとあり得る話ですが、事件現場に備えられた花束やぬいぐるみからその時の惨状が容易に想像できてしまうのが辛いです。そして真面目に使命をこなしてきたムツギ法師だからこそ、この事実に打ちのめされた理由も理解出来ます。これから罪を犯す人間を助ける意味はあるのか……?というヒーロー作品における命題の1つに対し、ムツギという1人の人間が苦悩する姿は中々に堪えるものがありました。

 しかし破滅の門の前で誘惑者に誑かされ、「陰我を持った人間を炙り出して殺す」という結論に達してしまったのはいただけません。人を選別する傲慢さを得てしまい、ここでムツギ法師が完全に壊れてしまったことを察してしまいました。それ以前から「禁断の果実」なるものの存在に徐々に魅入られていったシーンも含めて、許容量を超えた事態が人の心を追っていく過程を丁寧に見せられた気分です。ただ個人的な話ですが、ここまでの描写からムツギ法師の性根の真面目さが読み取れるのであまり責める気にはなりませんね。心優しい人物だったからこそ、「ホラーから人々を守る」守りし者の使命の重さや矛盾を前に狂ってしまったことが十二分に伝わってくる哀れな真実だったと考えます。

 

 

  • 或る騎士の揺るがぬ強さ

 そうして壊れてしまったムツギ法師に対し、過去回想でのゴドウは一貫して守りし者としての強い心を見せていたのが印象的。上述の助けた人間の話においてもムツギ法師を宥めつつ、仕方なかったことを語る辺りが何とも頼もしかったです。加えて破滅の門の封印のために尽力するシーン(5話での電話が当時のムツギ法師との会話だったと判明した時は驚きましたね)でも同様の揺るがなさが感じ取れます。ムツギ法師が不安定だった分、彼の安定ぶりが際立ちますね。

 極めつけはムツギ法師が開いた門を塞ぐために、心滅獣身と化して封じる瞬間。前回予想していた通りの展開だったものの、いざ目にしたらギリギリの状況での緊迫感とゴドウの勇姿で圧倒されましたね。(正直心滅してしまうシーンでここまでカッコいいと思ったのは初めてです)鎧に喰われても構わない!とばかりに果敢に立ち向かう姿に見惚れずにはいられなかったです。ホラーとの戦いのみに力を使い、守りし者としての範疇を弁えたその活躍は前回に引き続きゴドウという騎士の偉大さを感じ取る者になっていたと言えます。

 それ故に残された息子の創磨がこの先どうなってしまうのか気になるところ。ムツギ法師によって誘惑者に誑かされ、今度は彼までも心の闇に呑まれて闇堕ちしてしまったのはショッキングでした。父と比べてもまだまだ心に余裕のない彼に不安を感じずにはいられません。ただ創磨自身は望んで闇を呑み込んでしまったわけではないので、そこが正気に戻るカギになってほしいところです。

 

 

 というわけで9話の感想でした。いやぁムツギ法師の狂気的な一面など色々と見ごたえのある回想でしたね。騎士や法師の裏切りはある意味でシリーズのお約束の1つということもありマンネリ気味なところもありますが、それでもいざ彼女の心情を見せられた時はかなり胸に来るものがありましたし、そこから狂っていく瞬間はやはり衝撃を受けずにはいられなかったです。また演じている黒谷友香さんの怪演が光るシーンでもあり、ゴドウ役の萩原聖人さんとのやり取りもあって重厚な場面になっていたと思います。相変わらず牙狼シリーズはこうした大御所の使い方がとても上手で舌を巻くばかりです。

 また守りし者の使命の難しさと重さ、それ故に精神をやられてしまう問題を描いた回としても興味深いところ。ムツギ法師の手段は許されないものの同情する余地はありますし、ゴドウのように揺るがない精神が必要なもののそれは常人には到底不可能な領域と言えます。何と言いますか、魔戒騎士や法師は人間のメンタルには耐えられない役職なのかもしれません。あまりにも戦士の心の扱いに無頓着な話しなうえ、令和の時代は働く人の心も癒す必要があるので、こうなったら番犬所などは騎士や法師のためのメンタルヘルスケアの施設を用意するべきでは?なんてことも考えてしまいましたね。

 

 

 そして次回は駆けつけてきた流牙と闇堕ち創磨、そしてコヨリVSムツギ法師の戦いが勃発。流牙たちにとっては望まぬ戦いであるので、心にくるしんどい戦いになることが予想されます。特に師匠兼親代わりの法師と相対することになったコヨリの心情は察するに余りありますね。果たして流牙たちの言葉はそれぞれの相手に届くのか、次回も見逃せないことになりそうです。

 

 

 ではまた、次の機会に。